第33話 ジャッジメント!

 ◇◇◇◇◇


 じっと龍太郎を見つめるカレン。

 これは検察官と被告人の構図になってます。


 裁判長!異議あり!

 却下します!


 そんな感じになってるぞ!


 もう!夢咲さんの殺気がすごいんだけど!

 もしかして、俺ってここで抹殺される?

 なんとか回避するしかないぞ。


龍太郎:「早乙女さん。悪いけどさっきの話を夢咲さんにさせてもらうからな!」


 美紅はもう何も言えないで、黙っている。

 さらに涙が溢れて止まらないみたいだ。

 でも、関係ないぞ。

 誤解を解かないと俺の命が危ない。


カレン:「天堂くん!話によっては許さないからね!」


 うぐ、視線が痛い……。


龍太郎:「ちょっと待てって!今話すから!

 実は夢咲さんが来る少し前に早乙女さんがここに来てだな。

 相談があるって言うんで、部屋に上げたんだよ。

 その相談が、ある男に脅されてるって話だったんだよ。」


カレン:「え?どういうこと?

 美紅ちゃん。それ本当なの?」


 美紅はそれに答えられずにずっと黙っている。

 なぜ、黙っているかはカレンにはわからなかったが、否定しないところを見ると間違いではなさそうだ。とカレンは思った。


カレン:「それってヤバいじゃん!

 美紅ちゃん、誰に脅されてるの?」


 まあ、普通そういう反応になるよな。


龍太郎:「でも、それって俺からしたら自業自得なんだよな。悪いけど。」


カレン:「え?どういうこと?」


 もう、カレンも話がよくわからない。


 それから、俺は早乙女さんに聞いた話をそのまま夢咲さんにも話した。

 その間も早乙女さんは黙ったまま何も喋れずに俯いたままだったが、やっと夢咲さんは、事の顛末を理解したようだった。


カレン:「なーんだ!そういうことだったの。

 もう!怒って損しちゃった。

 そうだよね。天堂くんがそんなことするわけないもんね。ふぅ、良かった。」


 あれ?反応がおかしくないですか?

 美紅もその反応に一瞬、え?ってなってるけど……。


龍太郎:「あのー、夢咲さん。良かったのか?」


カレン:「ん?あー!良かったけど、良くないね!

 クラン結成のこと教えたのは美紅ちゃんだったんだね?」


龍太郎:「いやいや、夢咲さん。

 なんか反応が軽くない?」


 そこに美紅が土下座をするような形で割って入ってきた。


美紅:「カレンさん!本当にごめんなさい!

 私、とんでもないことしちゃって!

 でも、カレンさんに嫌われたくないです!

 なんでも言うことを聞きます!

 なんでもします!

 だから、許してください!

 お願いします!」


 もう、号泣。土下座の大号泣。

 この状況を知らない人が見たら、夢咲さんの方が悪者に見えるだろうな。


カレン:「美紅ちゃん……。」


 夢咲さん、どうするんだろう?

 まあ、許すにしてもクランの除名は免れないだろうな。

 かと言って、そうなると早乙女さんもすんなり諦めるとは思えないし。

 一度、クランに入ってしまっただけに、夢咲さんも判断が難しいよな。

 まあ、俺がどうすることでもないけど。


カレン:「天堂くんはどう思ってるの?」


 えー?なぜ、2人とも俺を見る?

 その質問、おかしくないですか?


龍太郎:「え?俺?」


カレン:「うん、そう。

 まず、天堂くんの意見を聞きたい。」


龍太郎:「そう言われても……。

 ぶっちゃけ、夢咲さん次第だと思ってるんだけど。」


カレン:「へぇ。それって、天堂くんはこの件に関して意見がないってことなのかな?」


 あれ?ちょっと口調が強い?

 なんか、怒ってる?


龍太郎:「うーん、まあ、そういうことなのかな?

 正直、よくわからないんだよな。」


カレン:「もう!それって、どうでもいいってこと?」


 さらに口調が強いんだが。


龍太郎:「夢咲さん。なんか、怒ってる?」


カレン:「怒ってないわよ!もう!

 ちょっと聞くけど、私のことをどういう風に思ってるのよ?」


 よくわからんが、怒ってるなぁ。

 俺が怒らせたんだろうな。どこなんだ?


龍太郎:「俺にとって夢咲さんは、雲の上の存在という感じだな。でも、最近は身近にも感じるし。

 一緒にいてくれると嬉しいし、だから、正直怒ってる理由がわからないけど、夢咲さんには嫌われたくないな。

 俺って、思ってることそのまま言っちゃうみたいなとこあるからさ。」


 なんか、俺、意味不明なこと喋ってるような気がするんだけど。


カレン:「ふーん。そうなんだ。

 そういう風に思ってたんだ。」


 あれ?急に口調が柔らかくなったぞ。

 これってどっち?いいの?悪いの?


カレン:「うん、わかったよ。

 じゃあ、美紅ちゃん。」


美紅:「は、はい!!」


カレン:「私の目を見てくれる?」


美紅:「は、はい!!」


 すっごい見てるよ。ガン見!

 カレンと美紅はお互いに見つめあったまま、その顔は真剣そのもの。

 これって、どう言う意味があるんだろ?


カレン:「うん。美紅ちゃん!反省してる?」


美紅:「は、はい!反省してます。」


カレン:「うん。オーケー。」


美紅:「え?何がオーケーなんでしょうか?」


 美紅が恐る恐るカレンに尋ねた。

 確かにオーケーっておかしくない?

 どっちにも取れるよな。


カレン:「ん?許すってことだよ。美紅ちゃん。」


龍太郎:「え?軽っ!」


 龍太郎の方がビックリ!

 思わず、声を上げてしまった。


美紅:「え……?

 本当ですか!?

 ありがとうございます。うわーん。」


 美紅の方もいきなり許しが来ると思ってなかったのか、一瞬固まってしまったが、許されたのを認識すると、またもや、ものすごい勢いで泣き崩れてしまった。

 ただ、今度は安心したのか、ちょっと笑顔も交えて号泣していた。



龍太郎:「夢咲さん。ものすごく軽いノリだったような気がするのだけれど?」


カレン:「ん?ああ。天堂くんも知ってるでしょ?いつもの私の直感ってやつよ!」


龍太郎:「あー、そういうことか。」


 なるほど。第六感で判断したってわけだな。


美紅:「あのー。カレンさん。」


カレン:「何?美紅ちゃん。」


美紅:「私のその……。

 クランはどうなるんですか?」


 恐る恐る聞く美紅。


カレン:「うん。そのまま、クランに居てもいいよ。天堂くんもいいでしょ?」


龍太郎:「まあ。俺は問題ないぞ。」


美紅:「ううう。良かったー。」


 美紅はまたまた泣き崩れてしまった。

 その美紅の肩をカレンは撫でてあげていた。


 美紅が気の済むまで泣いて、やっと落ち着いてきた。


カレン:「じゃあ、美紅ちゃん。

 次はその骨男くんのことだね。

 私に会わせろって言ってるんだよね?」


 夢咲さんも骨男くんって……。

 俺たちより完全に年上だと思うけど。

 でも、名前も知らないしな。


美紅:「そうです。」


カレン:「なら、会ってあげようじゃない!」


 なんか、夢咲さん、男前なんだけど。


龍太郎:「夢咲さん。骨男って接近禁止命令が出てるんじゃなかったっけ?」


カレン:「そうだけど、私が良ければいいんじゃないかな?

 それにいざとなったら、天堂くんが守ってくれるでしょ?」


龍太郎:「ああ。それはいいけど。」


カレン:「美紅ちゃん、連絡先知ってるの?」


美紅:「いえ、知らないです。」


カレン:「え?どうやって連絡取るつもりだったの?」


美紅:「はい、そこまで考えてなかったです。

 ちょっと、探して連絡してみます。」


カレン:「うん。美紅ちゃん、それはお願いね。

 じゃあ、この件はこれでおしまい。」


美紅:「カレンさん!本当にごめんなさい。

 そして、ありがとうございます。

 これからもよろしくお願いします!」


カレン:「うん、わかった。」


美紅:「天堂さんもありがとうございます。」


龍太郎:「え?俺は何もしてないぞ。

 でもまあ、これからもよろしく。」



カレン:「それじゃ、2人ともお腹空いてるよね?」


龍太郎:「そういえば、そうだな。」


カレン:「うん。ちょっと作っちゃうね。待ってて。」


龍太郎:「おぅ。サンキュ。」


美紅:「あ!カレンさん、手伝います!」


カレン:「うん。お願い。」



 夢咲さんの作る料理ってどれも美味しいんだよな。

 こういうのってセンスなんだろうな。

 俺が作る料理と大違いだ。


 それから、夢咲さんの作ってくれた料理を3人で一緒に食べた。

 早乙女さんは、そのカレンの料理を食べられることに感動していた。


 その食後に買っておいたスイーツを堪能。

 余分に買っておいて良かったよ。


 こうして、龍太郎の部屋で繰り広げられた修羅場は一旦収束した。


 次は骨男の番です。

 これも荒れそうだなぁ……。


 ◇◇◇◇◇

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る