第78話 ブルーノ、かく語りき1

 ◇◇◇◇◇


 元ファーストダンジョン跡地?にて。


 歴史的異世界遺産になってしもた……。

 これ、絶対に4人娘に怒られるやろ!

 明日からどうしよう…?ま、いっか。


 気を取り直して、美味しい肉と美味しい水を収納箱から取り出してブルーノに差し出すと、魔人もビックリ!

 その美味しさに驚いてたぜ。ボーノ!


龍太郎:『ブルーノ。まず、こっちの情報というか、ここの状況を簡単に話すぞ。』


ブルーノ:『ああ、頼む。』


龍太郎:『俺は地球という星の日本という国に住んでいて、ここの異世界にはゲートを通って来てるんだよ。

 地球には結構な数のゲートがあるらしいがよく知らない。

 日本という国には6カ所のゲートがあってそこからこちらに来られるわけだ。

 ちなみに渋谷ゲートな。

 ただし、ここに来られるのは、俺のようなスキルホルダーとなった限られた人間だけだ。

 そして、スキルホルダーはエクスプローラとなって、こちらのモンスターを狩ってモンスターコアを手に入れる。

 それを売って生計を立てているという感じだ。

 あと、こちらの異世界でこちらの世界の人間にあったという情報は今までないはずだ。

 ざっくりこんな感じだが、何か違和感があるか?』


ブルーノ:『なるほどな。違和感だらけだな。』


龍太郎:『どの辺がだ?』


ブルーノ:『まず、人間がいないとなると、ここは人間界ではないということだな?

 さらに主が言うモンスターというのは、たぶん魔物や魔獣を指すのであろう。

 とすれば、ここは魔物界ということになるな。』


龍太郎:『ん?魔物界か?初めて聞いたな。』


ブルーノ:『そうなのか?あくまで魔界での呼び名だ。

 だが、そうすると主という人間がここにいるという点がそもそもおかしい。

 なぜなら、主が言うゲートというのは、境界門ボーダーゲートのことであろう。

 その境界門を人間が通って魔物界に来ることが出来るという点は普通ならありえん話だ。

 我が知っておる状況からは矛盾しかない。』


龍太郎:『うーん。さっぱりわからんぞ。

 アイちゃん!わかったか?』


AI:〈言ってる内容は理解できるけど、僕にもよくわからないよ。〉


ブルーノ:『確かにな。

 そうなるとどこから話せばいいのか?

 まず、我の知っていることを話そう。

 この世界の成り立ち、魔界、魔物界、天界、人間界の関係から説明したほうがいいだろうな。』


 ブルーノは、何か図のようなものを地面に描き始めた。



[魔 界]⇔[天 界]

  ↓     ↓

[魔物界]→[人間界]



ブルーノ:『まず、魔界とは、魔人が住む世界だ。

 我が元々住んでいた世界だな。

 そして魔物界とは魔物や魔獣、そしてそれを管理する一部の魔人が住む世界だな。

 たぶん、ここがそうなんだろう。

 そして人間界とは人間が住む世界だな。

 主たちが住む世界がそうだろう。

 最後に天界とは天人が住む世界だ。』


龍太郎:『えー!こんな感じになってるんか?』


ブルーノ:『まあ、確かに魔人か天人でなければ、知らないことであろうよ。

 まあ、知ったとして、どうすることもないがな。

 そして、魔物界は魔界が創生した世界。

 一方、人間界は天界が創生した世界だ。

 これについては一部、例外があるがな。』


龍太郎:『ほぅほぅ、神話とかで出てくる感じだな。』


AI:〈マスター!それって神様だよね?〉


龍太郎:『あ、そっか!』


ブルーノ:『神か?なら、余談だが、その4つの世界の上位に神界があるらしいぞ。

 天神も魔神もそこに住んでおると聞いたことがあるな。

 あくまで、伝聞で確認したものはおらん。

 おるかおらぬかは、それこそ神のみぞ知るだな。』


龍太郎:『魔界も神様については似たようなものなんだな。それって面白いな。』


ブルーノ:『余談はさておき、ここからが本番だな。

 まず、魔物界は魔界が創生した後、魔人が管理しているのだ。

 魔人と言っても、我のような下位貴族の魔人と平民の魔人だな。

 魔物界は魔界と違って魔素が薄くて、居心地が悪いからな。

 上位貴族は、滅多に派遣されることはない。』


龍太郎:『悪い!上位貴族と下位貴族って何?』


ブルーノ:『上位は伯爵以上、下位は子爵以下だ。』


AI:〈マスター!それって人間界も同じだよ!〉


龍太郎:『そうなのか?知らなかった……。』


ブルーノ:『では、話を戻すぞ。

 そして、魔界と魔物界は一本の魔界門ヘルゲートで結ばれておる。

 それを通って魔人は魔界と魔物界を行き来する訳だ。』


龍太郎:『じゃあさ。ここにも魔人はいるってことか?』


ブルーノ:『ああ、管理者の魔人がいるはずだ。』


龍太郎:『えー!?でも、それも聞いたことないよな。

 アイちゃんはどうだ?』


AI:〈僕も初耳だね。〉


 マリアなら知ってるかもだけど……。


ブルーノ:『ここが魔物界なら確実に5人の貴族魔人が管理しているはずだ。

 ただし、見つかりにくい地形の辺境に巨大ダンジョンを造ってそこにいるはずだから、まあ、心配しなくても貴族魔人に会うことはないだろう。

 巨大ダンジョンの最奥、主が言うところのボス部屋にいるはずだからな。

 ただ、平民魔人は、魔物界を徘徊しているはずだ。彼らは境界門を造る役目だからな。

 遭遇したことがないというのは、不思議なことだな。もしかすれば、遭遇した人間が帰ってきたことがないということではないか。』


龍太郎:『げ!まじ激ヤバじゃん!?』


ブルーノ:『心配せずとも、主なら平民如きなら大丈夫だ。問題ない。』


龍太郎:『そうなのか?でも、初心者とかもいるしな。

 しかし、5人もブルーノみたいな貴族魔人がいるのはヤバいな。

 とても人間が勝てるとは思えん!』


ブルーノ:『ちょっと待て!いや、違うな。

 さっきも言ったが、そもそも魔物界に人間がおるのが、普通ではないのだ。

 遭遇するしないの問題ではない!

 何かがおかしい。』


龍太郎:『それな!実際に俺がここにいるんだから、おかしくはないぞ!何がおかしいんだよ?』


ブルーノ:『だから、さっき言ったであろう。

 魔物界と人間界を繋ぐ境界門は、魔物界からの一方通行なのだ。』


龍太郎:『でもなぁ。』


ブルーノ:『うむ。我もそこは不思議なのだ。

 まあ、その理由を説明するために話を戻すぞ。』


龍太郎:『ああ、わかった。』


ブルーノ:『人間界は、天界が創生したと言ったな。

 ただし、その後、天界は人間界に対して多少の関与はするが、管理はしていないのだ。

 当然、天人は人間界には存在せぬ。

 そこに目を付けた大昔の魔界の重鎮は、魔物界と人間界を境界門で繋いで侵食する方法を見つけたのだ。』


龍太郎:『はぁ!?そういうこと?』


ブルーノ:『何がそういうことだ?』


龍太郎:『ん?だって、今の地球の状況ってそういうことじゃないのか?』


ブルーノ:『たぶんな。地球とやらの現状を見ておらんが、侵食度にも初期、中期、末期と3段階で区別しておる。

 今の地球の魔物と人間の比率はどれくらいだ?』


龍太郎:『ああ、今は魔物はいないはず。

 100%人間だな。』


ブルーノ:『ではまだ初期ということか。

 で、先ほどの話だが境界門は、魔物界の管理者が魔物と魔獣を送り込むためのものだ。

 境界門は一種の魔素だまりになっている。

 そこから、人間界に魔物、魔獣がなだれ込む仕組みだな。

 そして、ここが一方通行の理由だが、人間は魔素だまりを通過することができないのだ。

 しかも、境界門は魔素だまりの魔素濃度が濃いと一定期間、門は開いているのだが、魔素濃度の薄い場合は、すぐに閉じてしまうのだよ。

 この辺が上手くできている。

 要するにどうやっても、人間は境界門を通過することはできないということだ。』


龍太郎:『なるほど。俺でもわかる説明だったな。魔素だまりだな。

 じゃあ、ここは魔素があって、人間界には魔素がないってことだな?』


ブルーノ:『まあ、合ってはおるが……。』


AI:〈マスター!そこじゃないよね?

 その魔素だまりをなぜ人間が通過できてるか?ってところが、この話の肝でしょ?〉


ブルーノ:『ああ、その通りだ。

 相談役と話をした方が良いな。』


龍太郎:『俺もわかってるわい!』


 あ!そういうことな。そっちな!

 確かになぜだろう?

 考えて汚名返上しないと!


龍太郎:『あ!全員が通過できるわけじゃないんだよ。

 天啓を受けたスキルホルダーだけな。

 これってヒントじゃないか?』


 どうよ?

 これ、どうよ?


AI:〈マスター!それ、みんなわかってるから。そこから先だよね?〉


龍太郎:『グサっ!痛恨……。』


ブルーノ:『なんとなく、主がどういう人間がわかった気がするぞ。』


 突如、仲間(従者)になった魔人ブルーノとの会話で、人類が知り得ない情報が次々と出て来ているが、その重大性に気づいていない龍太郎と人工知能だけに同じような感覚のアイちゃんであった……。


 話は後半戦に続く……。


 ◇◇◇◇◇

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