第157話 龍太郎包囲網2

 ◇◇◇◇◇


 イベント会場を離れた龍太郎は、急いでダンジョンゲートに辿り着くと、すでにカレンが先に到着していた。

 ダンジョンゲートの周りは、さほど騒がしくはなっていない。

 こちらまで情報は来ていないようだった。


カレン:「龍太郎!こっち!」


 カレンは、ダンジョンゲートに向かう手前の建物の陰に身を潜めていた。


龍太郎:「おぅ!もう来てたか。」


 龍太郎もカレンの声に従って、建物の陰に身を潜めた。二人だと結構狭い。


カレン:「ゲートの前には、見張りが立ってるから。」


龍太郎:「ああ、そうみたいだな。

 カレンは大丈夫だったのか?」


カレン:「もう大変だったよ。

 でも、うまく撒いてきたから大丈ブイ!

 で、何があったの?」


 龍太郎は、イベント会場であった出来事をカレンに一通り話した。


カレン:「うわー!もう、何が何だかわからないじゃん?どうなってんだろ?

 そうすると、事情を知ってて聞けそうなのは、ソフィアさんじゃない?」


龍太郎:「そっか。ソフィアさんかぁ。

 ちょっと、聞いてみるか。」


 龍太郎は、ソフィアに伝心を送った。

 何処にいるかわからないソフィアと会話するためには仕方がない。


龍太郎:『ソフィアさん!聞こえるか?』


ソフィア:『え?何?誰?』


龍太郎:『龍太郎だ。驚かせて悪い。』


ソフィア:『おー!リュウタロ!これ何?

 頭の中で声が聞こえるんだけど……?』


龍太郎:『そういうスキルなんだ。』


ソフィア:『ワオ!クール!

 いろいろ持ってるんだね。』


龍太郎:『ん?ちょっと聞きたいことがあるんだけど。』


ソフィア:『あ!そうだよね?

 ごめんね。帝国軍のことだよね?』


龍太郎:『ああ、どういうことなんだ?』


ソフィア:『実は私も知らなかったんだけど、ハワードが指示したみたいなのよ。

 世界のトップランカーの中で唯一スキルが不明なのがリュウタロなのよね。

 それにものすごい勢いでレベルアップしてるじゃない?その秘密を知りたがってるのね。

 ここまでは、私もそのために動いていたんだけどね。でも、失敗してるんだけど。

 それで、ハワードは強引にでもリュウタロの秘密を研究所で調べようとしてたみたい。

 今回のイベントはそのためのものだったのよ。それで、模擬戦と称してグリードを使ってリュウタロを拘束しようとしたって訳。

 ただ、これも失敗したじゃない?

 それで、さらに強硬手段に出たみたいなの。』


龍太郎:『なるほど。そういうことかよ。

 ただ、生死を問わずって言ってたぞ!

 無茶苦茶するよなぁ。マジで!』


ソフィア:『それはハワードの単独ね。

 あいつ、本当に頭おかしいから。

 それで、そっちは大丈夫なの?

 今も軍が捜索してるみたいなんだけど。』


 無言で会話している内容が気になるのか、カレンが割り込んできた。


カレン:「ねぇ?今、伝心で会話してるんだよね?私も入れないの?」


龍太郎:『ソフィアさん。ちょっと待ってくれ!』


ソフィア:『ええ。』


 龍太郎も伝心スキルの応用はよくわかっていない。


龍太郎:「出来るのかなぁ?

 ちょっとやってみっか。

 うーんと……あ!出来たな。

 なるほど。三者伝心可能ってことか。

 試したことなかったからな。

 これだと便利だな。

 今度からそうしようっと。」


カレン:「そうだね!言ってみるもんだ。」


龍太郎:『ソフィアさん。待たせて悪い。

 今、カレンも入ったから。』


ソフィア:『カレン!無事だった?』


カレン:『うん。私は大丈夫だよ。

 サラさんって軍人さんに捕まったんだけど、逃げて来た。今は龍太郎と一緒だよ。』


ソフィア:『そう。それは良かったわ。』


龍太郎:『それで、ソフィアさんの方でなんとかならないのか?

 俺たち、もう帰りたいんだけど。』


ソフィア:『それがね。こっちもいろいろ手を尽くしてるんだけど、ちょっと難しそうね。

 ハワードだけなら、余裕でなんとかするんだけど、今回の件はどうも大統領のトランパスも加わっているみたいなのよ。』


龍太郎:『大統領もグルかよ?なんでぇ?』


ソフィア:『それほどまでにリュウタロの秘密を知りたいってこと。

 なんせ、アメリカファーストの人だから。』


龍太郎:『もう!アメリカ無理!

 じゃあ、中華の飛行機で帰ることは可能か?

 ユエさんが乗ってもいいって言ってたぞ。』


ソフィア:『空港も難しいわね。

 飛行機に乗り込んで終えば、いくらリュウタロが乗っているにしても、チャイナには手は出せないでしょうけど、そこまで行き着けるかどうかよね?』


龍太郎:『それはなんとかなるんじゃないか?

 帝国軍だったら、手を出さずに無傷で眠らせることが可能だし。』


ソフィア:『それって例の会場でやったやつでしょ?あれ何なの?』


龍太郎:『えーー!?

 あれ、見られてたのか?』


ソフィア:『ええ。バッチリ見てたわよ。

 ドローンで撮影してたでしょ?

 中継は切られてたから、全世界配信はされてないけど、協会関係者のモニターには継続して映っていたから。』


龍太郎:『そうなのか……。』


ソフィア:『すでにバレてるわよ。

 リュウタロは、スキルを複数持っているんじゃないかって。』


龍太郎:『終わた……。』


カレン:『大丈夫だよ。もう、少しくらい知られても問題ないんじゃない?』


ソフィア:『そうよ。それにリュウタロの秘密がスキルだけなんだったら、他に使える有効な手段があるわけじゃないんだから。』


龍太郎:『そうなのか?』


カレン:『そうだよ。

 でもさ。生死問わずってところが気になるんだけど。

 死んだら、秘密もわかんないじゃない?』


ソフィア:『それは、ハワードが馬鹿なだけだから。そこは説得するからね。

 後先考えずに感情論でやっちゃってるから、なんとかなると思うわ。

 問題はブルーブラッズね。』


龍太郎:『えー!?なんでぇ?』


ソフィア:『グリードが一撃でやられたせいかしら?

 彼らの性格は、良くも悪くもグリードに似てるのよ。

 そういうメンバーを集めてるから。

 今もリュウタロをターゲットに報復を考えてると思うわ。』


カレン:『ブルーブラッズって、世界最高峰のクランですよね?』


ソフィア:『ええ、そうよ。

 グリードを慕って集まったメンバー。

 それも上位ランカーだけが登録を許可されたクランよ。全員がスリースター以上。

 特にクランの幹部と呼ばれているメンバーは、特殊スキル持ちなのよ。

 あなたたちなら、帝国軍なら大丈夫だと思うけど、ブルーブラッズは同じエクスプローラですからね。

 しかも、個体レベルも軒並み高いわ。

 さっきの空港も危ないって言った件は、それが関係してるのよ。

 彼らのほとんどが、空港であなたたちを待ち伏せしているらしいの。』


龍太郎:『望むところだぜ〜!

 と言いたいところだけど、ちょっと嫌だな。』


カレン:『やめといた方がいいと思う。』


ソフィア:『そうよ。クラン同士が衝突したら、怪我どころじゃ済まないわ。

 下手をすれば、誰かが死ぬことになるのよ。』


龍太郎:『じゃあ、どうすればいいんだ?

 もう、分からん!』


ソフィア:『ちょっと待ってて。』


 ソフィアは、一本の電話を掛けた。


 プルプル。


ソフィア:「WEAのソフィアだけど、サエを出してちょうだい!」


 てんてろてろりん!テンテロテロリン!


野神:『ソフィア!良かったわ。こちらからも電話しようとしてたところなのよ!

 全く、WEAの連中は、何もないの一点張りなのよ!今、そっちはどうなってるのよ?

 天堂くんと夢咲さんは?』


ソフィア:「慌てないで!今、話すから。」


 かくかくしかじか。


 ソフィアは、龍太郎とカレンに紗英と電話で話していることを伝えて、紗英には今、こちらで起こっている内容を詳しく説明した。

 そして、今後どうするかを話しているが……。


 ◇◇◇◇◇

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