第20話 極秘事項とは?

 ◇◇◇◇◇


野神:「ここからが本題ね。

 そのためにあなたたち3人だけに来てもらったの。

 もちろん、伝えるのも今のところはあなたたちだけよ。」


 正面に座った3人は、何があるのか固唾を飲んで、その発言を待った。


野神:「まずはこれを見て。」


 野神がラップトップを操作すると、机に置かれたモニターに画像が映し出された。


野神:「これがある国のゲート内で見つかったものよ。

 発見されたのは9月11日。

 ゲートが発生してちょうど20年経った日。

 昨日のことよ。

 国の名前は明かされていないけど、アメリカか中国のどちらかでしょうね。

 ただ、我々はアメリカだと考えてるわ。

 中国の場合は、こんなに早く開示されることはないと踏んでいるの。

 そして、アメリカにしても、ここまで早く開示した理由は、そこに彫られた文字よ。」


 野神がモニターに映した画像には石板らしきものが映っていた。


 その石板には5色の大きな石が埋められており、その下部には文字が刻まれている。



 =================

         黒

       白 黄 青

         赤

 =================

   遂に王が世界に降り立った

   五つの神級迷宮を踏破せよ

   さすれば希望の門は開かれる

 =================



景虎:「これは現物の写真ですか?」


野神:「そう。違和感があるのはこの文字ね。」


景虎:「日本語で彫られていたと?」


野神:「そうなの。

 文字が明らかに日本語なの。

 内容よりも先に、この文字の言語が、異世界の言語ではなく、しかも世界の共通言語である英語や圧倒的に人口の多い中国語でもない、日本語であることが何かの意味を持つのでは?と言う推測からなの。」


景虎:「それは確かに意味を持ちそうですね。」


野神:「しかも、内容にしても謎だらけよね。

 王とは誰なのか?

 五つの神級迷宮はどこにあるのか?

 希望の門とは?」


景虎:「情報はこれだけですか?

 これじゃ、雲を掴むようなものですよ。」


野神:「いいえ、もう一つあるわ。」


 野神がラップトップを操作して、もう一枚の画像をモニターに映し出した。


野神:「これが、世界探検者協会から送られて来た、もう一枚の写真よ。

 さっきの石板の裏側の写真ね。」



 石板の裏側には、世界地図が彫られており、5つの箇所に5色の点が記されていた。



野神:「この地図に記された5つの点の座標位置から、それぞれの都市が5つの国の第1ゲートに当たることがわかったの。

 そして、この5つのゲートは20年前に世界で最初に開いた5つのゲートなのよ。

 これも、今後はEG5の中では、神門(ゴッドゲート)と呼ばれることになったわ。」


 野神が、それぞれの都市名と門の呼び名を説明していった。


 青神門ブルーゴッドゲート:ロサンゼルス(アメリカ)

 赤神門レッドゴッドゲート:上海(中国)

 黄神門イエローゴッドゲート:東京(日本)

 白神門ホワイトゴッドゲート:ベルリン(ドイツ)

 黒神門ブラックゴッドゲート:ムンバイ(インド)


景虎:「なるほど。だから、EG5が緊急招集されたわけですか。」


野神:「そう。察しがいいわね。」


景虎:「でも、ちょっと待ってください。

 横道に逸れますけど、確か、20年前にゲートは東京と大阪で同時発生したはずでは?」


野神:「ふふふ。細かいところに気がつくわね。

 そうね。実際には、ほぼ同時よ。

 だから、東京と大阪の発生には少しの時間差があったの。

 のちの調査で分かったんだけど、あまり重要ではないと考えていた当時の協会は、それを公表することはなかったわ。

 だから、本当にゲート番号は厳密に発生順なのよ。」


景虎:「へえ。それは知りませんでした。」


野神:「そうね。知らないことはたくさんあるわ。

 今言ったことは、重要なことではないから、別に知られたところで問題ないことだけど、協会内は極秘事項だらけだわ。

 世界探検者協会から見れば、私たちですら知らない事がたくさんあるはずよ。」


景虎:「そうですか。わかりました。

 で、俺たちが呼ばれた理由って、まさか、神級迷宮の踏破ですか?」


琴音・亜蘭「「え!?」」


 この時、初めて両脇に座る2人があまりに唐突な内容に思わず同時に声を上げた!


野神:「流石に鋭いわね。ご察しの通りよ。

 ただ、踏破ではなく、調査の依頼ね。

 まずは、その神級迷宮っていうものを見つけ出して欲しいの。

 今回の世界探検者協会の緊急会談で我々に依頼された事項はひとつだけ。

 5神門内に存在の可能性がある神級迷宮の発見のための調査よ。

 未だに、どの国でも存在すら確認されてない迷宮ですからね。まずはそこから。

 依頼の方法にも条件があって、各国1つのクランに限定してこの情報を開示すること。

 そして、そのクランのみが調査にあたること。ということになったのよ。」


景虎:「依頼事項はわかりましたが、なぜ、俺たちなんですか?

 6大クランのいずれかに依頼した方が効率良くないですか?」


野神:「そうね。効率で言えば確かにそう。

 でもね。このことは、まだ世間には公表しないことに決定しているの。

 6大クランで言えば、その内5つは渋谷外の管轄でしょう。

 わざわざ、この時期に管轄を変えれば、何かあると気づく者もいるでしょう?

 それに残りの一つ、渋谷管轄の国士無双はちょっとね。わかるでしょ?

 あと、大型クランになれば、情報統制も難しくなってくるわ。

 その点、あなたたちカーバンクルなら、信頼出来るし、情報統制もしっかり出来るでしょ?」


景虎:「もちろん、それは大丈夫ですが。」


野神:「今回は情報統制が第一優先なのよ。

 効率は考えなくていいわ。

 まだよくわからない情報で世界を不安に落とすようなことは出来ないというのが協会の総意ね。

 ただし、これを発見するためには、広大な未開の地の調査を意味するわ。

 とても、危険がないとは言えない。

 それを踏まえて、依頼を受けるかどうかは決めて欲しいの。

 もちろん、金銭面での補償は充分にするつもりです。」


景虎:「わかりました。

 信頼してもらって嬉しいです。

 俺は考えるまでもなく、受けようと思うが、みんなはどうだ?」


琴音:「ええ、もちろん景虎と亜蘭がいいならいいわよ。」


亜蘭:「俺はもちろん受けるよ。

 それこそ、探検者って感じだよね!」


景虎:「ということです。」


 カーバンクルの3人は、笑顔で顔を見合わせて答えた。すごい信頼感。


野神:「ありがとう。

 あなたたちなら、そう言ってくれると思ってたわ。

 では、今回の依頼を受けてくれたカーバンクルには、金銭の補償のほかに、マジックバッグを贈与することにします。

 これは、さっき工藤と私で決めたの。

 勝手に決めたから、あとの処理が大変なんだけどね(笑)

 日本に一つしかない非売品ですからね。

 大切に使ってね。」


景虎:「え?いいんですか?」


野神:「いいのよ。それだけの依頼をしているもの。

 このあと、工藤がちゃんと処理しますから。

 ね?工藤さん!」


工藤:「ああ。大丈夫だ!……と思う。」


 工藤会長!ひさびさの発言がこれ!?

 すごく不安が……。とカーバンクルのメンバー全員が工藤を気の毒に思った。

 いつもの豪快な工藤さんはどこに!?


野神:「それでは、これが契約書です。

 金銭面の保障内容もここに書かれているので、よく確認してから代表者がサインしてくださいね。

 あと、贈与するマジックバッグはゲート内の販売ショップで受け取ってください。

 今日はちょうど源さんだからね。

 源さんには、この革書を持って行って渡してくださいね。

 この革書には、今回の依頼の件の概要とマジックバッグをカーバンクルに贈与する旨を記載しておきましたので。

 販売ショップ内であれば、源さんだけには相談してもいいですよ。」


景虎:「紗英さんって怖いですね。

 この短時間で全部のお膳立てが済んでいるってことですか?」


野神:「ふふ。褒め言葉と受け取っておきますね。」


 カーバンクルの3人は、契約書に目を通して問題ないことを確認した。

 そして代表して景虎がサイン。契約完了。


〈神級迷宮の調査クエスト発生!〉


 その後まもなく、3人はゲートに向かうため、会長室を後にした。


 ◇◇◇◇◇

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