第159話 龍太郎包囲網4

 ◇◇◇◇◇


 ロサンゼルスゲート内。


 ソフィア、カレン、龍太郎の3人は、見張りの人間に気づかれることなくゲートから異世界に侵入。

 ここには、渋谷ゲートと同様の少し大きめの簡易事務所らしき建物がポツンと建っている。

 それ以外は、異世界特有のだだっ広い平地が辺り一面に広がっている。


龍太郎:「ロサンゼルスの異世界も、渋谷の異世界も、そんなに景色は変わらないんだなぁ。」


ソフィア:「そうでしょうね。

 世界的にどこもこんな感じなんじゃない?」


龍太郎:「ところでさぁ。

 さっき、ちょっとビックリしたんだけど。

 ソフィアさんって、そんなに速く動けるの、なんで?」


 龍太郎は、ソフィアが見張りの目に止まらないほどの身体能力を持っていたことに驚きを隠せないでいた。


ソフィア:「なんで?って、私もエクスプローラなんだけど。普通でしょ?」


龍太郎:「でも、事務方だろ?

 もしかして、レベル高いのか?」


カレン:「龍太郎。ソフィアさんは上位だよ。

 たぶん、ランキングから言って、フォースターだと思う。」


龍太郎:「えー!?フォースターなのか?」


ソフィア:「そうよ。レベルは40よ。

 ギリギリ、フォースターね。」


龍太郎:「知らなかった……。」


 よく見ると、ソフィアの装備もかなりハイグレードなマジックアイテムのようだ。

 とても事務方には見えない。


カレン:「龍太郎は、あまり他のエクスプローラに関心がないんです。」


ソフィア:「別にいいわよ。

 それより、私の方が驚いてるんだけど。

 カレンのその翼は一体なんなの?」


カレン:「そうですよね?

 これは私にもよくわからないんです。

 宝箱から出て来たんです。」


 ソフィアは、カレンの周りを回って、翼をマジマジと見ている。


ソフィア:「この翼って、繋ぎ目が無いみたいなんだけど。どういう仕組みなの?

 どうやってくっついてるのかしら?」


カレン:「もうこの翼は体の一部になってるんで、外したりは出来ないんです。」


ソフィア:「ふーん。カレンも謎の人物の仲間入りってとこね。」


 そしてソフィアは、カレンからこの翼の効果などを聞いてさらに驚いている。


ソフィア:「本当に謎が多いわ。」


 今更の情報に龍太郎は退屈なので、強引に話題を変えた。


龍太郎:「そんなことよりさ。

 ここで3日も待つのか?

 誰か来るんじゃないか?」


ソフィア:「そうね。すぐに来るでしょうね。

 ゲートを通過したことはバレると思うから。

 だから、ここでは待たないわよ。

 私のよく行く良いところがあるのよ。

 ちょっとここで待っててね。

 事務所で食糧を取ってくるから。」


龍太郎:「食糧なら大量に持ってるぞ。」


ソフィア:「え?手ぶらじゃない?

 もしかして、マジックバッグ?

 でも、見当たらないわね。」


龍太郎:「あ!まあもういいか。

 それもスキルだよ。収納箱っていうスキルに荷物は詰め込んでるから。

 そこに食用肉と飲料水は入ってる。

 ほら、こんな感じ。」


 龍太郎は、収納箱に格納されている食用肉と飲料水を出して、ソフィアに手渡した。


ソフィア:「ワオ!クール!

 ちょっと頂いていいかしら?」


龍太郎:「もちろん、いいぞ。

 売れるほど大量にあるからな。」


 ソフィアは、食用肉と飲料水を頂くと、これまたビックリ驚いている。


ソフィア:「何これ!?

 ビックリするくらい美味しいわよ。」


龍太郎:「だろ?これもスキルな。」


ソフィア:「どんだけスキル持ってんの!」


龍太郎:「それは秘密だ。

 でも、いろいろ便利なスキルがあるぞ。」


ソフィア:「もう異次元ね……。

 じゃあ、食糧はお任せするわ。

 それじゃあ、行きましょうか!

 私について来て!」


 ソフィアは、真っ直ぐにある方向を目指して高速で走り出した。

 それに反応して、ソフィアの後を余裕でついて行く二人。


龍太郎:「なぁ。これ目的地までどれくらい時間かかるんだ?」


ソフィア:「まぁ、5、6時間くらい。」


龍太郎:「えー!?そんなに?結構遠いぞ。

 なら、もっと速く進んだ方がいいだろ?」

 

ソフィア:「もっと速くって、これでも十分に速いでしょ!?全力よ。

 私はこれ以上速く走れないわ。」


龍太郎:「りょ!」


 龍太郎は、何も言わずにおもむろにソフィアを抱えて空中に飛翔した。


ソフィア:「ちょ!何?」


龍太郎:「いいから、行き先を案内してくれ!

 こっちの方が速いから。

 カレン!付いて来れるよな!」


 これで移動時間がかなり短縮。

 あっという間に目的地到着!

 とあるダンジョンの前に降り立った。


ソフィア:「もう着いたわね。異次元よ。

 でも、空を飛ぶって、ものすごく気持ちよかったわ。快適な空の旅をお過ごししたわ。」


龍太郎:「飛行機の離陸の時のアナウンス!

 それで、目的地ってダンジョンかよ。」


ソフィア:「そうよ。3日間も身を隠すとなると、こういうところの方がいいでしょ?

 ここは近い割には上級ダンジョンだから、同時にレベルアップも出来るのよ。一石二鳥でしょ?

 それに一度、リュウタロの戦うところ見てみたかったのよ。」


カレン:「なるほど。確かにレベルアップ出来るのはいいですね。

 待機してるのも暇ですしね?

 ソフィアさん。ちょっといいですか。

 せっかくなんで、この辺りの地図をマップに登録しておきます。」


 カレンはマジックアイテムのホログラムマップを取り出して表示した。


ソフィア:「何それ?」


龍太郎:「レアアイテムだよ!」


カレン:「立体でマップ表示されるんです。

 ここがロサンゼルスゲートだよね?

 へぇ。そこから結構来たね。ここはなんて言うダンジョンなんですかね?」


ソフィア:「ここは、ゴルドダンジョンよ。

 上級だけど、リュウタロとカレンなら大丈夫よね?」


龍太郎:「たぶん、大丈夫だな。」


カレン:「はい、大丈夫だと思います。」


ソフィア:「それにしても、このマップって、すごく精密ね。この青く光ってるのって?」


カレン:「たぶん、ブルーキャッスルかな?」


ソフィア:「だよね?すごいね。」


龍太郎:「ここからは、結構近いな。

 ソフィアさんは行ったことあるのか?」


ソフィア:「ない。まだ早い。

 ブルーブラッズが全滅しかけたんだから、命は大事に。もっとレベルを上げなきゃね。

 でも、最近はレベルも全然上がらないんだけどね。」


カレン:「じゃあ、この3日間は3人でレベルアップ特訓ですね!」


龍太郎:「確かに、時間が有効に使えるから、3日間も暇じゃないな。

 ソフィアさん。ナイス!

 じゃあ、俺たちも肉食ってから、ダンジョンに突入するか!

 新しいダンジョン、楽しみだな!」



 ◇◇◇◇◇



 龍太郎、カレン、ソフィアの3人は、ゴルドダンジョンに突入した。

 第一階層にて魔物を討伐中。

 魔物は、いきなりのポリスマン。

 ただし、上位互換のデスポリスマンも苦にしない龍太郎とカレンは、相変わらずのスピードで圧倒している。

 ポリスマンの指から発射される鉄砲玉も難なく避けられるスピードを持っているので、上級モンスターにも関わらず、無傷で討伐を繰り返している。

 ただ、ソフィアの方も無傷で討伐している。

 ソフィアもフォースターなので、かなりの戦力の持ち主ではあるが、ポリスマンの鉄砲玉を避けられるスピードはない。

 では、何故に無傷なのか?

 不思議に思った龍太郎は、最初の討伐の際にソフィアに尋ねたのだった。


龍太郎:「なぁ。ソフィアさん。

 ポリスマンがソフィアさんにだけ攻撃する気がなさそうだけど。どういうこと?」


 ソフィアに対峙したポリスマンは、棒立ち状態でソフィアが攻撃するのを待っているように見えていた。実に奇妙な光景だった。


ソフィア:「これが私の戦い方。

 私はこうやってフォースターまでレベルを上げたのよ。」

 

 龍太郎もカレンも、最初は言っている意味が分からなかったが、ソフィアの説明を聞いて、そういう使い方もあるのかと感心していた。

 要するに、格上のモンスターには、監獄スキルを使って、戦う気力が無くなるまで殺しまくるのだとか。

 もちろん、監獄の中での話なので、実際に魔物が死ぬわけではないが、何回も繰り返し殺されることによって、いくら魔物でも精神が崩壊してしまうらしい。

 そして、精神崩壊の状況を確認した後に、監獄スキルを解除して、実際の魔物を討伐するといった、なんとも恐ろしい戦法を取っている。

 しかも、実際の世界での時間経過は一瞬であるため、複数の魔物と遭遇した場合でも、それを繰り返せば、大丈夫らしい。

 ただし、かなり格上の場合だが、監獄スキルが効かない魔物もいるらしく、まずは、新種に遭遇した場合には、スキルが効くかどうかの確認作業をする必要があるのだとか。


龍太郎:「そんな使い方があったのか!

 なるほどなぁ。恐ろしい戦法だな。」


カレン:「そうだよね……。

 ちょっと寒気がしたよ。」


ソフィア:「慣れれば、大したことないわよ。

 どうせ、討伐するんだから。」


カレン:「そうですけど、それって人間でも同じことが出来ますよね?」


ソフィア:「そうね。出来るわね。やったことはないけど。

 でも、この戦法って、リュウタロも出来ちゃうのよね。」


龍太郎:「そっか。考えたことなかったな。」


ソフィア:「それって贅沢よ。

 普通はスキルって一つしか無いわけだから、それをどう有効に使うかを考えてるのよ。」


龍太郎:「確かにな。スキルの使い方か。

 俺もいろいろ、試していくか。」


カレン:「私の場合は難しいかも。」


龍太郎:「でも、ソフィアさんの強さの秘密が分かったよ。

 てっきり、パワーレベリングだと思ってたからさ。」


ソフィア:「まあ、そう思ってても不思議じゃないかもね。私って協会役員のイメージが強いから。」


龍太郎:「アメリカって層が厚いんだなぁ。

 俺たちのクランも底上げしないとな。」


 それからも、レベルアップ特訓と称して、ゴルドダンジョンで魔物を狩りまくって行く訳だが、3日間という限定期間の活動のため、階層は変えずに継続していくこととした。

 この時、ソフィアはこのメンバーによる討伐がよほど効率的で気に入ったのか、何か思うところがあったようだ。


 そして、その後も順調に狩りを続けていく3人であったが、この後、思わぬ事件が発生してしまうことになるのだった……。


 ◇◇◇◇◇

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