第5話 ゴーストカンパニー

「で? アダンちゃん。何やったのよ?」


「ギンゾウ、うるさいですよ」


「だって気になるじゃーん」


「まあそのうちわかりますよ」


 何が分かるって言うんだ。

 俺の気持ちなんかお前らにわかるはずないだろう。


「あ、またそんな顔して。ここにいる人はみんな、それなりの理由があってここにいるんです。まあ話したくない事は話さなくてもいいですし、話したいことはそこのギンゾウに話してください、いつでも聞いてもらえます。ただし、言い返されますし、悪い方向にしか行かないですけど」


「嫌ですよ、話しませんよ」


 話してたまるかよ。

 特にこの人には絶対に。


「えー? そんなあ」


 おっさん、なんでそんなに残念がるんだよ。


「あ、先ほどもう一人いらっしゃったんですけど」


「ああ、口ひげもじゃもじゃ頭のツワブキさんね。あの人は社員じゃないんだけどね」


「社員じゃない?」


「そう。誰でもいいんだよ、ここ。いたい時にいて、帰りたい時に帰る。それがわが社のモットーであるからして」


「そんなモットー聞いたことないですよ」


だね、アダンちゃん」


「悔しい、なんで答えてしまったのか、本当に悔しい」


「まあそう悔しがんなよ。仕方ないよ、そういう星の下に生まれたんだから」


「どういう星ですか?! って、いや、なんでもありません。答えません!」


「えー、もう少しコミュろうよお」


「なんですか、コミュろうって。って、ダメだ。あの、クルミさん」


「ん? なあに?」


「社員でもない人ってどういう?」


「ああ、そこはギンゾウの言うとおりかな。面白そうな人だったら誰でも来てもらってオッケーなのよ、ここ。あの髭クルンおじさんも面白そうだからって連れて来たの」


 いいのかよ。

 ゴーストカンパニーだからって何でもありなのか。


「いやでも、あのおじさん、音楽をって」


「ええ。音楽を聴きにここにね。面白いでしょう?」


「まあ、そうかも知れないですけど」


「あなたは?」


「え?」


「あなたは何をするの? ここで」


 俺がここで何をするのか?

 こんな所に飛ばされて、やることなんて何もないじゃないか。

 今さらどうしろって言うんだよ。


「ほら、またその顔。まあいいです。実際の発掘現場もあるし、そっちに行ってみてもいいし、ここで一日過ごしても構わないわ。来てもいいし来なくてもいい、って言ったのはそういう意味ですよ」


 ああ、そういうことか。


 発掘現場。本社にいた時には実際にどうやって魔石や化石の発掘が行われているかなんて見る機会もなかったし、明日はそっちに行ってみてもいいかな。


 実際、魔獣の化石ってどうなってんだろう?

 まあ、今まで経験したことがないことを経験してみるのもいいかなと思い、クルミさんに明日は発掘現場に行きますと伝えた。


 どうせこんな所に追いやられたんだ。

 せっかくだからいろんなことを知ってから辞めてやろう。


 そう思っていました。


 まさかあんな人がいるとは聞かされていなかったので。




 明日更新 2023/3/17 02:00

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