第56話 ダイアモンズ2

 ◇◇◇◇◇


 ダイアモンズのメンバーは、リーダーのひとことで、みんな疲れているのにも関わらず龍太郎の近くに寄って来た。

 あーみんって子は重症じゃなかったのか?


龍太郎:「お前たち。体は大丈夫なのか?」


華那:「そんなこといいから!」

詩音:「そうそう、早く教えてよ!」

玲奈:「そうだよ!何?」

亜実花:「ほんと、めっちゃ気になるんだけど〜!」


 視線が!注目度ナンバー1です。


龍太郎:「それじゃあ、俺の知ってることを教えるよ。

 これって一般に知られてないことみたいだから、あんまり他で言うなよ。」


華那:「もう!勿体ぶって!言わないから早く!」


龍太郎:「わかったよ!

 お前たちのスキルは覚醒系スキルって言って、レアスキルの分類なんだよ。

 覚醒系スキルってのは、名前の通りにある条件を満たさないと覚醒しないスキルなんだ。

 条件はわからないけど、普通は個体強化レベルを上げないといけないみたいだぞ。

 俺の知ってる情報はそれくらいだ。」


華那:「うそ!マジで!」

玲奈:「え!そうなんだ!」

詩音:「私たちのスキルってレアだったの?」

亜実花:「やったじゃん!嬉しい!」


 ダイアモンズのメンバーは、お互いの顔を見合わせて喜んでいた。


華那:「ところで、天堂くんはなぜそんなことを知ってるの?

 誰もそんなこと言ってなかったし。」


 えーっと。それは全部アイちゃんの受け売りですが……。


龍太郎:「いや、そういうことに詳しい知り合いがいてだな。たまたま知ってたんだよ。」


 そこ、突っ込むなよ!


玲奈:「へえ、そうなんだ。

 でもさぁ。なんで、私たちの固有スキルを知ってたの?変じゃない?」


龍太郎:「えーっと、それはたまたま知ってたんだよ。」


詩音:「ふーん。じゃあ、私たちのスキル言ってみてよ。」


龍太郎:「ああ、いいぞ。

 百枝さんが〈光〉、高梨さんが〈闇〉、玉置さんが〈癒〉、佐々島さんが〈心〉だよな。

 ちょっと珍しいから覚えてたな。」


亜実花:「ふーん。どういうこと?」


龍太郎:「え?何が?」


華那:「私たち、誰にもスキル教えてないんだけど……。」


 そのリーダーの発言で、みんなが一斉にジト目してくる!

 そんな目で見ないで!


龍太郎:「え?誰にもって?」


詩音:「そうだよ。誰にも教えてない!」


 わ!玉置さん!語気強いよ!


龍太郎:「いや、誰かには言ったことあるだろ?

 当然メンバーは知ってるだろ?」


華那:「ううん。私たち初めて聞いたよ。

 メンバーにも聞かないって決めてたから。」


龍太郎:「えーーーー!そうなのか?」


 冷や汗がたらり……。

 誰にもって、本当に誰にも言ってなかったんかーい!そりゃ、俺が知ってたら変だよな!


華那:「ちょっと〜!天堂くん!

 どうして知ったか教えてくれるよね!?」


龍太郎:「えーっと、うーんと。」


 マズい!すごくマズい!

 視線が痛い。これは誤魔化せない。


龍太郎:『ちょっと〜!アイちゃん!ヘルプミー!』


AI:〈マスター。ヘルプ出すの遅いよ。〉


龍太郎:『そんなこと言っても、もう言っちゃったから!』


AI:〈もう、洗脳スキルで口止めするしかないね。

 変に言い訳してもボロが出るよ。〉


龍太郎:『おー!許可が出た!ナイス!』


AI:〈ちゃんとフォローしなよ。〉


龍太郎:『ああ。わかった。サンキュ!』



龍太郎:「みんな、俺の目を見てくれ!」


 龍太郎は洗脳スキルを発動!


龍太郎:「俺から聞いた情報は全て秘密だ!

 他の誰にも喋っちゃダメ!いいな!」


 念のため、洗脳スキルを強めにかけておいた。このスキルよくわかってないから、すぐに効果が切れると良くないからな。


全員:「「「「はーい!」」」」


 おー!めっちゃ効果抜群!

 これで大丈夫かな?


龍太郎:「お前たちのスキルは、直接視たんだよ。

 俺も誰にも言わないから安心してくれ。」


華那:「天堂くんってそんなスキル持ってるんだ。」


龍太郎:「ああ。すごく特殊だからな。

 俺以外に知っている人は1人だけだ。

 だから、絶対に言っちゃダメだぞ!」


華那:「うん。わかってるよ。

 でも、良かった。私たちのスキルって期待していいんだもんね。

 もう、どうしようもなく不安で、言い出せなかったけど、もうダメなんじゃないかって思ってたんだよね。」


詩音:「リーダーもそうだったんだ。

 私も言い出せなかったよ。」


玲奈:「そうそう。誰が言い出すかって感じだったもん。」


亜実花:「え?みんな、そんなこと考えてたんだ?」


詩音:「あーみんだけは、気にしてなかったか。あーみんらしいね。」


 なるほど、あーみんって子の性格だけはわかったような気がする。


華那:「でも、私たちのスキルってレアなんでしょ?

 じゃあ、もっと頑張ればいいってことだよね!」


龍太郎:「そうそう。もっと頑張ればいいんだよ。」


玲奈:「よっしゃ!いくぜ!」


詩音:「なんか、やる気湧いてきたね!」


 うんうん。いい感じだな。

 教えた甲斐があったよ。

 そこ、テストに出るからな!


華那:「天堂くん!個体強度レベルを上げると覚醒するんだよね?

 どれくらい上げればいいんだろう?

 なんか知ってる?」


龍太郎:「いや、それは知らないな。」


華那:「そうなんだね。

 私たち、レベルを上げるのも一苦労なんだよね。だから、まだレベルは低いの。

 ま、頑張るしかないよね。

 天堂くんは、レベル高いんでしょ?」


龍太郎:「いや、低い。」


詩音:「低いって言っても、私たちよりは全然高いよね!?」


龍太郎:「いや、そんなことない。」


玲奈:「えー!なんか謙遜しちゃってぇ!

 そこまで言うと嫌味だし!」


 いや、本当に低いから。

 まだレベル2とは言えないけど。


華那:「天堂くんってカッコよかったよね!?

 なんかさ。戦ってるっていうより、舞を見てるような感じだったよね!」


詩音:「そうそう!私も見てて綺麗って思ったもん。」


玲奈:「あ!私も思った!

 すごく綺麗だった〜!

 私もあんな風になりたいなあ!」


亜実花:「頑張れば行けるかもよ。

 私たちレアだから!」


華那:「ちょっと気が早くない?」


詩音:「そっか。まだまだだね。」


玲奈:「でも、頑張れば行けるかもって気になれるだけ、今までとは違うよね?」


亜実花:「うんうん。なんか視界が広がった感じだよね!」


 この人たち、めっちゃ喋るやん!

 ガールズトークに突入してないか?

 わちゃわちゃしてて、こういうの苦手なんだけど。

 

龍太郎:「もうそろそろ行こうかな?」


 もう、行っても大丈夫だろ?


華那:「えー!ダメだよ!いろいろ聞きたいし!天堂くんってどうやってレベル上げてるの?」


玲奈:「天堂先生!教えて!」

亜実花:「天堂先生!お願い!」

詩音:「先生!私たち、落ちこぼれから脱出したいの!お願いします!」


全員:「「「「先生!お願いします!」」」」


 なんなのこれ?

 こういうノリが流行ってるの?


龍太郎:「申し訳ないけど、俺も同じような感じで修行中なんだよ。

 早くダンジョンに行きたいから。」


華那:「あー!行きたい!お願い!」

玲奈:「ダンジョン!それいい!うふ。」

詩音:「先生!私も行きたーい!」

亜実花:「ね?先生?」


 お前たち、気持ち悪いよ。

 全然、色気ないし、その態度やめろ!

 そういうのには、引っかからん!


龍太郎:「お前たち、俺より年上だよな?

 甘えても無駄だぞ!

 そういうの俺には効かん!」


玲奈:「えー!ブー!」

亜実花:「ブー!ブー!」


 なんだ?こいつらみんなでブーイングし出したぞ!騒がしい!


玲奈:「年上とか関係ないよ。

 甘えさせてくださいよー!先生!」


 おいおい!今度は何をし出したんだ?

 何かの儀式かよ?俺はアラーの神か?

 こいつら、相当プライドがないか変態かのどっちかだ。ヤバい。


 なぜか俺は女子校の教師のようになっていて、いろんなバリエーションを交えて懇願され、やむなく折れた。ポッキリ折れた。

 違う意味で俺よりレベルが高い……。


 納得したダイアモンズのパーティは、すでにわちゃわちゃと帰り支度をしている。

 そして、なぜか動けなくなったあーみんは俺が運んで帰ることになっていた。

 この人たち、違う意味でスキル持ちです。

 懐への入り込み方がエグい。


 まあ、引き受けた以上、仕方がない。

 今日はあと1カ所行く予定だったんだけどな……。


 ◇◇◇◇◇

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