第73話 ファーストダンジョン3

 ◇◇◇◇◇


 協会本部最上階、副会長室。


工藤:「おいおい!どうなってんだ?」


 龍太郎の出て行った部屋で、工藤は呆れた顔で野神に言葉を発した。


野神:「驚いたわね。想像の遥か上を行ってるわね。

 流石にこの情報が漏れると大変なことになるわ。」


工藤:「とんでもねえな。天堂龍太郎。

 今回、突然、第一将になったのも何かの力が働いてるのかもな。

 なんで、あんな奴がなったのかと思っていたが……。急成長な理由も納得できるな。」


野神:「そうね……。

 まさか、あんな秘密があったなんて。

 それに気になるのが彼の固有超能に〈王〉とついている点よ。

 例の石板の件に関連しているかもしれないわ。時期もピッタリ合ってるし。

 彼の20歳の誕生日、9月11日。」


工藤:「それはちょっと飛躍しすぎじゃねえか?」


野神:「そうかもしれないけど、元々石板の文字が日本語というのも引っかかっていたのよ。

 何かが日本で起こるんじゃないかって。」


工藤:「で、どうすんだ?」


野神:「そうね。彼との約束だし、この件は私が単独で調べてみるわ。」


工藤:「そうか。俺はそういうの苦手だから任せたぞ。俺にできることがあったらなんでも言ってくれ。」


野神:「あら、今回はやけに協力的ね。」


工藤:「そりゃそうよ。エクスプローラのための協会だ。昔から変わってねえよ。

 それに面白そうじゃねえか。」


野神:「ふふふ。そうね。頼りにしてるわ。」


工藤:「で、他の5神国の方はどうなってんだ?」


野神:「あまり芳しくないわね。

 WEA(世界探検者協会)の方でも議論があったみたいで、捜索範囲を広げるためにも、もう少し探検者の数を増やすべきなんじゃないかって話になってるわ。

 石板の件とダンジョンブレイクの件は相関が疑われているのよ。

 だから、一刻も早くゴッドゲートを発見する必要があるという見解ね。

 まずは、それを発見しないとなんの手掛かりもない状態だから。」


工藤:「ほぅ。で、増やすのか?」


野神:「それはまだね。WEAからの通達待ちよ。」


工藤:「そうか。まだか。

 じゃあ、引き続きカーバンクルに頑張ってもらうしかないな。」


野神:「そうね。

 例の件、防衛大臣との調整をお願いね。」


工藤:「ああ、わかった。」



 ◇◇◇◇◇



 龍太郎は、愛車デスガ150に乗って協会からボロアパートに帰っていた。


龍太郎:「しかし、クランハウスに比べるとここってものすごくボロく感じるよな。

 いっその事、引っ越そうかな。」


AI:〈そうしなよ。安全牌なんだし。〉


龍太郎:「それ!なんで、モテないのかなぁ。」


AI:〈自分の顔見てみなよ。〉


龍太郎:「グフッ!痛恨!

 アイちゃん!ツッコミがキツい……。」


 マスター、鈍感すぎるよ。


龍太郎:「でも、なんか秘密を言ってスッキリしたな。

 野神さんも工藤さんも信用できそうだし。」


AI:〈そうだね。良かったね。〉


龍太郎:「ああ、ありがとな。

 でも、まだまだ弱っちいから、そこをなんとかしないとな。

 まだレベル3って言ったら驚いてたものな。」


AI:〈それは課題だね。頑張るんだぞ!〉


龍太郎:「ああ。もちろんだ。」



 ◇◇◇◇◇



 次の日からも休まず、ネオ・ダイアモンズのメンバーで第二階層を爆進中。


 数日ののちに、まず、あーみんと龍太郎がレベル4にレベルアップ!

 これで全員がレベル4になった。


 ひたすら、ゴブリンズを討伐中。

 と言っても、超覇気の気絶攻撃だけど。


 途中、久しぶりにビッグゴブリンに遭遇し、今度はスキル鑑定を実行した。


 ビッグゴブリンのスキルは〈防護ぼうご〉だった。

 どうりで硬いと思ったよ。

 

 ここは、スキルを取るために俺が行きます!

 龍太郎は、すかさず2本の剣をしまって体術スタイルに変更。


 MMA対決!龍太郎vsビッグゴブリン


 動きは龍太郎の方が全然速いため、攻撃を喰らうことはないが、ビッグゴブリンの攻撃力は半端なく、周りの岩を砕く勢いだ。

 さらに試しに打ったブーメランフックはビッグゴブリンのテンプルに綺麗に決まったのだが、大してダメージを与えられなかった。


 おい!やっぱ防御力が半端ねぇ!

 でもまあ、これでよしっと!


 龍太郎の頭で例の機械音が響く。


〈ピピプピプ……他者の超能を確認!〉

〈超能【防護】を登録しますか?〉


 もちろん!登録!


〈ピピプピプ……超能【防護】を登録しました!〉

〈ピピプピプ……超能【防護】の解放に成功しました。〉

〈ピピプピプ……超能王の効果により超能【防護】を最適化します。〉

〈ピピプピプ……超能【防護】は超能【強靭きょうじん】へと進化しました。〉


 お!これもパッシブか!ナイス!

 でも、重武装と被ってないか?


 などと感想していると、機械音がさらに続けて喋り出した!


 え?何?


〈プピプピプププ……警告!解放超能が上限枠に達しました。次回、解放された超能は自動的に破棄されます。〉



龍太郎:「……。へ?

 えーーーーーーーっ!うっそーん!?

 それは困る!困るよ!

 もう!それなら、早く言ってよ〜!

 ずっと、取り続けてたじゃんか〜!」


 龍太郎は、大声で一人言を叫んでいる。

 そして、ショックのあまり崩れ落ちた。


 それを見たビッグゴブリンの拳が龍太郎に向かって振り下ろされた。


 が、怒りの龍太郎はビッグゴブリンに向かって超覇気を放った。


龍太郎:「お前、調子になるなぁ!!」


 一瞬、龍太郎の超覇気の方が早く、ビッグゴブリンはあっけなくその場に気絶。


 はぁ……。立ち直れん……。

 まさか、上限枠があるなんて……。



 そして、再び機械音が喋り出した。


〈プピプピプププ……解放超能の自動破棄を回避するために、事前に破棄および合成によって現在の解放超能を整理する事を推奨します。〉



「……。はぁ!?何それ!本当!

 そんなこと出来んのか!

 マジ!?マジ!?

 うわー!良かった〜!

 マジ良かった〜!

 もう!それなら、早く言ってよ〜!」


 龍太郎は、大声で一人言を叫んでいる。


 遠くで見ていた4人娘は一連の龍太郎のおかしな叫びを心配そうに見ていた。


華那:「先生、何やってるんだろ?」

 

 龍太郎は、収納箱から剣を取り出し、ビッグゴブリンを討伐。

 モンスターコアだけを格納して、4人娘のところに戻った。


華那:「先生!大丈夫なの?」


龍太郎:「もちろん大丈夫だ。もう復活したぞ。」


華那:「ちょっと意味わかんないけど、大丈夫なら良かった。」


龍太郎:「なあ。ここで休憩にしていいか?」


華那:「うん。そうだね。」

亜実花:「やっと休憩だ。」


 4人娘は、そろそろ休憩したくなっていたらしく、その場に座り込んで、特製美味しい水を飲みながら、おしゃべりしている。


 龍太郎は、さっきの機械音が言っていた解放超能の整理が気になっている。

 早速、確認、実行に移った。


 ステータスボード!


【個体情報】天堂龍太郎 20歳 人間族

【個体強度】レベル4

【固有超能】超能王

【解放超能】超覇気・洗脳・収納箱・衝撃砲・重力操作・分身体・並列思考・隠密・催眠・鼓舞・伝心・指鉄砲・毒手・一刀両断・強靭・宙歩・俯瞰・重武装・俊速・浄化・旋回斬・分析・硬化・料理長

【解放魔術】火魔術Ⅰ・水魔術Ⅰ・風魔術Ⅰ・土魔術Ⅰ

【登録超能】豪運・召喚・光・闇・癒・心・封印・超会心・回復波・流星弾・炎斬刃・瞬間移動・拳骨


 なるほど。解放超能の上限枠は24個か。

 そう考えると破棄はもったいないから、極力合成のほうがいいよな。


 どうすっかな?


 とりあえず、よく使うやつは残したいから、あんまり使わないやつから試してみるか。


 って、どうやって合成するんだ?


 龍太郎が悩んでいろいろ試していると、ステータスボードの解放超脳が操作できることがわかった。


 〈重武装〉を押すと機械音が響いた。


〈プピ……合成しますか?破棄しますか?〉


 お!合成!


〈プピ……合成する超能を選択してください。〉


 お!ナイス!じゃあこれ!


 龍太郎は、さっきと同じように〈硬化〉を押した。


〈プピ……超能【重武装】と超能【硬化】の合成を開始します。

 ピピプピプ……合成完了。超能【玄武装げんぶそう】へと進化しました。〉


 おー!進化〜!

 こんな機能もあったんかい!


 龍太郎は、嬉しくて思わずつっこんだ!


 いやー。なんとも素晴らしいことです。

 これで1枠余裕ができたぜ!


 よし!もういっちょいってみるか!


 ◇◇◇◇◇


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