第57話 ダイアモンズ3

 ◇◇◇◇◇


 なぜか、俺はあーみんこと佐々島さんをお姫様抱っこして走っている。

 他のダイアモンズの3人も並走している。


華那:「あーみん、いいなあ?」

玲奈:「一人だけずるいよね!」


亜実花:「だって動けないんだからしょうがないじゃん!」


詩音:「あとで変わってよ!」

玲奈:「そうそう、先生は独り占めしちゃダメです。」


亜実花:「無理だってば〜!」


 やっぱり、このノリか……。

 移動中も喋りっぱなしなんだけど。


 移動速度も他の3人に合わせてるせいか、ものすごくゆっくりに感じる。

 ホワイトラの狩場はゲートから結構遠いからな。

 まあ、今日中には帰れるか。


華那:「ねえ。天堂先生って歳いくつなの?」


龍太郎:「あー、俺か?発展途上の20歳だ。」


詩音:「へえ、予想より若いんだね。

 彼女はいるの?」


龍太郎:「うぐっ!(痛恨!)」


玲奈:「あっ!いないんだね!」


龍太郎:「おい!なぜそうなる!?」


玲奈:「じゃあ、いるの?」


龍太郎:「ぐはっ!(痛恨!)」


亜実花:「先生っていい体してるよね?

 すごい筋肉質っていうか。」


 急に話題が変わった!これ!


龍太郎:「毎日、筋トレしてるからな!」


亜実花:「えー?どれどれ?

 わー!カチカチじゃん!すっごい!」


玲奈:「あー!私も!おー!すっごい!」

詩音:「本当だ!すごいカチカチ!」


 ちょっと〜!変な触り方するな〜!


 ん?ちょっと待てよ。

 いいこと思いついた!


 鼓舞!鼓舞!鼓舞!鼓舞!


華那:「あれ!急に軽くなった!」

玲奈:「何これ?」

詩音:「私もだよ。」


 あーみんだけは気付いていないが。


龍太郎:「これで速く走れるだろ?」


玲奈:「わー!先生!なんかしたの?」


龍太郎:「ああ。ちょっとな。どうだ?

 ペース上げていいか?」


華那:「いいけど、何したの?」


龍太郎:「ああ。バフ系スキルだな。

 身体能力全般が激上がりだぞ!」


華那:「うわ!そうなんだ!ヤバ!!」

詩音:「これで狩りしたらすごく爽快な気がする!」

玲奈:「やっぱり、先生すごいね!

 なんか、行ける気がする!」


 もう、生徒たちは龍太郎とパーティを組めると思っている。

 そんな約束は一回もしていないのだが。



 龍太郎たちは、速度を上げてゲートに向かって走っていった。

 当然、わちゃわちゃと喋りまくりながら。



 ちなみに、生徒たち4人のスキルは話をしている間にしれっと登録済みだ。

 ただし、開放はされなかった。

 やっぱり、超レアの覚醒系スキルだ。

 序列を見ると、たぶん、解放にも時間がかかりそうな雰囲気がする。


 ステータスボード!


【個体情報】天堂龍太郎 20歳 人間族

【個体強度】レベル2

【固有超能】超能王

【解放超能】覇気・洗脳・収納箱・衝撃砲・重力操作・分身体・並列思考・隠密・鼓舞・宙歩・俯瞰・俊速・浄化・旋回斬

【登録超能】豪運・召喚・光・闇・癒・心・封印・超会心・回復波・流星弾・炎斬刃・瞬間移動・火玉・水玉・風玉・土玉



 こうなると予想として、生徒たちの覚醒もかなりハードモードなのでは?と心配になってくる。

 いろいろ話しているうちに、生徒たちには覚醒してほしいと思い始めている。


 一つは、落ちこぼれと言われつつも諦めずにエクスプローラを続けていること。

 境遇が俺と似てるっていうのがある。

 しかも、俺より2年以上も長くだ。

 ムードメーカーで最年長の高梨さんが25歳、次にちょっと天然でリーダーの百枝さんが24歳、この中ではしっかり者に思える玉置さんが23歳、そして最年少で甘えん坊の佐々島さんが22歳。

 全員同級生かと思ったら、全員が違うらしい。ものすごく仲がいいんだけど、エクスプローラをやり始めてからの付き合いだとか。


 もう一つは、本当に教え子(全員、年上だが)のような感じで接してくるので、この短期間で俺が魅了されているのかもしれない。


 とにかく、この先どうしようか?と柄にもなく人の心配をしている龍太郎であった。



 ◇◇◇◇◇



 そして、無事にゲートに到着!

 ゲートを抜けて、買取センターに寄って換金。

 今日もウハウハな額の買取金額になったぜ!


 そして、あーみんを送り届けるために、ダイアモンズのクランハウスDー201に向かって敷地内を歩いて行くと……。


 その途中で、見知った人物に会う。

 あまり会いたくなかった人物だ。


吉野:「あれ?お前、天堂じゃん?

 まだ、エクスプローラやってたんかい?」


 ほら、案の定、嫌味ったらしい言い方。


龍太郎:「やってたよ。悪かったな。」


吉野:「お前、本当に言葉遣いがなってねえよなぁ。

 先輩は敬いなさい。

 俺がどれだけ世話してやったよ。」


龍太郎:「世話してもらった記憶がまったくないな。」


 こいつは、エクスプローラなりたての時に少しの間、同じクランにいた吉野よしの登留のぼるだ。

 そんなに強くないくせに、先輩ヅラでやたら偉そうにする嫌なやつ。

 

 険悪なムードに生徒たちが心配そうに見ている。


吉野:「雑魚!女の前だからって偉そうにすんなよ。ボケ!スキルも使えんくせに!

 ん?あれー?見たことあるぞ!

 お前ら、ダイアモンズだよな!

 なるほど、そういうことかよ!

 ばっはっは!落ちこぼれ同士で徒党組んでんだな!お似合いだよ!

 これは傑作だな!ウケる〜!」


 何がおかしいんだよ?


華那:「そうだよ!落ちこぼれだよ!」


 お!リーダーの百枝さんが言い返したぞ!

 俺の後ろに隠れてだけど。

 落ちこぼれを認めただけだけど……。


 うーん。スルーしようと思ってたけど、なんか腹が立ってきたな。

 自分のことを言われるよりムカつく。


龍太郎:「こいつらはお前なんかと比べものにならないんだよ。

 お前こそ、上に媚びてるだけのお調子もんだよな。雑魚はお前だよ。」


吉野:「はあ!?お前、誰に向かってそういうこと言ってんの?

 俺はなあ、あの有名な渋谷最大クランの国士無双に所属してるんだよ!

 しかもな、近々、長期に潜るってんで、トップチームに追加メンバーとして招集されてんだよ。エクスプローラの頂点だよ!

 どんだけすごいかわかるか?

 まあ、底辺にはわかんねえか?」


 こいつ、自慢したいだけじゃねえか?

 てか、こいつそんなにすごかったか?

 いつの間に国士無双に入ってんだよ!


龍太郎:「クランがすごいだけで、お前がすごいわけじゃないよな。

 しかも、俺が最も嫌いなクランだよ。」


 そのクランには、宝生がいるし。


華那:「先生。もうやめよ。あの人、国士無双だよ。」


 あれ?みんな、急に青ざめてる?


吉野:「女の落ちこぼれはわかってるみたいだな!

 俺はエリートなんだよ。

 ものすごい大金持ちになるぞ。

 なんせ、トップチームだからな。

 まあ、女たちだけなら、俺が面倒見てやってもいいんだぜ!ぐへへ。じゅる。」


 なんだ、こいつ?

 めちゃくちゃエロい目で見てるぞ。

 気持ち悪い!悪すぎる!


龍太郎:「お前、気持ち悪いぞ。

 媚びて取り込んだだけだろ?

 どーせ、お前の実力じゃないだろ?」


吉野:「はあ!?悔しいか?スキルなし。

 俺のスキルが有能だからに決まってるだろうが。ボケ!」


龍太郎:「お前のスキルがねえ。」


 ちょっと視てみるか。

 こいつのスキルは?〈料理〉!?


龍太郎:「お前。非戦闘系じゃねえか!?」


吉野:「知ってたんかよ。そうだよ。

 長期探索には、有効なスキルなんだよ。」


龍太郎:「お前、本当に弱いんじゃないか?」


吉野:「はあ?そんな訳ないだろ。

 スキルだけでトップチームに行けるほど甘くないんだよ。

 レベルも上がってるに決まってるだろうが。

 なんなら、ここでやってみるか?底辺!」


 こういう奴らは、やたらとマウンティングしたがるよなぁ。


 吉野はすでにやる気満々になってるけど……。どうする?


 ◇◇◇◇◇

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