61:ストーンヘンジ・ゲート
キングスタリオンとの別れを終え、冴内一行はいよいよストーンヘンジ・ゲートへと向かった。ストーンヘンジはロンドン中心部から90マイルもない距離で、車でも2時間かからない程の距離にあるが馬術練習場からは大体3時間程度の距離の場所にある。
さすがに元が世界重要文化遺産で現在も調査研究中なだけあって、富士山麓ゲートのようにゲートの目の前に研修センターのような大型施設はなく、5キロ以上離れたところに研修センターは建っていた。
いったんストーンヘンジ・ゲート研修センターにて昼食をとり、各種説明や今後のスケジュールなどの打ち合わせをして、いよいよストーンヘンジ・ゲートへと向かうことになった。
ゲート周辺ではシーカー達よりも一般観光客の方が多くいて、ゲート前で記念写真を撮っている人達もかなりいた。中にはゲートに入ろうとしてボヨンとはじかれて入れずに面白がっている人もいた。特に厳しい警備体制をしている様子もなく、この辺りはやっぱり外国なんだなぁと冴内は感じた。
冴内達がゲート付近まで歩いてくると、観光客達は冴えない東洋人の冴内には関心がなく、それよりも彼の手をつないで歩いているシーラ嬢の美しさに見とれていた。
「うわーーーこれがストーンヘンジかぁ!こんなすごい場所に来れるとは夢にも思わなかった!」
「冴内様にそういってもらえると光栄ですわ」
「これはゲートが出現するのも納得ですよ。そもそもこの遺跡そのものがゲートのようだ」
「なるほど・・・さすがは冴内様、未だストーンヘンジ遺跡の目的は明らかになっていないのですが、この地にゲートが出現したことと何か関係があるのかもしれませんわね」
「さぁ冴内様、それでは一緒にゲート内へ入りましょう」と、さりげなく冴内の手を取るシーラ嬢、冴内へのボディタッチはここのところあからさまに多くなっていた。
これはいよいよ冴内城陥落目前か!?
ともあれストーンヘンジ・ゲート内へと入場した冴内の目に真っ先に飛び込んできたのは「海」だった。目の前は一面の海である。一見しただけではその先がどこまで続いているのは分からない。水平線があるということはこの世界が地球の様に丸い天体であるということで間違いなさそうだ。
しかしその海は砂浜にある穏やかな海ではなく断崖絶壁にある荒々しい海だった。目の前20メートル程先は高さ50メートル以上はある断崖絶壁で、当然防護柵がつけられており、さらにがけ下には落下時の防護ネットも取り付けられていて二重に安全対策が施されている。しかしさほど遠くない場所を見るとスロープ状になっていて海岸に降りれるようだ。船が何艘か係留されていて、結構人もいて賑わっているようだった。
海と反対方向を振り返ってみると広大な陸地が広がっている。遠くに高くそびえる山は、富士山麓ゲート内でも見たことがない程高くそして険しく見えた。
あくまでも第一印象に過ぎないが、全体的にどことなく厳しい自然環境という印象を受けた。
そんな冴内の雰囲気を察したのかシーラ嬢は「優しく暖かい場所も多くあるんですのよ」と、やはり冴内の手を優しく包んで、冴内の目を真っ直ぐに見つめて微笑んだ。その微笑みは厳格な修行を終えた僧侶すらもイチコロに魅了する程の破壊力を持っていた。
これはいよいよ冴内城陥落目前か!?
ストーンヘンジ・ゲートも富士山麓ゲートと同じようにゲート出入口付近は栄えており、各種建造物が立ち並んでいてとても賑やかだった。一番の違いはゲートに入ってすぐ目の前にそれらの建物があるのではなく、ゲートを振り返った先にそれらがあるということであった。また、木製のロッジの造りを見ると同じロッジとはいえどことなく日本のものとは違う、いかにも昔ながらの西洋の伝統めいたものを感じる造りであった。
そしてやはりゲートの中ではイギリス人シーカー達が何を話しているのか冴内にもはっきりと理解することが出来た。さっきまでゲートの外にいたときは周りのイギリス人達が何を話しているのかほとんど分からなかったのだが、ゲートの中では全員日本語を話しているかのように理解出来た。
イギリス人シーカー達は冴内達が入ってきても大騒ぎすることはなかったが、細身であどけなさが残る東洋人シーカーが入ってきたので少し物珍しげに見ていた。
各国の機関代表や一部の上位シーカー達の間では冴内は超有名人だが、まだ全世界の全てのシーカーに知れ渡っているわけではない。さらに付け加えると大抵どの国でも上位のシーカー達はゲート出入口付近よりもゲートから離れた奥深いエリアを探索しており、ゲート村付近にいるシーカーはまだ経験が浅いか最前線から一歩退いた人達が多い。
そのためゲートから冴内が入ってきたのを目にしても、ちょっと珍しいなとは思ったが、それよりも冴内の隣にいるシーラ嬢の美貌の方に目がいく人の方が多かったので大きな騒ぎにはならなかった。
それでも一部のシーカー達は冴内を見て「げえっ!」のサエナイだ!と小声で言っていた・・・
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