第81話 次のターゲット

 ◇◇◇◇◇


 翌朝、龍太郎はネオ・ダイアモンズのクランハウスに来ていた。


 ヴィーン!ガチャ!


龍太郎:「おはよう!みんな、準備できてるか?」


華那:「あ!先生!おはよう!見た?」


龍太郎:「何を?」


玲奈:「昨日さ。協会から一斉通知が来て、ファーストダンジョンが消滅したんだってさ!」


龍太郎:「ああ、そうだな。」


詩音:「そうだなって!今日はどうするの?」


龍太郎:「違うダンジョンに行こうと思ってる。昨日確認したから。」


亜実花:「え?どこ?」


龍太郎:「ちょっと遠くなるけど、似たような構成の初級ダンジョンがあるらしいんだよ。

 ミズシマダンジョンって言うんだけど。」


詩音:「あ!知ってるよ。

 水島さんが発見したダンジョンでしょ?

 竪琴を弾く人だよね?」

玲奈:「でも、あそこだと日帰りは出来ないよ?」


龍太郎:「だよな。でも大丈夫だ。

 往復のプランはすでに折り込み済みだ!」


玲奈:「どういうこと?」


龍太郎:「まあ、行ってみれば分かるから!

 準備ができたら行くぞ!」


玲奈:「なんかよくわかんないけど、先生が言うならいいか。」

詩音:「でもさ。なんで、ファーストダンジョンは消滅したんだろうね?」

亜実花:「そうそう。謎だよね?」


龍太郎:「ギクっ!」


詩音:「あれ?その顔!先生!なんかした?」

玲奈:「そういえば、昨日はどっか行くって言ってたよね?」


 4人娘のジト目が痛い。


龍太郎:「はは。やっちゃいました。

 でも、協会には連絡したからな。

 お咎めなしだ。気にしなーい!」


玲奈:「えー!?やっぱ先生のせいなの?」


龍太郎:「俺というか、なんというか……。

 まあ、無くなったものは無い。

 気にしないように!」


華那:「なんか、先生ってすごくヤバいよね。」

玲奈:「それって今更なんじゃない?」

詩音:「ま、そっか。」

亜実花:「そうだねぇ。先生だからねぇ。」


 なんだか、俺のイメージが……。



 ◇◇◇◇◇



 そして、みんなで異世界ゲートを通って、いつもの景色。


 今日は源さんだよな。

 たぶん、お千代さんから聞いてるよなぁ。

 販売ショップの寄るのはやめておくか。


 というわけで!

 みんなで、近くの岩陰まで行ってから、今日の計画を伝える。


華那:「先生!岩陰に来て何するの?」

詩音:「なんか、秘密があるってことだね?」

玲奈:「私たち、襲われちゃうのかな?」

亜実花:「いやーん!」


龍太郎:「しょーもないこと言うな!襲わんわ!」


玲奈:「えー!ノリが悪いなぁ!」


龍太郎:「グサっ!そういうのやめれ!」


玲奈:「えへへ。」

華那:「で、何?秘密って?」


龍太郎:「ああ、実は新しいスキルをゲッチュしたんだよ。その名も転移!バーン!」


4人娘:「「「「転移!?」」」」


龍太郎:「ああ、俺が行ったことのある場所なら、瞬間移動できるってやつ!すごくない?」


玲奈:「ワオ、素敵!ドコデモ扉みたいな感じ?」


龍太郎:「まあ、そんな感じだな。」


詩音:「それって、先生以外でもOKなの?」


龍太郎:「ああ、条件があるけどな。」


4人娘:「「「「やったー!」」」」


 みんな、めちゃくちゃハイテンションモードになっている。キャピキャピ!キャピーン!


玲奈:「でもさ、先生ってミズシマダンジョンに行ったことあったっけ?」


龍太郎:「それな!行ったことなかったから、昨日行ってきた。ダンジョンの入り口までだけど。」


詩音:「嘘〜!1日で往復したの!?」


龍太郎:「ああ、マップにも載ってるし余裕だな。

 まあ、ショボいマップしか持ってないから、探すのに苦労したけどな。

 帰りは転移を使えば一瞬だ。」


 いえいえ、アイちゃんがいなかったら、見つかってないでしょ?


華那:「そっか。片道なんだね。

 それにしても、移動スピード速すぎだよ。

 どんだけチートなの?」


龍太郎:「飛翔ってスキルがあるんだよ。

 劇的に移動スピードが上がったんだよな。」


玲奈:「もう、凄すぎて驚きの向こう側だよ!」


龍太郎:「ふふふ、いいだろ?」


 スキル自慢!いいじゃない?


玲奈:「でさ、転移の条件って何?」


龍太郎:「ああ、自分以外の人が転移するためには、俺と密着して一体になるって感じなんだけど。

 あと、面倒だけど一人ずつな。」


玲奈:「密着!?抱きつくって感じ?」


龍太郎:「まあ、そんな感じかな?」


華那:「ちょっと恥ずかしいね。」


龍太郎:「そうか?装備もあるし、そんなに気にならないだろ?」


詩音:「そうだけど、気持ち的にね。」


龍太郎:「じゃあ、一人ずつな!誰から行く?」


 ん?誰もいない?


華那:「じゃあ、私が!」

詩音:「じゃあ、私が!」

亜実花:「いえいえ、私が!」


玲奈:「んー?この感じ。どっかで覚えが……。

 じゃあ、私が!」


3人:「「「どーぞ!どーぞ!」」」


玲奈:「やっぱり私かい!?」


 4人娘は、お約束のノリで、結局玲奈が最初に転移することになった。

 このノリのなると大概は玲奈になるらしい。


龍太郎:「じゃあ、玲奈だな。」

玲奈:「うん。よろしくお願いします!」


 玲奈は龍太郎に抱きついた。

 確かに装備を着けてるとはいえ、気持ち的になんだろうね。確かに落ち着かない感じかも。


 よし!転移!


 龍太郎は、ミズシマダンジョンの入り口に無事に到着!


 って、あれ?玲奈は?

 ……嘘っ!?ヤバい!

 どっか行っちゃったよ!


 転移されたのは龍太郎のみ。

 玲奈の姿は影も形もない!


 転移は同伴可能なはずだぞ!

 どうなってんだよ!!おい!


 焦る龍太郎!

 これはマジヤバ案件!

 逸れてしまったぞ!?


 どうする?どうする?

 気持ちばかりが焦る。くそ!


龍太郎:『アイちゃん!ヤバい!玲奈が逸れた!』


AI:〈マスター。元のところにいるよ。〉


龍太郎:『へ?いるの?』


 アイちゃんは龍次郎の視覚から玲奈を確認。


AI:〈うん。転移失敗したみたいだね。〉


龍太郎:『ふぅ。なーんだ。良かった〜!』


AI:〈良くないんじゃない?失敗してるから。〉


龍太郎:『そうなんだけど。逸れたと思ったからさ。』


AI:〈一旦、戻りなよ。〉


龍太郎:『ああ、そうするよ。』


 龍太郎は安心して、再度転移。

 元の入り口付近の岩陰に到着!


龍太郎:「あ!玲奈、居た!良かった〜!」


玲奈:「あ!戻って来た!

 先生だけが消えちゃったよ!」


龍太郎:「ああ、俺だけミズシマダンジョンに行っちゃったよ。なんでかなぁ?」


玲奈:「失敗?」


龍太郎:「そうみたいだな。おかしいな。

 密着すれば行けるはずなんだけど……。」


華那:「もしかして、密着度が足りないとか?

 え!一体になるってまさか?きゃー!」

詩音:「嘘っ!?そういうこと?きゃー!」

玲奈:「えーっ!こんなところで!?きゃー!」

亜実花:「ウッソ〜!もっとムードがある感じが良かったよ〜!初めてなのに〜!」


龍太郎:「ん?なるほど、密着度か?

 確かにそうかも知れないな!

 仕方がない。装備を取ってみるか?」


 ん?なぜ、俺をジト目で見る?

 そんなに装備を取るのが嫌なのか?


龍太郎:「なんだよ!嫌でも仕方ないだろ?」


華那:「いや、そういう意味じゃなくて……。」

亜実花:「もう!先生!私たちの妄想を返せ〜!」


龍太郎:「妄想って何?うーん。

 まあ、とにかく装備を外すぞ。

 こういうのは試行錯誤が必要だ!」


 何を言ってるかわからない龍太郎は、とにかく自分の装備一式を一瞬で収納箱に格納した。

 

玲奈:「え?先生の装備が消えた!?」

亜実花:「すごーい!それって収納箱ってやつ?」


龍太郎:「ああ、すごいだろ?

 装着も一瞬で出来ますよ!」


詩音:「へぇ!じゃあ、私たちのも出来る?」


龍太郎:「ああ、たぶん出来るぞ。」


玲奈:「やったー!それなら楽チンだよね?」

亜実花:「うんうん。いいよ!私たちのもやってよ!」


龍太郎:「やけに素直だな。

 さっきまで嫌がってたのに!」


亜実花:「だから〜!もう!」


龍太郎:「なんだよ?良くわからん!

 けど、装備を外すってことはOKなんだな?」


華那:「うん。いいよ。みんないい?」

玲奈:「もちろん!」

詩音:「いいよ。」

亜実花:「そんなことなら、いいに決まってんじゃん!」


龍太郎:「わかった。じゃあ、みんなの装備も収納箱に格納するから、近くに寄って来てくれるか?

 向こうに行ってから返すから。」


 4人娘が龍太郎の近くにまとわりつく。

 そこまで近づかなくってもいいんだけど。


 ほんじゃ、装備格納!っと!


龍太郎:「え?」


4人娘:「「「「きゃーーーー!」」」」


 龍太郎は、装備を格納するつもりが、装備に加えて、なんと服装も格納してしまった!

 4人娘は、全員スッポンポンのポン!


 全員が大事なところを隠すようにしゃがみ込んだ!パニックモーーーード!


華那:「もう!ちょっと〜!」

玲奈:「全部ってなんで〜!?」

詩音:「早く戻して〜!」

亜実花:「いやーーーーん!」


龍太郎:「わ!わ!悪い!ちょっと待ってくれ!」


AI:〈あらら……。マスター……。〉

 アイちゃんもこれには呆れた。


ブルーノ:『ほぅ。なかなか。』

 ブルーノも影の中から様子を見ていた。


龍次郎:『プププ。龍太郎、やってるなぁ。』

 影武者龍次郎も面白がっている。


 焦る!焦る!龍太郎!

 急げ!急げ!龍太郎!


 スッポンポン!スッポポポン!

 スポポポポン!ポンポンポン!


華那:「もう!早く〜!」


 お!やっと、元通りに戻せた。

 ふぅ、焦った〜。


玲奈:「もう!スッポンポン!って何よ!」

亜実花:「スポポポポン!とか聞こえて来たよね?」


華那:「先生!見たでしょ?」

詩音:「見たよね?」

玲奈:「これはわざとだね!」

亜実花:「そうだね!怪しいね!」



龍太郎:「うぐっ!……

 すいませんでした〜!!」


 龍太郎、渾身のスライディング土下座ぁ!



龍太郎:「わざとじゃないんですぅ!

 これは、わざとじゃないんですぅ!」


華那:「ふふ、わかってるよ。」

玲奈:「そうそう。大丈夫だよ。」

詩音:「恥ずかしかったけどね。」

亜実花:「もう大丈夫だよ。」



龍太郎:「ふぅ。良かった〜。」


 でも、バッチリ見ちゃいました……。

 龍太郎は、バッチリ見たのであった。

 

 続く。


 ◇◇◇◇◇

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