第96話 川崎ブレイク2
◇◇◇◇◇
龍太郎は、地上4000メートル上空のヘリから華麗に両手を広げて真っ逆さまにダイブイントゥザスカイ!
龍太郎:「ウッヒョ!気持ちいい!
スカイダイビングって一度やってみたかったんだよな!ラッキー!」
この大惨事に不謹慎なことを言う龍太郎。
まったく空気が読めてません。
モンスター討伐の延長戦としか考えてない。
それでも、結果的に貢献していることには変わりないのだが……。
龍太郎は、自由落下Gに身を任せて真っ直ぐ一直線に川崎駅前ロータリーのダンジョンブレイクゲートに落ちていく。
俯瞰スキルを使っているので、目標はバッチリ視えている。
落下点への方向調整もバッチリだ!
一方、龍太郎をリリースしたヘリは、そのまま急降下して鶴見川方面の包囲網を目指した。
龍太郎:「よし!目標オーケー!
もうすぐ着地だな。
重力操作アンド飛翔カモン!」
龍太郎は着地する少し手前でふわっと浮き上がり、静かに目的地に降り立った。
まさか、自分がネット配信で生中継されているとも知らずに……。
そして、龍太郎が降り立った地点は、ゴブリンズがわらわらと大量に発生している。
龍太郎:『オーケー!まずはこの辺の数を減らしておくか!』
龍太郎は剣を持たずに、いつもの体術でゴブリンズに相対していた。
次々と素早くゴブリンズに近づき、衝撃剛拳で見る見るうちに討伐していく。
まさに無双状態!圧倒的!
実は、この様子も超高感度望遠カメラにて、全世界に生中継でネット配信されていた。
これを見た視聴者は、またもやネット上でコメントの応酬が繰り広げられていた。
22チャンネル(通称:ダブチャン)でも、個別スレが立ち上がっていて、この話題で大盛り上がりを見せていた。
おい!見てるか?無双してるぞ!
天堂龍太郎って実は隠してた?
一応、第一将持国天なんだよな。
ゴブリンに圧倒的じゃん!
Dランクでもこんなにすごいのかよ!
いや、これはDランクの強さじゃないぞ!
それマジ?
知り合いのエクスプローラから。
どういうこと?
わからん。誰かよろ。
とにかくすげぇな!
これだといけるんじゃね?
その他、METUBE(通称:メツベ)、Z(旧ツッタカター)、アンスタグラム(通称:アンスタ)も同様に炎上して、龍太郎の名が一躍、世の中に広まっていった。
龍太郎:『しかし、すごい数だな!
これってボーナスステージじゃん!』
もうすでにゴブリンズはザコキャラ扱い。
たまに攻撃を受けるが、鋼龍武装スキルのおかげでゴブリンズ如きでは、ダメージが通らなくなっている。
ただ、周囲に一般人がいる可能性があると聞いていたため、究極スキルの超覇気は封印中。
まあ、それがなくても龍太郎にとってはあまり大差ないという理由なのだが。
あくまで、メンバーがいれば使うという話。
それでも、ゲートから発生するゴブリンズ。
だいぶと数は減らしているものの、発生源を抑えないとやはり劇的には減らないみたいだ。
龍太郎:『ほんじゃ、そろそろ入るか!
ブルーノ!ゲートに入るぞ!』
ブルーノ:『ああ、いつでも大丈夫だ。』
ダンジョンブレイクのゲートは、やはり渋谷ゲートよりもだいぶと小さいようだ。
大きさは人間が一人通過できるくらいの大きさに見えるのだが。
なぜ、このゲートからゴブリンズが出てこられるのかが不思議なくらい小さい。
そんなことは気にせずに、龍太郎はネット配信の中継カメラが見守る中、ゲートの中に颯爽と消えていった……。
◇◇◇◇◇
一方、残りのネオ・ダイアモンズを乗せたヘリは、鶴見川方面の包囲網付近に到着。
朱美社長とジェシカに合流したのだが……。
そこには、すでに傷つき体力も限界状態の朱美社長とジェシカが横たわっていた。
やはり、彼女たちには荷が重かった様だ。
カレン:「朱美さん、ジェシカさん。」
朱美:「来たのね。」
カレン:「大丈夫……じゃないですよね?」
朱美:「私たちでは無理みたい。
なんとか頑張ったんだけどね。」
ジェシカ:「……。」
朱美とジェシカは、悔しそうな表情をしているが、命に別状はないみたいだ。
このあと、協会の医務室に運ばれる様だ。
源三:「お嬢ちゃんたち。来なさったか。」
千代:「龍太郎のとこのメンバーだね?」
カレン:「源さん!お千代さん!
なぜ、ここにいるんですか?」
千代:「紗英ちゃんからお呼びが掛かってね。
引退した年寄りも役に立てる様だよ。」
源三:「わしらは、今は待機中じゃよ。
作戦とは言え、申し訳ないことじゃ。」
やはり、作戦とはゲート内侵入の様だ。
朱美とジェシカの限界が近づき、見かねた千代と源三が一度、救出に入ったらしいが、基本的には作戦に従い、待機している模様。
源三:「ところで、さっき上空から落ちてきたのは、あれは小僧か?」
カレン:「あ!はい、そうです。
天堂くんが、ヘリから飛び降りました。」
千代:「ゲート付近に落ちたみたいだねぇ。
ものすごい勢いで落ちていったけど、龍太郎は大丈夫なのかい?」
カレン:「あ!はい。映像でうまく着地したのは確認しましたから大丈夫そうですよ。」
千代:「そうかい。あの子はよくわからないねぇ。どんなスキルを持ってるのか見当もつかないよ。まあ、詮索はしないけどねぇ。」
源三:「それで、小僧は今、単独でゴブリンの中におるわけじゃな。
目的は単独でのゴブリン討伐かのう?」
カレン:「いえ、単独で討伐は始めた様ですけど、本当の目的はゲート内への侵入ですね。」
源三:「ほぅ。一人で大丈夫なんかのう?」
カレン:「たぶん、大丈夫だと思います。
天堂くんは、今やゴブリンズには一撃も与えないくらい圧倒的に強いですから。」
源三:「ほぅ。なるほどのう。
そんなに強くなったか。そうか……。
お千代。ゲート内は小僧に任せるかのう?」
千代:「うーん、そうだねぇ。
あの龍太郎がねぇ。任せるとするかい。
じゃあ、源三。作戦変更だねぇ。
私たちもそろそろ行くとするかね?」
源三:「そうじゃの。せっかく来たのに、このままじゃ申し訳なかろうよ。
久しぶりにひと暴れするかいな。」
千代:「源三。お前とは久しぶりだねぇ。
私はこっちじゃ、スキルが使えないから、お前が先陣を切るんだよ。」
源三:「ほほ。お前も相変わらずじゃの。」
千代:「じゃあ、行くよ!」
源三:「承知じゃ。付いて来んさい。
お嬢ちゃんたちも無理せん様にな。」
そう言うと2人はスッと立ち上がった。
そして、源さんを先頭に駆け出し、自衛隊の包囲網を一瞬で大きく飛び越えてゴブリンズの集団の中に乱入していった。
伝説の2人の戦いぶりは、龍太郎のそれとは違うが、違う意味で圧倒的であった。
まさに薙ぎ倒して行くという表現が合っており、進む先でゴブリンズがバタバタと倒れて行く。個体強度の圧倒的な差によるものだ。
自衛隊が苦戦していたのが嘘の様に。
その様子を見た包囲網を形成していた陸上自衛隊の隊員たちも、疲弊していた士気を一気に高める結果となった。
そして、それは自衛隊全体に波及して行く。
カレン:「やっぱりすごいね。」
華那:「これが伝説ってことなんだね?」
詩音:「あっという間に行っちゃったね。」
美紅:「私たちも行きますか?」
カレン:「そうだね。」
玲奈:「あんなには無理だけど、ゴブリンズならいけるよね!」
亜実花:「うん、頑張るよ!」
カレン:「すいません!義藤さん!」
義藤:「はい!」
カレン:「私たちも行くので、包囲網の皆さんに道を開けてもらう様に言ってもらえますか?」
義藤:「そうですか!わかりました!
少し待っててください!」
義藤は、すぐさま、この辺りを統括している隊長のところに話をしに行った。
ついにネオ・ダイアモンズもゴブリンズ討伐に参画することになる。
義藤:「夢咲さん!準備オーケーです。
そこの前方の包囲網の銃撃を一旦停止して、入れる様に入り口を開けます。
そこから侵入お願いします!
戻る時は合図してください。」
カレン:「わかりました。ありがとうございます!」
華那:「みんな!固まって行くからね!」
カレン:「うん、私たちにできる範囲で頑張ろ!」
美紅:「私、スキル使います。」
カレン:「うん、無理しない様にね。」
華那:「じゃあ、円陣を組もうよ!カレンちゃん!」
カレン:「うん。」
みんなで円陣を組んでカレンが声を掛けた。
暗黙の了解なのか、龍太郎のいない時はカレンがリーダー的役割を担っているらしい。
カレン:「みんな、安全重視だよ。
それじゃ、ファイトー!」
全員:「「「「「「オー!」」」」」」
ここにネオ・ダイアモンズが参戦!
◇◇◇◇◇
特番の生中継は継続して放送中。
『梶木間さん。山本です。
状況に変化がありました!」
映像が鶴見川方面に切り替わる。
『ついに待機していた伝説の2人、源三さん、お千代さんが、自衛隊の包囲網の中に入り、ゴブリン討伐に出ました!ものすごい勢いです!
さすが、伝説のエクスプローラ。
ゴブリンを圧倒的な力で次々と薙ぎ倒しています!』
映像から確認したスタジオの面々からも、驚嘆の声が上がっていた。
『後藤さん!ついに出ましたね!』
『ウッホー!生きる伝説!出たねぇ!
僕も初めて見たんだけど、迫力あるねぇ!』
『坂田さん!どうですか?』
『はい、ちょっと興奮してますよ。
私も初めて見ましたが、圧巻ですね。
自衛隊の士気も上がっている様に見えます。』
『そうですね。私たちと同じく、ネット上でも興奮のコメントで盛り上がっている様です。
ただ、先ほどまで温存ということだったと思うんですけど、作戦に変更があったということでしょうかね?坂田さん?』
『うーん。それはわかりませんね。
先ほど天堂さんがゲート内に侵入したことが関係あるんじゃないですか?
担当の変更というか。
戦力が増えたことで、局面が変化しているのは間違いないですね。』
『はい、良い方向に変化している様です。』
『梶木間さん!山本です。
さらに今、ネオ・ダイアモンズのメンバーも討伐に参加しました!
包囲網の一部が開き、そこから天堂さんを除く6名が包囲網内に侵入しました!
こちらもゴブリンに対して統率された動きで、問題なく討伐しています!
すごいです!頑張ってぇ!』
『一気に局面が動き始めましたね。』
『うおー!カレンちゃん!
いや、すごいよ!善戦してるよ!
とてもDランクとは思えない動きだよ!』
『きちんと統率の取れた良いクランですね。
伝説の2人が先陣を切ったことによって、ゴブリンが混乱しているのも大きいと思います。
これは期待が持てますね。』
『はい。さらにゲートからのゴブリンの発生も天堂さんが侵入してから完全に止まっているとの情報も来ています。
このまま、この良い方向に向かってくれることを期待しましょう!
では、このまま現地の映像を流しながら、ネット上のコメントを一部紹介していきます。』
ネオ・ダイアモンズの到着により、一気に変化した局面に対して、国民はその映像に釘付けとなり、応援や賛辞などのポジティブなコメントで溢れ出した。
これは怒りや不安という感情が一気に期待へと変化した瞬間であった。
一方、世界探検者協会や大国の探検者協会もこの一連の映像を見ており、その内容の違和感に首脳陣が集められ、違う意味で慌ただしく動き出したのであった……。
◇◇◇◇◇
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます