第50話 覇気!

 ◇◇◇◇◇


 次の日も朝早くからゲートイン!

 龍太郎は今日も絶好調!


 今日も販売所に立ち寄るところからスタート。今日はお千代が店番。


龍太郎:「お千代さん。おはよう。

 ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」


千代:「また来たね。なんだい?」


龍太郎:「ファースト・ダンジョンのことなんだけど。

 第3階層のボスってどれくらい強いんだ?」


千代:「ああ。ドッペルゲンガーのことかい?」


龍太郎:「それ!お千代さんは倒したことがあるって聞いたから。」


千代:「それならやめときな。

 あれは普通に倒せるもんじゃないよ。」


龍太郎:「でも、お千代さんは倒したんだよな。」


千代:「ああ。私の場合は特殊だよ。

 それ以上は言えないね。」


龍太郎:「うーん。でも、俺も倒す必要があるんだよ。

 どうしても強くなりたいんだ。」


 龍太郎の顔は真剣そのものだ。

 真っ直ぐ見つめる龍太郎にお千代は諦めたように口を開いた。


千代:「仕方ないね。お前は言わないと分からないみたいだからねぇ。

 よく聞くんだよ。

 知ってると思うけど、ドッペルゲンガーは自分と戦うようなもんだ。

 しかも、私の見立てじゃ、ざっとレベル差は5倍ってところかね。

 5倍という差は大人と子供の差だ。

 とても普通に戦ったんじゃ、まず勝ち目はないんだよ。

 お前もよーく考えてみな。

 5倍のスピードとパワーのやつが襲ってくるんだよ。

 しかも、防御力も体力も5倍だよ。

 違うのはスキルの有無だけだ。

 そのスキルが5倍の差を埋められなければ、一方的に痛めつけられて死んじまうんだよ。

 お前じゃ無理に決まっている。

 源三ですら諦めたくらいだからね。

 わかったら、絶対に近づくんじゃないよ。」


龍太郎:「ほぅ、なるほどな。

 うん。わかったよ。

 ありがとう。お千代さん。」


千代:「本当に近づくんじゃないよ。」


龍太郎:「ああ。じゃあ、狩りに行ってくるよ。」


 いいことが聞けたな。

 レベル差は5倍か。

 逆に5倍の差をスキルで埋めることができればなんとかなるってことだ。

 体力の差は埋められないにしても、スピードとパワーの差を埋めればいけるかもな。

 よっしゃ!スキル収集あるのみだ!


 お千代の忠告に逆にやる気を起こす龍太郎。

 困ったもんです。



 ◇◇◇◇◇



 販売所を出ると、また昨日の女性がいた。

 懲りもせず、また尾行かよ!


翔子:「また会いましたね!」


 素性を知っている龍太郎は、その白々しい挨拶に、昨日とは違う反応を見せた。


龍太郎:「もう誘わないでくれ。

 昨日、断ったはずだろ!」


未知瑠:「ねえ!僕も一緒なんだけど。どーもね!」


 声をかけたのは安藤未知瑠。

 未知瑠は龍太郎にスキルを使用している。


龍太郎:「ん?ああ。誰?」


未知瑠:「安藤だ。よろしく。

 僕たちと一緒に狩りに行かないか?」


龍太郎:「ん?そうだな。よろしく頼む。」


 あれだけ警戒していた龍太郎も、未知瑠の誘いには考慮もせずに二つ返事でOKした。


 今日は翔子、未知瑠の他にジェシカも加えて3人で龍太郎の調査に来ている。

 横にいたジェシカも、未知瑠のスキルは以前に自分もかかったことがあった。

 そのため、やはり本当にヤバいスキルであることを改めて認識していた。


AI:〈マスター!どうしたの?〉


龍太郎:『ん?アイちゃん。何が?』


AI:〈誘いは断るんでしょ?〉


龍太郎:『ん?そうだな。

 でも、安藤さんならいいんじゃないか?』


AI:〈もう!マスターどうしたの!

 ちょっと、待ってよ。

 今、他の2人の情報を調べるから。〉


龍太郎:『ああ、わかった。』


龍太郎:「安藤さん。悪いけど、行くのちょっと待ってくれる?」


未知瑠:「ああ、いいよ。」


 未知瑠は役目を果たしたと思ったのか、ジェシカの方を見てウインクしている。

 それをジェシカは睨みつけていた。


ジェシカ:「未知瑠。調子乗んなよ!」


未知瑠:「えー!なんで?僕に厳しくない?」


ジェシカ:「黙れ!」


 この2人の関係は謎である。



AI:〈マスター。わかったよ。

 他の2人もバタフライ・コーポレーションの社員だよ。

 女性の方は、片桐ジェシカ。

 社長秘書室の室長で2人の上司だよ。

 もう一人の男性は、安藤未知瑠。

 白河翔子と同じ、社長秘書室の社員だよ。

 3人ともバタフライ関係なんだよ!〉


龍太郎:『アイちゃん。ありがと。

 でも、安藤さんならいいぞ。』


AI:〈もう!ならいいよ!

 その前に影武者龍次郎に他の2人を触らせて!スキル登録するんでしょ!〉


 アイちゃんは、2人のどちらかがなんらかのスキルを使用したのを疑った。

 でないと、この変わりようは説明できない。


龍太郎:『ああ、そうだな。

 それはやっておかないとな。』


 影武者龍次郎は、安藤未知瑠の肩に触れた。

 そして、龍太郎の頭の中の機械音が鳴った。


〈ピピプピプ……他者の超能を確認!〉

〈超能【魅了】を登録しますか?〉


 へえ。魅了か。いいスキル持ってるな!

 さすが、安藤さん。


 アイちゃんは、このスキルを見て確信した。

 絶対、このスキルのせいだよね!

 

 はい、登録!


〈ピピプピプ……超能【魅了】を登録しました!〉


 やった!安藤さんのスキル登録!嬉しい!


〈ピピプピプ……超能【魅了】の解放に成功しました。〉


 お〜!成功!やった〜!


〈ピピプピプ……超能王の効果により超能【魅了】を最適化します。〉

〈ピピプピプ……超能【魅了】は超能【洗脳せんのう】へと進化しました。〉


 やった!安藤さんのスキル解放!

 って俺、何に喜んでんだ?


 龍太郎は、未知瑠の魅了スキルの上位スキルの洗脳を取得したことにより、先程までかかっていた魅了が解けて我に帰った。


龍太郎:『アイちゃん!悪い!

 俺、安藤のスキルにかかってたみたいだ。』


AI:〈良かった〜!もう正気なんだね?〉


龍太郎:『ああ。ヤバいスキルだったな。

 あのままだったら、俺ついて行ってたよ。

 危なかったぁ!ギリセーフだな!

 じゃあ、もう一人もスキル登録するからちょっと待っててくれ。』


AI:〈うんうん。〉


 ジェシカたち3人は、龍太郎が長考しているにも関わらず油断しているのか、すでに3人で談笑している。


 こいつら、本当に3人も来て何なんだよ!

 スキルが解けると無性に腹が立ってきた。


 龍次郎!次は女の片桐だ!


 影武者龍次郎は、続いて片桐ジェシカの肩に触れた。

 そして、龍太郎の頭の中の機械音が鳴った。


〈ピピプピプ……他者の超能を確認!〉

〈超能【威嚇いかく】を登録しますか?〉


 威嚇か。威圧とどう違うんだ?

 

 あとでアイちゃんに説明を受けたが、威嚇は威圧の下位スキルで、威嚇した相手に恐怖を植え付けるスキル。

 威圧のように動きを止めることは出来ない。

 

 もちろん、登録!


〈ピピプピプ……超能【威嚇】を登録しました!〉

〈ピピプピプ……超能【威嚇】の解放に成功しました。〉


 お〜けい!成功!ざまぁ!


〈ピピプピプ……超能王の効果により超能【威嚇】を最適化します。〉

〈ピピプピプ……超能【威嚇】は超能【威圧】へと進化しました。〉


 え?威圧って持ってるんだけど?

 スキルがダブった!?うそーん!


〈ピピプピプ……超能【威圧】が重複したため合成しました。

 超能【威圧】は超能【覇気】へと再進化しました。〉


 ワオ!合成再進化ってパターンもあるのか!


 これもアイちゃんに聞いた情報だが、覇気スキルは、かなりの強力版威圧に相当するスキルで、より強者に対して効果があるらしい。

 また、弱者は気絶する場合もあり、気絶しない者でも体が硬直する時間が長くなる。


 ここでちょっとステータス確認っと!


 ステータスボード!


【個体情報】天堂龍太郎 20歳 人間族

【個体強度】レベル2

【固有超能】超能王

【解放超能】覇気・洗脳・分身体・衝撃波・並列思考・隠密・宙歩・俯瞰・俊速・浄化・旋回斬

【登録超能】豪運・召喚・封印・超会心・回復波・流星弾・炎斬刃・瞬間移動・火玉・水玉・風玉・土玉


 ウヒョ!今日は、狩猟前から2つの進化スキルをゲッチュ!そのうち一つは再進化って!

 幸先いいぞ!このやろう!



 ほんじゃ、スキル登録も終わったし、そろそろ行くか!


龍太郎:「あ、待たせてごめん!

 やっぱ、一緒に行くのやめるわ!

 俺、ソロがいいんで。じゃあ!」


未知瑠:「え?うそーん!どうした?

 さっき、一緒に行くって言ったよね!?」


 未知瑠。連日の痛恨!また涙目。

 龍太郎は完全無視して立ち去ろうとしたのだが……。


ジェシカ:「おい、こら!ちょっと待て!」


 ジェシカが睨みを利かせて、龍太郎を恫喝して引き止めた。

 もちろん、威嚇スキルを同時に使って。


 3人は、当然、龍太郎が立ち止まり、ジェシカに対して怯えを見せると確信していたのだが……。


龍太郎:「ん?まだなんか用?」


 何も無いように、普通に振り返る龍太郎。


ジェシカ:「はあ!?天堂龍太郎!

 お前、舐めてんのか!?」


 さらに強く威嚇スキルを使用して、ジェシカは龍太郎を恫喝した!

 ただし、龍太郎には一切の効果がない。

 威嚇の上位の威圧のさらに上位の覇気持ち。


 これには、3人とも驚きを隠せない。


翔子:「え?なぜ?」

未知瑠:「何が起こってる?」

ジェシカ:「おい!どうなってる!?」


 龍太郎には、ジェシカが威嚇スキルを使用していることはバレている。


 ふっ。なぜ、効かない?とか思ってんだろ。

 笑いが止まらん!アホずらしてるぞ!


 逆に倍返しにしてやるぜ!

 お前ら!後悔しろ!爆発しろ!


龍太郎:「おい!お前!

 なぜ俺の名前を知ってる!」


 龍太郎は、覇気スキルを放ちつつ、3人に向かって叫んだ!


 ジェシカは、体が硬直してその場に動けなくなり、気絶は何とか堪えたが、片膝で立っているのがやっとの状態。

 他の2人は、一瞬にして気絶。

 その場に倒れ込んだ。


 うわ!やり過ぎた!覇気スキル強っ!


龍太郎:「あ!何も無い?そうですか。

 なら、俺行くから。

 ついて来たらダメだぞ!じゃあ!」


 念のために龍太郎はジェシカに洗脳スキルを使って念押しした。


 そして、龍太郎はジェシカが無言で見つめる中、その日の狩場に向けて走って行った。


 ◇◇◇◇◇

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