第17話 ファミレスで?

 ◇◇◇◇◇


 次の日。待ち合わせ場所は、近くの街の出会った場所。


 カレンが龍太郎を見つけて走って来た。


カレン:「あれ?早いね。結構、待った?」


龍太郎:「ううん。待ってない。」


カレン:「よかった。朝ごはん食べた?」


龍太郎:「ううん。食べてない。」


カレン:「じゃあ、まずは腹ごしらえからね。

 どこか行きたいとこある?」


龍太郎:「ううん。ない。」


カレン:「じゃあ、そこのファミレスでいいっか。」


龍太郎:「ああ。問題ない。」


 どんどん進めるカレンと意思のない龍太郎。

 対照的な2人は、駅前のファミレスに入って行った。実は相性いいのかも?



 ◇◇◇◇◇◇



 ひとしきり注文が終わって、料理を待つ間にカレンが本題に入った。


カレン:「でね。昨日見たでしょ?

 あれがポストに入ってたんだよね。

 ちょっと怖くない?」


龍太郎:「あれは完全にストーカーだな。

 なんか接触とか、思い当たる節とかはないのか?」


カレン:「今のところはないんだよね。

 昨日も考えてたんだけど。」


龍太郎:「今までストーカーはないってことか?」


カレン:「いや、それはあるよ。

 でも、もっと前だね。1年くらい前かな。

 その時は結構しつこく誘われてね。

 その人もエクスプローラだったんだけど、まあ、その時も第六感が働いたのよね。

 この人はちょっとダメだって。

 でね。あまりにもしつこいから、協会の警務部に相談したの。

 で、まあ、いろいろあって、その人が大阪の梅田ゲート管轄に異動したって感じ。

 それからは、接近禁止命令も出てるから、その人とは会ってないね。」


 この時代は、エクスプローラに関する事件については、警察ではなく協会の警務部が担当することになっている。

 なお、協会の警務部の職員についても、わずかではあるが、元エクスプローラで引退した人の再就職先となっている。


龍太郎:「夢咲さんって狙われやすいのかもな。

 俺から見てもかなりの美人だからな。」


カレン:「だよね。ありがとう。よく言われる。

 でね。今回の人も絶対にエクスプローラだと思うのよ。」


龍太郎:「美人は否定しないんだな。」


カレン:「否定しないんじゃなくて、よく言われるの。

 事実なのよ。そこ、ツッコむ?」


龍太郎:「いや、大丈夫。

 でさ。俺もエクスプローラだと思うよ。」


カレン:「うん、間違いないよね。

 クラン設立した日に手紙が来たもの。

 あ!料理来たね。」



店員:「こちらがアイランド風シーフードサラダとアイスコーヒーのセットですね。

 こちらが大盛り焼きそば目玉焼き乗せとホットコーヒーのセットですね。

 ご注文の品は以上です。」



 食事をしながら、会話再開!

 夢咲さんが何かを思い出したように……。


カレン:「そういえば、あの人。

 電車でよく見かけたかも?」


龍太郎:「ん?あの人って?」


カレン:「ほら!あの奥にいる黄色い服の人。」


龍太郎:「ああ、あの黄色の人な。」


 龍太郎たちの席から2テーブル先に1人で座って食事している黄色のTシャツの男。

 胸にはデカデカと〈無双状態〉の文字。

 でも、なんか体が細い。激細。骨。

 とても無双状態には見えないのだが……。


 まずは、スキルホルダーかどうかの確認。


 龍太郎はスキルを使った。


【固有超能】尾行


 なんちゅう、ドンピシャなスキル!

 ストーカーが尾行って!

 でも、あいつじゃねえ!


 黄色のTシャツの男のさらに2つ奥のテーブル、すなわち、龍太郎たちから4テーブル奥に座るガタイのいい男がスキル持ちのようだ。

 この男は、黄色の男とは対照的に短髪で全身迷彩服を着ており、軍隊に所属しているような風貌であった。



 どうするかな?

 少なくとも黄色の男はエクスプローラではないから、ストーカー候補ではないと思うのだが、どうやって伝えれば?



カレン:「ねえ、どう思う?」


 龍太郎が何かを言う前に、先にカレンが聞いて来た。


龍太郎:「うーん。たぶん違うな。

 あの黄色いやつはエクスプローラじゃないと思う。骨だし。とても無双状態には見えん。」


カレン:「外見で判断しちゃダメだよ。」


龍太郎:「それはそうなんだけど……。

 その奥にいる迷彩服の方がどう見てもエクスプローラっぽくないか?」


カレン:「ふふふ。確かにね。」


龍太郎:「あいつに見覚えはないか?」


カレン:「うーん……。

 なんか見たことあるような、無いような。」


龍太郎:「そっか。なら、ちょっと待ってて。」



龍太郎:『おーい、アイちゃん!』


AI:〈はいはーい。何?〉


龍太郎:『エクスプローラの情報って調べられる?』


AI:〈もちろん。迷彩服の男でしょ?〉


龍太郎:『そう!話が早いな。調べて!』


AI:〈それだけの情報で調べられるわけないでしょ!マスターって馬鹿?

 その人物の画像を送って!

 その人物を見た状態で〈送信〉って念じればいいから。やってみて。〉


龍太郎:『馬鹿って……。

 まあ、やってみるよ。〈送信〉っと。』


 パシャ!


AI:〈うん。受信したよ。ちょっと待ってて。〉


 なんとも便利な機能があったもんだ。

 念じると画像を送れるって。

 これがあったら、なんでもアイちゃん鑑定団って感じ。いいかも。ナイス!


AI:〈ビンゴ!わかったよ。

 SNSの情報とバッチリ照合。

 名前は、藻部もぶ明夫あきお

 国士無双クラン所属のDランクエクスプローラだね。〉


龍太郎:『あざっす。助かりました。』


AI:〈はいはーい。いつでもどーぞ。〉



龍太郎:「夢咲さん。たぶん、あの迷彩服の男は国士無双クランの人だと思うんだけど。」


カレン:「え?そうなの!?よくわかったわね。

 国士無双クランって言ったら、さっき言ってた大阪に異動した人がいたクランだよ。

 なんか、関係あるのかな?」


龍太郎:「まあ、今のところはよくわからないけど、注意しておいた方がいいな。」


カレン:「そうだね。彼は要注意人物にしておくよ。

 一応、買い物終わったら、警務部に被害届出しておこうと思うからついて来てね。」


龍太郎:「ああ、もちろん。」


 迷彩服の男は、こちらの様子を伺う素振りは見せていない。

 逆に夢咲さんが目立つからなのか、他の客がチラチラと夢咲さんを見て、なんか喋ってる。

 おかげで俺のこともチラ見してくる。

 どうせ、なぜ、こいつが一緒にいる?みたいなことだろうよ。

 どうせ、俺は釣り合ってませんよ。


龍太郎:「悪かったな!」


カレン:「ん?天堂くん、何?」


龍太郎:「あ!いや、なんでもない。」


 わ!つい心の声が出ちゃったよ。あぶねえ。

 でも、そうすると迷彩服の男は関係ないのかもな。

 せっかくの手がかりがなくなると厄介だな。


 そのあと、追加でデザートを食べてから、ファミレスを出て、今日の本題の買い物に出かけた。


 クランハウスの備品をいろいろ購入。

 だが、時間がかかった。長い!

 この辺りの感覚が違うんだろうな。

 本当にいろいろ買ってしまった。

 まあ、クランの運営補助金で購入ということなんで別にいいけど。

 しかも途中、夢咲さんがベッドも買おうと言い出した時には、流石に却下した。

 もう本当に住みかねない。


 一通りの買い物が完了したので、2人は被害届を提出するために探検者協会本部に向かった。

 もちろん、一旦、俺のボロアパートまで来てもらってスクーターで。

 その時に、夢咲さんは部屋に上げろ!とうるさく言ったが、それは断許として拒否。

 しつこく食い下がった夢咲さんもなんとか渋々引き下がった。

 なぜ、俺の部屋に入りたがる?

 まったく意味がわからん。

 

 夢咲さんは納得していないようだが、とにかく、夢咲さんを後ろに乗せて、探検者協会のある渋谷に向けてスクーターを走らせた。


 ◇◇◇◇◇

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