第66話 大総選挙5

 ◇◇◇◇◇


 大総選挙は盛り上がりを見せている。


 ネット上では、天堂龍太郎がトレンドワードとして大バズり中。

 突如現れた謎のエクスプローラとして、尾ひれをつけて情報が飛び交っている。

 ただ、主に琴音とカレンのサポーターと思われる外野からの散々たるアンチコメントが繰り広げられていた。8割アンチ状態。

 そのせいか、今回は上位に入るであろう予測をされていた宝生舞夢の話題は、完全にかき消されている。まさに空気。

 当の宝生もこれには完全にブチ切れていた。

 龍太郎にとっては、これもとばっちりであったが、のちに再会するきっかけとなる。



 このあと、第2回、第3回、第4回と中間発表があったが、順位の入れ替わりはあるものの上位陣は完全に固定された感がある。


 それほど、龍太郎の登場はインパクトがデカかった。


 そして、投票締め切りの1時間前、最終の中間発表が今発表されようとしていた。



『さあ、大総選挙も残りの投票時間は1時間を切りました!

 まだ、投票されていない方は、早めに投票をお願いします!

 現在の投票率はすでに7割を超えたようです。

 では、第5回中間発表です!

 モニターをご覧ください!』



 そこに一本の電話がかかってきた。

 そしてカレンは、その電話を取った。


カレン:「はい、夢咲ですけど。

 はい。

 はい。

 え?分かりました。

 はい、ここにいますけど。

 はい。

 はい、伝えておきます。

 はい。失礼します。」


美紅:「カレンさん。なんの電話ですか?」


カレン:「協会に呼ばれた。今から来いって。」


美紅:「大総選挙の件ですか?」


カレン:「うん、そう。

 なんか、琴音さんと私のどちらかが第一柱女神に選抜されそうなんだって。

 だから、今から協会本部に行かないといけないみたい。」


龍太郎:「お!夢咲さん!やったな!」

美紅:「やっぱり、カレンさんには第一柱がお似合いですよ!」


 これには、ダイアモンズのメンバーも大盛り上がりで騒いでいる。

 やっぱ、夢咲さんはすごいな!


カレン:「あと、天堂くんもここにいるのを知ってたみたいで、一緒に来るようにって。」


龍太郎:「え?なんで?付き添いが要るのか?」


カレン:「それなんだけどね。

 今回は御剣さんと天堂くんのどちらかが第一将持国天に選抜されそうなんだって!」


龍太郎:「え?うそ!?」


カレン:「本当。中間発表で予想はしてたけど、徐々に順位が上がってたもんね。

 すごくバズってるし。」


龍太郎:「俺が第一将?まっさか〜?」


美紅:「あんたが第一将って格が下がるわよね。」


龍太郎:「ほっとけ!」


華那:「先生!すっご〜い!やったね!」

玲奈:「我らが龍太郎先生!お祝いだね。」

詩音:「うんうん。すごいよ!」

亜実花:「第一将って1番だよね!やった!」


龍太郎:「おい!まだ早いぞ!

 でも、なれたらすごいな。ぐふふ。」


 なったら人気者かな?

 ちょっとはモテるんじゃないか?ぐふふ。


カレン:「天堂くん。何にやけてるの?

 じゃあ、いい?行くわよ。」


龍太郎:「ああ。いいぞ。」


華那:「カレンちゃん!先生!いってらっしゃい!」


 カレンと龍太郎は、クランハウスを出て、協会本部4階の大総選挙特設会場に向かった。



 ◇◇◇◇◇



『さあ、時刻は午後6時を過ぎました。

 すでに投票は締め切られました。

 このあと、すぐに投票結果の発表が出るようです。

 今回の投票率は、なんと!過去最高の88%となったようです!

 これは約8800万票の投票があったということですね。

 さあ、結果はどうなるんでしょうか?

 現在の如月琴音さんと御剣京介さんが死守するのか?

 それとも、新しい第一柱女神、第一将持国天が誕生するのか?乞うご期待です!』


 カレンと龍太郎はスタッフと共に会場の袖で待機していた。


カレン:「天堂くん。緊張してきたね。」

龍太郎:「ん?そうか?楽しみではあるけどな。まあ、俺の場合は棚ぼただからな。」



『それでは、結果発表に移りましょう。

 2050年秋季エクスプローラ侍四天王サムライフォーおよび女神七柱メガミセブン選抜大総選挙の結果は!?

 まずはメガミセブンからです!

 今回、第七柱女神に選抜されたのは!』


 ダラララララララララララ、ダン!


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 第七柱女神

 本玉亜里珠

 栄管轄・ラビットラビリンス所属

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


『本玉亜里珠さんです!』


 パチパチパチパチ!


 そこから次々と女神の発表が続いた。


 ダン!


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 第六柱女神

 雫石萌乃

 札幌管轄・ホワイトリリー所属

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ダン!


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 第五柱女神

 城之内遥香

 天神管轄・水鏡所属

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ダン!


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 第四柱女神

 月城麗香

 横浜管轄・パラドール所属

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 ダン!


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 第三柱女神

 葉月静華

 梅田管轄・スカイピア所属

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 パチパチパチパチ!


『さあ、残るところはあと2つになりました!

 なお、今回の上位2名については、ものすごい僅差での決着となったようです。

 その差はなんと、3票!3票です!

 総投票数の約8800万票のうち、たったの3票での決着となったようです。

 稀に見るデッドヒートの争いでした。

 では、第二柱女神に選抜されたのは?』


 ダラララララララララララ、ダン!


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 第二柱女神

 夢咲カレン

 渋谷管轄・ゴッドブレスユー!所属

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


『夢咲カレンさんです!』


 パチパチパチパチ!



 袖で待機していたカレンは、緊張から解き放たれて安心しているが、少し残念そう。


龍太郎:「夢咲さん。惜しかったな。」

カレン:「うん。でも贅沢だよ。第二柱だしね。」

龍太郎:「ああ、すごいと思う。」

カレン:「まだ、天堂くんが残ってるけどね。」

龍太郎:「俺は期待はしてないから。」



『夢咲カレンさん大健闘でした。

 投票結果は最後までわからない状況だったようです。上位2名が飛び抜けていたとのこと。

 いやー、惜しかった。

 ということは?はい、もう皆さんもわかってると思いますが、次の結果を見てみましょう。

 メガミセブン最後の一人、第一柱女神の称号を手にしたのは!?』


 ダラララララララララララ、ダン!


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 第一柱女神

 如月琴音

 渋谷管轄・カーバンクル所属

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


『今回もこの人だ!未だ明け渡すことなく、不動の第一柱女神に君臨!

 如月琴音さんに決定いたしました!』


 パチパチパチパチ!


『如月さん!おめでとうございます。

 今の感想をお聞かせください。』


『今回はいつもにも増してドキドキしましたね。カレンちゃんがすごい勢いで票を稼いでいるのは分かりましたから。

 でも、皆さんの応援のおかげで、また第一柱女神の称号を頂けて本当に感謝です。

 これからも応援よろしくお願いします。』


『はい、本当におめでとうございます。

 最後は如月さんがなんとか死守しました。』


 このあと番組は、今回の結果について、ネット上の様子なども踏まえて、解説の人たちの感想などが続いていた。



『はい。それでは、続いてサムライフォーの結果発表に移ります。

 こちらも予想ができない状況でした。

 さて、結果はどうなったんでしょうか?

 まずは、第四将多聞天の発表です!』


 ダラララララララララララ、ダン!


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 第四将多聞天

 風魔宇宙

 栄管轄・電撃シャチホコ所属

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


『風魔宇宙さんです!』


 パチパチパチパチ!


『続いて、第三将広目天は誰だ!?』


 ダラララララララララララ、ダン!


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 第三将広目天

 喜多川北斗

 渋谷管轄・国士無双所属

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


『喜多川北斗さんです!』


 パチパチパチパチ!


『さて、残るはあと2つ!

 次は第二将増長天の発表です。』


 ダラララララララララララ、ダン!


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 第二将増長天

 御剣京介

 梅田管轄・スカイピア所属

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


『御剣京介さんです!』


 パチパチパチパチ!


『おい!なんでや!?

 どないなっとんねん!』


『御剣さん。勝手に喋らないでください。

 心の声がダダ漏れしてますが、あとで感想は伺いますから。

 それでは、本日最後の発表になりました。

 第一将持国天に選抜されたのは?

 この方です!』


 ダラララララララララララ、ダン!


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 第一将持国天

 天堂龍太郎

 渋谷管轄・無所属

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


『天堂龍太郎さんです!』


 パチパチパチパチ!


『最終結果では、御剣さんに大差をつけての第一将選抜だったそうです。』


『おい!その説明いるんかい!?』


『御剣さん!勝手に喋らないでください!

 よく喋る人ですねぇ。

 それでは、新しく第一将持国天に選抜された天堂龍太郎さんにお越しいただいていますので、来てもらいましょう。

 天堂さん。どーぞこちらへ!』


 パチパチパチパチ!


 龍太郎はカレンに見守られて、全国配信の中継会場に突入していった。

 緊張する性格ではないが、この経験したことのない異様な空間に頭が真っ白になっている。


 わ!めっちゃ注目されてる!


『天堂龍太郎さんです!

 今回、いきなりの第一将持国天に選抜ということですが、今の感想は?』


『ちょっと、よくわからない……です。』


『そうですか。たしかにいきなり過ぎてよくわからないかもですね。

 今回、天堂さんが選抜されましたが、Dランク初、無所属初ということみたいですよ。

 春季の夢咲カレンさんも衝撃でしたが、それ以上に衝撃の結果でした。

 如月さん。この結果は、予想していましたか?』


『いえ、ビックリですね。

 実は私は龍くんに入れたんですけど、一般的に見て、龍くんにそんな票が入る要素がないですからね。まったくの謎です。』


 会場に笑いが起こる。

 でも、龍太郎は相変わらず頭真っ白状態で、会場の会話もほとんど入ってこない。

 引き続き、解説者やゲストのコメントが続いていたが、知らぬ間に終わりを迎えていた。


『では、これをもちまして、日本探検者協会主催2050年秋季エクスプローラ侍四天王サムライフォーおよび女神七柱メガミセブン選抜大総選挙の配信を終了いたします。

 みなさん、朝から長い間ご視聴ありがとうございました。

 では、次は2051年春季にお会いしましょう!さよなら!』


 あ!終わったのか?


カレン:「天堂くん!おめでとう!」

龍太郎:「夢咲さん。」


琴音:「龍くん!すごいじゃない!」

龍太郎:「如月さん。どーも。」


御剣:「天堂!なんで俺がお前に負けたんか、まったくわからんな。普通や。普通すぎる。

 まあ、今回は譲ったけど、次は俺が勝つさかいにな。それまで預けとくわ。ほなな。」

龍太郎:「あ!御剣さん?どーも。」


 御剣に肩をポンと叩かれる。


 例の如く、機械音が頭で鳴り響く。


〈ピピプピプ……他者の超能を確認!〉

〈超能【拳骨げんこつ】を登録しますか?〉


 あ、そっか。忘れてた。登録!


〈ピピプピプ……超能【拳骨】を登録しました!〉

〈ピピプピプ……超能【拳骨】の解放に失敗しました。

 超能【拳骨】の解放のために必要な固有強度レベルの条件を満たしていません。〉


 そりゃそうだわな。

 まあ、登録できてラッキーかな。


 と、そこに協会副会長の野神紗英も近づいてきて、龍太郎に声をかけた。


野神:「天堂くん。第一将持国天おめでとう。

 今から私と一緒に来てちょうだい。

 強制よ。」


 ここに龍太郎の強制連行が決定した。なぜ?


 ◇◇◇◇◇

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