第13話 第二陣、狩猟開始

 ◇◇◇◇◇


 近くの滝から戻ってきた龍太郎とカレン。

 元いた岩陰から、待ち伏せ行動を再開していた。

 先程、討伐したランバードはすでに大地に吸収されていて、跡形もなく消滅していた。


 そして、龍太郎は少し緊張気味。


 ほんとに大丈夫かな。

 実は俺、ランバード初めてなんだよな。


カレン:「天堂くん。今からそんなに緊張してたら持たないよ。リーラックス!」


龍太郎:「ん?やっぱ、そう見えるか?」


カレン:「見える、見える。

 お姉さんがフォローしてあげるから大丈夫だよ。」


龍太郎:「ああ、頼むよ。」


カレン:「あれ?やけに素直?どうしたの?」


龍太郎:「正直、俺は弱い。

 たぶん、レベルは夢咲さんが思ってるより、めちゃくちゃ低いから。」


カレン:「うん。知ってるよ。」


龍太郎:「ん?知ってるって?」


カレン:「そんなのだいたい分かるよ。

 逆に分からないと思ってた?」


龍太郎:「へ?なぜ?

 まだ、一緒に狩りしてないよね?」


カレン:「なんかね。

 言っちゃいけないかもって思ったから、言わなかったけど、ここまで走ってきたじゃない?

 いつもなら、3分の1くらいの時間で着いてるんだよね。」


龍太郎:「はぁ?それって俺に合わせて走ってたってこと?」


カレン:「うん。そうだね。」


龍太郎:「えー!?そうだったのか?」


カレン:「だから、だいぶレベルが低いんだろうなって。でも、気にしないでね。

 それって逆にすごいことだからね。

 今までソロで頑張ってきたってことでしょ。

 だから、それはそれですごいんだよ。」


龍太郎:「うわ、恥ずかしい。」


カレン:「だから、言ったでしょ?

 パーティなんだから、一緒に頑張ればいいんだよ。」


龍太郎:「うう。お世話になります。」


カレン:「そうじゃないよ。一緒に頑張るの。

 わかった?」


龍太郎:「そう言われても……。」


カレン:「倍返しなんでしょ?忘れた?」


龍太郎:「うう……わかった。」


カレン:「もう!元気出して!

 あ!ほら!ちょうど、出て来たよ!

 今度も1頭だね。

 少し様子を見てから、行くからね。」


龍太郎:「ああ。了解。」


 カレンは、少し様子を見て、他に出てこないのを確認したのちに、さっきと同じようにランバードに向かって走って行った。


 龍太郎の緊張はピークに達していた。


 ふう。落ち着け。


 夢咲さんが一突きしたら、出ていく。

 夢咲さんが一突きしたら、出ていく。

 夢咲さんが一突きしたら、出ていく。


 夢咲さんがランバードと対峙してる。


 来た!ランバードの突進!


 案の定、ぶつかった夢咲さんが吹っ飛ぶ!


 よし!今だ!


 龍太郎は岩陰から飛び出して、ランバードの方に向かって走って行く!


 夢咲さんも無事みたい。立ち上がった。

 って、あれ?そのまま見てる?


 なるほど、ここからは俺が倒せってことね。

 ラジャ!承りましたよ!


龍太郎:「おりゃー!行くぞー!」


 大声をあげて、龍太郎が突進!


 前方では、ランバードが例の如く頭から血を噴き出してふらついている。

 が、最初の1頭目よりもダメージが少ないのか、倒れないでいる。


 どうする?狙いは?


 龍太郎は、ランバードに近づいて行く中で、有効な手段が何かを考えていた。


 ここはやはり側面から腹付近に突きだよな!

 

龍太郎:「よっしゃー!行くぜー!」


 龍太郎の攻撃は見事に成功し、ランバードの横腹に剣が突き刺さった!

 

 剣を刺されたランバードは、大きな悲鳴を上げる!


 龍太郎は、次の攻撃のために剣を抜こうとしたが……。


龍太郎:「げっ!抜けねー!なんでー!?」


 深く刺さった剣は、抜くことができず、大きく暴れ出したランバードのケツで、龍太郎は大きく吹っ飛ばされた!


カレン:「ちょっ!天堂くん!」


 カレンは慌てて、吹っ飛ばされた龍太郎のところに駆け寄った。


 ランバードは剣が刺さったまま、その場にうずくまって、血を流し続けたまま、苦しそうにもがいている。


カレン:「天堂くん!大丈夫?」


龍太郎:「ああ。なんとか。それよりランバードは?」


カレン:「あー、良かった。

 ランバードなら、あそこで倒れてるよ。

 もう動けなさそうだから、あのまま放置しておけば息絶えるよ。」


龍太郎:「そっか。ふふふ。やった!」


カレン:「そんなことよりも、体はどうなの?」


龍太郎:「だいじょ、うげ!」


 龍太郎は起きあがろうとした時に、脇腹に激痛が走った。


カレン:「大丈夫じゃないじゃないのよ!どこなの?」


龍太郎:「ああ、脇腹が逝ったみたいだな。

 たぶん、あとは大丈夫だと思う。

 だけど、ちょっと休ませて。」


カレン:「うん、わかった。ゆっくり休んで。

 私はモンスターコアの抜き取りをしてくるから。」


龍太郎:「ああ、悪いな。」


 そのやりとりの間に、血を流し続けていたランバードは静かに息絶えていた。


 それを見た龍太郎は、その場で大の字になって、初めて狩ったランバードに達成感を感じていた。


 ふふふ。やったぞ!ランバード討伐!

 これも夢咲さんのおかげだな。

 今までの1年半は何だったんだろう?

 って考えても仕方ないな。

 もっと、前向きに行かなきゃな。


 それよりも、あれはビックリしたな。

 まさか、モンスターにもあるとは……。


 

 ◇◇◇◇◇



 少し時を遡って、龍太郎の戦闘中。


 龍太郎がランバードのケツに大きく弾かれた瞬間にそれは起こった!


 ぐはっ!くそっ。やられた!


 と同時に龍太郎の頭の中にメッセージボックスが表示された。


〈ピピプピプ……他者の超能を確認!〉

〈超能【駿足しゅんそく】を登録しますか?〉


 へ?これってランバードのスキル?

 とりあえず、登録!


〈ピピプピプ……超能【俊足】を登録しました!〉


〈ピピプピプ……超能【駿足】の解放に失敗しました。

 超能【駿足】の解放のために必要な固有強度レベルの条件を満たしていません。〉


 ま、そうだろな。


 ただ、今は戦闘中だ。

 あとで、アイちゃんに聞いてみよう。

 よし!もういっちょ、行かなきゃ!


 と、龍太郎が起きあがろう思ったその瞬間、目の前にカレンの顔が。


 え?夢咲さん?


カレン:「天堂くん!大丈夫?」



 ◇◇◇◇◇



 では、時を戻そう。


カレン:「天堂くん!

 モンスターコアの抜き取り終わったよ!」


龍太郎:「ああ、サンキュ!」


カレン:「どう?立てる?」


龍太郎:「うん、なんとか。」


 龍太郎は立ち上がって、どれくらい動けるのかを確認していた。


龍太郎:「歩くのには支障なさそうだ。

 ゆっくりなら走るのも問題なさそう。

 でも、戦闘は無理っぽい。

 素早くは動けないみたい。」


カレン:「うん。軽傷で済んで良かったよ。

 じゃあ、今日は帰ろっか。」


龍太郎:「いや、でも。」


カレン:「私も、あんまりね。

 じゃあ、帰ろ!」



 ◇◇◇◇◇



 行きは30分だったところが、帰りは歩いて帰ったので、結局2時間くらいかかった。


カレン:「天堂くん!見えてきたよ。」


龍太郎:「ああ、結構かかったな。申し訳ない。」


カレン:「全然、大丈夫。

 協会に戻ったら、病院で診てもらおうね。」


 ようやく、ゲート付近にたどり着いた龍太郎とカレンは、そこに人影があることに気がついた。


カレン:「天堂くん。販売ショップの前に珍しく人がいるよね。」


龍太郎:「ああ、パーティみたいだな。」


カレン:「そうだね。3人組みたい。」


 向こうもこちらに気づいてるみたいだ。

 こういうのは苦手なんだよな。

 変な奴らじゃなきゃいいけど……。


 ◇◇◇◇◇

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