第85話 勝負の条件
◇◇◇◇◇
異世界ゲート内販売ショップ前。
少し待っているとネオ・ダイアモンズの4人娘がやってきた。
華那:「あ!いたいた!」
玲奈:「先生!カレンちゃん!」
詩音:「みんなで来たよー!」
亜実花:「まだ、2人だね。」
龍太郎:「ああ、お前たち、来たのか?」
華那:「うん。今日は先生の応援だよ。」
龍太郎:「そっか。ありがとな。」
4人娘の後ろから隠れるように美紅もついて来ていた。
カレン:「あ!美紅ちゃんも来たんだね?」
美紅:「はい……やることないし。
どんな感じか見ておこうかなぁって思って。」
カレン:「ふふふ。ありがとう。」
龍太郎:「おい!早乙女さん!
その装備!どうしたんだ?」
装備についてよく知らない龍太郎が見ても明らかに高級な装備に変わっている。
カレン:「美紅ちゃんね。臨時収入が入ったんだって。」
龍太郎:「いやいや。それにしてもだなぁ。」
美紅:「天堂さん!ま、いいじゃない?
気にしなーい!気にしなーい!」
こいつ、本当かよ!謎が多いな。
普通、これだけの装備を揃えたら、すごい額になるだろ?……たぶん。大丈夫か?
ま、夢咲さんの装備に比べたら、全然劣るけど……。って、比べるのがおかしいか?
そこに異世界ゲートを通って3人が現れた。
宝生舞夢を先頭に、喜多川北斗と南斗がこちらに向かって歩いてきた。
宝生:「やあ!小蝿くん。久しぶりだねぇ。
カレン姫もいるね。相変わらず綺麗だね。」
嫌味ったらしい言い方するよなぁ。
宝生:「他にもオーディエンスがいるじゃん!
あれか。小蝿グループの4人組さんとカレン姫のところの幼女さんだね。
わざわざ、ありがとう!
今日は面白いショーが見られるから期待しといてよね。」
本当に腹立つなぁ!
それにしても、宝生も装備はヤバそうだな。
全身、真っ黒で気持ち悪い。
暗黒騎士ってのが、関係してるのか?
さらに後ろの喜多川兄弟の装備と威圧感が相変わらず、ものすご〜くヤバい!
さすが、ナンバー1、2と言ったところか?
でも、なんでこの2人は来たんだ?
宝生:「あ!小蝿くん。なんで一緒に喜多川兄弟が来たんだ?って思ったでしょ?」
ギクっ!こいつエスパーかよ?
龍太郎:「ああ、なんでだ?」
宝生:「だろうね。そう思うよねぇ?
本当はさ。この勝負は全然乗り気じゃなかったんだけど、うちのボスからの指示なんだよね。
で、ボスがこの勝負のスポンサーってことさ。」
龍太郎:「さらに意味がわからん。」
宝生:「この勝負の条件だよ。
この勝負に僕が勝ったら、国士無双の代表権を譲ってくれるって言うんでね。
それで受けたってわけ。
ついにこの国のトップになる日が来たんだよ!すごいでしょ?」
宝生は、カレンに向けてウインクする。
それをカレンは、左に受け流す。
龍太郎:「へぇ。良かったな。
でも、それはお前が勝った場合だよな?」
宝生:「そうそう。僕が勝った場合だね。」
龍太郎:「負けた場合は?」
宝生:「ん?何もないよ。
元々、負けた場合ってのが、設定にないからさ。出来レースじゃん。これって?」
龍太郎:「お前なぁ……。まあ、いいや。
俺も勝つ想定しかしてないしな。」
宝生:「ははは、相変わらず、頭のネジが緩んでるのかな?能天気な小蝿だなぁ。」
龍太郎:「何回も小蝿って言うな!
お前こそ、性格悪いぞ。ゴキブリ野郎!」
宝生:「あらら。カッチーン!それ言っちゃったね?
もう、普通に終わらす気はないよ。」
龍太郎:「ああ、どーぞ。最初からそのつもりだろ?
俺が勝ったら夢咲さんが俺のクランに合流するからな。それが条件だ。
で、勝負の方法は?」
北斗:「待て!天堂よ。」
ここで、北斗が会話に割り込んできた。
北斗:「この勝負が出来るように配慮したのは俺だ。
お前が負けた時の条件は俺が設定した。
タダで勝負できるとは思ってないよな?
もし負けたら、天堂は俺の傘下に入る。
それが条件だ。いいな?」
龍太郎:「それって、俺が国士無双に入るってことか?」
北斗:「いや、俺の直属の部下になるってことだ。」
ん?どういうことだ?
喜多川北斗の直属の部下?
俺は全くごめんだが、他のエクスプローラなら泣いて喜ぶ条件じゃないか?
周りのオーディエンスもこの条件には、ざわついている。
意味がわからん。何のメリットがある?
まあ、どのみち勝負する必要があるから仕方ないな。
龍太郎:「ああ、仕方がない。その条件を受けるよ。」
間髪入れず、宝生が調子に乗ってきた。
宝生:「じゃあ、カレン姫は僕の直属の部下ね。」
この発言には、北斗がキレ気味にドスの効いた声で制止した。
北斗:「舞夢。調子に乗るな。
お前への条件はすでに提示したはずだ。
その条件は却下だ。いいな!」
宝生:「はいはい。わかりましたよ。
そんなに怒らなくても……。」
へぇ。喜多川北斗は意外に紳士的なところがあるな。イメージと違うぞ。
ただ、宝生が負けた時のリスクがないってのが癪だよなぁ……。ま、仕方ないか。
条件を整理すると。
宝生が勝った場合
・宝生が国士無双クランの代表権を得る
・俺が喜多川北斗の直属の部下になる
俺が勝った場合
・夢咲さんがネオ・ダイアモンズに合流する
ってことだよな。
北斗:「勝負の方法も俺から説明する。
まさか、ここで殺し合いをするわけにはいかないが、中途半端な勝負ではお互いにあとで納得いかないだろう。
そこで模擬戦を行うことにした。
これは、俺のクランでも実力を測るために実際にやっていることだ。
武器は禁止。要するに体術勝負ってわけだが、あとは自由だ。
相手が降参するか、俺が止めた時点で勝負は終わりだ。どうだ?天堂?」
龍太郎:「ああ、それでいい。」
北斗:「舞夢もいいな?」
宝生:「もちろん。これで容赦なくやれるってことね。いいじゃん。」
北斗:「じゃあ、武器を預けろ。」
龍太郎の武器は、収納箱に格納できるのだが、あえて夢咲さんに手渡した。
宝生は、一瞬で武器を消した。
たぶん、こいつの装備一式はスキルの一部で、出し入れ自由なんだろう。
北斗:「では、2人とも準備はいいか?」
龍太郎:「ちょっと待った!作戦会議!」
龍太郎は、勝負の開始を一旦止めた。
これには、宝生が文句を言う。
宝生:「おい!小蝿!時間稼ぎするなよな。
すぐに終わるんだからさぁ。
全く!往生際悪いぞ。」
龍太郎は、それを気にせず作戦会議に入った。
龍太郎:『アイちゃん。作戦は?』
AI:〈うーん。勝負の方法が至ってシンプルだったから、あまり作戦はないね。
まず、鼓舞、相手への重力操作くらいかな。
飛翔は空中で飛ばないように注意だよ。
攻撃はやっぱり装備のない顔への打撃ってくらいかな。〉
龍太郎:『アイちゃん!それ普通だな。
俺でもわかるぞ。それくらい。』
AI:〈うっ、そうだよねぇ。
ま、いざとなったら超覇気を使うとか?〉
龍太郎:『そうだな。今回は必勝だからな。
危なくなったら、使うことにするよ。
でもまあ、体術模擬戦なら、龍次郎と何百回とやってるからな。
俺にとっては、いい勝負の付け方だな!』
龍次郎:『龍太郎!俺はどうするよ?』
龍太郎:『龍次郎もいざの時のために待機だな。
危なくなったら、頼むかもしれないが、まずは俺一人でやってみる。
鼓舞を掛けてくれ!』
龍次郎:『ああ、承知の介だ。』
龍太郎:『じゃあ、行ってみるか!必ず、勝つぞ!』
AI:〈おー!〉
龍次郎:『おー!』
龍太郎は、あまり意味のない作戦会議を終えて、北斗に声をかけた。
龍太郎:「よっしゃ!準備OKだぜ!」
北斗:「なら、行こう。」
北斗と南斗の審判団を先頭に、宝生、天堂が続いて販売ショップ前から離れた平原まで移動した。その移動は他のメンバーには目で追えないくらいに一瞬だった。
ほぅ。やはりスピードはついて来れるか。
天堂。やはり、不思議なやつだな。
なぜ、今までDランクで燻ってた?
まあ、それでこそ、面白い。
北斗:「よし。お互い構えろ!」
龍太郎と宝生は、お互いの間合いに離れて態勢を取った。
宝生は、相変わらず笑みを浮かべている。
北斗:「始め!」
北斗の号令と共に幕が切って落とされた!
チャンピオン 宝生舞夢
vs
チャレンジャー 天堂龍太郎
無制限一本勝負、開始!カーン!
◇◇◇◇◇
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます