第42話 迷宮型ダンジョン

 ◇◇◇◇◇


 ソロになった龍太郎。

 新しい探検の再スタートだ。


 まずは今日もゲート内の販売所に来ていた。


 ここも久しぶりだな。

 やられてから来てなかったもんな。


龍太郎:「お!今日は源さんか。」


源三:「小僧か。久しぶりじゃのう。

 今日は一人か?」


龍太郎:「ああ、またソロに戻った。」


源三:「おぅ、そうか。振られたか。」


龍太郎:「まあ、そんなとこだな。」


源三:「どうした?」


龍太郎:「ん?何が?」


源三:「何かあったか?」


龍太郎:「源さん。これってどうやったら手に入るのかな?」


源三:「だから、それは非売品だといったじゃろ。」


龍太郎:「そっか。」


源三:「お前、今日はおかしいな。

 まあ、ひとつ教えといてやるか。

 まずは条件があってな。

 Aランクエクスプローラになること。

 これが最低条件じゃな。」


龍太郎:「え?これってAランクになれば、買えるのか?いくらだ?」


源三:「まあ、待て。

 最低条件と言ったじゃろが。

 Aランクに上がったものは、適性テストを受けることが出来るんじゃな。

 その適性テストに合格すれば、これはその者に譲渡される。」


龍太郎:「へえ。そんな条件になってたんだ。

 じゃあ、Aランクになればいいんだな。

 ってか、これってもらえんの?」


源三:「ああ、そうじゃが、今までその適性テストに合格した者はおらんよ。

 わしもその一人じゃよ。」


龍太郎:「源さんも無理ってどんなテストだよ。」


源三:「まあ、簡単なテストだが、それをクリア出来んもんは一生クリア出来ん。

 そういうテストじゃよ。」


龍太郎:「へえ。どんなテストなんだ?」


源三:「それはその時にわかるじゃろ。

 まあ、お前にはAランクになる方が難関じゃと思うがな。」


龍太郎:「そっか。わかった。まずはAランクだな。

 源さん。サンキュ!」


 そう言って、龍太郎は販売所を後にして、今日の目的地に向かって走り出した。



 ◇◇◇◇◇



 さて、着きましたよ!

 もう安全重視とか言ってる場合じゃないからな。

 ソロになった今、自分で道を切り開くしかない。

 ちょっとくらいは無理していかないと、どんどん差は広がっていく。

 龍太郎決意の武者修行開始!



 それじゃあ、その前に軽くウォーミングアップでもしておくか!


 出でよ!分身体!


 ボン!


 龍太郎は、分身体を発動してもう一人の自分と対峙した。


龍太郎:「あのさぁ。龍太郎。」

分身体:「ん?何?龍太郎。」

龍太郎:「このやり取りおかしいよな。」

分身体:「そうだな。」

龍太郎:「お前、今日から龍次郎ってことにしよっか?」

分身体:「そうだな。わかりにくいからそうするか。」


 龍太郎の分身体は龍次郎と命名された。


 ただ、この会話って実はある意味、独り言だったりするよな。


龍太郎:「じゃあ、行くぜぃ!龍次郎!」

龍次郎:「おっしゃ!来い!龍太郎!」


 龍太郎と龍次郎が素手で模擬戦闘を始めた。

 これだと自分同士が戦っているので、一見変な風に思うが、分身体の思考を分離することによって、試合が成立している。

 力は全くの五分なので、思ったよりトレーニング効果は抜群だ。


龍太郎:「おい!これくらいにしておくぞ!」

龍次郎:「そうだな。狩りの前にバテてしまいそうだ。」


 龍太郎は、今回から効率を上げるために、今後は龍太郎・龍次郎ペアで狩りを行うらしい。


 ソロのようでソロではない。

 セルフパーティというところか。

 名付けて、2倍速!

 早くレベルを上げていかないとな!


 今日は、龍太郎は少し無理をして、ゲートから一番近い迷宮型ダンジョンに来ていた。

 もちろん、ソロで来るのは初めてだ。


 迷宮型ダンジョンは、初期から人型モンスターが存在するため、地上のモンスターより難易度が格段に上がる。

 初心者でソロの場合はまず来ない。


 ただ、龍太郎はレベル1のままだが、有効なスキルが増えているので、どれくらい、戦えるのかは未知数ではあるが、試してみる価値はあると思っている。


 今から潜る、この初級迷宮型ダンジョンの名前は、〈ファースト・ダンジョン〉。

 なぜ、ファーストなのかはよく知らないが……。



龍太郎:「さて、そろそろ行きますか!龍次郎!」

龍次郎:「オケ!龍太郎!」


 龍太郎と龍次郎は、ファースト・ダンジョンの入り口に入って行った。


 迷宮型ダンジョンと言っても、中は薄暗いが明かりが必要な場所ではないため、戦闘が苦になるようなことはない。


龍太郎:「こっからは、隠密をかけるから頼むぞ。」

龍次郎:「オケ。」


 龍太郎は龍次郎に隠密をかけて、影武者状態とした。

 どうも、隠密に関しては、現状どちらかにしかスキルがかけられないようだ。

 作戦としては、基本モンスターに遭遇した際に、龍太郎が注意を引いているうちに龍次郎が闇討ちを仕掛けていくという方針らしい。

 もちろん、龍太郎も戦闘に加わるが。


 これも昨晩の作戦会議でアイちゃんから伝授された戦法である。


龍太郎:「お!早速来たぞ!」


 前方には迷宮の定番であるスライムが登場。

 スライムと言えば、最弱モンスターのイメージがあるが、ここではそんなことはない。

 ボディに弾力があり、打撃の物理攻撃に関してはあまり有効ではない。

 斬撃の物理攻撃は有効だが、ボディを斬ってもその斬られた部分が死滅するだけで、本体には影響がない。

 唯一の討伐方法はモンスターコアの破壊のみという、厄介な上に見入りのないモンスターで、探検者としてはあまり遭遇したくないモンスターである。


 このファースト・ダンジョンの第1階層はスライムのみが大量に発生する。

 まさに第2階層にたどり着くまでの忍耐の階層である。

 ただし、レベリングをするなら悪くはない。


 まずはスキルの鑑定だ。


【固有超能】火玉ひのたま

【固有超能】水玉みずたま


 なるほど。レッドスライムが〈火玉〉、ブルースライムが〈水玉〉か。

 

 スライムは口のようなところからプップと玉を吐いてくる。

 それがそれぞれ火玉と水玉だ。

 当たってもダメージはさほどではないが、攻撃する際に吐いてくるので、とにかく邪魔なのである。


 龍太郎はレッドスライムとブルースライムの前方に構えた。


 スライムたちは、ポヨンポヨンと跳ねて攻撃の態勢を取っている。


 ふふふ。龍次郎!任せたぜ!ゴー!


 影武者と化した龍次郎が、スライムに対して掌底からの衝撃波でスライム内部のモンスターコアのみを次々と効率的に破壊していく!


 そして、龍太郎の頭の中に例の機械音が。


〈ピピプピプ……他者の超能を確認!〉

〈超能【火玉】を登録しますか?〉


 はい、登録!


〈ピピプピプ……超能【火玉】を登録しました!〉

〈ピピプピプ……超能【火玉】の解放に失敗しました。

 超能【火玉】の解放のために必要な固有強度レベルの条件を満たしていません。〉



〈ピピプピプ……他者の超能を確認!〉

〈超能【水玉】を登録しますか?〉


 はい、登録!


〈ピピプピプ……超能【水玉】を登録しました!〉

〈ピピプピプ……超能【水玉】の解放に失敗しました。

 超能【水玉】の解放のために必要な固有強度レベルの条件を満たしていません。〉


 ああ。レベルが足りないか……。

 まあ、仕方がないな。あとのお楽しみだ。



 さらに、初心者にとってスライムは難敵のはずだが、衝撃波を持つ龍太郎にとってはすごく美味しい敵になっている。

 大量にいるスライムは、まさにレベリングに最適な効果を発揮している!


 おー!この戦法すげー!

 このまま、第1階層根こそぎ行っちゃうぜ!

 はよ、レベルアップ、カモン!


 新生リュータローズが、第1階層を爆進中!

 

 いけ!いけ!僕らのリュータローズ!

 は〜い!そこ通りますよ〜!


 ◇◇◇◇◇

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