第117話 ミズシマダンジョン5
◇◇◇◇◇
時は遡り、龍太郎の横浜探索が始まって少し経った頃、ネオ女子6人はレベルアップチャレンジを開始していた。
龍太郎の同伴転移で、ミズシマダンジョン入り口に来ていた。
龍太郎:「じゃあ、俺がいない間は、安全に狩りしろよ。絶対に無理すんなよ!」
カレン:「うん。ありがとう。
龍太郎も気をつけてね。」
龍太郎は転移スキルで去って行った。
残された6人になると、なぜかカレンがリーダーとして仕切ることになる。
カレン:「じゃあ、私たちも行くよ!」
亜実花:「ミズシマダンジョン、久しぶり!」
玲奈:「オーケー!レッツゴー!」
こうしてネオ女子6人は、レベルアップチャレンジのため、ミズシマダンジョン第一階層に入って行った。
◇◇◇◇◇
第一階層を順調に狩りを続けるネオ女子たちだが、龍太郎が不在であるが故、どうも効率は悪くなっている。
ゴブリンズは、このパーティにとっては、すでに雑魚キャラ化しているので、集団で襲われたとしてもほぼ無傷で討伐可能だ。
メタルゴブリンでも出現すれば話は別だが、流れ作業になっているので、出来る限り多く遭遇したいのだが、そうもいかない。
すでに全員がレベル9に達しており、今回の目標は全員がレベル10を掲げてのレベルアップチャレンジだったが……。
美紅:「カレンさん。もう第二階層に行ってもいいんじゃないですか?」
カレン:「え?どうしようかな?」
美紅:「もう5日も経ってますし、このペースだと目標が達成出来なさそうですよ。」
華那:「ミクミク。そんなに焦らなくても。」
美紅:「焦ってませんけど。華那先輩はレベル上げたくないんですか?」
華那:「そりゃ上げたいけど、先生からも安全にって言われてるし。」
美紅:「上げたいですよね?
じゃあ、第二階層でいいですよね?
オークならいけると思います!」
カレン:「美紅ちゃんならいけるかもしれないけど……。」
強引に説得する美紅に、カレンたちもどうしたらいいのか、迷い沈黙している。
その時、カレンがもたれ掛かった壁をすり抜けて、突然目の前から姿を消した!
美紅:「え?カレンさん!?消えた?」
美紅は、カレンが消えた壁に向かって手をついた。すると美紅もカレンの消えたのと同様に壁をすり抜けて行ってしまった。
華那:「カレンちゃん!ミクミク!」
詩音:「華那!これって隠し部屋なんじゃない?」
華那:「うん。そうかも?
私たちも行かなきゃ!」
玲奈:「そうだよ。行こう!」
亜実花:「隠し部屋!?大丈夫かなぁ?」
華那:「あ!そうだね。
確かに隠し部屋って危険だって言われてるし、個人の判断に任せるよ。
ここで待っててもいいよ。」
玲奈:「うん。それじゃ、私は行ってくる!
なんぼのもんじゃい!どりゃー!」
玲奈は、考える間もなくカレンたちの消えた壁に突進して壁をすり抜けて行った。
この子はあまり後先を考えずに行動しちゃう。行動力は4人の中では一番あったりする。
華那:「玲奈は行っちゃったか。
うん。心配だから私も行くね!
なんくるないさー!おりゃー!」
詩音:「あーみんはここで待ってて!
私も行ってくるよ。
グーテンモルゲン!うりゃー!」
一人残されたあーみんは半泣き状態。
亜実花:「えー!もう!置いてかないでよー!
一人は嫌〜ん!にゃーん!」
こうして、全員が隠し部屋に突入した。
ほとんど遭遇することのない隠し部屋だが、大抵の場合、貴重なアイテムが隠されている場合が多い。だが、その反面、モンスターのレベルは確実に上がり、危険度は上がる。
しかも、その隠し部屋の入り口は一方通行になっており、戻ることは出来ず、反対側から脱出することになる。
果たして、ネオ女子6人は無事に脱出することが出来るのか!?
◇◇◇◇◇
カレン:「全員来ちゃった?」
華那:「カレン!戦闘に入るよ。
みんな、体型を組んで!壁を背にして!」
前方には、この階層には存在しないであろう少し大型のゴブリンズが大群でこちらを見て小踊りではしゃいでいる。
このモンスターはホブゴブリンズ。
容姿はゴブリンズと同様だが、一回り大きく戦闘能力も第二階層のオークより1段階上がっている。
亜実花:「あれ何よ!いっぱいいるじゃん!
もう、やだー!」
詩音:「ホブゴブリンだよ!
あーみん!泣き言言わない!」
ネオ女子は、自ら攻撃することはなく、防御態勢を取って構えている。
ホブゴブリンズたちは、獲物を吟味する様にネオ女子たちの周りを取り囲んでいく。
その顔は、憎たらしいほどに口角を上げ、涎をダラダラと流している。
それもそのはず、大好物の人間の女が目の前に現れたのだから。しかも6人もいる。
そして、取り囲んだホブゴブリンズは、誰かが叫んだ号令をトリガーにして一斉に襲いかかって来た。
ネオ女子たちも奮闘しているが、ホブゴブリンズの一撃を受け流す、防戦一方の戦い方を余儀なくされている。
一対一ならなんとかなったかも知れないが、ホブゴブリンズは連携して攻撃してくるので、彼女たちも未だほぼ無傷の状態ではあるが、防御するのに精一杯である。
ほぼホブゴブリンズの数が減っていない。
マジックアイテムの防具のおかげで致命傷にはなっていないが、モンスターの数は向こう側が見えないほどの大群であり、このまま持久戦になれば、やられることは目に見えて明らかであった。
亜実花:「もう無理!」
華那:「あーみん!頑張って!」
防戦一方のネオ女子たちの体力がどんどん削られている。
亜実花:「ゴブリンに犯されるのは嫌〜!」
華那:「あーみん!諦めちゃダメー!」
亜実花が大振りした剣が空を切り、ホブゴブリンの一匹があーみんの懐に入った。
ホブゴブリンは、嫌らしい笑みを浮かべ、素早く腕を振りかぶり、その鋭い爪をあーみんの首元に致命傷を与えようとしていた。
華那はあーみんを助けようと近づくも、一瞬早くホブゴブリンの爪が襲いかかった。
亜実花:「嫌ーーーー!」
華那:「あーみん!!」
あーみんは、ガクリとその場に崩れ落ちた。
華那は、あーみんのそばに駆け寄る。
ただし、何故か予想に反して襲いかかったホブゴブリンの首が胴体から綺麗に斬り離されて、あーみんの目の前に転がっていた。
華那:「あーみん!」
亜実花:「華那ちゃん。あれ?」
首元を斬られたはずのあーみんは、なんともなく、地面にしゃがみ込んだだけだった。
華那:「良かった!あーみん!
すぐに立って!また来るよ!」
それからも、ネオ女子は不思議に思ったが、不可解に首の切り離されたホブゴブリンズが点々と転がっている。
しかも、ネオ女子が攻撃を避けられない状態になると、決まってホブゴブリンの首は胴体から切り離されて、地面に転がるのだ。
怪奇現象。何かがおかしい。
これには、ホブゴブリンズの方に動揺が走り、徐々に連携が崩れようとしていた。
ただ、ネオ女子たちの体力はすでに限界を迎える寸前で、このままでは、全員がホブゴブリンズに犯される未来しか見えなくなっていた。
カレンもこの状況につい弱音を吐いた。
カレン:「もう!龍太郎!助けに来てよ!」
華那たちも同じ事を考えていたらしく、同調する様に自然につぶやいていた。
華那:「先生〜!」
詩音:「先生〜!」
玲奈:「先生〜!」
亜実花:「わーん!先生〜!」
それらの声は龍太郎に届くはずもない。
ただ、その時、奇跡の様な出来事が。
その叫びに応える様に、ホブゴブリンズは一斉にバタバタとその場に崩れ落ちて行った。
ホブゴブリンズ・ドミノ発生!
バタバタバタバタ、バタバタバタバタ!
カレン:「え?」
美紅:「カレンさん!声が届いた?
これって豪運ってやつですか?」
他の4人も何が起こったのか分からない。
が、とにかく助かったのは間違いない。
華那:「あいつら、気絶してるだけだよ!
今のうちに殺ってしまわないと!」
カレン:「うん。そうだね。
みんな!ここから脱出するよ!」
限界を迎えていたはずの体力が復活して、希望が生まれた。
絶望を予想した隠し部屋は、一瞬にしてレベルアップのボーナスステージに変化。
女子一同は、一斉に散らばって行き、気絶して横たわるホブゴブリンズの首を次々に刎ねて行く。
確変状態のボーナスタイム!
ネオ女子たちは、九死に一生を得た。
恐るべし、豪運の威力であった……。
◇◇◇◇◇
ネオ女子たちが隠し部屋でホブゴブリンズに囲まれていたその時、横浜に向かって飛翔を続けていた龍太郎に緊急の連絡が来ていた。
龍次郎:『龍太郎!緊急連絡。
彼女たちが隠し部屋に入ったぞ。』
龍太郎:『お!すげーな。さすが、豪運。
俺も行ってみたいなぁ。』
龍次郎:『いや、そんな余裕はないみたいだ。
ホブゴブリンズの大群に囲まれてるわ。
これって助けていいもん?』
龍太郎:『え?ヤバいじゃん。
もちろん。助けないとダメだろ?』
龍次郎:『そうだよな。オーケー。』
龍太郎:『あ!なるべく邪魔しない様にな。
ただ、もうダメって判断したら、超覇気で一気に片付けてくれ。』
龍次郎:『ああ、了解!』
龍太郎:『頼んだぞ。』
俺も行きたかったなぁ!と思う龍太郎。
と同時にやっぱり龍次郎を行かせておいて正解だったな。とも思った。
実は、カレンたちから今回はゴブリンズだけだし、女子だけでレベルアップチャレンジをするから同行は要らないと言われていたのだ。
でも、心配なのでこっそりと龍次郎を同行させていました。グッジョブ。
豪運と言えば豪運だが、種のある話でした。
このあともミズシマダンジョンが続く。
◇◇◇◇◇
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます