第28話 龍太郎、緊急入院

 ◇◇◇◇◇


 カレンと美紅が心配そうに見つめる中、ようやく龍太郎が目を覚ました。


カレン:「あ!天堂くん!」


龍太郎:「ん?夢咲さん。早乙女さん。

 あれ?ここ、どこだ!?」


カレン:「良かったー!ここは病院だよ。

 天堂くんが急に倒れて、救急車でここに運ばれたんだよ。」


 確かに龍太郎は病院のベッドの上で横たわり、そばにカレンと美紅がいた。


龍太郎:「あ、そうか。焼肉屋を出た後……。」


カレン:「そう!一体、何があったの?」


龍太郎:「ああ。急に背中を思いっきり殴られた。

 そのあとは覚えてないな。」


カレン:「え?嘘?どうして?」


龍太郎:「うーん。それはわからない……。」


 実は龍太郎には心当たりがあった。

 が、それをカレンに言うことはなかった。


カレン:「一応、今のところの検査結果に異常はないらしいけど、一通りの検査はするらしいから、今日はここに入院することになりそうだよ。」


龍太郎:「そっか。いろいろ手間かけてごめんな。

 付き添ってくれてありがとう。」


カレン:「そんなの気にしないで!

 当たり前のことだから。」


龍太郎:「早乙女さんもありがとな。」


美紅:「私は別に……。」


カレン:「天堂くん。あの時は状況がわからなかったけど、もし、あれが傷害の類だったなら、被害届を出しておいた方がいいよね?」


龍太郎:「いや、今回は何の証拠もないし、被害届は出さなくていいよ。

 それより、今回の目的がわからないから、夢咲さんたちも気をつけたほうがいいよ。」


カレン:「うーん。そうだね。わかった。

 目的がはっきりするまでは注意しておく。」


 そのあと、俺が大丈夫なことを確認してから、夢咲さんと早乙女さんの2人は家に帰っていった。


 ただし、龍太郎の背中の痛みが無くなるまでは、当分の間、パーティでの狩りは中止しようということになった。



 ◇◇◇◇◇



 龍太郎は、いくつかの検査を終えて、今日は一人病院でお泊まりとなった。

 通常は4人部屋だが、部屋には誰もいないので、実質1人部屋になっている。


 龍太郎はベッドに横になったまま、今日起こった事件について考えていた。


龍太郎:『アイちゃん!』


AI:〈何?マスター。〉


龍太郎:『やっぱり、あいつだよな!?』


AI:〈そうだね。間違いないね。〉


龍太郎:『くっそ。闇討ちしやがって!

 やり返さないと気が済まないぞ!』


AI:〈うーん。そうだね……。

 このまま、ほっとく訳には行かないけど。〉


龍太郎:『アイちゃん!どうすればいい?』


AI:〈どうすればって……。

 マスターはどうしたいの?〉


龍太郎:『そりゃ、闇討ちには闇討ちだな。』


AI:〈すごい考え方だね。

 マスターってそういう性格なんだ?〉


龍太郎:『そりゃそうだぞ!

 やられっぱなしはダメに決まってる。』


AI:〈てっきり、証拠を掴んで訴えるのかと思ったんだけどね。〉


龍太郎:『おー!その手があったか!?

 なるほど。それはいいな。

 闇討ちの後にそうするか!』


AI:〈やっぱり、闇討ちはするんだね?〉


龍太郎:『おぅ。それは確定な。』


AI:〈うーん……わかった。

 じゃあ、ちょっと試してみよっか?〉



 ◇◇◇◇◇



 病院から出たカレンと美紅は、帰り道に今日起こったことを話していた。


カレン:「乗せてもらってありがとうね。」


美紅:「いえいえ、カレンさんを助手席に乗せるなんて、私の方こそありがとうございます。

 それに、天堂さんからもお願いされましたからね。」


 帰りの足がなくなったカレンだったが、美紅が車で来ているということなので、帰りは美紅の車で送ってもらうことになった。


カレン:「美紅ちゃん、車持ってたんだね。

 私、何も持ってなくって。」


美紅:「そうですね。見ての通り、軽自動車ですけどね。

 電車で通うの面倒ですし、やっぱあった方が便利ですよ。」


カレン:「そうなんだよね。天堂くんにも言われた。

 でも、天堂くん、無事で良かったよね。」


美紅:「ほんと。もう、ビックリしましたよ。」


カレン:「美紅ちゃん、すごく心配してたよね!」


美紅:「そりゃ、心配しますよ!

 急に倒れちゃって、意識もないし。」


カレン:「ふふふ。そっかぁ。

 ちょっと、聞いていい?

 美紅ちゃんって、天堂くんのこと、どう思ってんの?」


美紅:「どうって……。どういう意味ですか?」


カレン:「そのまんまの意味だよ。」


美紅:「どうって言われても……強いて言うなら変人ですかね?

 あとは、うーん。変態ですか。

 まあ、他の男に比べたら、下心がない分、喋りやすいですけど……。

 そういうカレンさんは、どう思ってるんですか?」


カレン:「面白い人だよ。あとは……秘密かな。」


美紅:「え?秘密ってどういう意味ですか?」


カレン:「そのまんまの意味だよ。

 でも、天堂くん、後ろから殴られたって言ってたよね。

 一体、何が起こってるんだろうね?」


美紅:「天堂さんに恨みを持つ人が背後から襲ったんじゃないですか?

 あの人ならあり得そうですけど。」


カレン:「うーん、そうなのかなぁ?

 そういう線もありそうなんだけど、なんか違うような気がするんだけど。」


美紅:「いや、それ以外にありますかねぇ?

 あるとしたら、無差別テロくらいですよ。」


カレン:「そうなのかなぁ?

 って、美紅ちゃん?

 普通に車を走らせてるけど、私の住所ってまだ言ってないよね?

 一応、道は合ってるんだけど、これってどこに向かってるの?」


美紅:「カレンさんのマンションなら知ってますから、大丈夫ですよ!」


カレン:「え?知ってるの?」


美紅:「はい。もちろん知ってますよ。

 当たり前じゃないですか。」


カレン:「いや、それはそれでちょっと怖いんだけど。」


美紅:「大丈夫ですよ。たまたまですから。」


カレン:「たまたまって……。」


 カレンが思うより、美紅は強敵かも知れない。と、心の中で思った。


 そのまま、走り続けて、車は本当に目的地であるカレンのマンションに到着した。


カレン:「あれ?美紅ちゃん!

 地下駐車場に入っちゃうの?

 マンションの前でいいよ。」


美紅:「いえ、私、ここの駐車場借りてますから、大丈夫です。」


カレン:「え?なんで美紅ちゃんがここの駐車場借りてるの?」


美紅:「はい、私もこのマンションに住んでるので。

 ここの505号室です。」


カレン:「はい?美紅ちゃん?」


美紅:「黙っててすいません!

 たまたま一緒だったみたいです。」


 いやいや、絶対に違うよね?

 カレンが思うより、美紅は強敵かも知れない。と、さらに心の中で思った。

 が、これ以上突っ込むのはやめておいた。


 これは、前から会ってるよね?絶対。



 ◇◇◇◇◇



 ある男の部屋。

 真っ暗な部屋に1人の男が帰ってくるや否や、何かぶつぶつと独り言を喋り始めた。


謎の男:「はぁ、はぁ。やってやったぞ!

 あいつ、今頃は病院で寝てるだろうな。

 当分は、潜れないだろうな!

 ざまみろ!ははは!」


 その男の部屋には、スマホで撮った写真をプリントアウトしたものが、壁一面に貼り付けられている。

 もはや、ファンを通り越して、狂気。


謎の男:「あいつは、俺がお仕置きしてあげたよ。ずっと、俺が見守っててあげるからね。」


 ◇◇◇◇◇

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