第25話 新パーティ始動

 ◇◇◇◇◇


 新パーティが発足して、少々時間が経過。

 竹林から何匹かのプチパンダがすでに出てきて徘徊している。


カレン:「じゃあ、そろそろ行くよ!」


 リーダーのカレンが号令をかける。


龍太郎:「了解!」

美紅:「承知です!」


 プチパンダ。普通のパンダより少し小型の初期モンスターの一種。

 体の動きはそれほど速くないが、小さくてもそれなりに怪力で、速い腕の振りから繰り出される、パンチは衝撃が半端ない。

 不思議なのが、腕の振り以上の衝撃が来る感覚があり、なんらかの衝撃波が出ているのではないかと言われている。


 3人が3方向に分かれて、それぞれが戦闘体制に入った。


 龍太郎は、まず対峙したプチパンダのスキルチェックから開始した。


【固有超能】肉球波にくきゅうは


 ふーん。なるほど、そういうことか。

 確かに肉球から何か出てると思ったけど、そんなスキルだったのか。

 龍太郎は衝撃の正体がスキルであることを認識した。言えないけど。


 カレンと美紅はすでに戦闘に入っている。

 相変わらず、カレンはプチパンダの衝撃をもろともせず、装備依存の肉弾戦。

 実に荒々しい戦法で瞬殺していく。


 一方、美紅は装備は初期なので、攻撃自体は瞬殺というわけにはいかないが、俺たちよりも綺麗な戦い方をしている。

 これは個体強度レベルが高いからではないかと推測。

 さらにプチパンダの攻撃を受けるも衝撃が明らかに少ないように見える。

 これが美紅の持つスキルの効果ではないかと思われる。


 やっぱり、2人とも俺より強いな。


 龍太郎も負けじと1匹目のプチパンダに攻撃を仕掛ける。

 振りかぶるプチパンダの肉球パンチを間一髪避けて懐に飛び込み、カウンターのブーメランフック!


 実は龍太郎は体を鍛える際に、自己流ではあるがキックボクシングを取り入れていたので、素人よりは體術もいけると思っている。


 綺麗に龍太郎のフックが入ったと思ったのだが、プチパンダも反対の手の肉球でクロスカウンターを炸裂させていた。

 両者綺麗に相打ちとなり、双方が後方に吹っ飛ぶ。

 ボクシングであれば、相当に盛り上がる試合になりそうだ。


 そして、双方ともすぐに立ち上がった。


龍太郎:「やるな!」

パンダ:「ガオ!」


 お互いに相手をリスペクトしたのかは分からないが、牽制したまま距離を詰める。


 そして、龍太郎の頭の中では例の機械音が。


〈ピピプピプ……他者の超能を確認!〉

〈超能【肉球波】を登録しますか?〉


 よし、来た!

 登録します!


〈ピピプピプ……超能【肉球波】を登録しました!〉


 おっしゃ!登録成功!


〈ピピプピプ……超能【肉球波】の解放に成功しました。〉


 おっしゃ!これも成功か!ナイス!

 来い、適正化!


〈ピピプピプ……超能王の効果により超能【肉球波】を最適化します。〉


 よし!カモーン!進化!


〈ピピプピプ……超能【肉球波】は超能【衝撃波】へと進化しました。〉


 おっしゃ!2つ目のスキルゲットー!


 龍太郎は、ウキウキブギーバッグ!


 これは使えそうだぞ!

 よし!早速行ってみるか!!



 ここからは実況のNPCがお伝えします。


 さあ、第2Rのゴングが鳴ったー!

 龍太郎、プチパンダの両者が距離を詰めていくが、お互いに相手の出方を伺っている!

 お互いの間合いを確認しているのかー?

 先ほどの相打ちが影響しているのではないでしょうか?


 おーっと。ここで龍太郎が先に仕掛けた!

 一度ジャブのフェイントを入れてから、懐に飛び込んでお得意の死角からのブーメランフック!

 今度は綺麗に決まったー!

 龍太郎の渾身の一撃がプチパンダのテンプルに炸裂!

 と同時にプチパンダは衝撃波をモロに受けて豪快にダウン!

 倒れたプチパンダはぴくりとも動かない!

 プチパンダの鼻と口からは大量の血が流れ出している!

 カウントを待たずしてレフェリーストップ!

 龍太郎のノックアウト勝利が決まったー!


龍太郎:「うおーーーーーーー!」


 龍太郎は、歓喜の雄叫びをあげ、高々と両手を上げての勝利のガッツポーズ!

 ここに新チャンピオン誕生!

 ついにベルトが海を渡りました!


 会場からは大歓声と天堂コールの嵐だー!

観客:「テ・ン・ドー!テ・ン・ドー!」



カレン:「天堂くん。何してるの?」

美紅:「あんた、ついに狂ったの?」


龍太郎:「あ!夢咲さん。早乙女さん。」


カレン:「また、懲りずに素手で戦ってたね。」

美紅:「モンスター相手に剣も出さないで何やってんだか。」


 カレンと美紅はジト目で呆れている。


龍太郎:「いや、これは新しい戦い方を模索中というか、なんというか……。」


カレン:「それにしても、天堂くんってこんなにパワーあったっけ?」

美紅:「プチパンダとは言え、拳で殴り倒すなんて、あんた、それ系のスキル持ちってこと?」


龍太郎:「いや……。」


 これってなんて答えればいいんだ!?

 うーん。思いつかん!


カレン:「まあ、いいっか。詮索は御法度だもんね。

 言えるようになったら、教えてよね。」

美紅:「何を隠してんだか。」


 くー。助かった。夢咲さん。サンキュ!

 でも、隠してるのがバレた。

 これって墓場案件なんだよー!


龍太郎:「あれ?プチパンダは?」


カレン:「そんなのとっくに終わったわよ!」

美紅:「あんたが変なことしてる間にね!」


龍太郎:「あ!そうなんだ!悪い。」


カレン:「ほら、コアの剥ぎ取りして次に備えるよ!」


龍太郎:「了解!」

美紅:「承知です!」


 それから午前中いっぱいは、新パーティでプチパンダ討伐を継続した。


 それで分かったことだが、パンチの他、肘打ち、掌底、膝蹴り、ローキック、ハイキックと全ての打撃技で衝撃波のスキルが使えた。

 さらに攻撃を受けた際もうまく合わせれば、防御として使えることも判明。

 ちなみに、潜り込んでの昇龍拳も試したが、見事に成功!

 一躍、ストリートファイターとしての地位が確立した。


 YOU WIN!


 ストリートファイターとなってからの龍太郎は、カレンや美紅の狩るスピードについて行けるようになっていた。


 なので、言い訳で言った〈新しい戦い方を模索中〉は、現実になってしまった。


 やっぱり、戦闘系のスキル持ちって、それだけでアドバンテージなんだなぁ。

 と、実感した龍太郎であった。


 相変わらず、レベルは上がってないが、スキルによって確実に戦闘力は上がっている。


 ステータスボード!


【個体情報】天堂龍太郎 20歳 人間族

【個体強度】レベル1

【固有超能】超能王スキルキング

【解放超能】分身体・衝撃波

【登録超能】豪運・召喚・封印・超会心・回復波・流星弾・炎斬刃・駿足


 初見の美紅は、さほど思わなかったが、カレンは、この異常な戦闘力アップに驚きを隠せないでいた。


 何を隠してるんだろう……?


 ◇◇◇◇◇

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