第127話 グリード・キング
◇◇◇◇◇
各キャッスル討伐に向けて、あるいはゲートの防衛のために、それぞれの国のエクスプローラはレベルアップに励んでいる。
EG5の上位エクスプローラもセカンドインパクト直前のブルーキャッスルでの惨劇から学習し、現状のレベルではキャッスル討伐は危険と判断して、長期戦に切り替えている。
AEA本部会長室にて。
ハワードが、ソフィア同席の元、ブルーブラッズ代表であるグリード・キングを呼び出していた。グリードは、ハワードの呼び出しには答えたことがないが、ソフィアから声が掛かるとやって来る。
ハワード:「グリード。よく来たな。
レベルアップは順調か?」
グリード:「順調に決まってんだろ。ボケ。
今日はお前に会いに来たわけじゃねぇ。」
ハワード:「グヌ。相変わらず口が悪いな。
私は今やアメリカ連合の副総司令だぞ。
お前がキング候補でなかったら、潰しているところだぞ。」
グリード:「おぅ。潰してみやがれ。
お前なんぞ、俺がその気になりゃ一捻りだぜ。
黙ってろ!クソハゲが。」
ハワード:「グヌ。」
ソフィア:「グリード。まあ、落ち着いてよね。」
グリード:「ああ、ソフィア。
それで、話ってなんだ?」
ソフィア:「それがね。最近の情報でキャッスルにも格付けがあることが分かったのよ。」
グリード:「ほぅ。格付けか。
そうするとブルーは最上位なんだろうな?」
ソフィア:「いいえ。最上位はイエローよ。」
グリード:「はぁ!?イエロー?
ジャパンのイエローか?」
ソフィア:「そうよ。ジャパンよ。」
グリード:「ブルーは?」
ソフィア:「第2キャッスルだね。
格付けの順位は、イエロー、ブルー、レッド、ホワイト、ブラックの順だよ。」
この情報は、龍太郎がブルーノから聞いた話だ。そして、この情報元は紗英だった。
グリード:「第2キャッスルか。」
ソフィア:「イエス!それでね。このキャッスルの格は難易度に相当するらしいの。
要するに、格の高いキャッスルほど、貴族魔人の格が上がる。すなわち、個体強度レベルが高いってことを意味するのよね。
当然、その周囲の平民魔人も格に合わせて精鋭を揃えているでしょうねぇ。」
グリード:「ああ。ブルーキャッスルはヤベェよ。特に魔人はヤベェ。俺も危なかった。セカンドインパクトが無けりゃどうなってたか。
まあ、次はやり返してやるけどな。」
ソフィア:「オー!ナイス!
そこで、まずはブルーブラッズの精鋭メンバーでホワイトキャッスル調査に向かってもらうって計画なんだけど、どうする?
もちろん、討伐ってなると少し先にはなると思うけど、そろそろ派遣しないといけない感じなんだよね。」
グリード:「ホワイトは第4キャッスルか。
それはクランに対する依頼ってことでいいんだな?」
ソフィア:「イエス。もちろん、報酬は出るわよん。ご心配なく。」
グリード:「オーケー。じゃあ、報酬プラス条件だ。ソフィアが同行するなら承諾するぞ。
もちろん、例のアレ付きでな!」
ソフィア:「そうねぇ。アレねぇ。
アレは別料金になるけどいい?」
グリード:「もちろんだ。いいのか?」
ソフィア:「それはいいわよん。
グリードも好きよねぇ。」
グリード:「じゃあ、決まりだな!」
ソフィア:「そうねぇ。ただ、一緒に行ってあげてもいいんだけどね。
このあと、私はジャパンに行くのよねぇ。
少し長期で休みが取れたんでさ。」
グリード:「ジャパンに?何しに行くんだ?」
ソフィア:「プライベートよ。ある人に会いに行くのよ。楽しみだわ〜!」
グリード:「おい!誰だよ?まさか恋人か?」
ソフィア:「ふふふ。違うわよ。
ジャパンのキング候補よ。」
グリード:「なら、ホクトかナントだな。
お前、あいつらとも面識あったのかよ?
なら、俺もジャパンに同行するぜ。
そのあとにドイツだ。ならいいだろ?」
ソフィア:「私はいいけど、そうするとそっちの方もビジネスってことになるわねぇ?
ハワード。私も同行するけどいい?」
ハワード:「気に入らんが、仕方がないな。
グリードよ。ちゃんとソフィアを守るんだぞ。分かったな。」
グリード:「なんでお前はいつも上から目線なんだよ。ムカつくぜ。」
ソフィア:「じゃあ、決まりね。
久々の探検だから、準備しないとね。
それじゃあ、行きましょうかね。」
ハワード:「待った!ソフィア。
私も別料金で頼めるか?」
ソフィア:「もう。仕方ないわね。」
グリード:「こら!クソハゲ!調子に乗ってんじゃねえぞ!」
ハワード:「お前の話は済んだ。もう帰れ!」
グリード:「お前。そのうち、潰してやるからな!楽しみに待っとけよ。」
◇◇◇◇◇
日本探検者協会本部特別応接室にて。
野神:「急に呼び出してごめんね。」
龍太郎とカレンが呼び出されていた。
カレン:「いえ、これも協会副会長の仕事ということなので仕方ないです。」
協会副会長の仕事というのは嘘です。
龍太郎:「で、今日は何?」
野神:「なんかねぇ。またソフィアなのよ。
一応、名目は顔合わせってことらしいんだけど、たぶん、天堂くん目当てね。
彼女って天堂くんにご執心みたいだから。
理由はよくわからないけどね。」
カレン:「え?そうなんですか?」
野神:「あ!心配しなくても大丈夫よ。
たぶん、恋愛感情とかじゃ無さそうだから。
ライバルにはならないわよ。」
カレン:「ちょ!野神さん!」
野神:「ふふふ。いいわね。」
カレンは、紗英の意地悪に赤面している。
が、龍太郎はソフィアの件がバレるんじゃないかとそれどころではない。
ひたすら、無言を突き通す。
カレン:「えーっと。それで顔合わせってソフィアさんじゃないですよね?誰とですか?」
野神:「それがね。理由はよくわからないんだけど、グリード・キングらしいのよ。」
カレン:「えーーーーー!なんで?」
龍太郎:「ん?それ誰だっけ?有名人?」
カレン:「アメリカのエクスプローラで世界トップランカーのあのグリード・キングだよ!
世界で3人しかいないファイブスターの1人だよ。超有名だよ。」
野神:「そうなの。その彼がプライベートで来日していて、天堂くんに会いに来たって訳。」
龍太郎:「えーー!なんで?
少し前ならスキルゲッチュでラッキーって感じだったけど、今はメリットないし会いたくないなぁ。
それってキャンセルしちゃダメか?」
野神:「ダメよ。今、アメリカとはものすごく微妙な関係を保ってるのよ。
だから、これは副会長としてのお仕事。強制。キャンセル不可。」
龍太郎:「もう!なんか、副会長って名前だけって言ってたと思うんだけど!」
野神:「ダメ。強制よ。」
カレン:「はい、秘書が許可します。」
龍太郎:「もう!分かったよ。」
野神:「いい子ね。基本座ってるだけでいいから。それじゃあ、この通訳イヤホンを付けて、先方が来るまでここで待っててくれるかしら。
私は少し退席するわね。」
よくわからないうちに、世界一のエクスプローラであるグリード・キングとの面会が決定した龍太郎であった。
カレンは秘書としての仕事をこなした。
◇◇◇◇◇
急遽、来日したグリードとソフィアは、最上級ホテルのチェックインだけ済ませると、その足で日本探検者協会本部のある渋谷に向けて専用のハイヤーを飛ばした。
ブルーブラッズの残りの精鋭メンバーは、直行便で先にベルリンに向かうらしい。
なので、今回、来日したのは、グリードとソフィアのみ。もちろん、グリード専用の自家用ジェットである。
世界トップランカーの来日とあって、到着した空港は、メディアが殺到していた。
ただし、今回の来日はプライベートということで、正式な訪問ではなく、イベント等は一切なしということで通知されていた。
世界トップランカー、謎の来日!
という見出しで、各メディアやネットニュースが大きく取り上げている。
世界的に見ても、この行動の意味を掴もうと、各国の情報網が一斉に動き出した。
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