第15話 初活動を終えて

 ◇◇◇◇◇


 カレンは、ふわふわとした感じでカーバンクルが遠く見えなくなるまで眺めていた。


カレン:「あー、行っちゃったね。

 でも、すごいよ!超ラッキー。

 あんな有名人と知り合いになっちゃった。

 しかも、カーバンクルとクラン間通信が出来るようになっちゃったよ!」


龍太郎:「クラン間通信って何?」


カレン:「クランコードの相互登録をするとね、クラン間通信が可能になるのよ。

 そうするとDMが送れるの。」


龍太郎:「へえ。それってすごいの?」


カレン:「うん、かなりすごいと思う。

 確か、カーバンクルの相互って、すっごい少ないはずだよ。」


龍太郎:「へえ。夢咲さんっていろんなこと、よく知ってるよな。」


カレン:「そうでもないよ。

 天堂くんが、知らなさすぎ。

 それにしてもさあ。

 なんでも相談に乗ってくれるって言ってたよね?」


龍太郎:「うん、言ってたな。」


カレン:「うーー。本当にすごいよ。

 あ!これって天堂くんのおかげだね。

 それって、天堂くんを誘った私の運だよね?

 ほら、早速来たよ。豪運くん。」


龍太郎:「そうなのかなあ?」


カレン:「絶対、そうだよ。

 あー、今日は楽しかったね。」


龍太郎:「ああ、おかげさまでな。」


 龍太郎とカレンは、簡易事務所の脇に設置されたメンテナンスルームで装備の洗浄と乾燥、そして点検を終えてゲートから退出した。



 ◇◇◇◇◇



 ゲートから元の世界に戻った2人は、協会本部別館の買取センターで、本日の成果であるランバードのモンスターコア2個を換金し、クラン・ゴッドブレスユー!の初活動を無事終えた。



 モンスターコア等の買取については、ソロとクランでは、その分配方法が違うため、そのルールを知らなかった龍太郎はカレンに説明を受けていた。


カレン:「新人の時にクランに所属してたんだよね?

 聞いてなかったんだ?」


龍太郎:「ああ、そういうのは全く教えてもらってなかったな。」


カレン:「そうなんだ。なんだか不親切だね。

 普通はクランに所属する際に、事前に説明があるはずなんだけど。」


龍太郎:「いやー、聞いてなかっただけなのかなあ?」


カレン:「あり得るね。天堂くんだもん。」


龍太郎:「ぐわっ!痛恨!」


カレン:「ふふふ。じゃあ、説明するね。


 ソロの場合って、税率分が引かれて、そのまんま全額が個人口座に振り込まれるじゃない?


 クランの場合は、ちょっと複雑でね。

 まず、換金するときに、さっきみたいに素材ごとの所有権を報告するのね。

 今回だったら、モンスターコア1個は天堂くん。もう1個は私ね。

 まず、これが個人の取り分になるの。

 これも、結構揉めることがあるんだけど、だいたいは均等に所有権を渡すのが常識だね。


 でも、ここで全額が振り込まれるわけではなくって、まず、税率分が引かれたうちの80%が個人に振り込まれる。

 残りの20%は一旦協会にプールされるの。

 そして、その20%は、月に一回、クランの申告した割合で個人に分配されて振り込まれるって感じ。会社の固定給みたいな感じだね。


 でね。このプール金の分配割合って代表が決めるんだけど、本当にどうにでも出来るから、これもまた揉める原因になるんだよね。

 噂では、100%代表に分配ってクランもあるらしいよ。

 それが本当なら、なぜ脱退しないのか、文句も言わないのか不思議なんだけどね。


 あ!言ってなかったけど、もちろん、うちの場合は50%ずつにしてるからね。」


龍太郎:「逆になんか申し訳ない気分なんだけど。」


カレン:「あ!気にしない。気にしない。

 なんか、変なところ気にするよね。

 もっと、気にするところあると思うけど。

 言ってなかったけど、カーバンクルに対して、途中からタメ口になってたからね?」


龍太郎:「え?本当に?」


カレン:「うん。まあ、いいんじゃない。

 向こうも気にしてないみたいだし。

 ちょっと、羨ましいって思ったんだよね。」


龍太郎:「まあ、もうしゃーない。

 今度から気をつけるよ。」


カレン:「うーん……たぶん、無理だと思う。」


龍太郎:「ぐわっ!痛恨!」


カレン:「ふふふ。今日はこれで終了だけど、帰りも送ってくれるんだよね?」


龍太郎:「ああ、乗っけてくよ。

 もう、体も完全に治ったしね。」


カレン:「そう!如月さんのあれ、すごかったよね!

 一瞬で全快しちゃうんだからね!」


龍太郎:「本当に。あれは感動したな。

 なんか、温かかったんだよなぁ……。」


カレン:「何、デレェとしちゃって!」


龍太郎:「だって、すんごい気持ちよかったんだぞ!」


カレン:「わあ、いいなあ。

 私もして欲しかったなあ。」


龍太郎:「俺だけ特別だから(笑)」


カレン:「何それ!屈辱〜!」


龍太郎:「ははは。」


カレン:「でさ。今日は早く終わったから、今からご飯食べに行こうよ。お腹すいたよね?」


龍太郎:「ああ、いいぞ。どこがいい?」


カレン:「私のおすすめがあるから、そこで。」


龍太郎:「うん、それじゃそこで。」



 ◇◇◇◇◇



 龍太郎とカレンは、駅前の蕎麦屋に来ていた。少々お高めだが、本格的な手打ちで人気があるらしい。どうもカレンは蕎麦好き。


 食事の間は、中学を卒業してからのことや、高校を卒業してエクスプローラになってから出会う前のことや、たわいのないことを聞いたり、話したりした。


 龍太郎が把握したカレンの印象は、気が強いところがあるが、他人に対して世話好き。

 努力家で頭脳明晰。というのも、エクスプローラになっていなかったら、一流国立大学に入っていた。現に入試は合格していたらしく、最後まで悩んでいたらしい。

 あとは、社交的で奔放なところがある一方、幼少期の経験から人に対してまだ警戒心が若干残ってる。

 ただ、第六感については、盲目的に信用している絶対信者。というところか。


 外見は?というと。龍太郎が考える限り、全く非の打ち所がない。

 なのに、喋りやすいのが不思議だ……。



 そのあと、デザートにあんみつを2人で食べて、スクーターで夢咲さんを家まで送って行った。



カレン:「ありがと!

 じゃあ、また明日ね。バイバイ!」


 明日は探検は休みの予定なのだが、買い物の約束をしたのだった。

 例のクランハウスのいろいろ。

 当然、自分も関係するので断ることは不可。


 うーん。これってリア充ってことなのかな?

 経験がないんでわからん。


 それより、帰ってアイちゃんに聞きたいことが山ほどあるぞ。


 龍太郎は、スクーターを走らせて、自宅のボロアパートを目指した。


 ◇◇◇◇◇

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