第118話 ミズシマダンジョン6
◇◇◇◇◇
ミズシマダンジョン第一階層の隠し部屋。
ネオ女子たちに内緒の超覇気で、ホブゴブリンズの大量ボーナスステージに突入中。
首を狩っていくだけで討伐可能な状態で、先ほどまで死にかけだったメンバーたちも息を吹き返し、ひたすらモンスターコアを掻っ攫っていく。
カレン:「すごい数だよね?」
美紅:「ラキラキ!」
玲奈:「大漁!」
亜実花:「全部、気絶してるよ!」
詩音:「なんでなんだろうね?」
華那:「豪運ってすごいね。」
広大な部屋一面に広がったホブゴブリンズを全て討伐したメンバーは、その数に驚いていた。
狩り終えた時には、清々しい疲労感に充実感を覚えていた。
そして、みんなで隠し部屋の隅っこで、龍太郎特製水を取り出して、一時休憩中。
カレン:「私、レベルアップしたよ。
みんなはどう?」
美紅:「私もレベルアップしました!
これでレベル10!目標達成!」
華那:「うん。私も。でね。
なんと!なんと!スキルが覚醒しました!
わー!パチパチ!」
カレン:「え?ほんと!やったね!」
華那:「ありがとう!みんなは?」
詩音:「私もだよ!やっと覚醒来た!」
亜実花:「うんうん。私も覚醒した!
これでスキル持ちだよ〜。嬉しい!」
華那:「ほんと。頑張ったよね!って……。
あれ?玲奈だけまだなの?」
みんなで喜んでいる横で、玲奈だけがしょんぼりしている。
詩音:「そっか〜。でもさ。たぶんレベル10で覚醒することがわかったから、玲奈もすぐだよ。そんなに落ち込むなって。」
華那:「そうそう。一番の年長者でしょ。
しっかりしなよ。」
みんなで落ち込んでいる玲奈を慰めていた。
すると、今まで落ち込んでいた玲奈が急に顔を上げてニンマリ。
玲奈:「うっそー。レベルアップしました!
覚醒もしました〜!みんな騙された?」
華那:「もう!慰めて損したよ〜。」
亜実花:「そうそう。私たちの心配返せ!」
詩音:「アホ玲奈!」
玲奈:「えー、言い過ぎじゃない?」
華那、詩音、亜実花の3人から手痛い祝福を受ける玲奈。
もみくちゃにされながらも、すごく嬉しそうな玲奈の目に嬉し涙が溢れていた。
3人ももらい泣きで、4人で抱き合って喜んでいる。
4人それぞれが、各々に同じ想いを噛み締めている様だった。
華那:「先生を信じて、ついて来て良かったよね?」
玲奈:「ほんと、先生、神。マジで。」
詩音:「戻ったら報告だね?
どんな顔するかなぁ。」
亜実花:「私が報告していい?」
詩音:「えー!みんなでしようよ。」
華那:「すごく喜んでくれるよね?」
亜実花:「絶対に喜ぶね。」
玲奈:「楽しみ〜!
抜け駆けしちゃダメだかんね!」
旧ダイアモンズの4人は、今回のレベルアップとともに、ついにスキルが覚醒した。
龍太郎に報告するのを楽しみにしている様だが、横に影武者龍次郎がいるので、全てが筒抜けである。
龍次郎:『おい!龍太郎!』
龍太郎:『ん?何かあったか?』
龍次郎:『ああ、大事件だ!
例のホブゴブリンズを狩り終えて、全員のレベルが10になったぞ。』
龍太郎:『お!やったね!
それで、なんでそれが大事件なんだ?』
龍次郎:『華那、玲奈、詩音、亜実花のスキルが覚醒した。』
龍太郎:『マジか!?本当に覚醒するんだな!
そっか〜。めっちゃ喜んでるだろ?』
龍次郎:『ああ、めちゃくちゃ喜んでるぞ。
あとで龍太郎に報告するのも楽しみにしてるみたい。知らないふりしろよ!』
龍太郎:『あ、そういうことか。
おぅ、わかった。また、なんかあったら連絡くれ。俺はまだまだ掛かりそうだわ……。』
◇◇◇◇◇
ネオ女子6人は、今日は隠し部屋にて宿泊してから部屋を出ていくことにした模様。
隠し部屋のモンスターを一掃したことで、この部屋は出ていくまで安全地帯となっている。
もう今日は夕食にしようと言うことで、龍太郎から分け与えられた、スパイシードッグ食用肉(旨辛)とソルティードッグ食用肉(旨塩)の2種類をみんなで食べながらのご歓談中。
龍太郎の持っている食用肉はどれも美味しいのだが、その中でもこの2種類がお気に入りの様である。
カレン:「隠し部屋って、ここから出ない限り安全地帯になるって不思議だよね?」
美紅:「今日は見張り無しでゆっくり寝られますね!」
華那:「もう5日目だもんね。疲れも溜まってるし、これは助かるよ。」
亜実花:「ねぇ?あの宝箱はいつ開けるの?」
なんと、この隠し部屋の最奥に、ポツンと一つの豪華な宝箱が置いてあったのだった。
その宝箱は、まだ手付かずの状態で置かれている。
華那:「それは最後のお楽しみにしようって言ってたじゃん?」
亜実花:「そうだけど、やっぱ、気になって来たんだもん!絶対にレアアイテムだよね?」
玲奈:「そうそう。すごく気になる〜!
あれだけ豪華だとすごい物が入っているに違いない!」
詩音:「宝箱ってビックリだよね!
もう、ロマンが詰まってるよねぇ。
私たちは初めて見たんだけど、カレンちゃんは、何回かあるのかな?
マジックアイテムとか拾ってるんだよね?」
カレン:「ううん、私も宝箱は初めてだよ。
龍太郎が前に一度拾ったことがあるって言ってたけど、野神さんから聞いた話だと相当レアな物らしいよ。」
詩音:「へぇ!そうなんだ!すごいね!」
玲奈:「うお!すごく楽しみになって来た!
ガチャする前みたいじゃない?」
亜実花:「それ!言えてる!ガチャの前だ!」
玲奈:「星5とかだとさぁ。虹色に光るんだよね!」
華那:「虹来い!って叫んじゃうよね?」
玲奈:「あっ!分かる〜!」
宝箱の話題で大盛り上がりの食事会。
確かに宝箱はロマンの塊だ。
何が出るかな?何が出るかな?
カレン:「みんな、食べ終わったよね?
宝箱は最後のお楽しみにするとして、そろそろ、みんなの覚醒スキルのお披露目会する?」
華那:「あ!それがあったね?ふふふ。
じゃあ、誰から行く?」
詩音:「じゃあ、私から!」
亜実花:「えー!私からでしょ?」
華那:「それじゃあ、私も!」
玲奈:「……私も!」
華那・詩音・亜実花:「どーぞ、どーぞ!」
玲奈:「ねぇ!もう!
これって毎回やらないとダメ?」
詩音:「だって、お約束だからね。」
華那:「そうそう、やっとかないと!」
亜実花:「落ち着かない。」
というわけで、玲奈から新しいスキルをお披露目することに。
それが終わると華那、詩音、亜実花の順番にお披露目をして行った。
そして、4人の解放された覚醒スキルが明らかになった。
高梨玲奈〈闇魔術Ⅰ〉
レベルⅠで使用できる闇魔術は
手のひらから黒紫の闇の球体を発生させる。
この球体をした闇玉をぶつけた相手の身体能力を一定期間低下させると言うものであった。
いわゆるデバフ系魔術。
百枝華那〈光魔術Ⅰ〉
レベルⅠで使用できる光魔術は
手のひらから赤い光の球体を発生させる。
この球体をした光玉をぶつけた相手の身体能力を一定期間向上させると言うものであった。
当然、自分自身にも効果があり、自分に使用した場合は、さらに効果が上がる。
いわゆるバフ系魔術。
玉置詩音〈癒魔術Ⅰ〉
レベルⅠで使用できる癒魔術は
手のひらから黄色い液体のような球体を発生させる。
この球体をした癒玉をぶつけた相手の身体ダメージを回復させると言うものであった。
小さな傷などは治療できる。
いわゆるヒール系魔術。
佐々島亜実花〈心魔術Ⅰ〉
レベルⅠで使用できる心魔術は
手のひらから桃色の液体のような球体を発生させる。
この球体をした心玉をぶつけた相手の思考を一定期間ハイにさせたり、落ち込ませたり、混乱させたりすることが出来ると言うものであった。
いわゆる精神異常付与系魔術。
これがメンバーの中で一番やばそうである。
全員が補助系魔術だった訳だが、かなり戦闘で有効なものだったので喜んでいる。
その横で、少し申し訳なさそうな人が約1名。
カレン:「みんな、すごいね……。
私のスキルって、直接効果のあるものじゃないから、迷惑かけちゃうね。」
華那:「そんなことないよ!
カレンちゃんがいて助かってるもん。」
玲奈:「あれ?もしかして、あーみんが間違って心玉をカレンちゃんに掛けちゃった?」
亜実花:「掛けるわけないじゃん!」
詩音:「カレンちゃんは仲間じゃん。
何落ち込んでるのよ。らしくないよ。」
美紅:「カレンさん!大丈夫ですよ。
私はカレンさんがいるからここにいるんですよ。カレンさんがいなかったら、コーヒーにミルクを入れないようなもんですよ。」
亜実花:「それってブラックってことだね?
確かにそれは飲めないわ。」
玲奈:「私はブラック派だね!……あれ?」
一同沈黙……。
そして、大きな笑いが。
華那:「もう、ほんと空気読めないよね?」
カレン:「みんな、ありがとうね。
なんか、変に考えちゃった。」
玲奈:「そうだよ。大丈夫だから。」
詩音:「出たよ。」
玲奈:「てへ!じゃあ、この流れでお楽しみ行っちゃう?」
華那:「そうだね。行っちゃうか?」
亜実花:「賛成!行っちゃう!」
みんなは、例の宝箱の前の集合。
お楽しみの宝箱抽選会に突入だ!
華那:「じゃあ、誰が開ける?」
詩音:「ここはじゃんけんじゃない?」
玲奈:「私が!ってやつじゃないの?」
詩音:「それだと玲奈になっちゃうじゃん。」
玲奈:「えー!なんでこういう時はやらないのさ!」
華那:「平等にじゃんけんにしよっか?」
亜実花:「そうしよう!」
玲奈は不服そうだったが、誰もが開けたい。
このロマンは共通だった。
カレンだけは遠慮したが。
そして、じゃんけんの結果は玲奈が勝利!
玲奈:「やった!無欲の勝利!」
亜実花:「嘘つけ!煩悩の間違いでしょ!」
玲奈:「うるさい!
じゃあ、開けるよ!虹来い!おりゃ!」
玲奈が力一杯やっても一向に開かない。
玲奈:「これ開かないよ〜!なんで?」
華那が開けようとするもやはり開かない。
詩音、亜実花、美紅も同様に開かない。
華那:「鍵っぽいところもないんだけど。
この宝箱、訳の分からない文字が描かれてるよね?これって関係あるのかなぁ?
なんて描いてあるんだろう?」
詩音:「形も変だから、文字と言うより記号っぽくない?」
確かに、この文字は研究所でも分析できなかった例の文字である。
誰もがこの文字を判別出来ないでいたが、カレンがマジマジと無言で観察している。
美紅:「カレンさん。読めるんですか?」
カレン:「いや。読めないんだけど、なんとなく意味はわかるって言うか。」
玲奈:「読めないのに、意味がわかるってどういうこと?」
カレン:「うーん。よくわからない。
でもね。宝箱の上に手を置くってことみたい?
それ以外はわからないけど。」
玲奈:「へぇ。なら手を置いてみる!
……やっぱり何も起こらないや。」
華那:「次、私がやる!」
そうして、順番に手を置いていった。
最後にカレンが手を置いた瞬間、宝箱がガタガタと小刻みに震え出した。
カレン:「え?なんか、動き出したよ!」
カレンは、まさか動くとは思ってなかったので、ビックリして手を離したが、宝箱は小刻みに震えている。
そして、震えが止まったかと思うと、次の瞬間にパッカーンと勢いよく宝箱が開き、まばゆい光が溢れ出した。
それは神々しい輝きを放っていた。
カレン:「綺麗。」
そして、その光にカレンの全身が包まれる。
全員が何が起こっているのかわからない状態だが、カレンは抵抗することなくその光に身を委ねていた。
そして、その光が消えると中から現れたカレンの背中に大きな翼が生えていた。
その姿に全員が息を飲む。
美紅:「綺麗。」
カレンの姿は、その容姿も手伝って天使の様な出立ちに変化していた。
華那:「カレンちゃん!翼が生えてるよ!」
カレン:「うん。そうみたい。」
玲奈:「え?どうなってるの?大丈夫なの?」
カレン:「うん。大丈夫。」
こうして、カレンの姿はエンジェル化したのだった。まさに神セブン。
(本当に神や天使になったわけではない。)
◇◇◇◇◇
ネオ女子一同は、それからも異世界内で討伐を継続していた。
一旦、クランハウスに戻っているので、今回は第二陣ということだが。
もちろん、ミズシマダンジョンの第一階層。
あれ以来、誰も第二階層に行こうと提案するものはいない。
安全第一である。あくまで地道に活動中。
そして第二陣討伐も数日経ったある日のこと。
メンバー6人の脳内に、その場に立っていられないほどの衝撃が走った。
その衝撃は一瞬で止んだが、継続して脳内にノイズ音が鳴り響いている。
ザザーザザ……ザーザザ……
カレン:「ちょっと!今の何?
みんな大丈夫?」
華那:「大丈夫だけど、ノイズ音が。」
詩音:「うん。でも、変な感覚!」
この現象は全世界で同時に発生していた。
そして、この異変に世界が混乱して行く……。
◇◇◇◇◇
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