第152話 世界称号1

 ◇◇◇◇◇


 クランハウスAー103にて。


 龍太郎がレベル50に到達して数日後に急に紗英から連絡があった。

 そして、今、目の前に紗英がいる。


龍太郎:「で、話って何なんだ?」


野神:「それなんだけど、天堂くんが世界で4番目のファイブスターに登録されたタイミングで、WEAから正式通達が来たのよ。

 今回、WEA主催でファイブスター到達者の4名それぞれに対して、正式に世界称号を与えることになったらしいのよ。

 そんなの今までなかったのにね。

 それで、授与式イベントを開催するので、天堂くんに参加するよう要請があったわ。

 場所は、移転したWEA本部のあるアメリカのロサンゼルスよ。

 ブルーキャッスルがあるロサンゼルスゲートの敷地内ね。

 例の世界トップクランのブルーブラッズの本拠地でもあるわ。」


龍太郎:「へぇ。世界称号って何?」


野神:「詳しくは書いてないからわからないわ。」


 覚醒4人娘は、世界称号と聞いて、驚きと喜びを表していたが、カレンの第六感は違う感覚を示していた。


カレン:「それってすごく怪しくないですか?

 わざわざ、龍太郎を呼び出すなんて。」


野神:「そうなのよね。

 タイミングも今更って感じだしね?」

 

カレン:「龍太郎、絶対に行かない方がいいよ。」


野神:「それはそうなんだけど、そうもいかないのよ。」


カレン:「どうしてですか?」


野神:「このあと、全世界に向けてこのイベントについて、WEAから大々的に発表するらしいの。

 すでに他の3人は参加表明をしているみたいで、断るには理由が必要になるわ。

 それに不参加を強行した場合の影響が全く読めないのよ。」


龍太郎:「行くしかないなら、行くよ。

 別になんかされる訳じゃないだろ?」


野神:「そう言ってもらえると助かるわ。

 今や日本は世界から孤立してるから、あまり波風を立てたくないのよ。」


カレン:「龍太郎、大丈夫?

 なんか不安なんだけど。」


龍太郎:「ああ、大丈夫だ。仕方ない。

 それで、いつなんだ?」


野神:「5月1日よ。今から1週間後ね。

 結構急なのよ。たぶん、出発はもっと早いわね。」


龍太郎:「ああ、分かった。それで、紗英さんがついて来てくれるってことか?」


野神:「行きたいのはやまやまなんだけど、私も日本を離れる訳には行かないのよ。

 それに同行者は1名って指定があってね。

 だから、協会の優秀な人間をアサインするから、決まったらまた連絡するわ。」


カレン:「あのー。私が行ってもいいですか?

 ちょっと心配なんで。」


野神:「それは……。一応、同行者は協会の人間ってことになってるのよ。」


カレン:「私も一応、協会の人間ってことになってると思うんですけど。」


野神:「あ!そうだったわね?

 それなら、そうしましょうか?」


カレン:「え?いいんですか!?」


野神:「もちろん、グッドアイデアよ。

 誰をアサインするか迷ってたのよ。

 けど、夢咲さんは大丈夫なの?」


カレン:「はい、任せてください!」


野神:「それじゃあ、天堂くんは称号授与式イベントの参加要請を受理、その同行者は日本探検者協会副会長秘書の夢咲さんということで返答しておくわ。

 2人ともありがとうね。

 詳細は追って連絡するわね。

 よろしくお願いしますね。」


カレン:「はい、分かりました。」


龍太郎:「ああ、わかった。」


 謎の世界称号授与式イベントに参加することになった龍太郎とカレン。

 カレンの第六感はあまり良くないのだが、一体どうなることやら……。



 ◇◇◇◇◇



 WEA本部内会長室にて。


秘書:「会長。たった今、ジャパンのミスノガミから世界称号授与式の参加要請受諾の連絡が入りました。」


ハワード:「おお、そうか。」


幹部:「とりあえず、呼び出すことには成功しましたな。」


ハワード:「テンドウリュウタロウ。

 これであやつのスキルが何なのかを見極めるチャンスが来たということだな。」


幹部:「ええ。主要なエクスプローラの中で唯一スキル不明な存在ですからね。

 ソフィアを持ってしても、スキルが判明しないなぞ、我が国の脅威ですからな。」


 すでに他のファイブスターもスキルは判明済み。その他の上位エクスプローラのスキルも軒並み把握している。


ハワード:「今回、ヂューガ副会長は不参加だったな。」


幹部:「はい。中華帝国内から離れる訳にはいかないとのこと。

 それに失礼なことに、我々だけで勝手にやっておけと言ってましたな。

 ただ、ユエワンは丁重に扱えと。

 万が一、問題が発生した場合は、全面戦争になるつもりで対応するようにと。」


ハワード:「相変わらず、生意気な女だ。

 まあ良かろう。今、中華とインダスとは事を荒立てる必要もないからな。

 狙いはジャパンだからな。

 あの弱小国なら、万が一があっても、何の問題もない。むしろ、ジャパンを叩く大義名分が出来れば、こちらにとっては好都合というものだよ。なあ、ワトソンくん。」


幹部:「私、ワトソンではないですが……。」


ハワード:「お前、ノリが悪いな。

 まあいい。研究所には準備をしておくように言っておけよ。くれぐれもソフィアにはバレるなよ。」


幹部:「承知しました。」



 ◇◇◇◇◇



 それから数日後、WEA専用チャーター機が厚木海軍飛行場に到着。

 龍太郎の送迎のために準備されたものだ。


 現在、龍太郎とカレンは、JEA専用車で渋谷から厚木基地に向かっていた。

 今回行われるイベントは、全世界に大々的に発表されていたため、龍太郎たちの乗る専用車の沿道には、その姿を一目見ようと多くの国民が集まっていた。

 また、各ネット放送のカメラマンや報道員もその様子を中継している。


カレン:「すごい人だね?」


龍太郎:「俺たちってそんなに有名人になってたのか?あんまり、外に出ないから気付かなかったな。」


 助手席に座る紗英が、呆れた様子で答えた。


野神:「もちろん、そうよ。

 夢咲さんは、元々人気があったけど、それより今回の主役は天堂くんだもの。

 今や日本の序列1位、世界の序列4位、そしてエクスプローラ最高峰のファイブスター到達者ですからね。

 日本はおろか、世界が注目してるわよ。

 自覚なかったの?」


龍太郎:「そうなのか?

 ネットとかあまり見ないから。

 俺たち、レベルアップばっかりしてたからな。

 カレンは知ってた?」


カレン:「いくら、忙しいからって知ってるわよ。ネットを見ないのは龍太郎だけでしょ?

 それに、普通気づくと思うんだけど。

 日本で1位なんだから。あの伝説のお千代さんを超えてるんだよ。」


龍太郎:「おお、そうなのか?

 俺って有名人なんだな。」


カレン:「今更だけど……。」


野神:「それに今回の世界称号の件で天堂くんに対する否定的なコメントも減ったしね。

 世界の天堂になってるわよ。」


龍太郎:「そっか。アンチが減ってるってことだな。よっしゃ!モテ期到来だー!」


カレン:「何、モテたいの?」


龍太郎:「そりゃ、モテたいだろ。

 カレンと違って、今までモテたこと一回も無いんだから。」


カレン:「なんでよ!私がいるんだからモテなくていいんじゃない!?」


龍太郎:「え?んー。まあ、確かにそっか。

 今はそんなことより、レベルアップが優先だしな。」


カレン:「え?あ!うん。そうだよ……。」


 ここまで言っても分からんのかい!?と思うカレンだったが、紗英がいるので、これ以上突っ込むことは出来ず。


 紗英の方も、まだ付き合ってないんかい!?と突っ込みたかったが、当人同士の問題なので、揶揄うのはやめておいた。


 またまた、残念な龍太郎であった。


 そして、道中は何事もなく厚木基地に到着。

 龍太郎たちは、出発するために飛行場に入った。そこには、AWAの職員としての立場でソフィアが職員の先頭で待っていた。


ソフィア:「ハイ!リュウタロ!」


龍太郎:「お、おぅ。」


カレン:「ソフィアさん!?」


野神:「あら。ソフィアが来てくれたの?」


ソフィア:「もちろん!リュウタロのお世話は私がすると決めてますから。

 今回はカレンも一緒なんですってね。

 よろしく!」


カレン:「はぁ、よろしくお願いします。」


 カレンは、少し複雑な心境であったが、第六感的には悪い感覚を示していない。


ソフィア:「それじゃあ、もう出発するからね。リュウタロとカレンは乗ってクダサイ。」


野神:「じゃあ、ソフィア。よろしくね。

 天堂くん、夢咲さん。気をつけて行って来て。」


ソフィア:「サエ。マカセナサイ。」


龍太郎:「ああ、行ってくる。」


カレン:「行ってきます。」


 ソフィアの先導で、龍太郎とカレンはWEA専用チャーター機に乗り込み、アメリカ、ロサンゼルスに向け旅立って行った。


 ◇◇◇◇◇

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