第156話 龍太郎包囲網1
◇◇◇◇◇
イベント会場では、スペシャルエキジビジョンマッチで龍太郎が勝利した後、ハワードの指示によってプランBが開始されていた。
一方、カレンのいる待機場所でも、異変が起きていた。周りが慌ただしい。
カレンは、そばに居た係員に会場の事情を確認していた。
カレン:「会場の中継はどうなったんですか?
龍太郎はどうなったんですか?」
係員:「私たちにもわかりません!」
何故か、逆ギレされた……。
そこに帝国軍の女性将校であるサラという人物が複数の軍人を連れて、カレンに声を掛けた。軍服というものは、それだけで威圧感がある。サラの胸には沢山の勲章がぶら下がっており、軍の幹部であることが一目でわかった。
サラ:「ミスユメサキ。一緒に同行願います。」
カレン:「え?どういうことですか?
どこに行くんですか?
今、会場はどうなってるんですか?」
サラ:「これから、私たちとともにこの敷地内にある協会の研究所に行ってもらいます。」
カレン:「龍太郎はどうしたんですか?」
サラ:「研究所で彼と合流の予定です。
大人しくついて来てください。」
カレン:「そうなんですね……。
わかりました。」
カレンは、龍太郎と合流出来ると分かって、大人しく帝国軍将校サラの指示に従い、一緒に研究所に向かおうとしていた。
第六感があまり良くない感覚を示しているのだが、早く龍太郎と合流したかった。
◇◇◇◇◇
イベント会場を取り囲む帝国軍の責任者である将校ジョンに、軍司令部から連絡が入った。
ジョン:「プランBに変更?ラジャ!
我々で研究所に連行ですね?
え!?デッドオアアライブ?
まさか…生死問わずですか?
彼は世界のトップエクスプローラですよ。
そんなことが許されるんですか?
うっ……イエス。分かりました。」
それをすぐそばで聞いていたユエが呆れた表情で見ていた。
ユエ:『生死問わずに連行ですって?
呆れたわ。アメリカは何を考えてるの?』
アメリカ代表であるグリードが、弱小国ジャパンの代表ごときに一撃で失神させられてしまった事実は、プライドの高いハワードにとっては、これ以上ない屈辱だったようだ。
万が一にも、やられることはないと思っていたのだから、なおさらだった。
そうだとしても、生死問わずの指示は、短絡過ぎる判断と言わざるを得ない。
よほど、日本という国を過小評価しているのだろう。
帝国軍将校ジョンが、指示に従い、マイクを持って龍太郎に呼びかける。
ジョン:「アー、アー。ミスターテンドウ!
私は帝国軍陸軍少将のジョン・コナーズだ。
これから、我々に同行してもらう。
抵抗せず、大人しく従ってくれ!」
龍太郎もマイクを通して、それに答えた。
龍太郎:「おい!なぜ、帝国軍はこっちに銃を向けてるんだよ!?」
ジョン:「抵抗しなければ、何もしない!」
それを見ていたユエが、将校のマイクを瞬時に奪って、龍太郎に話しかけた。
ジョン:「お前!何をする!?」
ユエ:「あなたは黙ってなさい!
リュウタロウ!ワンユエよ。
あなた、生死問わずで軍に連行されるらしいわよ。気をつけなさい。」
龍太郎:「え?生死問わずってなんだよ!?」
ジョン:「貴様!余計なことを言うな!
貴様も連行するぞ!」
ユエ:「連行ですって?笑わせるじゃない?
無能者が束になってかかって来ても、私は捕まえられないわよ。兵隊さん。
それにいいのかしら?
アメリカは、我が中華帝国軍と事を構えるってことよね?その覚悟はあるのね?」
ジョン:「うっ……いや。そういうつもりでは。」
ユエ:「それに、あなたたち無能者にリュウタロウを捕らえることは出来ないわよ。
ねぇ。リュウタロウ?」
龍太郎:「ああ。無理だな。俺たちは日本に帰るから、すぐに飛行機を準備してくれ!」
ユエは、奪ったマイクをジョンに返して、それに答えるように促した。
ジョン:「すまないが、お前だけは捕えるよう指示が出ている。大人しく同行してくれ。
すでにミスユメサキも指示に従っている。」
龍太郎:「はぁ!?お前!ざけんな!
カレンに何もしてないだろうな!?」
カレンの名前を出されて、怒りマックス。
ジョン:「それはお前次第だ!」
カッチーン!堪忍袋の緒が切れまくり!
龍太郎:「お前!カレンになんかあったらブチ殺すからな!」
龍太郎は、帝国軍を睨みで牽制しながら、すぐにカレンに伝心を送った。
帝国軍も周りを取り囲んで、緊張感の中、臨戦体制を取っている。
その場が一食触発の事態に移行した。
龍太郎:『カレン!聞こえるか?』
カレン:『あ!龍太郎。聞こえるよ。』
龍太郎:『良かった。何もされてないか?
今、どこにいる?』
カレン:『うん。大丈夫だよ。
待機室を出て、研究所に向かってるところ。
龍太郎も来るんでしょ?』
龍太郎:『いや。帝国軍がなんか企んでるみたいだ。研究所には行かないほうがいい。
そっちにも帝国軍がいるんだろ?』
カレン:『うん。今、サラって偉い軍人さんについて行ってる。』
龍太郎:『OK。じゃあ、そうだな。
どこか場所を決めて落ち合おう。
どこがいいかな?』
カレン:『ここと会場の間だとダンジョンゲートの前がいいんじゃない?』
龍太郎:『ああ、じゃあ、そうしよう。
そいつら撒いて来れるか?』
カレン:『うん。頑張ってみる。』
龍太郎:『気をつけろよ。こっちでは生死を問わずに連行しろって指示が出てるみたいだからな。』
カレン:『えぇ?生死を問わずって!?
確かにこっちの軍人さんと話した時も、第六感が良くなかったんだよ。そういうことか。
なら、ついて行っちゃダメだね。』
龍太郎:『ああ、飴ちゃんもらっても、ついて行ったらダメだぞ。
それじゃあ、俺も向かうから、また後で。』
龍太郎は、カレンとの伝心を解除したタイミングで、一人の兵士がフライングして龍太郎に向けて射撃!功を焦ったか?
弾丸は真っ直ぐ、龍太郎の頭を狙う。
龍太郎!マトリックスのネオの避け方!
それを機に、合図が出たと勘違いしたのか、龍太郎の周りを囲む兵士たちから一斉射撃が始まった。
龍太郎:『んにゃろう!エクスプローラだと思って容赦ねえなぁ!本当に殺す気かよ!』
龍太郎は、飛翔スキルを使って、一瞬で全体が見通せるはるか上空にジャンプ!
龍太郎!マトリックスのトリニティの舞!
龍太郎:『悪いが、お前ら全員眠ってもらうからな!!
怒りの超覇気マックスじゃー!!』
ブオーーーーン!
龍太郎の超覇気で、周りを囲んでいた帝国軍が一人残らず、一瞬で気絶してバタバタとその場に倒れていった。超覇気すごい。
龍太郎:『ふふふ。一般人には耐えられないだろう?
俺を甘く見ちゃいけねぇよ。帝国軍。』
そして、飛んでいたドローンも操縦士が気絶したことによって、次々に墜落していった。
落ちて来たドローンは、一つずつ念入りに踏みつけて破壊しておく。
イベント会場の周りで気絶せずに立っていたのは、ユエとスーラジの二人。
その様子をあっけに取られ見ていた。
そして、龍太郎はユエとスーラジのいる場所付近に近づいていった。
龍太郎:「ユエさん。スーラジさん。
出来れば、お前たちとは争いたくないんだが……。」
ユエ:「ええ。もちろん、争うつもりはないわ。
無能者だけで捕まえようだなんて、アメリカは馬鹿をやったわね。」
スーラジ:「俺も興味はねぇ。」
龍太郎:「助かる。じゃあ、俺はもう行くわ。」
ユエ:「待って!リュウタロウ。
これはあなたのスキルなの?」
龍太郎:「え?うーん。
見なかったことにしてもらえる?」
ユエ:「そうはいかないかもね。
でも、あなたとは協力していくつもりよ。
これは、中華帝国の総意と受け取ってもらっても構わないわ。」
スーラジ:「俺は興味ねぇよ。
ただ、敵対するつもりもねぇ。」
龍太郎:「そっか。サンキュ!
二人ともいい奴だな。」
ユエ:「で、これからどうするの?」
龍太郎:「一緒に来てるカレンと合流する予定だけど。そっからはまだ決めてない。」
ユエ:「あなたたち、アメリカの飛行機で来たのよね?どうやって帰国するかが問題よね?」
龍太郎:「え?お前たちは違うのか?」
ユエ:「もちろん。
断って自国の飛行機で来たわよ。
我々はアメリカとは友好関係にはないから。
ジャパンも考え直した方がいいと思うけど。」
スーラジ:「同じく、自国の飛行機だな。
ジャパンはその辺が甘いんだよ。」
龍太郎:「そうなのか?困ったな。」
ユエ:「私たちの飛行機に同乗すれば?
ジャパン経由にするくらいは大丈夫だと思うけど。もちろん、手続きが必要になるけどね。」
龍太郎:「わかった。ありがとう。
カレンと相談してみるよ。
じゃあ、カレンが待ってるからもう行くよ。」
ユエ:「ええ、気をつけてね。
こうなったら、アメリカは何をしてくるかわからないから。」
ユエとスーラジに見送られ、龍太郎はダンジョンゲートのある方向に去っていった。
◇◇◇◇◇
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