第32話 なぜか修羅場?
◇◇◇◇◇
龍太郎は、退院以降は家に帰って軽くトレーニングと筋トレをして過ごしていたが、あまり過激な動きはできないため、ここ数日は暇を持て余していた。
病院からの帰り道、世話好きカレンが俺の家の住所を教えろとしつこく聞いてきたので、教えてしまったら、案の定、毎日一回は家に来るようになってしまった。
まあ、特に暇だったし、来てくれる分にはいいのだけれど、何もやることがないんだよな。
龍太郎の部屋には何もない。
本当に何もない。
生活できる最低限のものしか置いてない。
なので、カレンが持ってきたPCで動画を見ながら、いろんなことを教えてもらうって感じだった。
そのおかげで、以前よりもいろいろ情報を知ることができた。はず……。
ちょっと面白そうだったんで、女神七柱のことを聞いてみたら、これが結構大変なことで、半年に一度の大総選挙の上で決まるらしいことがわかった。
それで選ばれたカレンってマジで女神。
というか、普通に歩いてたらかなり目立つ存在ではあるので、納得ではあるのだが。
それでもDランクで選ばれるのは、よっぽどのことらしいことが記事に載っていた。
その女神が俺の部屋にいるんだよなあ!
って考えるとなんか笑えてきた。
なんで、こんなことになってるんだろ?
今日もまた来るかもしれないので、部屋で軽く筋トレをしながら待っていた。
一応、柄にもなく、おもてなしのコーヒーに合うスイーツなどを買ってみたりした。
だって、毎日、食材を持ち込んで料理を作ってくれたりするもんだから、なんか申し訳ない気持ちになるじゃん。
コンコン!
龍太郎:「はい。お待ちください。」
俺のアパートには呼び鈴というものが存在しないので、外からのノックを聞き分ける必要がある。
だけど、今日は少し来るの早いな。
ガチャ!
龍太郎:「はいはい。え?早乙女さん!?」
美紅は、少し申し訳なさそうな顔でこっちを見ている。
龍太郎:「どうした?
っていうか、なぜ、ここを知ってる?」
美紅:「入ってもいい?」
龍太郎:「いや……。」
なんなの?どういうことですか?
なぜ、早乙女さんがここに来るの?
美紅:「ねえ、入ってもいい?」
なんか、悲壮感が漂う様子にただならぬ雰囲気を感じて、思わず部屋に上げてしまった。
とりあえず、コーヒーを出してみる。
美紅は黙ったまま、座っている。
なぜ、こいつはここに来たんだ?
龍太郎:「早乙女さん。なんかあった?」
美紅:「もう、どうしたらいいかわからない。
誰にも相談できないから。」
美紅は今にも泣き出しそうな顔で、声を絞り出した。
龍太郎:「だから、どうしたんだ?」
美紅の目から涙が溢れ出した。
うーん。困った。
こういうのってどうすればいいんだ?
相談って俺が乗れる相談なんて、思いつかないな。
そのあと、長い沈黙が続いた。
龍太郎:「あのさ。黙ってたらわからないから、何か言ってもらわないと困る。」
美紅が少し話し始めた。
美紅:「勝手なことはわかってる。
でも、あんたしか思い浮かばなくって。」
龍太郎:「夢咲さんには相談したのか?」
美紅は横に首を振った。
龍太郎:「まあ、いいや。言ってみろよ。
俺が相談に乗れるとは思わないけど、聞くだけは聞いてやるから。」
そういうと、美紅は重い口を開いてようやく話し始めた。
美紅:「ある男に脅されてるの。」
龍太郎:「え?それって?ヤバいじゃん。
何があったんだよ!?」
美紅:「それは……。」
◇◇◇◇◇
数日前、最寄りの駅前にて、
骨男:「おい!お前!」
美紅:「あ!あんたは。何よ?」
骨男:「お前、カレンちゃんのクランに入ったそうじゃないか!
お前、エクスプローラだったんだな!
自分だけ、ずるいぞ。
僕は見ているだけで良かったのに、こんなことになっちゃったじゃないか!」
美紅:「私は何も言ってないわよ!
ただ、あんたにクランを作ったことを教えてあげただけじゃない!」
骨男:「嘘だ!お前があんなことを言わなければ、僕はあんなことはやってなかったんだ!
くそ!なんて馬鹿なことを……。」
美紅:「私は知らないわよ。」
骨男:「いや、お前にも責任がある。
僕はただのファンだったんだ。
誤解を解いてくれ!
そして僕をカレンちゃんに会わせろ!
そうしたら、黙っておいてやるから。」
美紅:「そんなことできるわけないでしょ!
ストーカーのくせに。」
骨男:「僕は違う!お前がそうだろ?
僕は知ってるぞ。」
美紅:「私のは憧れてるだけよ!
あんたと一緒にしないでよ!」
骨男:「僕も女神を応援したかっただけなんだ!
とにかく、僕がバラせば、カレンちゃんはどう思うだろうな?
1週間だ。それまでになんとかしてくれ!」
◇◇◇◇◇
美紅は龍太郎に数日前の出来事を説明した。
龍太郎:「早乙女さん……。
それは流石にドン引きだわ。」
美紅:「だって!」
龍太郎:「ちなみに、お前はその骨男になんて言ったんだ?」
美紅:「カレンさんが男と2人でクランを作った。って教えただけだよ。」
龍太郎:「でも、お前は骨男がストーカーだと知ってて、それを教えたんだろう?
もう、それはアウトだな。
俺は夢咲さんにだいぶと世話になってるからな。
お前の擁護は出来ないな。」
そう言われた美紅は完全にうずくまって、泣き出してしまった。
いや、俺が泣かせたわけじゃないぞ!
別に変なことは言ってない。
ただ、これは気まずいな。
コンコン!
うわっ!すごいタイミングで!
でも、仕方ないよな。
龍太郎:「はい。お待ちください。」
ガチャ!
カレン:「天堂くん!来たよ。
あれ?誰か来てるの?ん?女の人!?
え?天堂くん!なんで、女の人がいるの?」
龍太郎:「いや、違う!これは……。」
カレン:「もう!何が違うのよ!いるじゃない!?
しかも、泣いてるみたい!
ひどい!ひどいよ!」
龍太郎:「いや、もう夢咲さん、上がってよ!
違うってわかるから!」
カレン:「もちろん、上がるわよ!
こんなことで帰らないからね!」
もう、すごい剣幕で部屋に上がっていく。
なんで、こんなに怒ってるの?
部屋に入ったカレンは、その女の人が美紅であることにさらに驚いている。
カレン:「え?美紅ちゃん?
なんで?いつから?」
まあ、驚くだろうな。
これで誤解は解けたよな。
問題は、どう説明するかだな。
カレン:「ねえ。天堂くん!美紅ちゃんに何をしたの?
泣いてるじゃない?」
龍太郎:「いや、これは自業自得だな。」
カレン:「へえ。天堂くんってそういう人だったんだ。
いつから、付き合ってるの?」
龍太郎:「はぁ!?付き合ってる?誰と誰が?
え?違うぞ!
夢咲さん!めっちゃ勘違いしてるぞ!」
カレン:「勘違い?じゃあ、付き合ってもない美紅ちゃんを部屋に上げて、泣かすようなことをしたってことだよね?
鬼!悪魔!変態!信じられない!」
龍太郎:「待て!待ってくれ!
俺は何もしていない。
少し前に早乙女さんが来て、俺は話を聞いていただけだ!
夢咲さん。落ち着いて座ってくれ!
今から説明するから。」
カレン:「ええ、わかったわ。
とにかく、話を聞いてみましょうか!」
夢咲さんは座るには座ったが、まだ納得していないご様子だ。ご立腹状態。
なんで、ここまで話がこじれてしまうんだ?
これは、もう早乙女さんには悪いが、話をさせてもらうぞ。
そうしないと、俺が早乙女さんにひどいことをしたことにされてしまう。
それはマズい。非常にマズい。
龍太郎は、カレンに誤解されるのはなぜか嫌な気がした。
以前なら、他人にどう思われようが、あまり気にしない龍太郎だったのだが……。
◇◇◇◇◇
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