第91話 意外な来訪者2
◇◇◇◇◇
突然の朱美社長(+ジェシカ)の来訪。
そして、突然の株式譲渡から、突然、共同オーナーになった龍太郎。
契約も終わり、これで話は終了かと思ったのだが……。
朱美:「天堂さん。共同オーナーには特典があるんですよ。
これも筆頭オーナーの喜多川が決めたことなんですけど、共同オーナーは、バタフライ・コーポレーションが経営する店舗は全店タダで利用できますからね。
このあと、全店舗に天堂さんの顔写真付きで新オーナー就任の通知を出しておきます。
全店舗、顔パスで利用できますよ。」
朱美は、どうですか?といわんばかりの自慢げな表情をした。
龍太郎:「え?バタフライの経営する店舗って……。」
朱美:「いろいろありますけど、主に男性向けの店舗が多いですね。
主に関東が多いですけど、全国展開してますからね。」
いや、知ってるんだけど……。
龍太郎も以前、アイちゃんから聞いてどういう店かは知っている。
朱美:「私も定期的に視察に行くので、一度ご案内させてもらいましょうか?」
龍太郎:「えーっと。どうしようかな。」
ウキウキ。ドキドキ。
カレン:「天堂くん。顔がニヤけてるよ。
どういう店舗か知ってるんだね?
何想像してんだか。」
出た!鬼の夢咲さんの突っ込みが入った!
龍太郎:「ん?ニヤけてたか?そんなことないぞ。」
いかん。顔に出てたか。喜んでないぞ!
カレン:「天堂くん!行かなくていいよね?」
龍太郎:「いーや、ここは行ったことがないから、どんなところか見学するのもいいかなって。」
カレン:「えー!どういうお店に行くつもりなのよ?」
龍太郎:「それは……。
うーん。朱美社長にお任せということで。」
朱美:「ええ、お任せいただいていいですよ。
北斗は高級クラブ。南斗はキャバクラをよく利用してますね。」
おー!来たー!大人の世界!ウヒョ!
龍太郎:「じゃあ、お任せで!むふ。」
カレン:「むふって何よ?
それなら私も行くからね。」
嘘?なんで夢咲さんまで!?
龍太郎:「えー?一緒に行くのか?
そういうところって男が行くところだろ?」
朱美:「いえ。女性が来られても大丈夫ですよ。
楽しいかどうかはわかりませんけど。」
龍太郎:「えー?そうなのか?
うーん。夢咲さんと一緒かぁ。」
ちょっと、残念そうな龍太郎。
カレン:「何よ。一人で行きたいの?
でもやっぱダメね。一緒に行くわ。」
朱美:「いいですよ。オーナーの同伴の場合は無料ですからね。」
まあ、俺も行ったことないから、よくわかってないし、そうするか。
龍太郎:「じゃあ、夢咲さんと同行で。」
朱美:「はい、わかりました。
お二人でいいですか?」
龍太郎:「みんなはどうする?」
他のメンバーにも聞いてみる。一応な。
華那:「はい!私はパスかな?」
詩音:「はい!私もパスだね。」
亜実花:「えー!なら、私もパスだよ。」
玲奈:「じゃあ、私も!」
3人:「「「どーぞ、どーぞ!」」」
玲奈:「えー!どういうこと?みんな行くの?」
華那:「嘘嘘。なら私たち4人はパスでいいよね。」
玲奈:「もう!ビックリした〜!
意味がわからなかったよ!」
よし。他のメンバーは行かないと。
龍太郎:「オケ。じゃあ、朱美社長、2人で。」
無視された美紅が噛み付いた。
美紅と龍太郎の怒涛の応酬。
美紅:「こらー!私が答えてないんだけど!」
龍太郎:「お前は、はなから却下じゃ!」
美紅:「ちょっと〜!なんでよ〜!」
龍太郎:「うるさいなぁ。行きたいのか?」
美紅:「行きたくない。」
龍太郎:「ウザ。じゃあ、言うなよ!」
美紅:「あんたが聞かないから悪いんでしょ?」
龍太郎:「ちびっ子禁止だ。」
美紅:「ムキー!エロじじい!」
もう、こいつは放っておこう。
朱美:「それじゃあ、天堂さんと夢咲さんのお二人でアレンジしますね。
夢咲さんも一緒となるとちょっと特別な感じの方がいいかもしれないわね?
日取りが決まったら連絡しますね。
ジェシカ。いくつかお店の候補をピックアップしておいてくれる?」
ジェシカ:「承知です。社長。」
龍太郎:「じゃあ、朱美社長。連絡待ってるよ。
これからもよろしくな。」
朱美:「ええ、こちらこそ。
今後ともお付き合いできて嬉しいですわ。」
これで用件は済んだかな?
龍太郎:「じゃあ、用件も済んだし、2人ともそろそろ帰る?」
朱美:「本題に関しては滞りなく済みました。
でも、天堂さん。まだ別件があるのよ。」
龍太郎:「え?本題以外にまだあるのか?」
朱美:「早乙女さんにちょっとね。」
龍太郎:「え?早乙女さん?」
美紅は朱美に不意打ちに指名されて、先ほどまでの元気はどこへ行ったのやら、かなりあたふたしている。これは怪しい。
龍太郎:「お前!何かしたのか?」
さらにオドオドしている。やはり怪しい。
朱美:「早乙女さん。これは借用書です。
元は契約書でしたけどね。
確認してもらえるかしら?」
美紅:「え!借用書ってなんですか!?」
これには美紅も完全に驚いて声を上げた。
朱美:「預けたお金を返していただこうと思ってね。」
美紅:「預けたって?くれたんじゃないんですか?」
朱美:「いいえ。お渡ししたのは成功報酬として前払いした形ですよね?
今日、こうして天堂さんとお話しさせていただいて和解することができたので、もう契約は打ち切ることになるわね。」
美紅:「うぇ〜!そんな〜!マジですか?」
朱美:「マジよ。」
カレン:「美紅ちゃん!どういうこと?」
美紅は言い出せないのか、黙ったままなので、カレンは机の上に置かれた借用書を拾い上げて、内容を確認した。
カレン:「えー!何なの?この金額は?」
龍太郎:「どれ、見せてくれ!」
龍太郎もその借用書を受け取って、その金額を確認した。
龍太郎:「はぁ!?なんじゃこりゃ?
一、十、百、千、万……、一億……。え?
どういうことだ?早乙女さん!」
美紅は、その金額が分かっているので、それが借金になったことに困惑して挙動不審になっている上に、頭の中は真っ白状態。
朱美:「じゃあ、私から説明しますね。」
黙っている美紅に代わって、朱美社長が経緯を話し出した。
朱美:「先日、と言ってもだいぶ前ですかね。
早乙女さんから会社の方に連絡がありまして、彼女とお会いしたんです。
例の件について何か補償をする様にと。
それで私は慰謝料として妥当と思われる金額をお渡ししました。」
ああ、例の件って誘拐もどきのやつだな。
カレン:「美紅ちゃん!そんなことしてたの?」
カレンは、厳しい表情で美紅を見た。
美紅は下を向いてそれに反応しない。
こいつの気持ちもわかるけど、関わるなって言っておいたのにな。
龍太郎:「朱美社長。慰謝料として渡したんなら借用書はおかしいんじゃないか?」
龍太郎は、疑問に思ったことをそのまま朱美に質問したが……。
朱美:「ええ、当然、お渡しした慰謝料はお返ししてもらうつもりはないですよ。
この借用書は、そのあとの契約に基づいてお渡ししたお金に対してですからね。」
龍太郎:「ん?どういうこと?」
朱美:「はい、慰謝料をお渡しした後に再度連絡を貰いましてね。それからお会いした時に天堂さんとの和解に協力するから、その成功時に報酬をと提案を頂いたんです。
その報酬は明らかに法外な金額だとは思いましたけど、私も天堂さんとの和解は是非とも叶えたいと思ったので契約させてもらいました。
その時の契約書ですね。」
龍太郎は、もう一度契約書兼借用書をあらためて確認したのだが……。
龍太郎:「なるほどな。そんなもんによくこれだけの金額を出したな。」
朱美:「確かに法外な金額ですけど、私にとっては大した金額ではないのですよ。」
うわ。大したことない?
やっぱ、お金持ち?いや、すげーお金持ち?
龍太郎:「なぁ。朱美社長。
これって結果的に成功ということにはならないのか?」
朱美:「なりませんね。その条件もきちんと契約条項に書かれていますよね。
今回は契約不履行となります。
ですから、契約書は借用書に切り替わってるんです。」
確かにきちんと条件が書かれている。
だから、今回は失敗ということになるのか。
なんで、こんな契約するんだよ。
早乙女さん!
龍太郎:「早乙女さん。すぐにその金を返せよ。それでこの話は終わりだよな。」
龍太郎は美紅に冷たい一言を伝えるも、美紅の反応はなく俯いたままだ。
龍太郎:「おい!聞いてるのか?」
これに関しては、カレンも龍太郎に同意しているのか、なんと言っていいのかわからないのか、美紅の反応を心配そうに見ている。
4人娘は、この件はよくわかっていないので、意見することはなく、見守っているのが精一杯の様子だ。
少しの沈黙に後、美紅はボソッと小声で呟いた。
美紅:「もう、お金ない。」
龍太郎:「ん?はぁ!?アホか?
こんだけの金額全部使えるわけないだろ!
いくら残ってんだ?」
またまた、美紅はボソッと呟いた。
美紅:「全部、使った。うぐっ。」
もう美紅は吐きそう。
龍太郎:「はぁ!?お前なぁ!何に使ったんだよ?」
龍太郎は美紅に厳しい口調で聞き返したが、カレンが何かを思い出した様に呟いた。
カレン:「あ!天堂くん!装備!」
それに龍太郎もピンと来たのか。
龍太郎:「あ!あの装備か!?」
美紅は静かに首を縦に振った。
確かにあの装備なら納得だな。
龍太郎:「そっか。装備に使ったんだな。」
それにも美紅は静かに頷いた。
龍太郎:「うーん。なら、しゃーないかぁ。
装備に使っちまったんだよなぁ。」
この感覚は龍太郎のおかしいところだが、装備に使ったとすれば異論はない様だ。
カレンもそれには突っ込まない。
朱美社長においては淡々としたものだ。
逆に美紅の方が何か言われると思っていたのか、拍子抜けした感じになっている。
龍太郎:「でもまあ、借りたもんは返すしかないよなぁ。それがルールってもんだからな。」
美紅:「ううぅ……。」
美紅は、そう言われて、声は上げないまでも涙が止まらなくなった。
カレン:「美紅ちゃん。天堂くんの言う通りだよ。
私も協力するから一緒に返そう。」
美紅:「ううううぅ……。
カレンさんに……迷惑かけられないです。」
龍太郎:「なら、自分で返せよな。」
龍太郎は冷たい。
傷口に塩を塗った。
本人に悪気はないのだが、空気は読めない。
続けて、朱美社長が淡々と割り込んだ。
朱美:「早乙女さん。
私もこれで儲けようとは思ってないので、無利子にしてますからね。
早乙女さんに損はないはずですよ。
期限通りに返済してくださいね。
もし、返済に困ったら、我が社で働ける店を紹介しますから。
早乙女さんなら稼げると思いますよ。
そういう趣味の方もいますから。」
龍太郎は、そういうBプランもあるのか。と朱美社長に関心していた。
アフターケアがしっかりしている。
が、当の本人は顔が引き攣り、青ざめた表情に変わった。
他のメンバーも意味を察したのか、背筋が凍った。
あの金額だけに、きっとあっち系だよね?
カレン:「美紅ちゃん。頑張って返済しよ。」
察したカレンが励ますも、美紅はその場にうずくまり号泣してしまった……。
そして、一通りの用件が済んだ朱美とジェシカは、また連絡します。と言ってクランハウスを後にしたのだった。
いきなり超高額債務者となってしまった美紅は、立ち直れないくらいのダメージを受けて、心が折れている。
返済出来なければ、夜の街への直行便。
それはなんとしても回避しないといけない!
どうなってしまうんだ?幼女美紅!
カレン:「みんな。相談なんだけど、返済出来るまでみんなの取り分から使わない分を美紅ちゃんに貸してもらえないかな?」
カレンがみんなに提案をした。
龍太郎:「ああ。俺はいいぞ。」
龍太郎が口火を切ると、4人娘も考えることなくそれに同意。即決。
美紅:「うううううぅ。」
相変わらず、項垂れている美紅だが、みんなの温かい好意に声を上げて泣いた。
龍太郎:「じゃあ、明日からの狩りは思い切って第二階層に行ってみるか?
少しは多く稼げるだろ。知らんけど。」
カレン:「そうだね。天堂くん、ありがとう。」
龍太郎:「華那、玲奈、詩音、あーみん、どうだ?」
4人娘:「「「「もちろん、いいよ!」」」」
美紅:「ううううぅ。
みんな、ありがとうございます。うう。」
早乙女さん、何してんだよ!
と思いつつ、
少しでも早く返さないとな!
と、どっちやねん!の龍太郎。
いざとなったら、龍次郎の狩りで貯めてるコアを売って渡せばいいか。
龍太郎:「よっしゃ!返すぞ!」
全員:「「「「「おー!」」」」」
ネオ・ダイアモンズ!借金を返せ!
っておかしな展開になってきたぞ……。
◇◇◇◇◇
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