第11話 初陣、狩猟開始
◇◇◇◇◇
龍太郎とカレンは、おすすめのランバードの狩場を目指して走り続けていた。
龍太郎:「夢咲さん。あと、どれくらいかなー?」
カレン:「もうすぐだよ。」
もう30分くらいは休みなく走り続けている。
龍太郎は、内心バテバテになっていた。
一方、カレンはまだまだ余裕の表情だ。
実は、個体強度レベル1というのは、一般成人と同程度の身体能力、身体強度を示しており、レベルが上がるとそれらに補正がかかる。
よって、レベル1の龍太郎は、なんら補正がかかっていない状態。
30分も走り続けるのは苦痛でしかない。
カレンも流石に龍太郎がレベル1だとは思っていないので、気にせず走っていた。
カレン:「天堂くん。着いたよ。
この先だから、ここの岩陰で待つよ。」
龍太郎:「ああ。オーケー!
意外に近かったな。」
痩せ我慢の龍太郎は、もう少しで何かの理由をつけて、休憩のお願いをするところだったので、助かった!と思ってホッとしていた。
でも、顔には出さない龍太郎。
変なプライドを出さなきゃいいのに。
カレン:「まずは、私の戦い方を見せるね。
この先に森があるでしょ。
そこからたまにランバードが出てくるから、そしたら行くからね。
ただし、1頭の時だけね。
2頭以上出てきたら、中止してまた待つ。
ちょっと、効率は悪くなるけど、安全重視だからね。」
龍太郎:「ああ。問題ない。
待ち伏せは狩りの基本だからな。
まずは見ておくよ。」
いや、ランバードは1匹でも結構強いと思うけど、大丈夫かな?
まずは、お手並み拝見と行こう。
それから、時間は経過し、ようやくランバード1頭が森から現れた。
カレン:「よし!1頭だけだね。
それじゃ、行ってくるから見ててね。」
龍太郎:「おう!気をつけてな。」
カレンは、岩陰からランバードに向かって走り出すと、ランバードはカレンに気付いて臨戦体勢を取って、威嚇し始めた。
対峙しているランバードの体長は、優にカレンの2〜3倍の大きさがある。
見た目、圧倒的に不利な状況に見えるのだが、カレンに焦った様子はない。
カレンは、ある程度近寄ったところで攻撃体勢を取るも相手の出方を待っているようだ。
威嚇を続けていたランバードが痺れを切らせて、カレンに突進していく。
ランバードは、名前の通り走る鳥、飛べないのだ。その代わりに走るスピードはとてつもなく速く、その突進で相手を攻撃する習性を持つモンスターだ。
その突進による衝撃は、高速でダンプトラックに跳ねられるようなダメージがある。
ランバードのスピードに対抗出来るスピードを持っていれば対応もできるが、通常は避けることも難しいはず。
なのに、ランバードの突進に、カレンは大剣を突き刺すような構えを取ったまま体勢を変えずに立っていた。
おい!?それじゃ、正面からぶつかるぞ!
そこからどんな戦い方をするんだ?
ランバードの突進を正面からモロに受けたカレンが、ランバードの突進のスピードのまま、後方に吹き飛んだ!
えーーーー!?なんでだよ!
無策だったのかよ!?おい!
龍太郎は、何も考えずにカレンの方に向かおうと岩陰から飛び出した。
が、吹き飛んだカレンは、すぐに立ち上がって、さらに攻撃を加えようとランバードに向かって走り出した。
へ?なんで?
ランバードの方に目をやると、攻撃したはずのランバードの方が、頭から血を流している。
動きも鈍くなっていて、ふらついている。
へ?なんで?
あ!鳥こけた。
足がもつれて、地面に倒れたランバードに対して、カレンが飛びかかって大剣を突き刺す。
ちょうど、胸か腹の辺りに突き刺さった。
ランバードが悲鳴を上げているが、もうほとんど動けない状態になっている。
カレンは、大剣を抜き取り、さらに首の辺りに斬撃を何回か加えた。
と同時にランバードはぐったりと息絶えた。
その一部始終を見ていた龍太郎は、その戦闘スタイルに圧倒されていた。
これが夢咲さんの狩り方……。激しい。
ランバードの周りは血の海が広がっている。
カレンも全身が返り血で血まみれ状態だ。
カレン:「天堂くーーん!こっちに来てー!」
龍太郎:「お、おう!」
龍太郎は、激戦を終えたカレンの方に小走りで近づいていった。
カレン:「ね!どう?ちゃんと見てた?」
龍太郎:「ああ。見てたけど、なんかものすごく激しいな。
体は大丈夫なのか?」
カレン:「うん、大丈夫だよ。
ちょっとあちこち痛いけど、それくらいだから。」
龍太郎:「なんか無茶苦茶な戦い方だな。」
カレン:「そう見えるかもだけど、いい戦法でしょ?
ランバードって馬鹿だから、絶対に真っ直ぐに突っ込んでくるんだよね。
その攻撃を利用して一突きって感じだよ。」
龍太郎:「まあ、そうなのかもしれないけど、普通なら即死案件だぞ。」
カレン:「それは、この装備のおかげかな。
私ってまだまだレベルは低いけど、装備の性能はめちゃくちゃいいからね!」
龍太郎:「なるほどな。うーん。
まあ、実際に討伐できたんだから、そういうことなんだろうな。
でも、俺には、絶対無理ゲーだな。
今日は見学に徹するしかないか。」
カレン:「何言ってんのよ?
次は天堂くんも参加するんだよ。
じゃないと一緒に来た意味ないじゃん。」
龍太郎:「はぁーーーーー!?
俺を殺す気か!?瞬殺だぞ!
無理無理。絶対に無理!」
カレン:「大丈夫だって。
一突き目は私がするから、そのあと参加すればいいんだよ。」
龍太郎:「それって、おこぼれくれくれ厨じゃん。それは嫌だ!俺にもプライドがある。」
カレン:「嫌だ!って、変なプライド。変だよ。
天堂くんがくれくれしてないんだから、くれくれ厨じゃないよ。」
龍太郎:「そういう、夢咲さんの方が変だぞ!
メリットがないじゃん?
なんで、そこまでしてくれる必要がある?」
カレン:「なんで?って……あれ?なんでだろ?
えーっと、第六感?
もう!そうしたいって思うから、そうしてるんだよ。それでいいじゃないのよ。
わからずや。いけず。変態。」
龍太郎:「ん?」
あれ?なぜ、俺は怒られている?
カレン:「それに、これは協力プレイだよ。
一緒にやった方が楽しいよ。絶対!
もう、天堂くんと私はパーティなんだから、クランメンバーなんだから、一緒に成長した方が楽しいよ。絶対!」
カレンは真っ直ぐに龍太郎を見つめていた。
龍太郎:「……………。わかった。ごめん。
もう、俺、くれくれ厨でいいや。
なんか、変な意地張ってたのかもな。
弱いくせに。強くなりたいくせに。
ただし、これは借りな!
あとで倍にして返してやるよ。」
カレン:「うん。そうだよ!それでいいよ。
楽しみだね。倍返しね。言ったからね!」
龍太郎:「ああ。やられたら、やり返す!
倍返しだー!」
カレン:「ぷ!何それ!ふふふ。」
なんか、吹っ切れた。
絶対に強くなる。やってやるぞ!
雨降って、地固まる。
これを契機に、龍太郎の心境は少しずつ変化していくのであった。
◇◇◇◇◇
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます