第3話

訳のわからん穴に落とされ、訳のわからん場所に落ち、終いには訳のわからん奴にわけらからんことを言われた俺の脳内はオーバーヒート寸前だった。

「……神様?」

「そう、神様」

「キリスト?」

「NO」

「イスラム?」

「NO」

「仏?」

「NO」

「神道?」

「NO」


どうなってるんだ、本格的にめまいがしてきた。どうか夢であれ、というかもう夢だろこんなん。

俺が頭を抱えていると、神様?は口を開いた。

「私はどの宗教にも属してないけれど、たしかに私は神様なんだよ。」

「それじゃあ神様、俺を元の場所に戻してくれよ!」

まさに神に縋りながら叫ぶように喋った。

神様からの答えは俺にとって最悪な答えだった。

「すまないけど、それはできないなー。」

「はぁ!?なんでだよ!?」

少しため息をつきながらソイツは答えた。

「パラレルワールドって、分かるかな?」

「聞いたことくらいはあるが…」

「簡単に言うと、例えば朝ごはんにご飯を食べるか、パンを食べるか迷っている時にそこでは2つの世界が生まれる、ご飯を食べるかパンを食べるか。

これがパラレルワールドだ、あんまり私も詳しくないけど。」

「でも、なんでそれが俺が帰れないことになるんだよ。」

「君がここへ落ちてくるまで何を思ったか、来る前に何をしていたか、それだけで世界の分岐ができて、その分新しい世界ができていく。

分かるだろ、兆や京や垓といった中から、君の世界を探し出すのは極めて困難だ、はっきり言って無理だ。」

このことを聞いた瞬間、足に力が入らずそのまま座り込んでしまった、腰が抜けたような感覚もある、絶望しか無かった。

「そ……そんな……」

「あー……なんかすまん。

お詫びと言ってはなんだけど、ここで快適に暮らせるように私も協力するから、な!」

半分放心状態だった俺にはその言葉を否定するほどの知性は残されていなかった。

「まー、元気出しなよ。ここには私以外に沢山仲間がいるから。」

その言葉を聞いた時、脳内に刺激が走った。

さっきまでの絶望が少しずつ軽くなるのがわかる。

「君以外にもいるのか!?」

「おっ!元気になったね、いるよいるよ。」

「それは、俺と同じようにここに落ちてきたやつなのか?」

「いや?ここに落ちてきたのは君が初めてだ、正直私も最初ビビった。」

どのようか人達なのだろうと期待で、胸が膨らんだ。そんな俺の様子を見たソイツは少し困ったような顔をしていた。

「どうした?」

「さっき言った仲間のことなんだけどさ…

ちょっとクセが強くてね、下手したら君殺されるわ。」

「え!?」

そんなに狂暴なやつなのだろうか?

期待が不安へと変わっていく。

「だから、殺されないようにちょっとゲーム形式でコミュニケーション練習しておこうか、君根暗っぽいし。」

一言余計だと感じたが、あまり突っ込まないことにした。

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