第88話 懐かしい目標

 ◇◇◇◇◇


 龍太郎、カレン、美紅、華那、玲奈、詩音、亜実花の合計7名がしばらくゲート内でわちゃわちゃしていたが、いま、異世界ゲートを潜って、協会本部の登録課に向かっている。

 建物の階段をかけ上って2階に到達。


 ようやく、カレンと美紅が合流して、ネオ・ダイアモンズが7名体制となる日が来た。


野神:「天堂くん。結構時間がかかりましたね?本日はどのような登録ですか?」


龍太郎:「野神さん!?」


野神:「ふふふ。やっぱり来たわね。」


龍太郎:「どうしたんですか?」


野神:「あなたたちが来るだろうと思って、代わってもらったのよ。」


龍太郎:「え?なんで知ってるの?」


野神:「こう見えても、協会幹部ですよ。

 協会内の情報は常に把握しておかないとね?

 特に天堂くんの情報はね。」


龍太郎:「じゃあ、何があったかも?」


野神:「あくまで、協会内だけよ。

 ゲート内のことはわからないわよ。

 だから、持ってる情報に基づいた予測ってやつね。」


龍太郎:「怖ぇ!筒抜けかよ!」


野神:「そうよ。天堂くんは変なことできないわね?

 で、今日は夢咲さんたちが合流するんでしょ?良かったわね。」


龍太郎:「ああ、そうだよ。全く。」


野神:「じゃあ、この用紙に必要事項を書いて提出してもらえるかしら?

 夢咲さんたちは、こっちもね。」


 ゴッドブレスユー!のクラン解除とネオ・ダイアモンズへの加入の両方を申請した。


野神:「はい。書類はOK。

 じゃあ、夢咲さん、早乙女さんは、IDカードを出してね。

 新しいクランの登録しますからね。」


 野神さんは慣れたもので、手際良く登録を進めながら、龍太郎に話しかける。


野神:「それと宝生くんは意識が戻ったそうよ。

 怪我は大したことないみたいね。

 今は念のため、医務部で精密検査をしているわ。」

 

龍太郎:「そうか。」


野神:「あと、喜多川くんから事情は聞いたわ。

 大変なことになってたみたいね?」


龍太郎:「ああ。で、宝生はどうなるんだ?」


野神:「彼はこのあと退院を待って警務部に拘束されるでしょうね。

 いろいろと手続きがあるから、この先のことはわからないけど、聞いた話からすると懲罰委員会にかけられるでしょうね。

 このあと、あなたたちにも事情を聞くことになると思うわ。」


龍太郎:「ああ。あいつは絶対に許さん。」


野神:「でしょうね。いくらエクスプローラ同士のこととは言え、殺人未遂。

 懲罰は軽くないでしょうね。

 でも、天堂くんが生きていて良かったわ。」


龍太郎:「ギリギリだったんだよ。

 すげー危なかった。あいつ、無茶苦茶だよ。

 んー、まあ、もう終わった話だからこれ以上言ってもしゃーないけどさ。」


野神:「そうね。エクスプローラをやっていると今後もいろいろ起きると思うわ。

 なんかあったら相談に来るのよ。

 はい、登録完了しましたよ。

 これで、夢咲さんと早乙女さんは晴れてネオ・ダイアモンズのメンバーね。

 おめでとうございます。」


カレン・美紅:「「ありがとうございます。」」


 カレンと美紅は嬉しそうにIDカードを受け取った。


龍太郎:「あ!ちょっと待って。忘れてたよ。

 夢咲さんに代表を変更して欲しいんだけど。」


 だが、それをカレンは遮った。


カレン:「天堂くん。それなんだけどさ。

 やっぱりやめとく。」


龍太郎:「え?なんで?」


カレン:「やっぱり、このクランの中心は天堂くんだよ。私じゃない。

 それに代表じゃなくても、いろいろサポートすれば問題ないでしょ?

 現に今までは天堂くんが代表だったわけだし……みんなはどう思う?」


華那:「私も先生が代表でいいと思うよ。」


 真っ先に華那が答えた。


玲奈:「うん、そうだね。先生がカレンちゃんを指名したなら別にそれでもいいんだけど、やっぱり、先生が代表の方がしっくり来るかな。」


 玲奈が珍しく、まともなことを言っている。

 が、それには、詩音もあーみんも賛同した。


 そして、みんなが美紅の方を見る。


美紅:「え?私?私はどっちでもいいわよ。

 それに私に発言権はないでしょ?

 それくらいわきまえてるわよ!」


カレン:「ね?だから、そのまま天堂くんが代表やって。」


龍太郎:「うーん。俺って一番向いてないと思うけど。

 じゃあ、華那がやるか?」


華那:「もう!先生!台無しじゃん!空気読みなよ!

 ここで、はい、私がやります!ってならないでしょ!」


龍太郎:「そうなのか?まあ、そんじゃ、このままにするか。俺は代表なんて柄じゃないけど、よろしくな。」



美紅:「あのー、天堂さん。」


龍太郎:「ん?早乙女さん、何?

 お前がやりたいのか?

 でも、それは一番ないな。」


美紅:「違うよ!これで私たちもネオ・ダイアモンズのメンバーじゃん?」


龍太郎:「お前はついでだけどな!」


美紅:「もう!ついでって何よ!」


龍太郎:「ほんじゃ、幼女枠な。」


美紅:「もう!いいわよ。幼女枠で!

 それでね。早く新しいクランハウスに引越ししたいんだけど。」


龍太郎:「あ!そうか。それもそうだな。

 じゃあ、今から引越しするか?

 夢咲さんはどう?」


カレン:「私もお願いしたいかな。」


龍太郎:「じゃあ、決まりな。

 みんなも手伝ってくれ。」


華那:「うん。もちろん。賑やかになるね。」

玲奈:「じゃあさ。引っ越しが終わったら、昨日の続きをやろうよ。」

詩音:「そうだね。先生とカレンちゃん先に帰っちゃったしね?」

亜実花:「うんうん。そうしよ!じゃあ、行こ!」


カレン:「みんな、ありがとう!

 これからよろしくね。先輩たち。」


華那:「ふふふ。カレンちゃんに先輩って言われるとちょっと嬉しいかも。」


龍太郎:「じゃあ、行くか?

 野神さん、またな。」


野神:「はい、天堂くん。また連絡しますね。」


 総勢7名のネオ・ダイアモンズのメンバーは、各々がそれぞれの喜びの想いを胸に協会本部の登録課を後にした。



 ◇◇◇◇◇



 引っ越しも無事に終わり、ネオ・ダイアモンズのクランハウスにて、昨日の続きのパーティが開催されていた。


美紅:「これが夢のA地区生活!

 私もセレブの仲間入りね!」


龍太郎:「お前はそればっかだな。」


美紅:「当たり前じゃない!エクスプローラの夢よ!

 まさか、こんなに早く実現するなんて超ラッキー!カレンさんについてきて良かった〜!」


カレン:「それって天堂くんのおかげでしょ?」


美紅:「そうですけど〜!

 この人が第一将持国天とか、マジ有り得ないんですけど。」


龍太郎:「それな!それは俺も同感だぞ。

 夢咲さんの第二柱女神ってのはわかるけど、流石にな。」


美紅:「それなら、私も第十柱くらいにはいると思うよ。たぶんだけど。」


龍太郎:「それもよくわからないけどな。

 世間でそんなに幼女好きがいたのが不思議だよな。」


美紅:「はいはい。どうせ、幼女枠ですよ。」


龍太郎:「明日からまた、探検の再開になるけど夢咲さんたちも一緒に行くよな?」


カレン:「ミズシマダンジョン?」


龍太郎:「ああ。こいつらのレベルアップ。

 覚醒するまでは、当分はそこでやるつもりなんだけど。」


カレン:「覚醒って何?」


 カレンは初耳のワードに反応した。


華那:「あ!先生!もう、口軽いなぁ!」


龍太郎:「あれ?そうだったか?秘密だったっけ?」


華那:「まあ、カレンちゃんとミクミクだからいいけど。」


龍太郎:「悪い。ただ、これから一緒に行動するんだから、知っておいてもいいよな?」


華那:「うん、そうだね。

 私たちって落ちこぼれ組って言われてたんだけど、それって先生曰く、私たち4人とも覚醒系スキルだったんだよ。

 覚醒するまではスキルが使えないってことなんだって。

 だから、レベルアップして覚醒するかはわからないんだけど、それしか今のところ情報がないから、先生に協力してもらってるの。」


龍太郎:「そういうことだ。

 今はレベル5だけど、最低でもレベル10になるくらいはいるんじゃないかな?」


カレン:「そうだったんだね?

 覚醒系スキルなんて初めて聞いたよ。

 天堂くんはなんでそんなこと知ってるの?

 たまに物知りだったりするよね?」


龍太郎:「うっ!それはだな……。

 ボカロ声の物知りスキルちゃんのおかげだ!」


 うーん。苦しい……。


カレン:「へぇ。天堂くんってスキルいっぱい持ってるもんね。それもすごいね!」


美紅:「え?スキルいっぱい持ってる!?」


 そのワードが美紅に引っかかってしまった!


美紅:「え?え?どういうことですか?カレンさん!?」


カレン:「あれ?天堂くん。美紅ちゃんには言ってなかったんだっけ?墓場案件。」


龍太郎:「ん?そう言えば言ってなかったな。

 こいつ、口軽そうだから。」


美紅:「ちょっと〜!あんた!

 誰が口が軽いのよ〜!もう!

 あんた、私の時だけ無茶苦茶言うわね!

 他のみんなみたいに気を遣いなさいよ!

 これだから、あんたはモテないのよ。」


龍太郎:「グサ!言っとくけどな!

 お前にモテたくはないぞ!

 モテないのは、モテないのは……。

 自分でもわかってるわ!」


美紅:「おー、開き直ったよ。チェリ男さん。」


龍太郎:「誰がチェリ男じゃ!ちびっ子!

 お前もモテたことないだろ!ペチャパイ!」


華那:「あー!先生!ペチャパイはダメだよ。

 乙女に失礼だよ!」


龍太郎:「うぐっ!お前まで!」


美紅:「そうだ、そうだ!

 華那さん、もっと言ってあげて!

 乙女心が傷ついた。責任とってよね!」


龍太郎:「うう。なんでこうなるんだ〜!」

 

カレン:「美紅ちゃんもそれくらいにしておいたら。

 チェリ男なんて言うから。」


美紅:「はい。そうですね。チェリ男さんにチェリ男さんって言ったら失礼でしたね。」


龍太郎:「お前ー!ぐぬぬ〜!」


美紅:「まあ、それは置いておいて、スキルいっぱいってどう言う意味ですか?」


カレン:「天堂くん。美紅ちゃんも今後は一緒に行動するわけだしね。」


龍太郎:「むー。まあ、そうだな。

 俺が墓場まで持って行く案件、墓場案件だ。

 俺のスキルが超能王スキルキングって言うんだよ。

 これって、20歳の誕生日に覚醒したんだけど、他人のスキルを登録できたりするわけだ。

 で、レベルが上がると使えるようになるってわけで、スキルいっぱいというわけだよ。」


美紅:「何それ!?じゃあ、浄化スキルだけじゃないってこと?」


龍太郎:「ああ、そうなるな。

 これは墓場案件だから、絶対誰にも言うなよ!絶対だからな!

 この世界で俺だけなんだよ。

 これバレると本当にヤバいからな!

 ここのメンバー以外には、協会の野神さんと工藤さんにしか言ってない。

 極秘シークレット案件。略して墓場案件。

 頼むぞ!絶対だからな!

 言ったら除名するからな!」


美紅:「わかったわよ。

 それにしても、あんたの秘密、相当やばいわね。」


龍太郎:「そうなんだよ。でも、これのおかげでだいぶ助かってるところがあるからな。」


美紅:「あんたの強さの秘密がわかった気がする。チートだね。あの綺麗な剣技もそう?」


龍太郎:「ああ、そういうことだ。

 他にもいろいろあるけど、それは実際に行ってから説明するからな。」


美紅:「へぇ。ちょっといいかも。

 なんか、すごいね。」


龍太郎:「だろ?お前もレベル上げ手伝ってやるから、本当に黙ってろよ。」


美紅:「お!いきなりカッコよく見えてきたよ。カッコいいチェリ男だね。」


龍太郎:「だから、それやめれ〜!」


カレン:「ふふふ。でね。天堂くん。

 これ、持ってきたの。

 ねえ。ここにも飾っていい?」


 カレンは、一枚の紙を龍太郎に手渡した。


【打倒!黄色く光るやつ!!】


龍太郎:「あ!これか!ちょっと懐かしいかも。もちろんいいぞ。」


玲奈:「えー、先生。これ何?

 打倒!黄色く光るやつ?」


龍太郎:「ああ、これは俺たちの目標だな。

 最初に夢咲さんとクランを組んだ時に、決めた目標なんだ。

 当分先になると思うけど、いつか行けたらいいなって言う場所な。」


詩音:「へぇ。そんなのがあったんだ。

 でも、黄色く光るやつって?」


龍太郎:「それは、ゲート内に行ってから夢咲さんに見せてもらおう。

 実際に見た方が早いからな。」


カレン:「うん。そうだね。

 みんなにも説明するから。」


華那:「じゃあ、それってネオ・ダイアモンズの目標ってことだね?」


龍太郎:「ああ、そうなるな。

 でも、そのためにはレベル上げを頑張らないとな。

 ところで、夢咲さんと早乙女さんはレベルいくつなんだ?」


カレン:「私はまだレベル4なんだ。」


 ほぅ。夢咲さんはレベル4か。


美紅:「私はレベル5。みんなと一緒。」


 なるほど、早乙女さんがレベル5ね。


龍太郎:「そっか。ならちょうどいいな。

 まずは目標、全員レベル10だな。

 ちなみに俺はレベル20な。」


美紅:「あんた……そのマウントって要る?」


龍太郎:「ちょっとくらい自慢させてくれよ〜!

 ずっとレベル1の底辺だったんだから!」


玲奈:「先生!わかる〜!それすんごくわかる!」


龍太郎:「な!そうだよな!玲奈!」


華那:「あ!先生!私もわかるよ!」

詩音:「あ!私も!」

亜実花:「あ!私も!」


玲奈:「ん?何これ?じゃあ、私も。」


3人:「「「どーぞ、どーぞ。」」」


玲奈:「なんでやねん!私が言い出したのに!」


全員:「「「「「「わははははは!」」」」」」


 落ちはやはり玲奈の役回りでした。


 今日は、宝生との勝負で大変なことがあったにも関わらず、やっとカレン(ついでに美紅)が合流したこともあって、大盛り上がりのクランハウスA-103でした。


 明日から7人体制の新生ネオ・ダイアモンズが始動します。乞うご期待。


 ◇◇◇◇◇

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る