第84話 告白

 ◇◇◇◇◇


 その後のクランハウスAー103。

 残された4人娘とミクミクとでパーティは続いている。


華那:「先生とカレンちゃん、帰っちゃったね。」

詩音:「そうだねぇ。なんかさぁ。

 2人ってどういう関係なんだろうね?」

玲奈:「あ!私もそれ思った!」

亜実花:「ねえ、ミクミク!どうなの?」


美紅:「ん?あー、ナイナイ。」


華那:「でもさぁ。すごく信頼しあってるよね?

 雰囲気、ワンチャン、付き合ってる?」


美紅:「あー、絶対にナイナイ。」


詩音:「そうかなぁ?」


美紅:「そりゃ、そうでしょ!

 あのねぇ。カレンさんがあいつを好きになることあると思う?

 いや、ナイナイ。ノーチャン!

 天堂さんもその辺はわかってるわよ。

 強いて言うなら、幼馴染で仲のいい親友って感じでしょ?

 まあ、幼馴染って言っても、ちょっと前まで喋ったこともなかったみたいだけど。」


華那:「そうなのかなぁ?ただの親友かぁ。

 だったら、嬉しいんだけどね。」


美紅:「え?華那さん、もしかしてあいつのこと好きだったりする?」


華那:「えー、それは秘密だよ。」


美紅:「嘘!あのねぇ。

 それって好きって言ってるのと同じだからね!華那さん、変わってるよねぇ?」


玲奈:「そんなことないよ!

 先生は優しいし、かっこいいし、強いし。」


美紅:「え?まさか、玲奈さんも!?」


玲奈:「えー、それは秘密だよ。」


美紅:「もう、2人ともどうなってんだか……。

 全然、優しくないよね?

 全然、カッコ良くもないわよね?

 まあ、強いか?って言ったら、確かにすごく強いかもね。

 でもまあ、前より印象は良くなったかもね?

 でさあ。まさかとは思うけど、4人ともってことはないよね?」


4人娘:「「「「えー、それは秘密だよ。」」」」


美紅:「はぁ……。先輩たち、変わってるよねぇ?

 もう少し外を見た方がいいよ。

 いっぱいいるから。いっぱい。」


亜実花:「ミクミクよりは、見る目あるよ。ねぇ?」

玲奈:「そうそう。ミクミクも先生のこと、ちゃんと見た方がいいよ。」


美紅:「はいはい。私はイケメンがいいのよ。」


華那:「ま、確かに先生ってイケメンって感じではないもんね。」

玲奈:「ま、いっか。ミクミクはライバルではないっと!メモメモ。」

詩音:「でもさぁ。カレンちゃんがライバルだったら、ちょっとね?厳しいね?」

亜実花:「うーん。ミクミクだったら、なんとかなるんだけどねぇ?」


美紅:「おーい!あーみんさん!聞こえてるぞー!」


玲奈:「でさ。明日、勝負って言ってたね。」

華那:「どういう勝負なんだろうね?」

詩音:「相手はあの宝生さんでしょ?」

華那:「心配だよね?」

玲奈:「明日、どうする?」

詩音:「行っちゃダメって言ってなかったよね?」

玲奈:「じゃあ、行く?」

亜実花:「そりゃもちろん行くでしょ!」

玲奈:「そうだよね。」

華那:「それじゃあ、みんなで応援だね。」

詩音:「うんうん。」


美紅:「先輩たち、行くんだ?

 じゃあ、私も行こうかな?

 私も明日、ここに来るわね!」


玲奈:「えー!ミクミクも来るのー?

 ……嘘嘘!うん。一緒に行こ!」


 ひたすら喋っている残された5人。

 あまり、経緯いきさつを知らないが故に、この勝負の重大性に気づいていないのだった……。



 ◇◇◇◇◇



 ところ変わってクランハウスAー101。

 国士無双トップチームは、長旅を終えて一同でしばしの休憩タイム。


 そこに先程、カレンから宝生に電話があったのだった。

 興味のない他のメンバーは徐々にクランハウスを出ていっている。


北斗:「舞夢。話は終わったのか?」


宝生:「終わったよ。明日の正午だよ。

 あんまり乗り気じゃなかったんだけどね。

 ボスの指示じゃ仕方ないよね。

 でも、ちゃんと約束は守ってよ。」


北斗:「それは問題ない。

 もし、お前が勝ったら約束通りにしてやる。」


宝生:「OK!イージーゲーム!

 それじゃあ、明日は軽く小蝿を叩いて、貰うもん貰っちゃうよ!ラッキー!

 それじゃあ、僕も帰るから!」


 宝生は、思わぬ幸運に口角が上がりっぱなしで、意気揚々とクランハウスを後にした。


 他のメンバーはすでに帰宅の途についており、残ったのは北斗と南斗の兄弟だけ。


南斗:「いいのか?北斗。」


北斗:「ああ、まもなく俺たち2人はここを一時離れるだろう?

 もし、仮に舞夢が勝ったとしても帰ってくるまで、好きにさせておけばいい。

 俺たちが帰ってくればどうにでもなる。」


南斗:「はっ!そういうことかよ。

 なら、問題ないな!」


北斗:「ああ、どっちに転んでも、俺たちに損はない。」


南斗:「しかし、執着するねぇ?

 天堂だったか?

 まあ、あいつがヤバいのは確かだな。

 あれから、さらに成長しているとなると、とんでもない化け物になってるかもな。

 今のうちに手懐けておきたいのは良くわかるぜ。なあ、兄弟!」


北斗:「ああ、そういうことだ。

 俺たちの目的のためにな。」



 ◇◇◇◇◇



 そして龍太郎のボロアパート。

 気持ちの落ち着かないまま、デスガ150を飛ばして、自分の部屋に戻っていた。


 落ち着かない龍太郎は、帰ってすぐに腕立て伏せをしながら、アイちゃんに聞いてみた。


龍太郎:『なあ、アイちゃん!あれ、見てたよな?』


AI:〈はいはい。バッチリ見てたよ!〉


龍太郎:『どういうことだと思う?』


AI:〈そういうことだと思うよ。〉


龍太郎:『そういうことってどういうこと?』


AI:〈そういうことってそういうこと。〉


龍太郎:『そういうことってそういうことって!

 終わんないじゃん!?』


AI:〈そういうことは自分で考えるんだよ!

 それより、明日の勝負の方が先だよ。

 負けたら、それどころじゃなくなるかもよ。

 今はそっちに集中しないと。

 とにかく、あれだよ。

 まずは明らかにスキルってわかるスキルは使っちゃダメだからね。〉


龍太郎:『ん?ああ、そういうことだな。』


AI:〈あとは、勝負の方法がわからないからなんとも言えないけど。

 とにかく、方法が決まったら、すぐに作戦会議ね。〉


龍太郎:『ああ。そうだな。それで。』


AI:〈それと今日は時間があるからって筋トレは程々にしとくんだよ。〉


龍太郎:『うーん。それは無理。余計に調子崩すわ。』


AI:〈うーん。仕方ないね。

 じゃあ、筋肉痛にならないくらいにね。〉


龍太郎:『ああ、そうだな。』



 ◇◇◇◇◇



 翌日、ついに龍太郎と宝生の二度目の勝負の日がやってきた。


 龍太郎は、すでに異世界ゲート内に入って、宝生が来るのを待っていた。


 そこにまず現れたのは、夢咲カレン。


カレン:「あ!天堂くん。早いね。」


龍太郎:「ああ、俺も今来たところだけど、ちょっと早く来すぎたかもな。

 夢咲さんも早いな。」


カレン:「うん。あんまり落ち着かなくって。」


龍太郎:「そっか。俺もそうだな。

 まだ、早いから販売ショップにでも行くか?」


カレン:「ううん。私はいいよ。

 ここで待ってる。」


龍太郎:「それじゃ、俺もここで待つよ。」


 龍太郎とカレンの2人きりの時間。

 お互いに何を喋ったらいいか分からない。


 龍太郎もカレンも昨日のキスのことがあって、少しぎこちない感じで、でも、何か喋らないと間が持たない。


 沈黙が続く中、カレンが思い立ったように、少し話を始めた。


カレン:「天堂くん……。」


龍太郎:「ん?」


カレン:「私ね。本当に苦しかったの。

 高校を卒業するまでは、引っ越しが多かったせいで、友達と呼べる人はいなかったって言ってたでしょ?」


龍太郎:「ああ、言ってたな。」


カレン:「でも、それはね、ちょっと違うんだ。」


龍太郎:「はぁ。そうなのか。」


カレン:「うん。実はね。

 私のスキルね。豪運って目を見るとその人の考えというか、悪意があるかどうかがだいたいわかるでしょ?」


龍太郎:「ああ、そうだな。第六感ってやつだろ?」


カレン:「うん。あれ嘘なの。ごめんね。

 騙すつもりじゃなかったんだけど。

 そう言った方が納得してくれると思って、そういうことにしてたの。」


龍太郎:「え?ど、どういうこと?」


カレン:「うん。これ、誰にも言ったことないんだけど、私、生まれた時からなの……。

 だから、豪運とは関係ないの。

 それでね、そのせいで小さい頃からずっと怖くて、本当の意味で人を信用することが出来なくなってたんだよね。

 それは、学生時代だけじゃなく、18歳で天啓を受けてエクスプローラになってからもずっと……。

 初めは、仕方なくクランにも入ったけど、やっぱり、そこでも馴染めなかった。

 それで、もうずっとソロでやって行こうと思ってたんだけどね。

 でも、ある日、天堂くんと出会って……。

 これは豪運のおかげかな?

 それで、それから私、何か変われた気がするの……。

 だから、天堂くんには感謝してる。」


龍太郎:「へぇ。そうだったんだな。

 だったら、俺も同じだな!

 俺も夢咲さんと出会ってから、何か変わった気がするよ。だから、俺も感謝してる。」


 思わぬ告白だったが、龍太郎はなんだか、温かい気持ちになった気がした。


カレン:「ふふふ。そっかぁ。

 私たちってさぁ、似てるのかもね?」


龍太郎:「そうかぁ?全然似てないと思うけど。

 夢咲さんって、俺から見たらすごく完璧に見えるけど?

 俺なんて、普通なら夢咲さんとこんな風に喋ってる感じじゃないからな。

 いわゆるモブキャラって感じ?」


カレン:「うんうん。それは分かるかも!」


龍太郎:「うぐっ!痛恨!

 自分で言っておいてショック大!」


カレン:「ふふふ。でも、私にとっては特別だよ。」


龍太郎:「そうかぁ?まあ、嬉しいかもな?」


カレン:「えー!めっちゃ嬉しいでしょ?

 私って、結構美人だし!」


龍太郎:「そうだけど、それ自分で言う?」


カレン:「だって、本当だもん!」


龍太郎:「ま、確かに。」


カレン:「ふふふ。天堂くん。勝ってね。

 ずっと、一緒にいたいから……。」


龍太郎:「おぅ!任せろ!

 勝って、合流だな!」


 なんか、すごく嬉しいぞ!

 よっしゃ!気合い入れていくぜ!


 ◇◇◇◇◇

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