66:神の中の神の声
冴内が海を割った様子はクルージングボートの船員達にも、海の中にいた他のダイバー達にも、近くで漁をしていたシーカー達にも、崖の上の陸上にいた数名のシーカー達にもしっかり目撃され動画撮影されていた。
冴内がシーラ嬢の絶体絶命の危機を救うため、チョップで海を割ったという報告は瞬く間に広がり、僅かな時間差の後ゲート外に記録データは持ち出され、全世界に海を割った冴内の様子が配信された。
シーカーだけが閲覧できる動画サイトではなく、不特定多数の一般人が閲覧するウィーチューブでは冴内の存在を知る一般人は皆無なので、あっ馬の動画の人だ、今回も凄く良く出来たCGだね!とコメントが付与され「イイネ!」評価がされるのであったが、冴内の存在を知る一部のシーカーからは彼はモーゼの生まれ変わりなのではないかと真剣に議論されるのであった。
富士山麓ゲート研修センター内情報部では「何してくれちゃってんの英国機関!?英雄剣を触らせるだけじゃなかったのかよ!」と職員総出で猛抗議を訴えかける勢いだったが続いて送られてきた冴内の最新ステータスを一目見て全員固まってしまった。
同じくストーンヘンジ・ゲート研修センター内英国情報部室においても局長のサー・アーサー・ウィリアム3世を筆頭に全情報部員がその場に佇んで一言も発することが出来ない状況だった。
「そうか・・・彼は・・・英雄ではなく神だったのか・・・」ウィリアム3世の第一声はそれだった。
その言葉で全員合点がいった様子で、英雄剣のみならずこれまでありとあらゆる一切の武器を持つことはおろか触る事すら出来なかったのは、神の前には武器など必要なかったということなのだと理解した。武器が彼を拒絶したのではなく彼が武器を拒絶したのだと・・・
いや、だったら銃はどうなんだとツッコミたくなるが、それは神である冴内様にとっては銃などは武器という認識すらなく、映画やマンガ、アニメ、ゲームに出てくる格好良いアイテムとしてしか見ていないので持てたのだと、恐らく英国情報部員は全員胸を張って答えることだろう。実際のところは銃がゲート内素材で作られた武器ではなく地球で作られた武器だったからなのだが、英国情報部員もそれぐらいは承知の上でのコメントである。
ともあれもはや彼は英雄どころか、それを軽く凌駕する神だったということで一同全員が納得してしまったので、失意のどん底だった彼等も大いに救われた気分になった。
それどころか彼が神になった地が、我が英国ゲート内であることを大いに誇らしく思った。
その夜は新たな神の誕生を祝う大祝賀会が開催された。ゲートに入れない職員もいるため、祝賀会はストーンヘンジ・ゲート研修センターの食堂で行われた。ちなみに割れた海は夜には元の海に戻った。
タイやヒラメの・・・失礼、地球上のタイやヒラメに似た魚、カニ、エビ、タコ、イカ、貝、そしてフカヒレ、新鮮な魚介類をふんだんに使った絶品料理に大満足し、本場の極上ウイスキーをそこらでも手に入る普通のコーラで割ったコークハイで文字通りハイになった冴内は上機嫌であった。
酒量はかなりセーブしたつもりだが、飲みなれない本場のウイスキーを飲んだので結構酔っ払ってしまい、周囲のちょっとしか変化に気付くことが出来なかった。
今日彼に用意された部屋がいつもより広い個室になっていて、ベッドに枕が二つもあるダブルベッドになっていることにも気づかなかった。
これはいよいよ冴内城陥落目前か!?
数日前のホテル宿泊時と全く同様に、またしても冴内がいる隣の部屋では英国ストーンヘンジ・ゲート局長サー・アーサー・ウィリアム3世を含めた情報部員達と前回よりもさらに攻めた恰好をしたシーラ嬢が詰めており、機は熟した!今日こそヤるか!といった具合であった。
今日ばかりは情報部トップのブレーン達も止めることなく、まさに今晩こそが絶好のタイミングだとゴーサインを出していた。
ウィリアム3世が頼んだぞ我が姪シーラよと固く握手を交わし、シーラの方も必ずや彼と結ばれて、神の子を産み、その子こそ英雄になるに違いないでしょう!と言うと全員声を出さずに一斉に手を大きく強く天にかざした。
意を決してシーラ嬢が冴内の元に向かおうとした矢先「それ」は現れた・・・
『ヤレヤレ・・・しょうがないのう・・・』
室内は一瞬にしてまばゆい光に包まれた。その場にいた全員は金縛りにあってまったく身動きが出来なくなった。まばゆい光は徐々に収束していき人の形のシルエットになった。
空中に漂う人の形をした光のシルエットから、その場にいる全員の脳内に直接響くようなメッセージが届けられた。
『すまぬが、わしのムコどのに手をださんでくれんかのう』
「「「ーーーーーーーーーッ!!!???」」」
『そこの、シーラとかいったか?お色気ムフフ作戦は中止してくれ』
『あやつはわしが800年以上も待ち続けた我が夫となる者なのじゃ』
神の天啓というよりも隕石級のメガトン破壊力の衝撃的発言がその場にいた全員の脳内に響き渡る。
「「「「あ・・・あなた様は一体ッ!?」」」
全員が一様に光に問いかける
『わしか?わしはうちゅ・・・カミじゃ』
「神!?神ですと!?冴内殿も今日神になられましたが!?」
『・・・』
『わしはその・・・カミの中のカミじゃ』
「神の中の神ですと!?」
『そうじゃカミの中のカミじゃ、すごくつよいぞ』
『ダーリンの、いや、冴内のいちおくまんばいくらいつよいぞ・・・たぶん』
冴内の1憶万倍も強い(多分)と豪語する神の中の神を自称する人の形をした光のシルエットはそうして自らを語り始めた・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます