第12話 絶賛青春謳歌中!

 ◇◇◇◇◇


カレン:「それじゃ、天堂くん!

 早速、協力プレイだよ。

 こいつからモンスターコアを抜き取るから、手伝って!ナイフ持ってる?」


龍太郎:「もちろん。」


 2人は協力して、ランバードの胸の中心辺りにあるモンスターコアを抜き取った。

 ランバードのモンスターコアは体長に合わせてそれなりに大きく、龍太郎がいつも狩っているモンスターのものより、かなり大きい。

 ただし、ランバードは初期モンスターに属するため、モンスターコアの色は薄い。


 モンスターコアは、その大きさと色の濃さでその価値が変化する。

 大きさが大きいほど、エネルギー量は大きく、色が濃いほど、エネルギー濃度が高い。

 その価値はエネルギー総量で決まり、当然、その買取額は価値が高いほど高額になる。

 すなわち、より大きくて、より色の濃いモンスターコアが高額ということになる。



カレン:「へえ、すごく上手だね。

 私より全然手際がいいよ。」


龍太郎:「ああ、抜き取りだけはな。

 新人の頃はこればっかやってたからな。

 これだけは得意かも。」


カレン:「うん。自慢していいと思うよ。

 でもさ、モンスターコアも、たまに消滅してる時があるからね。

 今回は大丈夫だったね。良かった。」


龍太郎:「え?ソロで?消滅することがあるのか?」


カレン:「うん。たまにね。

 極力、胸の辺りには、突き刺さないようにしてるんだけど、たまに当たって欠ける時があってね。その時はガックリだよ。」


龍太郎:「それは逆にすごいな。

 その大剣の性能ってやっぱもの凄いんだな。

 俺は当たっても、欠けたことないぞ。」


カレン:「うん。それは痛感してるよ。

 ありがたい悩みだと思ってるし。

 でもねえ。せっかく倒したのにさあ、モンスターコアがないって本当にショックだよ。」


龍太郎:「確かに。収入に直結してるからなぁ。」


 モンスターコアは、強い衝撃を受けると欠けてしまうのだが、欠けてしまうとそこからエネルギーが放出して、瞬く間に消滅してしまう。

 その代わり、その攻撃は一撃必殺となり、モンスターはその瞬間に活動を停止する。

 エクスプローラにとっては、一長一短の性質である。


龍太郎:「ところで、肉や素材はどうしてるんだ?」


カレン:「たまに持って帰ることもあるけど、まあ滅多にないよね。」


龍太郎:「そうだよな。

 じゃあ、こいつは放置でいいんだよな。」


カレン:「うん。いつもそうしてるからね。

 オーケー丸だよ。」


 この世界の摩訶不思議の一つ。

 死亡したモンスターは、そのまま大地に放置して置くと、ある程度の時間を経て、徐々に大地に吸収されていき、何もなかったように消滅してしまうのである。

 一旦、吸収が始まると消滅までにかかる時間はそれほど長くない。

 なお、この吸収現象が初期のフィールド調査の段階で確認されたために、見た目は広大な大地が広がる、このフィールドも地上型ダンジョンと呼ばれる所以となっている。



カレン:「それじゃ、モンスターコアも抜き取ったことだし、私はこれを洗い流しに行くからね。」


 カレンは自分の体を指差して、そう言った。

 全身血まみれのカレン。


龍太郎:「だよな。狩りでそこまでドロドロのグチャグチャになってるのって、なかなかのもんだぞ。

 そのまま、ホラー映画に出られるぞ。」


カレン:「そうなんだよね。

 これが、この戦い方の欠点かな。

 一回ずつ洗い流さないといけないし。

 このままだとバキバキになっちゃうから。」


龍太郎:「うんうん。バキバキも見てみたいけどな。

 でも、体を洗い流すってどうするんだ?

 なんかそんな便利グッズ持ってるのか?」


カレン:「ううん。そんなの持ってないよ。

 実は、これもこの狩場のいいところの一つでね、この近くに滝が流れてるんだよ。

 そこで体を洗い流すの。」


龍太郎:「へえ。そうなのか。

 じゃあ、今から行って来なよ。

 俺はここで待ってるから。」


カレン:「天堂くんも一緒に行くんだよ!」


龍太郎:「え?………………。

 お、俺はいいよ。遠慮しとく。」


カレン:「あれー?今のは何?

 顔赤いよ。今、えっちなこと考えた?

 ん?私の体、想像しちゃった?」


龍太郎:「はぁ!?何言ってんの!」


カレン:「ははは。冗談だよ〜。

 もう、焦ってるし(笑)

 滝に行っても、このまま洗い流すから見られても大丈夫だよ。

 それに場所知っておいた方がいいでしょ?」


龍太郎:「ああ。なんだ!そういうことか。

 そうならそうと、始めからそう言ってくれ!

 ふう。焦ったー!……。あ!」


カレン:「あ!やっぱり、焦ってたんだ。」


龍太郎:「ぐわっ!痛恨!」


カレン:「出たー!ふふふ。」



 ◇◇◇◇◇



 狩場から逆の方向に岩場を登り切って、さらに降り切ったところに突然、滝が現れた。


カレン:「天堂くん、ここだよ。」


龍太郎:「へえ、こんなところにあるんだな。

 すごい綺麗な滝!これはいいな。

 水もめっちゃ綺麗!すげー!」


カレン:「でしょ。不思議だよね。」


龍太郎:「これも、あの不思議なマップのおかげなのか。

 普通ならここは見つからないかもな。 

 うん。いいよ。いいよ。

 じゃあ、洗い流してきなよ。

 ここで見てるから。」


カレン:「うん。流してくるね。」


 確かに、これはいい場所だな。

 滝、癒されるわー。マイナスイオン!


 しかし、あれはすごかったな。

 見た目と戦い方のギャップが凄すぎる。

 やっぱり、夢咲さんって結構レベル高いのかな?



カレン:「天堂くん!見て!見て!

 綺麗になったでしょ!」


龍太郎:「え?あー、ほんとだ。」


カレン:「ねえ!私ねー!

 一度、こういう開放的な場所で全部脱いでみたかったっていうのもあるんだよねー!

 今日は見張りもいてくれるしー!

 大丈夫かなー?

 ねえ、天堂くん!どう?見てみたい?」


龍太郎:「ブッ!待て!早まるな!

 脱ぐなよ!絶対に脱ぐなよ!」


カレン:「いやーん。天堂くんのえっちぃ!

 そんなベタベタな振りされるとカレン困っちゃう!」

 

龍太郎:「いや!振りじゃねえからー!!

 勘弁してくれ〜!

 このくだり、2回目だろ!やめれ〜!」


 龍太郎とカレンは、絶賛青春謳歌中!

 いや〜、春ですねぇ。

 9月ですけど!よほほほほ。


 初春や、ああ初春や、初春や。


 ◇◇◇◇◇

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