第116話 横浜捜索依頼3

 ◇◇◇◇◇


 龍太郎は、コツコツと距離を稼ぎようやく異世界内の横浜まで来ていた。

 掛かった日数は14日間。

 途中、自由ヶ丘あたりの山脈と日吉のあたりの大峡谷があったが、飛翔スキルのおかげで何事もなく無事に通過していた。


 ただ、振り返ってみれば、飛翔スキルなしで渋谷からここまで辿り着くのは、ほぼ不可能ではないだろうか?と思うくらいに他にも幾つかの難所が各地にあった。


 持ってて良かった飛翔スキル。


 これがゲート間の往来がない所以なのだろうとその時は思った。やむなし。



龍太郎:『アイちゃん!見えて来たぞ!

 あれが横浜ゲートの簡易事務所だよな。』


AI:〈そう。あれだね。〉


龍太郎:『オケ!年内に到着して良かったわぁ。もう少しで年超えちゃうところだったよ。

 これを終えたら、年末年始はのんびり筋トレするぞ!』


AI:〈のんびり筋トレって?

 それ、合ってるのかなぁ?〉


 すでに12月も終わろうとしている。

 龍太郎が20歳になった怒涛の2050年。

 底辺探検者だった龍太郎は、今や第一将になっている。

 人生何が起こるかわからないものだ。


 龍太郎は、ようやく元横浜ゲート内簡易事務所の前に降り立った。


龍太郎:「おーい!助けに来たぞ!」


 龍太郎は、簡易事務所の扉を勢いよく開けた。


 バーン!


龍太郎:「ん?あれ?誰もいない?」


 簡易事務所の中には誰もいなかった。

 ただし、少し前まで人がいたような痕跡は残っている。


AI:〈マスター!この部屋の上から何か聞こえるね。〉


 耳を澄ますと、龍太郎にも何らかの声が聞こえて来た。


龍太郎:『ああ、2階か!』


 龍太郎は、奥にあった階段を見つけて、すぐさま2階へと登っていった。


龍太郎:『この部屋か?』


 確かにこの部屋の中から何か声がしている。

 何を喋っているのかは聞き取れないが、この中で何かしているみたいだ。


 龍太郎は、ビックリさせようとノックもせずにその部屋の扉を勢いよく開いた。


龍太郎:「宅急便で〜す!」


 バーン!


龍太郎:「え?えー!?何!」


 確かにその部屋の中に4人の女性は居た。

 間違いなくエロティカ・シスターズ、略してエロシスのメンバーたちだったが……。


 なんと。その4人は、一糸纏わぬ生まれたまんまの姿でベッドの上で濃厚に絡み合っている最中だったのだ!


 ビックリさせようと入った龍太郎だったが、逆にビックリさせられる結果に。


 そして、いきなり入って来た龍太郎と4人の目が合った瞬間に京子と美帆が驚いて悲鳴を上げた。


京子・美帆:「ギャーーーー!」


龍太郎:「お邪魔しました〜!!」


 バン!


 龍太郎は、見てはいけないものを見てしまった思いで、すぐに部屋を出て、勢いよく扉を閉めた。


龍太郎:『ふぅ。アイちゃん!あれって?』


AI:〈マスター。それを僕に聞く?〉


龍太郎:『いや、いい……。

 なんとなく分かるから。』


 龍太郎は、この状況をどうしたらいいか悩んでいたが、突然扉が開いた。


 そして、部屋の中から一人の女性が出て来た。驚くことにその女性は先ほど見た姿と同じく、一糸纏わぬ生まれたまんまの姿であった。


英莉花:「あら。あなたは……天堂さん?」


 英莉花も龍太郎のことは知っているみたいだ。第一将になってそれなりに知名度は上がっているらしい。


龍太郎:「ああ、そうだけど。」


 リーダーの英莉花は、素っ裸にも関わらず、堂々としたものだ。


 英莉花もソフィアのような態度とゴージャスボディ。これってデジャヴ?


英莉花:「それじゃあ、野神さんが派遣したエクスプローラってあなただったのね?

 お一人かしら?」


龍太郎:「ああ、そうだけど。

 お前、服着なくていいのか?」


英莉花:「そうね。でも、どうせなら、あなたが脱いでくれた方がいいかもしれないわね。

 もう、長い間、殿方と交わってないから。」


 え?これって誘われてるってこと?

 龍太郎、悩む。大いに悩む。

 この人、めっちゃエロエロボディだよなぁ。

 葛藤。まさに究極の葛藤。


 龍太郎が悩んでいると、英莉花がもう一度声を掛けて来た。


英莉花:「ふふふ。可愛いわね。

 とりあえず、中に入りましょうか?」


龍太郎:「あ、ああ。そうしよう。」


 龍太郎は冷静を装っているが、葛藤していた自分がめっちゃ恥ずかしくなっている。


 英莉花に促されて部屋の中に入ると、京子と美帆はすでに衣服を身につけていた。

 ただ、英莉花の妹の世莉花は、英莉花と同様に素っ裸だ。やはり堂々とした態度である。


 先ほど、一瞬であったが、全員の裸を見た龍太郎。

 全員がゴージャスボディであったのだが、特に英莉花と世莉花の叶姉妹は、最高級のゴージャスボディの持ち主であった。

 その叶姉妹が、素っ裸の状態で目の前にいる。ちょっと変な気持ちになっても、それは仕方がない。


英莉花:「皆さん。ネオの天堂さんが救出に来てくれた様ですよ。」


 巷では、ネオ・ダイアモンズのことは省略してネオと呼ばれているらしい。

 エロティカ・シスターズがエロシスと呼ばれている様に。


龍太郎:「野神さんから依頼されてな。

 ちょっと飛ばして来たんだけど、結構掛かったよ。」


 普通に喋っているが、女性2人は素っ裸のまま。どうも、そっちが気になって仕方がない。


英莉花:「そうですわね。待ってたのよ。

 もうかなり我慢してましたので、そろそろ始めましょうか?

 天堂さん。脱いでくださるかしら?

 それとも、脱がされる方がよろしくって?」


龍太郎:「ちょ、ちょっと待って。

 もちろん、嬉しいんだけどさ。

 初めて会ったわけだし、そういうのってなんつうか。」


英莉花:「あら、初めてでも大丈夫よ。

 世莉花さん。お手伝いしてあげて。」


世莉花:「はい、お姉様。

 さ、天堂さん。こちらにどーぞ。」


 素っ裸の世莉花が龍太郎の手を取って、ベッドの方に引っ張っていった。

 京子と美帆は、何も喋らずに様子を見てる。


AI:〈ちょっと、マスター!

 そんなことしてる場合じゃないでしょ?〉


龍太郎:『いや、そう言われてもさぁ。

 俺の意思じゃないからしょうがないだろ?』


AI:〈ふーん。豪運娘に証拠写真をメールで送りつけるよ。〉


龍太郎:『ちょっと!なんだよそれ!

 うーん。でも、それはマズい気がする。

 もう!分かったよ。』


 龍太郎は、甘い誘惑を観念した。


龍太郎:「あ、妹さん。ちょっと待ってくれ。

 早速だけど、帰る準備をしてくれ。

 装備は付けなくていい。」


 名残惜しいのか、ものすごい棒読みちゃん。


英莉花:「あら、どうしたの?

 せっかく、天堂さんにお会いできたのに、何も無しじゃ寂しいですわ。」


世莉花:「そうですよね。お姉様。

 天堂さん。せっかくですし。

 それにお姉様とあなたのことは噂しておりましたのよ。」


龍太郎:「え?俺のこと?何を?」


英莉花:「さぁ、なんでしょうね?

 それは後で教えて差し上げますわ。

 まずは、私と世莉花さんのお相手をね。」


龍太郎:「あ、はい。」


AI:〈ちょっと!マスター!

 あ、はい。じゃないでしょ!〉


龍太郎:『お。そうだった。つい。』


 けど、素っ裸のゴージャスボディの女性2人からのお誘いを断る方がおかしい。

 が、帰ってからの方が怖い。ここは我慢だ。


龍太郎:「悪い。2人とも準備をしてくれ。」


 やっと吹っ切れたのか、先ほどの棒読みちゃんではなく、少し強い口調で言った。


 2人は、とても残念そうであったが、渋々と龍太郎の言う通りに衣服を着始めた。


 ちなみに、龍太郎が叶姉妹と話ししている間に、京子と美帆は邪魔をしない様に静かに部屋を出て行っていた。

 どうも、彼女たちは女性に好意を持つマイノリティ派閥だったらしい。

 叶姉妹は、どちらでも好物の最強派閥。

 

 なお、説明を飛ばしたが、叶姉妹の保有スキルは2人ともレアである種族系スキルだった。

 よって、龍太郎はスキル登録に失敗した。

 種族系とジョブ系は登録出来ない。


 あとの2人はスキルを確認する前に出て行ったので、まだ確認できていない。

 同伴転移の時に確認すればいいだろう。



英莉花:「服は着ましたわ。装備は付けなくていいって、どうするおつもりなの?

 帰るのにも同じくらい掛かるんでしょう?

 ちょうど2週間ですわよね?」


龍太郎:「ああ、それはみんな揃ってから話すよ。ちょっと、帰り方が特殊なんでね。」


世莉花:「はい、私も着ました。」


龍太郎:「じゃあ、下に行って荷物を纏めよう。食糧とかは俺が持ってるから、自分の荷物だけでいい。」


 簡易事務所の1階で、エロシスの4人も荷物を纏めて準備万端となった。

 龍太郎のスキルで格納する訳にもいかないので、装備も荷物と一緒に纏めてもらっている。


龍太郎:「オーケー。じゃあ、帰るとするか。

 と、その前に。」


 監獄長スキルだよな。

 なんか、逆効果の様な気もするけど……。



 その時、龍太郎を含む全員の脳内に、その場に立っていられないほどの衝撃が走った。

 その衝撃は一瞬で止んだが、継続して脳内にノイズ音が鳴り響いている。


 ザザーザザ……ザーザザ……。


英莉花:「天堂さん。何ですか?これは?」


龍太郎:「いや、俺にも分からない。ちょっと待ってくれ。」


 困った時のアイちゃん頼み!


龍太郎:『アイちゃん!今の何か分かるか?』


 龍太郎はアイちゃんに呼び掛けるが、何度呼び掛けても、一向にアイちゃんからの返事はなかった。


龍太郎:『アイちゃん!アイちゃん!

 どうしたんだ?アイちゃん!』


 アイちゃんに異常発生。


 実はこの時、全世界のエクスプローラに影響を及ぼす大事件が起ころうとしていた……。


 ◇◇◇◇◇

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