第75話 ファーストダンジョン5

 ◇◇◇◇◇


 龍太郎と影武者龍次郎はボス部屋の扉を開けゆっくりと入って行った。


 確かにこの部屋はあまり活動がないせいか、ひんやりとしていて気持ち良い感じはしない。


 部屋に入ると同時に後ろにあった扉がゆっくりと閉まっていく。


 やはり、予想通り龍太郎本人が入ると認識されるようだ。


 ついに来たか……。


 普段緊張しない龍太郎も逃げることの許されない生死を賭けた一戦とあって、少し緊張を隠しきれない。


 ここまで来たら、覚悟を決めるしかないな。



 少し経つと部屋の中央に人らしい生物が徐々に姿を現してきた。


 最初は全身真っ黒のマネキンのような姿をしていたが、徐々に龍太郎と瓜二つの姿に変わっていった。

 ただし、全身は黒いまま。カゲマンか?


 よし。ソロの認定を受けたみたいだな。

 ドッペルゲンガーに違いない。


龍太郎:『よし、龍次郎!先制を取れ!』


 心の声と同時に龍次郎が宙歩を使って一瞬で間合いを詰める。


 シャキーン!ズバ!


 龍次郎の旋回戦斬がドッペルゲンガーの喉元にヒット!

 首から血のようなものを流している。


 相当なダメージを与えたはずだが、すぐにドッペルゲンガーは後ろに飛び去り距離を空けた。そして、周りの様子を不思議そうに見回していた。


龍次郎:『龍太郎!思ったより硬いぞ!』


龍太郎:『ああ、わかってる!』


 まずは先制を取った。予定通り!

 ここからが本番だ!

 様子見なしでマックス攻撃を仕掛けるぞ!


龍太郎:『龍次郎!行くぞ!今だ!』

龍次郎:『オケ!』


 超覇気!!x2


 龍太郎は、一番効果のありそうな龍次郎とのダブルマックス超覇気をレベル20ドッペルゲンガーに向けて放った。


 ボワーン!x2


龍太郎:『よし!成功!!次!』


 次に重力操作を掛けようとしたが、ドッペルゲンガーは、ダブルマックス超覇気をまともに受けて成すすべなくその場に倒れ込んだ。


龍太郎:「あれ!?気絶したのか!?」

龍次郎:「本当!マジか!?」

龍太郎:「ダブルマックス超覇気、ヤバ!」

龍次郎:「マジ、ヤバ!」


 ラッキー!と思った龍太郎は、すぐにドッペルゲンガーに近づき、起き上がる前にトドメの衝撃砲を何発か放った。


 自分の姿だけに嫌な気持ちだな。

 しゃーないけど……。今更か……。


 討伐されたドッペルゲンガーは、体の表面から徐々に光の粒となって消えていった。

 普通のモンスターとは少し違うみたいだ。


 うぷっ!来た!レベルアップか?


 急激なレベルアップでひさびさのレベル酔いが龍太郎を襲った。


〈ピピピプッピ〜!レベルアップを確認!〉

〈個体強度がレベル5に上がりました!〉


〈ピピピプッピ〜!レベルアップを確認!〉

〈個体強度がレベル6に上がりました!〉


〈ピピピプッピ〜!レベルアップを確認!〉

〈個体強度がレベル7に上がりました!〉


〈ピピピプッピ〜!レベルアップを確認!〉

〈個体強度がレベル8に上がりました!〉


〈ピピピプッピ〜!レベルアップを確認!〉

〈個体強度がレベル9に上がりました!〉


〈ピピピプッピ〜!レベルアップを確認!〉

〈個体強度がレベル10に上がりました!〉


 嘘?いきなり!レベル10!?

 あんだけ上がらなかったレベルが……。

 一気に6レベルも!?うぷ。



〈個体強度の上昇により、超能【拳骨】の解放に成功しました。〉

〈ピピプピプ……超能王の効果により超能【拳骨】を最適化します。〉

〈ピピプピプ……超能【拳骨】は超能【剛拳ごうけん】へと進化しました。〉


 うぷっ。やったぜ!スキルゲッチュ!

 体術系スキル!嬉しい!



〈個体強度の上昇により、超能【瞬間移動】の解放に成功しました。〉

〈ピピプピプ……超能王の効果により超能【瞬間移動】を最適化します。〉

〈ピピプピプ……超能【瞬間移動】は超能【転移てんい】へと進化しました。〉


 うぷっ。嘘!めっちゃいい!

 これ、すごいやつじゃん!

 一度行った場所へ転移出来るという、奇跡のスキルをゲッチュ。

 さすが、レアモンスターのスキルの進化版。

 旅行に行き放題だな。というしょーもない発想をしている龍太郎。



〈ピピプピプ……他者の超能を確認!〉

〈超能【擬態ぎたい】を登録しますか?〉


 うぷっ。そっか。こいつのスキルって擬態ってことか?

 だから、スキルがないって言われてたのか。


 はい、もちろん登録!


〈ピピプピプ……超能【擬態】を登録しました!〉

〈ピピプピプ……超能【擬態】の解放に失敗しました。

 超能【擬態】の解放のために必要な固体強度レベルの条件を満たしていません。〉


 でしょうね!このスキルってちょい怖いね。

 進化したとして、人間辞めてるかも?


 嬉しさのあまり、現在のステータスを確認。


 ステータスボード!


【個体情報】天堂龍太郎 20歳 人間族

【個体強度】レベル10

【固有超能】超能王

【解放超能】超覇気・支配・転移・収納箱・衝撃砲・旋回戦斬・龍武装・重力操作・分身体・並列思考・隠密・鼓舞・伝心・剛拳・毒鉄砲・宙歩・俯瞰・俊速・浄化・分析・料理長

【解放魔術】火魔術Ⅰ・水魔術Ⅰ・風魔術Ⅰ・土魔術Ⅰ

【登録超能】豪運・召喚・光・闇・癒・心・擬態・封印・超会心・回復波・流星弾・炎斬刃


 うおー!マジでレベル10だな。

 うふふ。うぷっ。


 喜びを分かち合おうと思ったが、レベル酔いのタイミングで影武者龍次郎さんが帰っちゃったみたいだな。


 それとスキルが21個になったな。

 空き枠が3個か。また、合成しないとな。



 さらにドッペルゲンガーが光の粒と消えた場所に何やらドロップアイテムが落ちている。

 龍太郎、初のドロップアイテム!


 そのアイテムを拾い確認した。


 これって宝箱だよな?なんじゃこれ?

 なんか文字が書いてあるぞ。

 しかも、開かねえじゃねえかよ!


 何が書いてあるんだ?ふむふむ。

 文字も読めん。意味がわからん。


龍太郎:『アイちゃん。これなんだか分かるか?』


AI:〈うーん。わからないね。〉


龍太郎:『せっかくのドロップアイテムにしては、思わせぶりな態度だな。ツンデレかよ。』


AI:〈なんか重要な意味があると思うんだけど。お千代さんに聞いてみれば?〉


龍太郎:『そうだな。まあ、持って帰るか。』


 龍太郎は、その宝箱を収納箱に格納した。


 少し経つと気持ち悪さも全回復。

 龍次郎を再度呼び出した。


龍太郎:「龍次郎、悪い。

 レベル酔いで解除してしまったよ。」


龍次郎:「そうだと思った。問題ない。」


龍太郎:「それでな!レベル10になって転移スキルが手に入ったんだぜ!」


龍次郎:「知ってるわ!俺はお前なんだぞ。」


龍太郎:「あ、そうか。忘れてた。

 ところで、レベル10まで上がるとは思ってなかったから、次どうしようか。」


龍次郎:「そうだよな。レベル10ということは、次はレベル50ってことだよな。」


 何を話しているかというと、ボス部屋2周目をどうするかということだった。


龍太郎:「とりあえず、この部屋出てから話そうか。」


 ボスを討伐したことで、反対側の扉が開いている。

 龍太郎は、ボス部屋を出た。

 すると同時に扉がゆっくりと閉まった。


 一応、これでボス部屋クリアってことだな。

 最初のトライは案外と余裕だった。

 ドッペルゲンガーを討伐したぞ!うおー!


 再度、龍次郎と喜ぶ龍太郎。

 アイちゃんも交えてわしゃわしゃしてる。



 でも、次はどうだろうか?


龍太郎:「で、龍次郎!次どうする?」

龍次郎:「と言いつつ、やる気満々だな。」

龍太郎:「ああ、なんか、まだいけそうな気がするんだよな。それに今じゃないと出来ないしな。」

龍次郎:「じゃあ、決まりな。」


 アイちゃんは、あまり乗り気ではなさそうなのだが……。



 ボス部屋を出たところには、違う転移ゲートがあり、それを通ると第一階層の入り口に転移された。


龍太郎:「へぇ。ここに戻るのか。

 通常のボス部屋も試したいが明日以降だな。」


龍次郎:「それじゃあ、早速、転移スキル使ってみるか?」


龍太郎:「ああ、試してみよう!」


 龍太郎は、転移スキルを使った。

 行きたい場所を思い浮かべてスキルを使うと、その場所に転移するという優れもの。


 思った通り、ボス部屋の前に転移した。


龍太郎:「へぇ。もう着いたな。

 ダンジョン内でも使えるんだな。」

龍次郎:「なんて素晴らしいスキルなんでしょう!」

龍太郎:「しょーもな。」

龍次郎:「が!恥ずかしい……。」


 龍太郎の目の前には、大きな豪華な扉がそびえている。本日2回目。


龍太郎:「じゃあ、2周目行きますか?」

龍次郎:「よっしゃ!やったるでぇ!」


 龍太郎たちは、扉を開けてボス部屋に入って行った。

 次はレベル50ドッペルゲンガー……。


 ◇◇◇◇◇

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