第24話 早乙女美紅の懇願

 ◇◇◇◇◇


 項垂れている龍太郎をほっといて、カレンは美紅に疑問を投げかけた。

 どう見ても、美紅は狩場が合っていない。


カレン:「ところで美紅ちゃんはどうしてここで狩りしてるの?

 戦力的にはもっと違うところでも十分にいけると思うんだけど。」


美紅:「そうなんですけど、他のところは可愛くないのであんまり好きじゃないです。」


 狩場を可愛さで選ぶとは、まさに女子ならではの思考と言うべきか。

 この感覚は想定外だな。


カレン:「そうなんだ。可愛いからなんだね。

 ちょっと、変わってるかもね。

 美紅ちゃんは、ずーっとソロなの?」


美紅:「はい、エクスプローラになってから今まで、ずっとソロで活動してます。

 クランにもよく誘われるんですけど、なんかダサい男たちが下心見え見えで誘ってくるので、ちょっと無理かなぁって。

 それに初めてのクランはカレンさんと一緒って決めてますから。」


カレン:「うーん。でも、今まで一度も美紅ちゃんから声をかけられたことないよね?

 連絡手段はあったと思うけど。」


美紅:「そうなんですけど……。

 カレンさんに迷惑かけるといけないから、少しでもレベルを上げてから、声をかけさせてもらおうと思ってたんです。

 そうしたら、半年が経っていて……。

 声をかけるタイミングがわからなくなってたというか、そんな感じです。

 今日会えたのは、たまたまです。

 なんか、運命感じちゃいますよね!」


カレン:「まあ、そうだね。私も運命って信じる方だから、分かるけど……。」


美紅:「カレンさん。思い切って言います!

 私をカレンさんのクランに入れてください!

 よろしくお願いします!」


 美紅は、深々と頭を下げてカレンに懇願した。

 意外に礼儀は正しいみたいだ。


 それを聞いたカレンは、意見を伺うように龍太郎の方を見て反応を待った。


 龍太郎は首を横にぶるんぶるんと振っている。併せて、手でバツを作って合図してる。


 夢咲さん!無理です!ダメです!

 この子はちょっと苦手です!


 カレンはそれを見てちょっと苦笑い。


 美紅は、龍太郎の仕草を気配で感じ取って、龍太郎の方を見た。

 龍太郎と美紅は目が合ってしまった。


美紅:「え?」

龍太郎:「へ?」


 げ!マズい。見られた。


美紅:「あ!ちょっと!あんた!

 なんで手でバツしてるのよ!」


龍太郎:「いや、俺はその……人付き合いが苦手なんだよ。特に早乙女さんみたいなタイプは。」


美紅:「あ!あんた!はっきり言うわね!

 じゃあ、今すぐに脱退しなさい!

 あんたがいない方が私はいいんだから!」


龍太郎:「なんで、俺が脱退しなきゃいけないんだよ!

 そっちが諦めればいいだろ!?」


美紅:「ムキー!ムカつく!

 あんた!もう勝負しなさい!決闘よ!」


龍太郎:「絶対に嫌だ!俺が負けるに決まってる。」


美紅:「もう!なんなのよ!

 あんた、プライドはないの!?」


龍太郎:「そんなものはない!」


 カレンは、マズイと思って、龍太郎と美紅の喧嘩に割って入った。

 もう、子供の喧嘩である。


カレン:「2人ともちょっと待って!

 落ち着いて!ね!

 それに美紅ちゃん。

 エクスプローラ同士の決闘は、探検者特別法で禁じられてるの知ってるでしょう?」


美紅:「うう。だって……。」


カレン:「それに、こんな感じじゃ、美紅ちゃんをクランに入れることは出来ないよ。

 クランはみんなで一緒に成長する組織だと思ってるから。これが私のポリシー。」


 美紅は、涙目になってだまっていた。

 もう、目からこぼれそうなくらいに。

 それを見て、龍太郎も心が痛い。反省。


龍太郎:「いや、俺が悪かったよ。

 早乙女さんの加入に関しては、夢咲さんが決めてくれればいいよ。」


カレン:「うん。ありがとう。

 だから、こうしようと思うの!

 クランの加入に関しては、一旦保留にするけど、まずは3人で一緒にパーティを組むってことでどうかな?」

 

龍太郎:「ああ。俺はそれでいいよ。」


 美紅も涙目から、一瞬で笑顔に変わってる。


美紅:「はい!それでいいです!

 ありがとうございます!」


 良かった。女性の涙目はどうも苦手だ。

 やっぱり、笑顔の方がいいよね。


カレン:「じゃあ、美紅ちゃんが仮加入ということで、仲直りも兼ねて、みんなで握手しよっか!」


龍太郎:「ああ。」

美紅:「はい!」


 早乙女さん、本当に嬉しそうだな。

 始めからそうすれば良かったよ。反省。


 3人が同時に手を差し出して、握手というより、夢咲さんの右手の上に、早乙女さんが右手を乗せて、さらにその上に俺が右手を乗せた。


カレン:「ファイトー!」

全員:「「「オー!」」」


〈ピピプピプ……他者の超能を確認!〉

〈超能【封印】を登録しますか?〉


 よし来た!封印か?何だろこれ?

 まったく分からんスキルだな。

 かなり、特殊なのは間違いない。

 とにかく、早乙女さん、頂きます。

 はい、登録します!


〈ピピプピプ……超能【封印】を登録しました!〉


 オーケー!登録完了!


〈ピピプピプ……超能【封印】の解放に失敗しました。

 超能【封印】の解放のために必要な固有強度レベルの条件を満たしていません。〉


 やっぱりダメだよな……。

 エクスプローラのスキルは解放しにくいのかもしれないな。


 ステータスボード!


【個体情報】天堂龍太郎 20歳 人間族

【個体強度】レベル1

【固有超能】超能王スキルキング

【解放超能】分身体

【登録超能】豪運・召喚・封印・超会心・回復波・流星弾・炎斬刃・駿足


 お千代さんの召喚も、早乙女さんの封印も特殊なだけあって、かなり上位に位置してるな。

 しかし、ステータスボードを見るたびにレベル1を実感するんだよな。悲しみ。

 これっていつ上がるんだよ!?



カレン:「じゃあ、パーティの儀式が済んだことだし、これからどうする?

 美紅ちゃん。私たちもプチパンダを狩りに来たんだけど、今からパーティで活動ということで良い?」


美紅:「もちろん。お願いします!」


カレン:「天堂くんもいいよね?」


龍太郎:「ああ。俺も大丈夫。」


 雨降って、地固まる。

 暫定ではあるが、新パーティが発足し3人体制となった。

 さて、犬猿の仲、龍太郎と美紅はどうなっていくんでしょう?


 ◇◇◇◇◇

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