第97話 川崎ブレイク3

 ◇◇◇◇◇


 日本探検者協会本部にて。


工藤:「天堂のやつ、派手にやってるなぁ。」


野神:「そうね。こちらとしては、ありがたいんだけど、やっちゃってるわね。

 墓場案件ってなんだったの?って感じよね。

 ところで源さんとお千代さんが討伐に動き出したけど、あれはよかったの?」


工藤:「ああ、それについては防衛省から連絡が来たが、逆に文句を言っておいたぞ。

 そもそもの話だぞ。

 なら、お前らがなんとかしろってんだ。

 文句言われる筋合いはねえよ。全く。

 あいつらは、自分の体裁しか考えてないからな。

 現場の状況判断が出来ないんだよ。

 そっちはもう放っておいていいぞ。

 それよりも、天堂の方がまずいんじゃねえのか?そっちは大丈夫なのか?」


野神:「あれはちょっとね。

 案の定、それについては、WEA(世界探検者協会)から問い合わせが来たわ。

 ちょっとした騒ぎになってるみたい。

 今は対応出来ないって断ったけど、これが終わったら、会議が設定されることになってしまったわよ。何を聞かれるか……。」


工藤:「まあ、あれを見たら、そうなるだろうな。そっちは任せるぞ。」


野神:「例の乃亜からの情報の件もあるのに、ほんと厄介だわ。」


工藤:「ああ!それもあったな。

 そっちは、まだ大丈夫なのか?」


野神:「今のところ、なんとも言えないわね。

 乃亜の判断に任せることにしたわ。

 こっちはそれに合わせて、処理しなきゃいけないけどね。準備は進めているわよ。」


工藤:「そうか。それは助かる。

 俺も三上の判断なら異論はないぞ。

 だが、まずはこっちだな。

 川崎を早く収束させないとな……。」



 ◇◇◇◇◇



 片や、龍太郎が侵入したゲートの向こう側。

 ここがどこかはわからないが、人間界で言うところの異世界、魔界で言うところの魔物界であることは間違いなさそうだ。


龍太郎:『ん?あれ?』


 異世界に出るや否や、不思議に思った龍太郎。

 襲ってくるゴブリンズを衝撃剛拳で討伐して行くがのだが……。


ブルーノ:『どうした?』


龍太郎:『すぐに出て来てくれ!』


 ブルーノも龍太郎の影の中から飛び出した。

 そして、龍太郎と同じ様に個体強度に任せてゴブリンズを討伐して行く。


ブルーノ:『主よ。これがどうした?』


龍太郎:『どうした?って、思ったより少なくないか?』


 川崎で発生しているゴブリンズの数に比べて、圧倒的に少ない。


ブルーノ:『ああ、そうだな。それがどうした?』


龍太郎:『変じゃないか?』


ブルーノ:『そうか?こんなものだろう。』


 全く話が噛み合わない2人。

 たぶん、2人の持つ常識が一致していない。


龍太郎:『ま、いっか。ブルーノ。

 ちょっと使いたいスキルがあるから気をつけてくれ。』


ブルーノ:『好きにして良いぞ。』


 龍太郎は、今まで一度も使ったことのないスキルを使った。

 これ、一回試したかったんだよな!


 大流星弾!


 龍太郎がスキルを発動すると、空から無数の隕石の様なものが炎を纏って降って来た。

 

 これって広範囲無差別攻撃じゃん!

 想像よりヤバいかも!

 

 広範囲なのは良いが、自分の周り一体にも無差別に降ってくるので、自分もその攻撃の範囲に含まれている様で、使い方に注意が必要なスキルだった。


 危な!これ、今まで使わなくて良かった!

 亜蘭兄さんはどうやって使ってるんだ?


 龍太郎とブルーノは、難なく無差別攻撃を回避するが、ゴブリンズは見事にその攻撃を喰らってバタバタと倒れていった。


龍太郎:『これってヤバいよね?』


ブルーノ:『ん?全く問題ないぞ。』


 まあ、俺やブルーノが余裕で回避できるってことは、これって雑魚キャラ専用スキルって感じだな。

 高レベルの魔物にはたぶん使えないんだろうな。


 新しいスキルの試し撃ちが出来て、一応納得する龍太郎だった。



ブルーノ:『主よ。気が済んだか?

 我はこいつらの発生源を押さえに行くぞ。』


龍太郎:『発生源?何それ?』


ブルーノ:『まあ、ここは我に任せておけ。

 後で説明する。』


 そう言うと、ブルーノはゴブリンズの発生源であろうと思われるポイントに行って何やら謎の行動を取っている。

 龍太郎は、それを俯瞰で見ながら、ひたすら討伐を進めていった。


 一体、何をやってるんだろ?


 ◇◇◇◇◇



 川崎ブレイクのゴブリンズ包囲網内にて。

 源三、千代の2人は、相変わらず圧倒的に討伐を続けている。


源三:『やはり、数が多いのう。

 もう、どれくらい狩ったかのう?』


千代:『愚痴を言うんじゃないよ。

 ゴブリンなんぞ、何匹いても苦にならんだろ?』


源三:『そりゃそうだが、この先は体力勝負になって来たぞい。

 そっちが持つか心配になって来たわい。』


千代:『お前も鈍ったもんだねぇ。』


源三:『お前と比べるのがおかしいわい。

 それにしてもじゃ、ゲートからの発生が完全に止まってるのう。小僧の仕業かのう?』


千代:『ああ、大したもんだよ。』


源三:『それにお嬢ちゃんたちも、あれでなかなか大したなもんじゃな。

 立派に戦力になっとる。』


千代:『そうだねぇ。

 まあ、少し危なっかしいが、伸び盛りってことかねぇ。特にあの4人組かねぇ。最初に会った時とは、顔つきが変わったよ。』


 伝説の年寄りは、そんなおしゃべりをしながら、討伐してる。すでにベルトコンベアに乗った流れ作業の様に瞬殺して行く。

 この年寄りたちは、もはや化け物です。

 もう、どちらがモンスターか分からない。



 一方、そのネオ・ダイアモンズ御一行様も獅子奮迅の活躍とまではいかないまでも、堅実に数を減らして行く。


華那:『カレン、行き過ぎ!戻って!

 詩音!前に出てサポート!

 亜実花!出過ぎ!後ろ!

 玲奈!亜実花のサポート!

 美紅!そっちのスキルお願い!』


 パーティ戦の経験値が高いからか、戦闘に入ると自然と華那を中心に5人組ならぬ6人組の戦型を組んで、隊列を崩さないように襲ってくるゴブリンを次々と討伐していた。


 また、自分たちではあまり気づいていなかったが、落ちこぼれ組と呼ばれていたのが嘘の様に全員が著しく成長していた。

 それは、この戦況を映像で見ていた視聴者にも伝わり、以前の風評を一掃させ、新たな認識を拡げさせる結果となった。


 カレンちゃんたち、凄くないか?

 華那って子がリーダー?

 よく見たら、みんないいんじゃね?

 元ダイアモンズだよな?

 誰だよ!落ちこぼれ組って言ってたの?

 知らない……。

 Dランクなんだよな?

 結局、実際に見たことないもんな。

 これがエクスプローラかよ!

 でも、さっきの国士無双とは違うぞ。

 あれが普通か?

 それは謎だな。

 ネオ・ダイアモンズ最高!

 みんなで応援しようぜ!



 伝説の老人組と元落ちこぼれ組の活躍によって、ゲート発生時から増加傾向にあった包囲網内のゴブリンズ残存曲線が、減少傾向に傾いて来たことにより、自衛隊の包囲網も鶴見川方面から押し返す結果となった。


 よし!行けるぞ!

 このまま、押し返せ!

 うおーーーーーーー!


 自衛隊の面々の士気も劇的に上がり、徐々にではあるがようやく川崎ブレイクは収束方向に向かっていた。



 ◇◇◇◇◇



 米国探検者協会(AEA)の首脳会議。


会長:「ジャパンのカワサキブレイクの件だが、初めてのブレイクの割にはうまく立ち回っている様だな。

 それで、ミスターテンドウの情報はどうなっている?」


幹部:「彼に関しては、未だ有効な情報が得られていません。得られる可能性も低いかと。

 また、WEAを通じてJEAに情報開示の要請を出しましたが、断れました。」


会長:「まあ、そうだろうな。

 だが、各国より先に動く必要があるぞ。

 すぐにソフィアをジャパンに派遣しろ。」


幹部:「JEAの了解を取る必要がありますが、すんなり受け入れるかどうか。」


会長:「構わん!私から直接、ミスノガミに話をつける。すぐに準備しろ!」


幹部:「ラジャ!

 今すぐにソフィアをジャパンに派遣します。」


 なぜか、アメリカにロックオンされてしまった龍太郎。

 派遣されるソフィアって誰ですか?


 ◇◇◇◇◇

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