60:ゲート内の名馬の故郷帰り
冴内達がストーンヘンジ・ゲートに向かう一方その頃、アリオンは休暇を利用して愛する妻と息子、そして仲間達のいる生まれ故郷へ里帰りした。
これまでも全速力で走ればすぐに故郷にたどり着けるほど走力に自信があったが、いまは翼があり大空を駆け抜けられるので、それこそひとっ飛びですぐに故郷にたどり着いた。
ここからは物語を分かりやすくするために彼等の言葉や心情を我々の言葉に翻訳してお伝えしよう。
最初空から恐ろしい脅威がやってくると恐れおののいたユニコーン達であったが、妻が「夫の匂いがする!」と言うと、「ホントだ!父ちゃんのオイニーがする!」と息子が言うので、ユニコーン達は恐る恐る見守っていると、「やぁ皆!あるじ様に暇をもらったので帰ってきたぞ!」と聞き慣れた声がかえってきたので、ユニコーン達は以前の彼だと認識した。
アリオンはペガサスになる以前から他のユニコーン達よりも一回り大きい体つきではあったが、今目の前にいる彼はかつての彼とは思えない程の巨体で翼は生えているし顔つきも精悍になっているし、まさに神々しい姿になって帰ってきた。しかも何やら神から授かったとしか思えない素晴らしく立派な首飾りまで身に着けている。
「あなた!おかえりなさい!」
「父ちゃん!おかえり!」
「あぁお前たち、そして皆、ただいま!」
「あなた・・・随分と立派になられましたね・・・」
「あぁオレはあるじ様から命を助けられただけでなく、名前までいただいたのだ。今のオレはアリオンという名前がついているのだ」
「この名はあるじ様達のなんとかいう国の名馬と同じ名だそうだ」
「アリオン・・・」
「アリオン・・・」
「アリオン・・・」
「アリオン!」
「アリオン!」
「アリオン!」
その名を耳にしユニコーン達は高らかに嘶いた。
「アリオン父ちゃん、その首飾りはなぁに!?」
「これか?これはあるじ様にいただいたのだ。これがあるとあるじ様以外の神様達も自分を大事にしてくれるのだ」
「スゲーーッ!!いいなぁー!ボクも欲しい!!」
「アラ、私にも良く見せてあなた、アリオン」
「まぁなんと見事な首飾り、そして何か書いてあるのね」
「あぁ神の言葉で我が名、アリオンと書いてある、それと我があるじ様の名もな、さらに小さな女神様からは我が種族は賢いとまで書いて下さったのだ」
今一度以前の物語を読み返すのが面倒な読者諸兄の方々のために記載するが、彼等が首飾りと認識している名札(送受信ビーコン機能付き)に書かれている記載内容は以下の通りである。
-------------------
アリオン、大人しいです、おりこうです
何かあったら冴内 洋(さえない よう)まで連絡を
-------------------
「なんと素晴らしい・・・あなた、アリオン、まるで神のように立派になられて・・・」
「アリオン!お前、いや、我らが英雄アリオンよ、我々は貴殿を光栄に思うぞ!」
「アリオン!」
「アリオン!」
「アリオン!」
「ワッショイ!」
「ワッショイ!」
「ワッショイ!」
いや、いくら分かりやすい表現に翻訳するとはいえワッショイはないだろう、ワッショイは。
「ところであなた、ここにはいつまでいられるの?」
「うーむ、神様達の言う時間とやらが、自分には理解出来ないのでなんともいえんが、そんなに長くはいられないと思う。あるじ様が戻られたらこの首飾りで知らせてくれるそうだ」
「スゲーーッ!!いいなぁー!ボクも欲しい!!」
「お前も父のように立派になればいずれもらえるかもしれんぞ」
「分かった!ぼくもっと駆けっこ頑張るよ!」
「なぁアリオンよ・・・その・・・神様達のところへ行って皆でお願いすれば我らも名前や首飾りがもらえるだろうか・・・」
「なに?それは・・・分からんが、少し恐れ多過ぎやしないか?遠慮もなしに我らが大挙して神様達の前に現れては、いかな神様とはいえど、怒りに触れてしまうかもしれん・・・しかし何故、そのような恐れ多い事を?」
「いや、それが最近この辺り一帯に神様達が現われるようになってな、その・・・もしかしたら、我らにもワンチャンあるかと思って・・・」
「神様達は我々を遠くからそっと見守るだけで、一切危害などは加えず、いや、むしろ恐ろしい熊などから我々を守ってくれているようなのだ」
「うーむ、それはあるじ様のおかげかもしれんな・・・分かった、その一件はオレが引き受けた、あるじ様が戻られたら、なんとかかけあってみよう」
「おお!そうしてくれるかアリオン!我らが英雄よ!」
「ああ、だがあまり期待はするなよ、皆が全員神様のご加護を得られるかどうかまでは保証できんぞ」
「有難うアリオン!我らが英雄!」
「アリオン万歳!」
「アリオン万歳!」
「アリオンマンセー!」
最後のはさておき、こうして故郷に戻ったアリオンは愛する妻と息子、そして仲間から最大の祝福を受け、しばしの休息を大いに満喫したのであった。
これ以上、馬のことばかり書くとタイトルを「ゲートシーカー ~全てを乗馬で解決する男~」に変えないといけなくなるのでこの辺りで馬関連の物語はいったん切り上げることにして、いよいよ本題に入るとする。
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