65:彼は英雄ではなく神だった
サメは嗅覚がものすごく発達しているとテレビの動物番組で見た記憶がある。調子に乗ってカニやエビを乱獲したバチが当たってしまったと冴内は先に立たない後悔をした。サメは美味しそうなカニやエビの身の匂いを嗅いでやってきたのだろう。
巨大なサメを目の当たりにして冴内は驚愕した。ところがそれはサメに対してではなく自分自身に対して驚いていたのである。
大型トラック並みのとんでもないサイズのサメ
獰猛な恐ろしい形相のサメ
口には鋭利な歯がビッシリ並ぶサメ
こんなもの同じ海の中で目の当たりにしようものならベテランダイバーでもパニック状態は必至なのだが冴内の心は全く平常心そのものであった。
そんな自分の平常心にこそ驚いていたのである。ひょっとしたら恐ろし過ぎて自分の心がマヒしてしまったのではないかといぶかしんだ程だったが、そのサメが何をどうしたって自分にキズ一つつけることなど到底出来ないだろうということが何故か冴内には既に分かっていたのである。
サメの方も同様にそれは分かっていて、自分を見てもまるで動じない目の前の小さな得体の知れない「何か」よりもさらにその先にいる身体の一部が金色にキラキラ光る生き物の方がエサとして実に旨そうだと思っていたのだ。
冴内はサメに向かって何気なく水平チョップをお見舞いして今夜はフカヒレスープも追加だなくらいに考えていたのだが、そんな冴内をサメがフェイントで誘ってからの華麗なスルーで抜き去ったときは冴内は心底「しまった!」と己の痛恨のミスを悔やんだ。
サメは口をアングリ開けて、あろうことかシーラ嬢に猛然と迫る!シーラ嬢の本職は鑑定士で戦闘スキルは高くない!恐怖におののき身動き一つ出来ないシーラ嬢!シーラ嬢今まさに絶体絶命の危機!どうなるシーラ嬢!次号に続く!ちょ、待てよ。
「だぁめだぁぁぁぁーーーーーーッッッ!!!」
冴内は絶叫を上げながら、全身全霊マックスバリューじゃなくてマックスパゥワァー全開でそれこそ冴えないパワー全開、いやそうじゃなくて、冴内マックス全開リミッター解除最強最高パワーで水平ではなくいつもの垂直チョップであらん限りの愛と魂と命と下心を込めてぶっ放した。
果たしてその結果どうなったのか!
海が割れた
サメは一瞬で跡形もなく消滅、あっフカヒレは残してくれたようです。そこらにいた、カニ、エビ、タコ、タイやヒラメの・・・おっと失礼、地球のタイやヒラメによく似た美味しそうな魚達も全て消滅して食材と化して地面にポタポタ落ちた。
シーラ嬢はペタンと海底だった場所に尻餅をついて目の前の海が真っ二つに割れているのをただただ茫然と眺めていた。
海上にいたクルージングボートは突如海が真っ二つに割れたことで慌てて舵を切った。
甲板で事の次第を一部始終見ていた船員達はただ一言こうつぶやいた。
「神」と
示し合わせたかのように、冴内の左手は光り輝きそしてそこには次のように映し出されていた。
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冴内 洋(さえない よう)
20歳男性
★スキル:チョップLv20⇒チョップLv30
スキル:水平チョップLv1
スキル:ポイズンチョップLv1
スキル:チョップヒールLv5
スキル:チョップキュアLv5
★称号:チョップロード⇒神のチョップ
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左手に映し出されたステータスは携帯端末などで表示される各国それぞれの言語とは異なり、それを見たシーカーの国の言葉で書かれているように映されるので日本語の読みが出来ない英国人でも冴内のステータスを理解することが出来た。
そしてそこにはまさしく Chop of God と書かれていたのである。
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