第111話 横浜捜索依頼2

 ◇◇◇◇◇


 渋谷ゲート内に潜った龍太郎。

 早速、販売ショップに直行です。


龍太郎:「ふふふ。ついにこの時が来た!」


 龍太郎は、はやる気持ちを抑えて販売ショップに入って行った。


龍太郎:「お!源さん!

 あれ、聞いてるよな!」


源三:「ああ、小僧か。

 お前、まずは久しぶりに会ったら挨拶せんかい。まあ、無事で良かったわい。」


龍太郎:「そっか。俺って消息不明になってたんだったっけ?俺は大丈夫だぞ。

 それより、あの大剣のこと聞いてるよな?」


源三:「おぅ。聞いとるぞ。

 お前が勝手にショップに入って、勝手に適性試験を受けたってことじゃったか。」


龍太郎:「うーん。まあ、それで合ってるけど、話に棘があるよな。

 それで、その大剣もらっていくぞ!」


源三:「ああ、勝手に持ってけ。

 まさか適性者が小僧とはのう。」


龍太郎:「よっしゃー!大剣ゲッチュ!」


 龍太郎は、いつも鍵のかかっていない大きなショーケースの中に入って、2つの大剣を手に取った。


 ふふふ。この感触!吸い込まれる〜!


源三:「おい!ここで振り回すな!

 しかし、軽々と振り回しおるのう。

 どういう仕組みなんじゃ?」


 源三も一度手に取ってみたことがあるから分かるのだが、この大剣はとても片手で持ち上げられる様な重さではないのだが……。


龍太郎:「よし!じゃあ、行くか!」


源三:「とっとと行って来い!」


 笑いながら、源三はそう言った。


 しかし、小僧は想像の遥かに上を行きおるのう。

 まあ、何にしろ、無事で良かったわい。



 販売ショップを出た龍太郎は、一旦、もらった大剣を収納箱に格納した。


 すると、大剣の名前が判明した。


 金玉きんぎょく

 銀玉ぎんぎょく


龍太郎:「えー!ダサ!

 これって誰が命名したんだよ!?

 嫌すぎるんだけど……。

 せっかくカッコいいのに台無しだな……。」


 龍太郎は、仕方ないのでこの大剣を金さん、銀さんと呼ぶことにした。

 その呼び方もどうかとは思うが……。


 そして、収納箱から取り出した大剣を再び腰に帯剣し直して、横浜ゲート跡を目指して意気揚々と飛び出して行った。



 ◇◇◇◇◇



 横浜ゲート跡地にて。


 狩りを終えて帰路につこうとしていた一つのパーティが途方に暮れていた。


京子:「もう!なんで!どうなってるのよ!」

美帆:「ここで合ってるはずだけど、なぜないんですか!?」


 確かに簡易事務所はそこにある。

 その横にあるはずのゲートがない。


英莉花:「皆さん。慌てないで。

 よく確認してみましょう。」

世莉花:「そうですね。お姉様。

 簡易事務所に何かあるかもしれませんし。」

英莉花:「そうね。世莉花さん。

 少しお邪魔してみましょうか?」


 今回、横浜ゲートの消滅で、異世界に取り残されたのは、横浜管轄のクラン、エロティカシスターズの4人。


 叶英莉花

 叶世莉花

 網浜京子

 藤澤美帆


 この異常事態に京子と美帆は、テンパっているが、リーダーの英莉花とその妹の世莉花は、至って冷静に振る舞っている。

 この姉妹は、普段から物事に動じることがほとんどない。


 そして、簡易事務所の扉を確認するとやはり鍵はかかっていない。

 ゲート封鎖する際に、こういうことを考慮して鍵は開けたままにしておいた様だ。


 エロティカシスターズの4人は、ゆっくりと簡易事務所の中に入って行った。


 事務所の中には、誰もいなかったが、机の上に書き置きらしきものが置いてある。


 世莉花は、その紙を取って、書かれている内容を読んだ。


世莉花:「エロティカシスターズの皆様へ。

 横浜ゲートは消滅の可能性が確認されたため、封鎖に踏み切ったのですが、これを読んでいるということは、ゲートは予想外に早く消滅してしまい、あなたたちはゲート内に取り残されてしまったということを意味します。」


 万が一のために協会が準備した書き置きであった。


京子:「ゲート消滅!?どういうこと?」

美帆:「嘘!?やっと帰ってきたのに〜!

 もう!私たち、どうしたらいいんですか?」


 京子と美帆は、ゲート消滅という事実にパニック状態になっている。

 それでも、英莉花と世莉花の叶姉妹は至って冷静だ。一切、動じることがない。

 

英莉花:「あなたたち、少し落ち着きなさい。

 世莉花さん。続きはあるのですか?」


世莉花:「はい。お姉様。続きを読みますね。

 ただし、決して悲観することなく、我々の救助を待ってください。

 最近、新しく入手した情報によって、そちらのゲート内、いわゆる異世界内は地続きになっていることが判明しています。

 横浜ゲートは、渋谷ゲートと繋がっています。

 その渋谷ゲートから、信頼できるエクスプローラを派遣します。

 ただし、あなたたちが渋谷ゲートを目指すことはお勧めしません。

 そちらの世界は、現世界よりも距離が離れているため、たどり着ける可能性は低く、また、救助に向かうエクスプローラにも発見されない可能性があります。

 精神的に辛い状況であることはわかりますが、我々を信じて簡易事務所にて待機していてください。

 あなたたちの食料、飲料については、1ヶ月分の保存食をそこに置いてあります。

 あなたたちは、必ず助かります。

 信じて待つ様、よろしくお願いします。

 日本探検者協会 野神紗英。

 お姉様。以上ですわ。」


英莉花:「なるほど。

 この文章からすると、私たちだけがこちらに取り残された様ですね。

 では、仕方がないので、ここで待つことにしましょうか。」


世莉花:「そうですね。お姉様。

 幸い、食料は確保されていますし。」


英莉花:「ええ、ありがたいことですわ。

 すでに私たちの手持ちの食料はありませんでしたからね。

 協会に感謝ですわね。」


 京子と美帆も、どうしようもない状況であることを理解して、気持ちは落ち着かないが、英莉花のその言葉に従うことにした。


京子:「でも、英莉花さん。待つと言ってもどれくらい待つんですかね?」


英莉花:「差出人はあの野神さんですからね。

 1ヶ月以内ということじゃないですか?」


世莉花:「そうですね。お姉様。

 あの野神さんですから。」


美帆:「1ヶ月ですかぁ。長いですねぇ。」


英莉花:「そうですね。

 殿方が恋しくなりますね。」


世莉花:「まあ、お姉様ったら。ふふふ。」


 京子と美帆は、この叶姉妹の二人はやはり、改めて色々とおかしいと思ったが、言わないでおいた。



 ◇◇◇◇◇



 渋谷ゲート内から、飛翔スキルを使って横浜方面にグングン進む龍太郎。

 もうすでに半日程度は飛び続けている。

 魔力枯渇の心配がない龍太郎は、疲労もなく全く疲れはしないのだが、精神的にかなり苦痛になってきていた。

 さらに時間短縮のため、空中で食事を摂りながら飛び続けている。

 この間、モンスターにも遭遇したが、すでに遭遇したことのある種類だったので、無視して通り過ぎていた。


龍太郎:『アイちゃん!結構来たと思うんだけど、今でどのくらい来たかなぁ?』


AI:〈うーん。そうだね。

 だいたい代官山くらいじゃない?〉


龍太郎:『えー!まだ、代官山、一駅かよ!

 暇すぎて、苦痛なんだけど!

 ああ、すごく筋トレしてぇ!』


AI:〈帰ってからやりなよ。

 今は急がないとダメじゃない?〉


龍太郎:『せめて音楽でもあればなぁ。

 アイちゃん。なんか歌ってよ。』


AI:〈自分で歌ったら?〉


龍太郎:『俺は無理!すげぇ音痴なんだよ。』


AI:〈じゃあ、どんなのがいいの?

 曲かけてあげるから。〉


龍太郎:『そんなの出来るのかよ?

 早く言ってよ!

 じゃあ、迷宮HAPPYの曲で。

 聞いたことないんだよな。』


AI:〈わかったよ。じゃあ、かけるよ。〉


 ちょっとカジュアルな♪

 暖かい風が吹く♪

 普段通りの重ね着で♪

 心も踊り出す感じがふわり♪


 ラララ〜ラララルラ〜♪

 私、恋をしてます〜♪


龍太郎:『へぇ。なんかいいじゃん。』


AI:〈恋したことないのにね?〉


龍太郎:『おい!余計なお世話だ!』


 アイちゃんと会話しつつ、順調に?飛び続ける龍太郎であった。


 これは、だいぶかかりそうだ……。


 ◇◇◇◇◇

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