第103話 報奨
◇◇◇◇◇
次の日の昼、約束した時間に紗英が、ネオ・ダイアモンズのクランハウスにやって来た。
いつものように龍太郎とカレンが対応することに。他のメンバーも降りて来ている。
そして、紗英の他にもう1人の付き添いが一緒に目の前の席に座っている。誰だろ?
野神:「まずは、天堂くん。夢咲さん。
そして、百枝さん。高梨さん。玉置さん。佐々島さん。早乙女さん。
今回の川崎ブレイクでは、本当に尽力いただいて感謝いたします。
あなたたちのおかげで、早期の収束が出来ました。ありがとう。
これから、その報奨金についてお伝えしますが、その前に紹介するわね。
こちらが、三上乃亜。研究所の所長です。』
三上:「三上です。よろしく。」
この人が三上乃亜さんか。
野神さんの同僚って言ってたよな。
この人も風格あるよな。
ロングの黒髪でかなりの美人だ。
でも、何をしに来たんだろ?
野神:「話を戻すわね。
まずは、今回参加してもらった討伐に対しての報奨金については、一人当たりこれだけの金額をお支払いします。」
野神は、龍太郎たちの前にその報奨金の額が書かれた書類を提示した。
龍太郎:「じゅ、10億円!?」
美紅:「嘘ーっ!?」
おい!お前、目が¥になってるぞ!
野神:「ええ。今回、討伐したモンスターのコアは膨大な数になるわ。それを踏まえての金額ということになるわね。」
カレン:「こんなにいいんですか?」
美紅:「いいですよね!
もらえるものはもらいましょうよ!ね?」
おい!なぜお前はそんなに前のめりなんだ?
他のメンバーもちょっと引いてるぞ!
野神:「そうね。結構大きな金額よね。
実は、源さんとお千代さんから、今回の報奨金は、あなたたちと均等に分けてほしいと言われたのよ。
お二方曰く、今回の討伐で一番貢献したのは、天堂くんだろうってね。
それとね。あなたたちには正直に言うけど、今回のモンスターコアの買取額は、相当なものになるわ。それに今回はゴブリンの素材もそのままこちらで活用させてもらうわ。
なので、源さん、お千代さんとあなたたちに報奨金を支払っても余る計算になるの。
それは、今回被害を受けた川崎周辺の復興と被害者の救済に当てさせてもらうことになったのよ。
だから、その辺りは了承してほしいの。」
カレン:「そういうことですか。
そちらがいいのなら、私は構いません。
みんなはどう?」
龍太郎:「ああ、もちろん、俺は問題ない。」
他のメンバーも提示された金額の大きさに圧倒されていたが、全く異論がないという返事だった。むしろ、恐縮しているくらいだ。
ただ、美紅だけは、夜の街直行便を免れたという安堵から、笑いながら涙を流している。
見ててちょっと気持ち悪い。
野神:「なら良かったわ。
天堂くん。代表してここにサインを。」
龍太郎:「ああ。」
龍太郎は、その報奨金が書かれた書類にサインをした。
野神:「はい。これで完了ね。
それじゃ、報奨金は各自振り込んでおきますから、あとで確認してね。
それともう一つ。
あなたたちのエクスプローラランクが今回の討伐で上がることになったわ。
今日、ここに来るまでに間に合わせるために、総動員で徹夜で算出したのよ。
ゴブリン討伐分のコアを買取したと想定して、貢献度を加算しておいたわ。」
カレン:「徹夜ですか?すいません。
ありがとうございます。」
野神:「いいのよ。勝手にしたことだから。
じゃあ、皆さん、ランクを書き換えるから、IDカードを出してもらえるかしら?」
龍太郎:「え?ここで出来るのか?」
野神:「そうよ。そのためにこれを持って来たんだから。データはすでに入力してますからね。ここでは、IDカードの更新だけ。」
紗英は、カバンの中から小型の専用機を取り出して、机の上に置いた。
これで協会の登録課出張所の出来上がり。
窓口の受付はまたもや野神さんだ。
みんなは、各自部屋にIDカードを取りに行って、紗英に手渡した。
野神さんは、順番に処理していく。
カチャカチャカチャカチャ。
野神:「はい、これで全員ね。
皆さん、ランクアップおめでとう。」
華那:「すいません。
ちょっと確認していいですか?」
華那は、返事も待たずに、すぐさま端末を叩いた。
みんなもやはりそれには興味津々のご様子。
〈クラン:検索結果〉
【クラン】ネオ・ダイアモンズ
【登録日】2050年10月10日
【ランク】A
【代 表】天堂龍太郎(C:999)
【メンバ】夢咲カレン(B:256)
【メンバ】早乙女美紅(B:267)
【メンバ】高梨玲奈(B:277)
【メンバ】百枝華那(B:278)
【メンバ】玉置詩音(B:279)
【メンバ】佐々島亜実花(B:280)
華那:「わー!いきなりBランクになってるよ!嬉しい!
でも、カレンちゃんとミクミクには抜かれちゃったね。」
玲奈:「ほんとだね。装備の差が出たね。
でも、私、277位だって!ふふふ。」
亜実花:「やったー!これってすごくない?」
詩音:「ちょっと待って!先生だけC?」
龍太郎:「えー!なんで!?
この前まで、俺がクラン内でダントツトップだったはず!
どうなってんだよ〜!」
野神:「それはね。申し訳ないんだけど、ゲート内の討伐に関しては算出が出来なかったからなのよ。」
龍太郎、凹む。大いに凹む。
龍太郎:「もう!早くAランクになりたいのに〜!」
野神:「あら、天堂くんってそういうのに興味がないと思ってたんだけど、意外ね。」
龍太郎:「そんなことないぞ!
早く試験を受けたいんだよ!」
野神:「試験って?」
龍太郎:「販売ショップの非売品の大剣だよ。
源さんに聞いたんだよ。
Aランクになったら試験を受けられるって。」
野神:「ああ、それね!聞いたのね?
天堂くんならいいわよ。受けてみる?」
龍太郎:「本当か?受ける!受ける!」
カレン:「ふふふ。天堂くん、ショップに行く度に大剣を眺めてたものね?」
龍太郎:「そうそう!やった!
なら、ランクはどうでもいいや。
いつ試験出来る?」
野神:「そういうことね。いつでもいいわよ。
試験と言っても特別なことはないのよ。
あの剣を持ち上げることが出来るかを確認するだけだから。」
龍太郎:「えっ?それだけ?」
野神:「そう、それだけ。」
龍太郎:「本当に?」
野神:「本当に。」
龍太郎:「でもさぁ。源さんに聞いたんだけど、今まで誰も試験に合格したことがないって言ってたぞ。」
野神:「ええ、そうよ。
あれを運ぶのにも、ものすごく大変だったみたいよ。なんせ、ドロップしたのはいいけど、確か4人がかりでやっと持ち帰ったって話よ。
だから、適性が関係しているという結論で、その適性者を探すために試験をしてるってわけ。」
龍太郎:「あのさ。その試験に合格すると、タダでもらえるって聞いたんだけど?」
野神:「ええ、それもそうよ。
最初は、適性者が見つかれば、販売する予定だったんだけど、あまりにも適性者が現れないのでね。それで、もうこれは適正者が見つかった段階で、無償提供することにしたの。
ただ、飾っておいても仕方がないからね。」
龍太郎:「マジか……?」
野神:「ふふふ。マジよ。」
龍太郎:「うー、やったー!大剣ゲッチュ!
うっほーい!金と銀の大剣!」
野神:「ふふふ。気が早いわね?
まずは適正試験に合格してからよ。」
龍太郎:「いやいや、俺、持てるから!」
野神:「わかったわ。試験が楽しみね。」
龍太郎:「あれ?信じてないな?」
龍太郎は、おもむろにスマホを取り出して、写真を見せた!
龍太郎:「ほら、見てよ!カッコよくない?」
スマホの写真には、龍太郎が金と銀の大剣を両手にポーズを取っている姿が!
ダッダーン!どーだ!
龍太郎は、自慢げに写真を見せている。
アイちゃんのツッコミは、またもや間に合わず……。
それには、紗英の横に座っていた研究所所長の乃亜が食いついた。
そして、龍太郎からスマホをぶん取って、まじまじとその写真を見た。
三上:「天堂くん。ちょっといいかしら?」
龍太郎:「ん?」
三上:「この写真、どうやって撮ったの?」
龍太郎:「どうやってって……?あーっ!?」
気づいた時には、時すでに遅し。
そこから、乃亜と紗英の取り調べが始まったのだった……。
◇◇◇◇◇
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