第27話 「公式」にとんでもない秘伝書があった。

 筆者はデスクトップ環境で執筆しているため、アプリ版でカクヨムにアクセスすることが滅多にない。


 アプリ版だと画面の一番上に、「公式」というタブが小説ジャンルと並んで用意されているのね。ふとそれを選んでみて驚いた。


 こんな読み物があったのか!


📕「きちんと学びたい人のための小説の書き方講座」(フィルムアート社)

🔗https://kakuyomu.jp/works/1177354055193794270


 これはすごいわ。同社が出版している脚本・小説の執筆ノウハウ本からそのエッセンスを惜しげもなく提供している。

 たとえば、「感情類語辞典」「SAVE THE CATの法則」「映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと」などのタイトルが並ぶ。


 本文には「ログライン」やら「三幕構成」といったおなじみの用語が並び、名著からの引用が達人たちの言葉を伝えてくれる。


 うーん。これがただで読めるとはありがたすぎる話だ。


「この本にはこんな良いことが書かれていますよ~。詳しくは本を買ってね」


 そういうプロモーションになっているのでしょうが、買わなくても随分とためになる。そういう気がする読み物である。


 ただし、欠点もある。


 当然のことながら、いろいろな書籍からの引用を羅列した形になるため、一貫した主張として読めない。


 話があちこち飛んで理解しにくい。


 情報量が多すぎて、脳みそが飽和する。


 せっかくの秘伝書なのに、これでは奥義が身につかないではないか。

 そこで筆者は考えた。どうやったら、本著を上手く活用できるのか?


【秘伝書活用の極意】


📜その1:まずは細部にこだわらず、茫洋と全体を通読する。


 これは袋小路に迷い込んだり、疲れ果てて途中で倒れることがないようにするためだ。


📜その2:流し読みの途中で「ピン」とくる何かがあったら、そのエピソードに「💗」をつける。


 カクヨムにはしおり機能がない。後から戻ってくるために、しおり代わりに💗をつけておくのだ。


📜その3:二度目は💗のついたエピソードをゆっくり読む。そして使えそうな情報を見つけたら、それをコピペしてノートにまとめる。


 コピペと同時に自分が感じたことを追記しておくと良さそうだ。どんな名言であろうとも、自分の経験に重ならない限りそれは絵空事にすぎない。

 自分にとってどういう意味を持つか。自分ならどう活用するか。閃いたことを自分の言葉で書いておくのだ。


📜その4:書き出した「秘伝ノート」に照らし合わせて自分の作品を分析してみる。秘伝の型を使いこなしていると言えるか?


 これは「つらい作業」になるだろう。要するに自作のダメ出しをするということだ。

 だが、それだけに意義はありそうだ。


 編集者や作家の先輩に自作の原稿を見てもらうという行為に近いのではなかろうか? 血を流すことになるだろうが、傷痕はより強くなってよみがえるだろう。


📜その5:上記の結果に基づき、過去作を改稿する。


 作品の改良であると同時に、「秘伝の型」を使いこなす修行でもある。よって、回数をできるだけ多く重ねた方が良い。

 となると、長編に手を加えるよりも短編を何作も改稿した方がより多くの経験値を稼ぐことにつながるだろう。


 ベヒモス一頭でレベルアップを狙うな。スライム百匹斬りをやり抜けということ。


📜その6:そしてついに「秘伝の型」を以て新作を書き下ろす。


 ステップ「その5」と「その6」は場合によっては並行して行うことになるかもしれない。あるいはループか。



「秘伝書活用の極意」を書いていて、思いついた。これって、ファンタジーの登場人物がやっていることと同じじゃないか?


 要するに、師匠について基礎を学び、「模倣」「咀嚼」「反復」「独創」により秘伝を我が物とする。


 そして、ダンジョンに挑んで実戦を繰り返すのだ。


 首尾よくダンジョンを攻略した暁には、新たなる「勇者」がそこにいるだろう。



 自分が描くキャラクターにできることなら、自分にだってできるはずだ。


 そう思いません?

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