第70話 ファーストダンジョン1

 ◇◇◇◇◇


 龍太郎たち、ネオ・ダイアモンズのメンバーは、ファーストダンジョンを目指して、猛ダッシュで休まず走り続けた。


龍太郎:「よし!着いたな!」


華那:「あー!やっと着いたよ!」

詩音:「着いた〜!」

玲奈:「死ぬかと思った〜!」

亜実花:「思った〜!」


龍太郎:「ちょっと休憩する?」


亜実花:「するよ!もう!」

玲奈:「そうだよ!もう!」


 ここまで来るのにずっと走りっぱなしだもんな。休憩を入れないといけないかと思ったが、こいつら根性だけはあるんだよな。

 しかも、素直だし。可愛すぎだろ。


龍太郎:「お前ら、これ飲んでみるか?」


華那:「何これ?」


龍太郎:「特製美味しい水。」


華那:「じゃあ、ちょうだい!」


 龍太郎は飲料用ボトルを華那に渡した。


華那:「何これ!?めっちゃ美味しい!」


詩音:「あー、私も欲しい!」


 華那は詩音に飲料用ボトルを渡した。


詩音:「え?美味しい!これ普通の水だよね?」


 玲奈と亜実花も同じようにボトルを渡され、特製水を飲んで驚いている。


玲奈:「なんか、すごく美味しいし、少しスッキリする感じがするよ!」

亜実花:「本当。これ、どこで売ってんの?」


龍太郎:「ああ、実はこれは俺が作った水なんだよ。」


詩音:「水を作る!?」


龍太郎:「これな。まあ、見ててくれ。

 まず、こうやって水を出すだろ。」


 龍太郎は水魔術Ⅰで水玉を掌の上に浮かべる。


玲奈:「うわー!水の玉が出た!」

華那:「先生!どんだけ特技持ってるの!?」


龍太郎:「うん、まあいろいろ持ってるな。

 で、これに浄化スキルをかけてだな、最後に料理長スキルをかける。

 で、これを飲料用ボトルに流し込んでるんだよ。いくらでも作れるぞ。」


 これは龍太郎が編み出した特製美味しい水。

 飲むと若干ではあるが浄化作用もあるので、頭がスッキリする効果付き。

 琴音が水に回復波スキルをかけるとほんの少しだが効果があると言っていたのを聞いてやってみたら、同じように効果がつくことがわかった。

 ただし、効率は悪いので、そんなに数を作るもんじゃないとは言ってたが、俺はいくらでも作れるみたい。

 俺ってスキルを使っても枯渇するという感覚になったことがないんだよなぁ。

 

 この特製美味しい水は、琴音にも何本か作って渡したら、すごく喜ばれた。


詩音:「先生!私たちの飲料用ボトルもこれに詰め替えてよ!」


龍太郎:「ああ、わかった。入れ替えておくよ。」


 全員リュックから、飲料用ボトルを取り出して龍太郎に渡した。

 そして、全ての飲料用ボトルの中身を入れ替えておいた。


龍太郎:「それじゃあ、休憩終わりな。

 ファーストダンジョンに入るぞ!」


玲奈:「うー、楽しみのような、怖いような。」


龍太郎:「ここだけど、第一階層は4種類のスライムが出てくる。物理攻撃は全く効かないんだ。」


華那:「うん、知ってるよ。」


龍太郎:「え!知ってるのか?」


 知らなかったのは龍太郎くらいだ。


詩音:「で、先生。どうしたらいい?」


龍太郎:「お前らにはたぶん倒せない。

 スキルが使えないからな。

 だから、今日は一気に第二階層に行くぞ。」


玲奈:「うへー!大丈夫かなぁ?」


龍太郎:「わからん。行ってから考える。」


亜実花:「えー!?そんなんで大丈夫なの?」


龍太郎:「とにかく、レベルを上げる必要があるからな。スパルタ教育だ!

 危なくなったら、俺がなんとかするから。」


 こっちには、アイちゃんがいるからな。

 たぶん、問題ないはずだ。


華那:「すごい自信だね。さすがは先生!お任せします。」

玲奈:「うん。大丈夫に思えてきた。」

詩音:「そうだね。レベル上げなくっちゃ!」

亜実花:「うん、怖いけど頑張る!」


 休憩を終えた龍太郎たちは、ファーストダンジョンに入って行った。


華那:「うわー、こんなになってるんだね。」

詩音:「中に入っても明るいって不思議。」

玲奈:「ちょっと、緊張してきたよ。」

亜実花:「ダンジョン初体験!ふふふ。」


龍太郎:「じゃあ、第一階層は俺が道を開くからついてこいよ。」


龍太郎:『アイちゃん!最短距離で第二階層までよろしく!』


AI:〈ラジャ!指示するからその通りに進んで!〉


 龍太郎は、メンバー4人に鼓舞を掛け直して、第一階層を進む。


 途中、スライムが登場するが火魔術Ⅰで道を切り開いていく。

 スライムは、物理攻撃には強いが、魔術に対する耐性は弱く、魔術の中でも火魔術が効率よく討伐出来る。

 衝撃波では、モンスターコアを破壊するため残らなかったが、魔術による討伐だとモンスターコアは残る。

 龍太郎が火魔術で討伐していく後ろから、メンバーがモンスターコアを拾っていくという形で、第一階層をどんどん進んで行く。

 スライムは見た目は可愛いから、メンバーも違和感なく進んで行く。


AI:〈マスター!もうすぐ第二階層の入り口だよ。〉


龍太郎:『ああ、サンキュ!』


 そうして龍太郎たちは、何事もなく無事に第二階層の入り口に着いた。

 最短コースで進んだが、ダンジョンは広いため、かなりの数のスライムを討伐している。

 なので結構時間はかかった。


龍太郎:「やっと着いたな。少し休憩するか?」


華那:「ううん。大丈夫。全く戦闘していないしね。みんな、大丈夫だよね。」

玲奈:「うん。私たちコアを拾うだけだからね。」

詩音:「すごい数拾ったよね。」

亜実花:「うん、拾った。換金したらすごいんじゃない?」


龍太郎:「まあな。でも、今日の本番は第二階層からだからな。俺も初めてだから、ここからは慎重に行くぞ。」


4人娘:「「「「は〜い!」」」」


 影武者龍次郎も一緒に並走しているが、今のところ出番なし。


 そして、第一階層から移転ゲートを通って、第二階層に到着。

 雰囲気は少し暗くなった感じがするが、特に変わった感じはない。


龍太郎:『アイちゃん!第二階層のマッピングよろしく!』


AI:〈ラジャ!〉


 ここでの目的は、この階層でメンバーのレベル上げをすることと第三階層への移転ゲートを見つけることだ。


 

 龍太郎たちが第二階層を少し進んで行くと前方にモンスターがいるのを発見した。

 第二階層のモンスターは、初めての人型モンスターであるゴブリンであった。


龍太郎:「おい!いたぞ!ここはゴブリンかよ。初めて見たけど、気持ち悪いな。」


華那:「あれ?先生、知らないで来たの?

 ここの階層は3種類のゴブリンがいるんだよね。あれは普通のゴブリンだよ。」


「え?知ってたの?」


華那:「もちろん、普通知ってるよ。」

詩音:「でも、あれはちょっと無理かも。」

玲奈:「だよね。あれ、全員雄だよね。」

亜実花:「うー、気持ち悪よぅ。」


 確かに、ゴブリンはほとんど全裸の状態で、前の逸物の部分に動物の角のようなカップをつけて隠しているだけの外見だった。

 女性には結構厳しい見た目だ。


 普通のゴブリン。

 緑色の肌をしており、個体差はあるが人間より少し体格が大きい。

 常に前傾姿勢を取り、動きも素早く、跳躍力も高いので一瞬で間合いを詰めてくる体術型の攻撃を得意とする。

 異様に伸びた硬い爪で切り裂く攻撃型だ。

 口には大きな牙が生えており、仕留めた人間を食らう。さらに女性は生捕りにして、繁殖行為を行うという鬼畜モンスターである。

 ただ、地上にいる動物型モンスターよりもレベルが上がりやすいらしい。


龍太郎:「嘘〜!ゴブリン、ヤバいじゃん!」


 華那に教えてもらったゴブリンの特徴を知って龍太郎は驚いた。


華那:「先生!本当にお願いね!

 私たち、ゴブリンに攫われたら酷い目に遭うからね。」


龍太郎:「ヤバ!それはマズイ。

 くっそ。ゴブリンめ!

 繁殖行為なんて絶対にさせるか!」


 龍太郎は違う意味でゴブリンを敵対視した。


龍太郎:「よし!まずは俺が行くから、みんなここで見ていてくれ。絶対に見つかるなよ!」


華那:「うん、わかった。」


龍太郎:『龍次郎!こいつらを頼むぞ!』


龍次郎:『おぅ、了解!』


 龍太郎は、ゴブリンたちに向かって一直線に走っていった!

 ゴブリンは全部で8体。

 大抵のゴブリンは集団行動を取るので、これくらいの数になる。


 まずは気づかれる前に2体を二刀流旋回斬で斬りつける。

 1体は斬る際に一刀両断スキルを使い攻撃力を上げたため、一撃で討伐出来た。

 もう1体は、一刀両断スキルなしに斬りつけたが、こちらも一撃で討伐。


 よし、防御力はそれほどでもない感じか。

 ほぼ全裸だしな。なんとかなるぞ。


 残りのゴブリンズ6体は、龍太郎に気付いて慌てて臨戦体制を取った。


 オーケー!お前らの戦闘力を見てやるよ!

 おら!来いや!カモン!


 龍太郎対ゴブリンズの戦闘開始!


 ◇◇◇◇◇

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