第29話 影武者、見参!
◇◇◇◇◇
AI:〈それじゃ、マスター!
まずはステータスボードを開いてみて!〉
龍太郎:『ああ、オーケー!』
ステータスボード!
【個体情報】天堂龍太郎 20歳 人間族
【個体強度】レベル1
【固有超能】
【解放超能】分身体・衝撃波・
【登録超能】豪運・召喚・封印・超会心・回復波・流星弾・炎斬刃・駿足
AI:〈うん、新しい隠密スキルが取れてるね。〉
龍太郎:『そうだな。人のスキルが解放するのって初めてだよな。
これで、どういう基準で解放するのか、わからなくなったけどな。」
AI:〈まあ、そのあたりは元々よくわからないんだから、気にしない方がいいよ。〉
龍太郎:『ああ、確かに。
で、これで何をするんだ?』
AI:〈うん。まず、分身体を出してみて!〉
龍太郎:『おぅ!出でよ、分身体!』
ボン!
龍太郎:『アイちゃん。出したぞ!』
AI:〈マスター。その変な掛け声、何?〉
龍太郎:『ああ。雰囲気だよ。
これの方がカッコいいだろ?』
AI:〈そういうのが好きなんだね?
そうしたら、その分身体に隠密を掛けてみて!〉
龍太郎:『へえ。なるほどな。隠密!
おー!分身体が見えなくなったぞ!』
AI:〈お!出来たんだね!
ちょっと半信半疑だったけど、うまくいって良かった。
名付けて、影武者!〉
龍太郎:『おー!かっちょええ!』
AI:〈やっぱり、こういうのが好きなんだね?〉
龍太郎:『アイちゃん、センスあるな!』
AI:〈ふふふ。そうでしょう!〉
龍太郎:『で、この影武者をどうするんだ?』
AI:〈ここからは、ちょっと長期戦になるかもね。
影武者で背後を取って闇討ちって感じかな。
まあ、相手が来ないと実現できないけど、たぶん、また来るでしょ?〉
龍太郎:『オーケー!来るなら来いってんだ!』
◇◇◇◇◇
少し時を遡って、事件現場での龍太郎。
新しいスキル解放の
うぐはっ!
痛ってぇ!なんだよ!
あれ?動けねえ!
龍太郎の頭の中の機械音。
〈ピピプピプ……他者の超能を確認!〉
〈超能【尾行】を登録しますか?〉
くっそ!このスキルは藻部か?
……イエス、登録!
〈ピピプピプ……超能【尾行】を登録しました!〉
〈ピピプピプ……超能【尾行】の解放に成功しました。〉
成功!?
〈ピピプピプ……超能王の効果により超能【尾行】を最適化します。〉
〈ピピプピプ……超能【尾行】は超能【隠密】へと進化しました。〉
隠密か……ダメだ。意識が……。
◇◇◇◇◇
時を戻して、あのあと、アイちゃんの指示?で龍太郎の影武者がクランハウスDー318号室に来ていた。
龍太郎の入院している病院はエクスプローラ専門施設なので、同じ敷地内にある。
龍太郎:『アイちゃん!ここで何するんだ?』
AI:〈ちょっと端末で調べ物だね?
一応、念のためにね。
クラン検索で国士無双を検索してみて!〉
龍太郎:『そういうのって、ここに来なくたって、アイちゃんが出来るんじゃないの?』
AI:〈やろうと思えば出来るけど、セキュリティ突破したら、足跡が残るでしょ!
なるべく、そういうリスクは取らない方がいいんだよね。〉
龍太郎:『なるほど。そういうもんなんだな。
電源入れてっと。クラン検索っと。
出たぞ。これか。』
〈クラン:検索結果〉
【クラン】国士無双
【登録日】2030年10月10日
【ランク】A
【代 表】
【メンバ】
・
・
・
【メンバ】藻部明夫(D:2508)
龍太郎:『ひえー!このクランやばいな!
代表とメンバー筆頭でランキングワンツーじゃねえか!
最強コンビってやつか?』
AI:〈マスター。検索結果の画像送ってよ!〉
龍太郎:『オーケー!送信っと。これでいいか?』
AI:〈うん。オーケー。
ふーん。なるほどね。
でも、マスターの言う最強コンビって意味が強さってことなら、関係ないからね。
エクスプローラのランキングは、あくまで貢献度だから強さではないよ。
ただ、ヤバさって意味なら最強かも知れないけどね。〉
龍太郎:『へえ。こいつら、ヤバいやつなのか?』
AI:〈マスターって、相当な情弱だよね。
喜多川兄弟って言えば、結構有名なんだけど。〉
龍太郎:『そうなのか?全然知らなかった……。
ヤバいってどういう風に?』
AI:〈簡単に言うと、表向きはクランで稼いだ資金でビジネスを展開してるんだけど、裏社会とも繋がってるっていう噂があるんだよね。
本当に全然知らないんだね。〉
龍太郎:『うぐっ!まあ、それはいいや……。
それより、藻部だよな。
こいつ、一番下じゃん!底辺じゃん!』
AI:〈マスターよりは全然上だけどね。〉
龍太郎:『ぐえっ!痛恨!』
AI:〈ただ、国士無双のメンバーにしては、ランキングが低いよね。
ここのクランは、メンバーが軒並みランキングが高いみたいだから。〉
龍太郎:『まあ、雑魚ってことだよな!
ふふふ。最底辺の恐ろしさを見せてやる!』
AI:〈マスター。それ言ってて悲しくない?〉
龍太郎:『いや、最底辺には希望と伸び代しかない!』
AI:〈なんと、ポジティブな発言!
マスター、性格変わった?〉
龍太郎:『いや、たぶん変わってないぞ。』
AI:〈そうだね。根本は変わってないのかもね。〉
龍太郎:『じゃ、戻るか!
ひとまず、退散だ!影武者!』
ボン!
◇◇◇◇◇
次の日の朝。
龍太郎はやることもなく、昨日は早くから寝たので、今日は朝早くに起きた。
病院って規則正しくなるのがわかる。
AI:〈マスター!起きてる?〉
龍太郎:『おぅ。起きてるぞ。
アイちゃんから話しかけるのって珍しいな。
なんかあった?』
AI:〈今日から藻部が潜るらしいよ。〉
龍太郎:『あっそうなのか?
って、なんで分かったんだ?』
AI:〈あのキモ男は、毎回潜る前にSNSで呟くみたいなのよ。
今日から遠征に行って来まーす♡
って感じで。キモいのよ。〉
龍太郎:『最後、ハートマーク!?
見た目とのギャップがすごいな!』
AI:〈だから、当分は闇討ち出来ないからね。〉
龍太郎:『そうなるといつ来るかわからないな。』
AI:〈それは大丈夫。帰って来た時も呟くから。
ただいま、遠征から帰って来ました♡
って感じで。キモいのよ。〉
龍太郎:『それもハートマークかよ!キモいな。
わかった。サンキュ!
じゃあ、その時教えてよ。』
AI:〈はいはーい。〉
病院は朝食の時間も早い。
量も味も健康男子には物足りない。
早く、退院したい。
カレン:「天堂くん!起きてる?」
朝からカレンが病院にやって来た。
本日、2回目の起きてるか確認。
流石にこの時間は起きてるだろ。
龍太郎:「おぅ。起きてるぞ。
こんな朝から来なくたっていいのに。」
カレン:「うん。そうなんだけど、心配じゃない?
で、調子はどう?」
龍太郎:「ああ、おかげさまでもう動けるぞ。
あとは首だけだな。
今回の診断はムチウチだってさ。
背中は打撲程度だったので、湿布を貼っておけば治るらしい。」
カレン:「なるほど、それで首にコルセットしてるのね。じゃあ、首は相当痛いんじゃないの?」
龍太郎:「いや、動かさなければ大丈夫だ。」
カレン:「そうなんだね。
さっきナースステーションに寄って来たんだけど、今日昼から退院できるらしいよ。」
龍太郎:「良かったー!ここ暇なんで助かった!
日課のランニングと筋トレができないんで、困ってたんだよな。」
龍太郎の唯一の趣味はトレーニングと筋トレだ。あとはトレーニングの時に聞いている音楽くらいなもので、そのおかげでその他の情報については全くの無知と言っても過言ではない。
ただし、その肉体強化のおかげで不毛だった学生生活でもいじめられなかったというメリットはあったのだが……。
カレン:「まだ、無茶したらダメだよ。」
龍太郎:「わかってる。軽くな。
ところで、早乙女さんは?」
カレン:「うん。美紅ちゃんも来るって言ってたんだけど、私が断ったの。」
龍太郎:「え?断った?」
カレン:「うん。ちょっと2人っきりで話したいことがあったから。」
龍太郎:「え?何かな?」
カレン:「うん。あとで。
このあと、クランハウスに行ってから話すよ。」
龍太郎:「ああ。わかった。」
え?話ってなんなんだ?
2人っきりって?何かあったのか?
藻部は今日から潜るはずだよな。
うーん。わからん。
◇◇◇◇◇
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