第43話 銀色のあいつ

 ◇◇◇◇◇


 ただいま、第1階層大爆進中のリュータローズのふたり。


 レッドスライム、ブルースライムの他にグリーンスライム、イエロースライムにも遭遇し、固有超能をあと2つ登録した。


 登録した固有超能はこちら。


【固有超能】風玉かぜだま

【固有超能】土玉つちだま


 これらも解放には至らなかったが、現在のステータスはこうなっている。


 ステータスボード!


【個体情報】天堂龍太郎 20歳 人間族

【個体強度】レベル1

【固有超能】超能王

【解放超能】分身体・衝撃波・並列思考・隠密・浄化

【登録超能】豪運・召喚・封印・超会心・回復波・流星弾・炎斬刃・火玉・水玉・風玉・土玉・駿足


 スキルはだいぶ増えてるよな。順調。


 この第1階層には、4種類のスライムが存在することがわかっている。

 リュータローズは、この広い階層でその4種類のスライムを狩まくっている。


 レベルの方は全然上がらんやないかい!


 第2階層への入り口を見つけたが、とりあえず、レベルアップするまでは、ひたすらにスライム討伐をすることにした。


 なんせ、第2階層からはあいつが出てくるからな。

 しかも、日帰りじゃなくなる可能性もある。

 まあ、いつかは行かなくちゃいけないけどな。でも準備してない。


 初日は大量のスライムを討伐して終了。



 次の日からも、さらにスライム狩猟を続けてもう5日。


 毎日、第1階層で大量のスライムを狩ってはいるものの、全くレベルが上がる様子がない。

 モンスターコアも入手できないので、収入もなし。


 現在、ちょっとした休憩中。

 ランバードの肉を食いつつ、アイちゃんと会話している。


龍太郎:「このまま続けてていいのかな?

 全然、上がらないんだけど。」


AI:〈ここに来て、まだ6日目だよね?

 弱音のマスターくん!〉


龍太郎:「むむ。なんか棘あるな。

 そんなすぐには上がらないってことか。

 ここだと換金も出来ないし、辛いことになって来たな。」


AI:〈マスター。今はお金じゃないよね?〉


龍太郎:「むむ。アイちゃん、厳しいな。

 まあ、確かに。仰る通りですよ。

 ほんじゃ、腹ごしらえも済んだし、そろそろ再開するか!」


 龍太郎は、狩りを再開しようとして立ち上がった瞬間、1匹のスライムがこちらを伺っているのを発見した。


龍太郎:『おい!アイちゃん!

 あれってあれじゃないか!?』


AI:〈あれって何よ?〉


龍太郎:『あ!そうか。見えないんだったな。

 出たよ。銀色のスライム!画像送る!』


AI:〈本当だ!?

 ヤバいね。近づいちゃダメだよ。〉


龍太郎:『おぅ。わかってる。』


 龍太郎はアイちゃんとの会話を念話に切り替えて、銀色スライムが警戒しないように注意している。


 こいつはメタルスライム。

 出会うことすらごく稀の激レアモンスターの一種である。

 さらにこいつは、ほぼ討伐不可能と言われている。

 なぜなら、すぐに逃げてしまうからである。


 龍太郎は、急いでメタルスライムのスキルを鑑定した。


【固有超能】瞬間移動しゅんかんいどう


龍太郎:『アイちゃん。瞬間移動って出たぞ!』


AI:〈うん。早く影武者!〉


龍太郎:『オケ!』


 龍太郎は、メタルスライムとは反対の方向を向いて、戦闘の意思がないように振る舞っている。

 その隙に影武者モード龍次郎が近づき、掌底!からの衝撃波!決まったー!

 メタルスライムのモンスターコアを破壊!


龍太郎:「よっしゃ〜!メタルスライム〜!

 うえっ!!う゛ぇっ!」


 ボン!


 龍太郎は、一瞬喜んだのも束の間、急に苦しみ出し、影武者モード龍次郎も無意識に解除された。


 うわ〜!気持ち悪りぃーー!体も痛てぇ!

 なんか、骨と筋肉の両方が痛み出したぞ!



 龍太郎の頭の中に機械音が鳴り響いた。


〈ピピピプッピ〜!レベルアップを確認!〉

〈個体強度がレベル2に上がりました!〉


 嘘〜ん!気持ち悪りぃけど、やったぞ!


〈個体強度の上昇により、超能【駿足】の解放に成功しました。〉

〈ピピプピプ……超能王の効果により超能【駿足】を最適化します。〉

〈ピピプピプ……超能【駿足しゅんそく】は超能【俊速しゅんそく】へと進化しました。〉


 うぷっ。またまた、やったぜ!

 ただ、これちょっとややこしいな。



〈ピピプピプ……他者の超能を確認!〉

〈超能【瞬間移動】を登録しますか?〉


 うぷっ。はい、登録!


〈ピピプピプ……超能【瞬間移動】を登録しました!〉

〈ピピプピプ……超能【瞬間移動】の解放に失敗しました。

 超能【瞬間移動】の解放のために必要な固体強度レベルの条件を満たしていません。〉



 やったぜ!やっとレベルアップしたよ。

 苦節、1年半。やっと。うぷっ。


 それより、これいつまで続くんだよ!

 気持ち悪い。骨が軋む。筋肉がちぎれる。


 龍太郎はうずくまって、吐き気と痛みが消えるのを待っていた。



 ふぅ。やっと治ってきたぞ。

 これがレベル酔いってやつか。

 確かにこれは他人から見ても分かるな。


 吐き気と痛みが消えると、また喜びが湧き上がってきて、思わずニヤけてしまった。


龍太郎:「アイちゃん!レベルアップしたぞ!」


AI:〈うんうん。やったね!

 ちょっとステータス見てみなよ。〉


龍太郎:「それな!」


 ステータスボード!


【個体情報】天堂龍太郎 20歳 人間族

【個体強度】レベル2

【固有超能】超能王

【解放超能】分身体・衝撃波・並列思考・隠密・俊速・浄化

【登録超能】豪運・召喚・封印・超会心・回復波・流星弾・炎斬刃・瞬間移動・火玉・水玉・風玉・土玉


龍太郎:「うおー!レベル2になってる!

 ついにやったぜ!

 ステータスボードで見ると感動するな!」


AI:〈うんうん。感動だね。

 今回は特に頑張ったもんね。〉


龍太郎:「ああ、今までにないくらい狩りまくったからな。

 正直、しんどかったけど、こうやって実際にレベルが上がって、報われた気がするよ。

 まあ、スキルのおかげっていうのもあるけど。」


AI:〈いや、それだけじゃないよ。

 よく頑張ったと思うよ。マスター。〉


龍太郎:「ああ…ありがとう。

 それじゃ、早速確認してみるぞ!

 どれくらい強くなったか。」


 出でよ!龍次郎!


 ボン!


龍太郎:「じゃあ、始めるか?龍次郎!」

龍次郎:「オケ!龍太郎!」


 早速、ふたりは素手で模擬戦を始めた。


龍太郎:「何これ!?すげー!」


 レベルアップに伴って、身体能力が約2倍に上がっていることで、パワー、スピード、スタミナが劇的に上がったことを実感出来た。

 特にスピードに関しては、今回解放された俊速スキルの効果でさらに強化されている。


龍太郎:「俊速はパッシブか?」


 元々の駿足スキルは、アクティブで足が速くなるスキルであったが、進化したこの俊速スキルは、パッシブで全身全てのスピードが強化されているようだ。


龍太郎:「よっしゃ!これで第2階層に行っても、なんとかなるだろ!」


 リュータローズは、第2階層を目指して進み出したが……。


龍太郎:「あれー?どこだったっけ?」


 龍太郎は第2階層の入り口がどこだったか、覚えてなかった……。


AI:〈マスター。迷ってる?〉


龍太郎:「確か、こっちだと思ったんだけど。」


AI:〈もう!効率悪すぎだよ。

 マスター。僕に任せてみる?〉


龍太郎:「そんなこと出来るのか?」


AI:〈ちょっと、条件があるけど出来るよ。〉


龍太郎:「何?条件って?」


AI:〈マスターの視覚を僕に共有するんだよ。

 そうすると、ダンジョンの状況を僕も把握できるから、完全マッピング可能だね。〉


龍太郎:「おー!それいいじゃん!

 それ、早く言ってよ〜!」


AI:〈いいの?全部、筒抜け状態になるよ?〉


龍太郎:「いいよ、いいよ。全く問題ナッシング!

 アイちゃんとは一心同体少女隊だから。」


AI:〈オーケー!じゃあ、視覚共有しちゃうよ。〉


 龍太郎の頭の中に機械音が。


〈ナビゲーター:Aー0001からの視覚共有の申請を確認!

 許可しますか?〉


龍太郎:「はい!許可します!」


 ブイーーン!!


 アイちゃんにも龍太郎と同じ視界が広がる。


AI:〈ワーオ!素晴らしい!これが視界。〉


龍太郎:「え?アイちゃん。初めてか?」


AI:〈そうだよ。これは素晴らしいね。

 世界が広がるってこういうことなのかな?〉


龍太郎:「そっか。俺には当たり前だったけど、確かにそうかもな。

 実はありがたいことだよな。」


AI:〈うんうん。マスター。

 視覚をくれてありがとね。

 じゃあ、行ってみよう!〉


龍太郎:「おぅ!アイちゃん。で、入り口どっち?」


AI:〈そんなすぐわかる訳ないでしょ!

 マスター。今からマッピングしていくから、適当に進んでよ。〉


龍太郎:「あ、そっか。じゃあ、適当に進むわ。」


 結局、狩りをしながらのマッピングは意外に時間がかかり、中途半端になるのも良くないので、第2階層に行くのは次回ということにして今日は帰宅することにした。


 明日はひさびさの休暇日だ。

 俺は毎日でも良かったのだが、アイちゃんとの作戦会議で決まったことだ。

 以前は1日おきに休暇日というルーティンだったのを、1週間で日曜日のみ休暇日にするルーティンに変更した。

 まあ、適度な休息は必要だ。

 

 ただ、今日はレベルアップを達成!

 充分な成果を挙げて、意気揚々と帰還して行く龍太郎であった。


 ◇◇◇◇◇

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