第30話 ちょっと長〜い秘密の話

 ◇◇◇◇◇


 龍太郎は無事退院をして、カレンと2人っきりのクランハウスDー318号室。


 机にはコーヒーカップが2つ。


カレン:「天堂くん。その首、重傷に見えるね。」


龍太郎:「そうだよな。大袈裟に見えるよな。

 で、2人っきりの話ってなんだ?」


カレン:「おーっと!いきなりだねぇ。

 じゃあ、私もいきなり聞くけど。

 天堂くん、なんか隠してるでしょ?」


龍太郎:「え?な、なんのことかな?」


 焦る龍太郎。


カレン:「昨日のことだよ。

 急に浄化が使えるっておかしくない?

 それに急に強くなったように見えたけど、それも関係しているのかなって。

 最初に狩りに行った時にはそんなことなかったし、レベルも上がってないよね?」


龍太郎:「え?レベルが上がってないって……。

 ど、どういう意味?」


 焦りまくる龍太郎。


カレン:「うーんとね。

 今までの行動で天堂くんがまだレベル上がったことがないって分かるんだよね。」


龍太郎:「げっ!分かったのか!?」


 あっさりバレる龍太郎。


カレン:「ほら、やっぱりね!

 なぜかって言うとね。レベルが上がった時ってレベル酔いが発生するんだよ。知ってた?」


龍太郎:「え?し、知らなかった……。」


カレン:「ほらね!

 初日の狩りの時に天堂くんの行動を見て、まだレベル1なのかな。って思ってたんだけど、今ので確定だよね?」


 ああ。やっぱり分かるもんなのか……。


龍太郎:「ああ。もう隠してもしょうがないな!

 そうだ。悪いが俺はまだレベル1だ。」


カレン:「ううん。全然悪くないよ。

 それを言ってるわけじゃないの。

 じゃあ、レベル酔いの話を続けるね。

 レベル酔いってね、特にレベル1から2に上がる時は、急激に身体能力が上がるから、気絶するくらいに立ちくらみが生じるの。

 レベル3以降は、身体能力の上昇率もなだらかになるから、レベル酔いもマシになるって感じだね。

 これは経験すると大体わかるようになるんだけど、個人差があるみたいだから詳細はよくわかっていないみたい。

 だけど、少なくとも誰もがレベル酔いは経験するものなんだよ。」


龍太郎:「へえ。そういう風になってたんだな。」


カレン:「でね。プチパンダの時、急に強くなったと思うんだけど、レベル酔いした感じがなかったから、別の何かがあったんじゃないかなって。

 レベル1であの強さは異常かな。」


龍太郎:「なるほど……。す、鋭いな。」


 夢咲さんの観察力、半端ねぇ!


カレン:「じゃあ、別の何かって何なの?

 天堂くんは秘密にしてたってことは知られくないことだってことはわかってるんだけど、気になってね。

 聞かずにはいられなくなっちゃった。

 もし、困ってることがあったら、相談に乗れないかな?って……。」



龍太郎:「うーん……どうしようかな?

 相談するから、ちょっと待ってくれる?」


カレン:「ちょっとってどれくらい?

 誰に相談するの?」


龍太郎:「あ!頭の中のナビゲーターかな?」


カレン:「心の整理ってやつだね。

 うん。わかった。待ってる。」


 心の整理ではないんだけど、危なかった!

 まあ、勘違いしてるんで良しとしよう。

 早速、ご意見番に相談だ!


龍太郎:『アイちゃん!』


AI:〈はいはーい。完全にバレちゃってるよね!〉


龍太郎:『ああ。どうしたらいい?』


AI:〈最近、その質問多いよね!〉


龍太郎:『うぐっ。すまぬ。』


AI:〈うん。いいよ。

 なんでも聞いてくれるのは嬉しいしね。

 でも、もう今更、隠してもって感じかな。

 結構、鋭いし、遅かれ早かれって感じ。

 だから、それよりも豪運娘とは秘密を共有しておいた方がいいんじゃないかな?

 もちろん、そこは秘密厳守にすることをお願いするんだよ!〉


龍太郎:『やっぱりそうか。そうだよな。

 でも、どこまで言っていいものかわからないんだよな。』


AI:〈僕と会話できることは、まだ分かってないと思うからそれ以外だよね?

 あとはマスターがどこまで豪運娘を信用するのか?ってことだよ。〉


龍太郎:『うーん……。わかった。決めたぞ!

 アイちゃん、サンキュ!』


AI:〈はいはーい。〉



 龍太郎は改まって、カレンの方に向き直して、背筋を伸ばした!


龍太郎:「夢咲さん!!」


カレン:「あ!はい!」


龍太郎:「俺、今からすごくヤバいこと言うけど……秘密守れる?」


カレン:「え?すごくヤバいこと?」


龍太郎:「そう!墓場案件!」


カレン:「墓場案件って?お墓の関係?」


龍太郎:「いや、墓場まで持って行くやつ!」


カレン:「あっ、そういうこと!?

 それくらいヤバいやつってことだよね?

 えー。なんか緊張して来たよ。」


 今度は、カレンが心の整理をする番になってしまった……。

 カレンの頭の中で妄想が駆け巡る!


 その沈黙の中、龍太郎が喋り出した。


龍太郎:「俺は夢咲さんを信用するよ!」


カレン:「え?あ!

 そうだよね!私が聞いたんだもんね!

 ふぅ。わかったよ!絶対に秘密にする!」


 嬉しさの反面、怖さも反面あったが、龍太郎の言葉にカレンは意を決して決断した。



龍太郎:「それじゃ言うよ!

 俺のスキルなんだけど、ものすごく特殊なんだよね。」


 カレンは、息を飲んで聞いている。


龍太郎:「20歳の誕生日に授かったんだけど……。」


カレン:「え?ちょっと待って!

 20歳?18歳じゃなくって?」


龍太郎:「あっそうだな。

 18歳の時にも授かったんだけど、スキルが不明だったんだ。

 それが20歳の時に不明じゃなくなったって感じかな。」


カレン:「へえ。そんなの聞いたことない。」


龍太郎:「で、そのスキルがヤバくって、他人のスキルを視ることが出来るんだ。

 これって世界で俺だけなんだよ。」


 これ、アイちゃんの受け売りです。


カレン:「世界に1人!?

 確かにそれヤバいかも。

 そうだよね!バレたら大変!

 どっかに連れ去ってモルモットだよね?」


龍太郎:「やっぱり、モルモットに行き着くよな……。

 だから、墓場まで持って行く必要がある。

 これ、2人だけの秘密でお願いしたい!」


カレン:「そういうことなんだね!

 うん。もちろん2人だけの秘密厳守で。

 なーんだ!てっきり、犯罪絡みなのかなって思っちゃったよ。心配して損した。

 あ!思い出した!」


龍太郎:「え?何?」


カレン:「そういえば、最初に会った時、私の方をジーッと見てたよね!

 あれって私のスキルを視てたんだ?」


龍太郎:「そうなんです。すいません……。」


カレン:「なーんだ。そっか。

 私に気付いたわけじゃなかったんだね?

 だから、あの反応かぁ。

 でも、すごいね。そのスキル。

 スキル図鑑とか作れちゃうね。

 で、それを使うと強くなっちゃうってこと?

 どうやって?」


龍太郎:「うん。実は続きがあって……。」


 そのあと、龍太郎はスキルの登録と解放の仕組みを淡々と説明した。

 その間、カレンはすごい興味のある顔で、驚きを交えて聞いていた。


カレン:「もう、ヤバすぎ!衝撃だよ!

 超能王だっけ?まさにキングだよ。

 で、私の豪運もあるんだよね?」


龍太郎:「うん。登録されてる。」


 そのあと、現在使えるスキルが、衝撃波と浄化、あとは複合で影武者であることを伝えた。


カレン:「なるほど、あの強さは衝撃波って言うんだ。

 なんか、もう伸び代しかないね!

 これでレベルが上がったらどうなるんだろ?」


 カレンには、そのほかにも一通りの経緯を話した。

 その中でも、衝撃波の元になった肉球波という響きが可愛いとか言ってたな。

 確かに響きが面白い。

 あとは藻部のこと。ものすごく怒ってたが、そのことは注意するようには言っておいたが、あとのことは、任せてほしいと言っておいた。

 実際、俺にやり返す権利がある。


龍太郎:「そうなんだよな。

 戦闘系スキルの凄さを改めて実感したな。」


カレン:「でも、これって、私が言うのも変なんだけど、絶対に誰にも言っちゃダメだよ!」


龍太郎:「ああ、わかってる。

 だから、墓場案件って言っただろ。

 夢咲さんも絶対秘密な!」


カレン:「うん。もちろん。

 2人だけの秘密だね。ふふふ。

 でも、天堂くんは私を信用して言ってくれたんだよね?

 それはすごく嬉しいかも。」


龍太郎:「ああ。信用してるぞ。

 お墨付きももらってる。」


 アイちゃんのお墨付きは大きい。


カレン:「何それ!変な言い回し!ふふふ。

 じゃあさ。天堂くんからすごい秘密を教えてもらったから、私もとっておきの秘密を教えてあげる。」


龍太郎:「ん?別にいらないけど。」


カレン:「ううん。それじゃ、フェアじゃないから。

 私しか知らないとっておきの秘密だよ!

 興味あるでしょ?」


龍太郎:「うーん……。

 そこまで言われると気にはなるな。」


カレン:「そうだよね。気になるよね?ふふふ。」


 想定外のカレンの秘密暴露。

 何が飛び出してくるのやら……。


 ◇◇◇◇◇

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