第31話 国士無双トップチーム

 ◇◇◇◇◇


 ここはクランハウスDー318号室。

 カレンの秘密とは?の続き。


カレン:「えーっとね。どうしようかなぁ?ふふふ。」


 なんだ?なんかやけに勿体ぶってるな。

 言いにくいならいいんだけど……。


カレン:「天堂くんって運命の出会いって信じるタイプ?」


龍太郎:「え?何の話?質問?」


カレン:「いいから、まず答えてよ。」


龍太郎:「うーん。そう言われても……。」


カレン:「じゃあ、最近、運命の出会いがあったじゃない?

 でね。秘密って言うのは、ちょっと、その人のことが気になってるんだよね。」


 え?恋バナ?最近?

 あ!あれのことか?


龍太郎:「そういうことか!確かにそうだな。

 運命的な出会いだったよ。」


 こういうの苦手だし、ここは話を合わせておこう!


カレン:「うんうん。だよね!

 ちょっと気になってきた?」


龍太郎:「そうだな。気になるぞ。

 それって最近出会った男ってことだよな?」


カレン:「そうそう。そうだよ。

 これが私の秘密。ふふふ。」


 いくら天堂くんでも、ここまで言ったらわかっちゃったか。ちょっと攻めすぎたかな。


龍太郎:「え?終わり?」


カレン:「うん、これ以上私から言っちゃうとね。」


龍太郎:「うーん。なんかスッキリしないけど。

 まあ、何となくは分かった。」


カレン:「あ!これ、他の人に言わないでね!

 絶対に秘密だよ。」


龍太郎:「ああ。秘密にするよ。」


カレン:「……それだけ?」


龍太郎:「あ!もちろん打ち明けてくれて嬉しいよ。

 俺の秘密もお願いします!」


カレン:「うん。それは大丈夫。2人だけの秘密。」


〈カレンの心の声〉

 うーん。やっぱり、そうだよね。

 天堂くんって奥手っぽいし、こういうの慣れてないのかも。

 まあ、気になってるみたいだし、今はこれで良しとするか。ふふふ。


〈龍太郎の心の声〉

 なんか、中途半端だったなぁ。

 もっと、はっきりと言ってくれればいいのに……。

 まあ、告白してくれたってことは嬉しいし、信用されてるってことだよな。

 でも、どっちなんだろ?

 順当に行けば、百地さんかな?

 いや、蜂須賀さんもあるよな?

 うーん。これってクイズか?

 だったら、超難問だぞ!乙。



 まったく噛み合わない2人。

 龍太郎にそれを気付くだけの経験値なし。

 こちらの方もレベル1だった件。



 ◇◇◇◇◇



 所変わって、ここは都内一等地に建つ高級タワーマンションの最上階ペントハウスの一室。


 国士無双代表の喜多川北斗の自宅である。


 そこに一本の電話が鳴った。


リチャード:『ハイ!ホクト。』


北斗:「おぅ、リチャードか。どうした?」


 電話の相手はリチャード・ガヤ。

 アメリカ最大クランの一つである【ブルーブラッズ】のメンバーの一人。

 日本語が堪能なことで、国士無双とのパイプ役となっている人物である。


リチャード:『エクスプローラ関連の新しい裏情報が入ったので連絡した。

 WEA(世界探検者協会)が近々、Aランクの上にGランクという新しいランクを追加する構想があるらしい。

 このGランクになると詳細は不明だが、ある特殊な権限が与えられるとのことだ。

 そして、そのGランクを与えられるのは、世界でたったの5つのクランだけだ。』


北斗:「ほぅ。それは実に興味深いな。

 世界で5つだけか。

 で、そのGランクの条件は?」


リチャード:『先日、アメリカの異世界ダンジョン内で石板が発見された。

 そこには、世界には5つの神級迷宮が存在していると書かれていたらしい。

 そして、その5つのゲートに日本の渋谷が入っている。

 Gランクの条件は、その神級迷宮の発見もしくは踏破ではないかと言われている。』


北斗:「ほぅ。神級迷宮ね。聞いたことないな。

 で、この情報について日本は知っているのか?」


リチャード:『ああ、公にはしないことを条件に、WEAからJEA(日本探検者協会)に情報は伝わっている。

 そして、JEAは単独でカーバンクルのみに、その調査を依頼済みだ。』


北斗:「ほぅ。なるほど。

 俺たちではなく、カーバンクルにねぇ。

 ひよこちゃん達も偉くなったもんだな。」


リチャード:『ふっ。そうだな。情報は以上だよ。

 カーバンクルより先に見つけることだな。』


北斗:「ああ。いつもありがとな。

 ボスにも礼を言っておいてくれ。」


リチャード:『わかった。

 ボスからはビジネスの方をよろしく頼む。

 とのことだ。』


北斗:「ああ、それは問題ない。じゃあ。」



 電話を切った北斗は、朱美を呼んだ。


北斗:「朱美。トップチームを招集だ。

 明日から潜るとメンバーに連絡してくれ。」


 楠木くすのき朱美あけみ。国士無双クラン私設秘書。

 実質は喜多川北斗の専属秘書であり、北斗が潜っている時以外は、常に北斗と行動を共にしている。


朱美:「はい。明日の時間は?」


北斗:「明日の正午にクランハウスだ。

 食事はいつものやつを頼む。」


朱美:「承知しました。手配します。」



 ◇◇◇◇◇



 次の日の正午。

 場所はクランハウスAー101。

 国士無双のクランハウスである。


 ちなみにAランクのクランハウスは特殊で、A棟というものは存在しない。

 それぞれが独立した建物を割り当てられており、クランハウスA地区と呼ばれている。

 要するに、Aランクは自社ビル、Bランク以下はテナントビルのようなものだと思っていただければいい。


北斗:「ジュニアも来たか。

 これで全員揃ったな。」


 ジュニアと呼ばれているのは、喜多川南斗。

 喜多川北斗の弟であり、クラン国士無双のナンバー2の男だ。



北斗:「お前たち、飯を食いながら聞いてくれ。

 昨日、リチャードからの裏情報が来た。

 情報を要約するとこうだ。


 世界に5つの神級迷宮が存在すること。

 その一つが渋谷ゲート内に存在。

 迷宮を発見もしくは踏破したクランには新しいランクと特権が与えられる。


 とまあ、そんな感じだ。

 そこで、俺たちトップチームでその神級迷宮の踏破に向かうことにした。」


 揃った国士無双トップチームのメンバーは全員で8人。

 クラン内の上位エクスプローラで構成されていて、トップチームの待遇はセカンドチーム以下とは雲泥の差がある、いわゆる幹部。

 ちなみに、このクランにはトップチームからフィフスチームまでの5チームが存在し、各チームが8人ずつで構成されている。

 メンバー構成は喜多川兄弟が決定。

 藻部は当然、フィフスチームメンバー。



南斗:「そりゃまた、雲を掴むような話だな!北斗!」


北斗:「なんだ、ジュニア。不満か?」


南斗:「いや、そうじゃねえ!

 むしろ、こういうのを待ってたぜ!

 面白そうじゃねえか!」


北斗:「ふっ、そうか。

 他の奴らは異論はあるか?」


 全員が黙ったままであった。

 トップチームでも南斗以外は所詮駒である。

 異論など出るはずもない。


北斗:「よし。全員、異論はないな。

 おい!鉄男。準備は出来てるか?」


 国立くにたち鉄男てつお。国士無双トップチーム唯一のBランクエクスプローラ。

 固有スキル〈怪力〉の持ち主で、全員分の荷物を運搬できるがゆえに、トップチームに抜擢されている。

 よって、ゲートに潜る前の荷物の準備についてもこの男の仕事である。

 もちろん、さらに下っ端に準備させているのだが……。


鉄男:「準備出来てます!ボス!」


 代表の北斗は、クラン内では南斗以外にはボスと呼ばれている。


北斗:「オーケー。」



 それから、全員で食事をしながら、北斗と南斗が話をしているのを聞いていた。


南斗:「なに!カーバンクルが先に入ってるのか!」


北斗:「ああ。正式に依頼を受けたのはあいつらのようだな。ただ、逆にあいつらだけだ。

 俺たちが先を越せば、いいだけの話。

 そうすれば、裏からなんとでも出来る。」


南斗:「そうか。あいつらだけか。

 なら、確かに問題ないかもな。

 こっちにはユキがいるからよ。

 あいつらよりは早く進めるよな?」


 ユキと呼ばれているのは、周央すおう幸雄ゆきお。Aランクエクスプローラ。

 固有スキル〈察知〉の持ち主で、彼がいることで、迷宮型ダンジョンや未開の地を進むのにものすごく有利になる。


幸雄:「そうだね。問題ないよ。ジュニアさん。」



 それから、全員が食事を終えたのを見計らって北斗が声を掛けた。


北斗:「よし!お前ら、そろそろ行くか!」


 北斗の号令で全員が一斉に席を立った。


 そして、カーバンクルから4日遅れで、国士無双トップチームが渋谷ゲートに潜って行った。


 ◇◇◇◇◇


 

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