第39話 売られた喧嘩

 ◇◇◇◇◇


 龍太郎たち3人が協会本部の建物から出た瞬間に、超イケメン男がカレンに声を掛けた。


 なんかチャラチャラしてんな。

 こういうヤツ一番苦手なんだけど。


龍太郎:「夢咲さん。こいつ誰?」


カレン:「宝生舞夢。」


龍太郎:「えー!カレン姫。僕の紹介が短くない?」


カレン:「はいはい。

 舞夢は私と登録日が同じだったのよ。

 まあ、いわゆる登録同期ってやつね。

 で、初日にパーティに誘われて、初日に断った仲よ。これでいい?」


宝生:「もう。カレン姫はいつも冷たいね。

 まあ、そこもいいんだけど。」


美紅:「わー!宝生舞夢さんの本物?

 20歳の若さで現在、すでにBランク。

 ランク昇格の最年少記録を持つ、あの宝生舞夢さんですよね?」


 早乙女さん、ミーハーすぎでしょ?

 詳細な人物紹介ありがとうございます!


宝生:「うん、そうだよ。本物だよ。

 君は早乙女美紅さんかな?」


美紅:「はい、そうです!

 うわー。感激!カッコいい!」


宝生:「これから仲良くしようね!

 僕のことは舞夢って呼んでね。

 美紅って呼んでいい?」


美紅:「はい!どーぞ!」


 早くも、1名取り込まれたぞ!

 イケメンの特権を活かしやがって!



 とりあえず、こいつのスキルでも視ておくか。


【固有超能】暗黒騎士

【固有超能】演算


 ん!?ちょい待て待て!

 サプライズが多すぎだろ!

 ここから、解説が長くなるから我慢しろよ!


 まず、宝生のスキルは〈暗黒騎士〉。

 これはジョブ系スキルと言われていて、滅多にお目にかかれないレアスキル。

 しかも、ジョブ系でも普通は、戦士とか騎士とかがノーマルであって、〇〇戦士や〇〇騎士などは、レアジョブ系スキルと呼ばれている。

 レアの上にさらにレアなスキルだ。


 それで、ジョブ系スキルのすごいところは、そのジョブに合った装備が最初から自動装填が可能なことと、そのジョブに適した身体能力補正がかかるという点である。


 もう初期からチート状態の大当たりなスキルなのである。

 ただし、唯一欠点があり、ジョブ系スキルはゲートの向こう側の世界でのみ活性化されるという点である。


 これが宝生の最年少記録の理由だな。



 次に隣の女のスキルが〈演算〉。

 これは非戦闘系スキルの一種だな。

 頭脳の回転が早くなる、いわゆる演算処理が高速になるという感じ。特に説明の必要なし。

 

 この女性もスキル持ちだったのか。



朱美:「私もご挨拶しておきましょうか。

 初めまして、楠木朱美です。

 国士無双で秘書をしています。

 みなさん、よろしく。」


 そう言うと、朱美は3人と握手をした。

 海外と取り引きをしていると、どうしても挨拶と握手はセットになってしまうようだ。

 ちなみに、朱美はカレンにも負けず劣らずのナイスバディの持ち主だ。(いらん情報?)


 お!ラッキー!

 向こうから握手を求めてきたぞ!

 でも、秘書ってことはエクスプローラではないんだな。


 龍太郎の頭の中の機械音。


〈ピピプピプ……他者の超能を確認!〉

〈超能【演算】を登録しますか?〉


 もちろん、登録!


〈ピピプピプ……超能【演算】を登録しました!〉

〈ピピプピプ……超能【演算】の解放に成功しました。〉


 よっしゃ〜!成功!


〈ピピプピプ……超能王の効果により超能【演算】を最適化します。〉

〈ピピプピプ……超能【演算】は超能【並列思考】へと進化しました。〉


 おっしゃ!並列思考ゲット!

 たぶん、これでオリジナルと影武者を両方同時に動かせる!これはナイス!

 影武者を戦闘にも使えるようになるな!

 隣の秘書さん、サンキュー!



宝生:「朱美さんは、国士無双の秘書なんだけど、正確に言うと大企業の社長さんだよ。

 バタフライって言っても知らないかな?

 結構、その業界では有名なんだけどね。

 まあ、夜の業界だから知らないか。」


 へえ。また、社長か。

 最近、よく社長に会うな。


 これについては、カレンも美紅もあまり知らないみたいだ。

 夜の業界って、そういうことだよな。


 スーツ姿の妖艶な女性。

 その朱美の正式な肩書きは……。


 バタフライ・コーポレーション株式会社

 代表取締役社長

 楠木朱美


 関東一帯に店を構える大企業の社長だ。

 いわゆる夜の店、クラブ、キャバクラ、ホストクラブ、ナイトクラブを中心に、大人の風俗店も経営している大会社のトップ。

 国士無双クランをバックにしているため、競合している他店も次々と傘下に加盟していき、気がつけば、その業界では関東でナンバー1の会社に成長している。

 また、国士無双がブルーブラッズと直接取引している裏ビジネスも、実質このバタフライ・コーポレーションで処理されている。


 実は朱美も元エクスプローラの一人で、国士無双の初期メンバーの一人であったが、非戦闘系であったために、北斗の指示により早々にエクスプローラを引退。


 その代わりに、元々、北斗と南斗によって経営していた夜の店を引き継ぎ、経営者として抜擢されてからは、演算スキルの効果もあって、経営者としての辣腕を発揮。

 瞬く間に大企業へと発展させていった。

 傍ら、クランの専属秘書もマルチタスクでこなす、まさに才女である。

 さらに、美貌と妖艶さを合わせ持ち、ついた通り名は、夜蝶女王バタフライクイーン



宝生:「ところで、カレン姫は協会に何をしに来たんだい?」


 お!俺のことは無視か。

 まあ、その方がありがたいな。

 正直、こいつとは関わりたくない。

 学生時代にもいたよなぁ。こんなやつ。


カレン:「私は警務部に用があって来たんだけど、もう帰るわよ。

 舞夢も早く行きなさいよ。

 協会に用があるんでしょ?」


宝生:「へえ、そこの天堂が何かやらかしたのかな?」


龍太郎:「はぁ!?俺のこと知ってんのか!」


宝生:「そりゃ知ってるよ。天堂龍太郎。

 僕と同じ歳でランキング3200位の超ど底辺エクスプローラ。

 僕のカレン姫の周りをチョロチョロ飛び回るうるさい蝿だよね?」


 うおー!屈辱!嫌味全開じゃねえかよ!


龍太郎:「おい!俺は3199位だぞ!

 それに蝿じゃねえ!今は冬眠中だ!」


宝生:「ははは、天堂、面白いね。

 でも、一生冬眠中だよね。

 一年半も経って、それってレベル1でしょ?

 もう、諦めた方がいいよ。」


 くっそ、図星かよ。バカにしやがって!


龍太郎:「ぐぬぬ。レベルは言わん。

 ただ、俺は諦めねえ!お前が決めるな!」


宝生:「あっそう。まあ、いいけど。

 天堂。カレン姫のクランを脱退してよ。

 正直、どういう経緯でそうなったのか知らないけど、蝿は目障りなんだよね。」


カレン:「ちょっと、舞夢!

 天堂くんは私が誘ったんだよ。

 舞夢に言われる筋合いないのよね。」


龍太郎:「そうだぞ!俺は誘われたんだよ!

 羨ましいか!この野郎!」


宝生:「へえ、それはさらに腹が立つね。

 こんな特徴のない、弱い男がカレン姫の隣にいるのは良くないね。

 カレン姫の隣は僕の役目なんだけど。

 もう少し、放置していても問題ないかなって思ってたんだけど、予定変更かな。」


カレン:「舞夢!予定って何よ!

 私達のことは放っといてよ!」


 こいつ、本当に腹立つなぁ!

 無理だと思うけど、殴りてぇ!


宝生:「天堂。僕と勝負しようよ?

 お前、ムカつくし。」


龍太郎:「宝生。勝負ってなんだよ?

 俺もお前は嫌いだな。」


カレン:「ちょっと!天堂くん、やめなよ!

 舞夢もいい加減にして!」


 カレンは間に入って、やめさせようとしているが、2人とも聞こえていない。

 龍太郎は舞夢の挑発にまんまとハマった訳だが、舞夢の方も龍太郎の予想外の突っ掛かりに、表情とは裏腹に、冷静ではなくなっていたかも知れない。


宝生:「簡単な勝負だよ。3分間一本勝負。

 ただし、僕からは攻撃しない。

 天堂は一発でも僕に攻撃が当てれば勝利、逆に一発も当てられなかったら、僕の勝利。

 ね?天堂にすごく有利でしょ?」


 くっそ!そこまで自信あるんかよ!?

 スキルはこっちじゃ使えないはずだよな?


 龍太郎に圧倒的有利な条件に見えるが……。

 さて、龍太郎はこの勝負を受けるのか?

 

 ◇◇◇◇◇

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