第40話 勝負の代償
◇◇◇◇◇
舞夢から圧倒的に有利な条件で勝負をふっかけられた龍太郎だったが……。
さらに舞夢はその勝負に条件を付けた。
宝生:「もちろん、勝負っていうからには、代償が必要だよね!
僕さ、ちょっと臨時収入が入ってさ。
今日は国士無双の登録に来たんだけど、その契約金が入ったんだよね。
もう半分くらい使っちゃったんだけど、もし、天堂が勝ったら、その残りの契約金の10億をあげるよ。」
龍太郎:「10億!?」
その突拍子もない額にカレンも美紅も衝撃を受けている。
美紅に関しては、目が¥になってるぞ!
宝生がニヤっとしたのが腹立つー!
宝生:「ああ、その代わりに僕が勝ったらだけど。
天堂はクランを脱退してソロに戻る。
ってことでどうかな?
天堂には、ほぼデメリットがないでしょ?
勝ったら10億。負けてもソロに戻るだけ。
美味しい勝負だよね。」
そういうことかよ!
チクショー。ものすごく舐められてる。
絶対に勝つって思ってるだろ!?
龍太郎:「ああ。受けてやるよ!」
舞夢は思惑通りに進んだことで、思わず不敵な笑みを浮かべた。
カレン:「ちょっと!天堂くん!」
宝生:「カレン姫は黙っててね。
これは僕と天堂の勝負だからさ。」
龍太郎:「ああ。そこまで言われて引き下がれねえ!
宝生。勝負だ!」
龍太郎はこれまでも、こういう言いがかりをつけられることはしばしばあったが、その都度、引き下がるようなことはしたことがない。
それが良いか悪いかはともかくとして。
俺の辞書にやられっぱなしの文字はねえ!
カレン:「わかったわよ!もう!
天堂くん!その代わり絶対に勝ってよね!」
カレンも諦めた。
龍太郎の性格だとこういう風になるのは、学生時代の振る舞いと、最近の短い付き合いの中で充分理解していた。
朱美は、二人の様子を子供の喧嘩を見るように全く関心がない。
宝生:「じゃあ、始めようか?天堂。
朱美さん。時間測ってくれる?」
朱美:「ええ、いいわよ。」
朱美はカバンからスマホを取り出し、タイマーを3分間にセットした。
龍太郎と舞夢は、お互いの正面の位置に立ち、各々の型で構えを取った。
朱美、カレン、美紅のギャラリー3人は、2人から少し距離を取って、その異様な空気感の中、今から開始されるであろう勝負を見つめていた。
朱美:「じゃあ、3分間ね?いい?
それじゃ、開始!」
龍太郎と舞夢の勝負が始まった!
こっちは毎日トレーニングしてんだよ!
レベル1だからって舐めんなよ!
龍太郎がいきなり、舞夢に突進し、ジャブを放ってから、舞夢の懐に潜り込む。
予想外の動きに舞夢は少し感心した。
ふーん。レベル1にしてはいい動きするね。
でも、全然遅いよね。
龍太郎は見えない位置からのブーメランフックを舞夢のテンプルに目掛けて思いっきり振り切った。
それを難なく躱す舞夢。
さらに躱した舞夢を追いかけてさらに懐に入り、ボディ目掛けてショートフックを放つ。
ふーん。こんな感じか。
まあ、動きはいいけど、楽勝だね
またもや、それを難なくひらりと躱す舞夢。
それから、左ローキックからのスーパーマンパンチ、そして裏拳、ミドルキックと休むことなく怒涛の攻撃を仕掛けるが、一向に舞夢に当たる気配がない。
くっそ!マジで当たんねえ!
ここまで差があるんかよ!?
こいつ、レベルいくつあんだよ!?
そこに朱美が声をかけた。
朱美:「残り1分よ。」
え?もうそんなに!?ヤベぇ!
もう、こうなったら奥の手を使おう。
あいつはこの勝負でスキルを使ってはいけないとは言ってなかったよな!
龍太郎は、残りわずかの時間となって、奥の手である影武者を発動することにした。
悪く思うなよな!
これが勝負ってもんだ。
絶対に負けらんねえ!
出でよ!影武者!
ボン!
以前と違って、龍太郎は並列思考のスキルを獲得している。
それにより、影武者もオリジナルと同等の動きをすることが可能となっていた。
よっしゃ!これでいけるだろ!!
龍太郎の横には、影武者がいる。
これで2対1の構図となっている。
しかも、影武者は舞夢には見えていない。
龍太郎は、先ほどと同様にまずは突進から懐に飛び込む。
同時に影武者は、舞夢の背後に回って、背中を取った。
よっしゃ!挟んだぞ!これで終わりだ!
まず、龍太郎がボディにショートフックを打つ。と同時に舞夢がひらりと躱す。
よっしゃ!さっきと同じ!
龍太郎は舞夢が躱す方向を先に予測して、その位置にいた影武者が背後からレバーブローを打った。
よっしゃ!決まっただろ!
だが、これも紙一重で躱されてしまった。
龍太郎:「え?嘘だろっ!」
思わず、龍太郎が声を上げてしまった。
反対に舞夢は……。
ふーん。なんか気配が変わったと思ったけど、何かのスキルを使ったんだろうね。
危なかったね。警戒して正解だったよ。
龍太郎と舞夢の間には、どれほどまでにレベルの差があるのか?
舞夢はすでに高レベルのため、攻撃は目で追うのではなく、気配で避けられるようになっている。
そうなると、その埋められない身体能力の差が勝敗を決していた。
その後も龍太郎は諦めずに、影武者とのタッグで怒涛の攻撃を続けるが、もはや警戒した舞夢には届かなかった。
最初の影武者の一撃を避けられた時点で勝負は決着していたと言っても過言ではない。
あれが唯一の龍太郎のチャンスであった。
そして、明美の持つスマホから無情にもアラームが鳴り響いた。
ピピピピ、ピピピピ。
朱美:「3分経ったわよ。
この勝負は宝生の勝ちね。」
汗を滝のようにだらだらと流し、肩で息をする龍太郎とは対照的に、涼しげな顔で汗ひとつかいていない舞夢。
まさに完膚なきまでの圧倒的な敗北。
宝生:「ははは、面白かったよね。
天堂。動きは悪くなかったよ。
だけど、それゆえにお前は純粋に弱いってことだよ。
この世界は力が全てなんだよ。
そして、お前は弱い。わかった?」
龍太郎は、一気に疲労感と挫折感で全身を覆い尽くされ、その場にしゃがみ込んだ。
カレンと美紅もその場に佇んだまま、呆然と声を出せないでいた。
宝生:「カレン姫。これでうるさい蝿がいなくなって良かったね。」
カレン:「いい訳ないでしょ!馬鹿!」
宝生:「あらら、嫌われちゃったかな?
まあ、でもすぐにわかるよ。
僕はこれから大きな力を持つことになる。
その時、迎えに行くよ。」
これにはカレンも無言のまま、舞夢を睨みつけていた。
朱美:「宝生。もういいかしら?」
宝生:「ああ、いいよ。スッキリしたしね。
天堂。約束は守れよ。じゃあな!」
そしてこの日、宝生舞夢は国士無双にクラン登録された。
その代わりに、天堂龍太郎はゴッドブレスユー!のクラン登録を抹消した。
勝負の代償として……。
◇◇◇◇◇
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